欧州サッカー観戦記 ゴールに繋がるオフ・ザ・ボールの動き

オフ・ザ・ボールの動き 縦に速い攻撃編 オフザボールでの動き・ポジショニング

サッカーの試合でゴールが決まる時、そのほとんどに於いてオフ・ザ・ボールでの質の高い動きやポジショニングがあります
今回は、24‐25シーズンのUEFAチャンピオンズリーグから「縦に速い攻撃」でのゴールシーンを2つ取り上げます
速い展開のなかでオフ・ザ・ボールの選手がどのように動き、その動きにどのような効果があるかをみていきます

ゴールに繋がるオフ・ザ・ボールの動き 2選

24‐25シーズンのUEFAチャンピオンズリーグ、決勝トーナメントから2つのシーンを取り上げたいと思います。

【その1】
UEFA CL Round of 16 2nd leg(2025年3月13日)
アトレティコ・マドリード 対 レアル・マドリード
[1分、アトレティコのゴールシーン]

【その2】
UEFA CL Quarter Final 2nd leg(2025年4月16日)
アストン・ヴィラ 対 パリ・サンジェルマン
[34分、ヴィラのゴールシーン]

※オフ・ザ・ボールの動きやポジショニングについて、こちらの記事でも取り上げています
もしよろしければご覧下さい

オフ・ザ・ボールの動き(その1) アトレティコ、試合開始直後の攻撃

UEFA CL Round of 16 2nd leg(2025年3月13日)
アトレティコ・マドリード 1-0 レアル・マドリード
(2試合合計スコア 2-2)
延長戦 0-0
PK戦 2-4
【レアル・マドリードの勝利】

スターティングラインアップとシステム

[システム図①]左:アトレティコ(白赤) 右:レアル(白)

アトレティコ、開始1分のゴールシーン

ジュリアーノ シメオネのフリーランニングが
スペースを生み出す

キックオフ直後、アトレティコの最終ラインから前方へ大きく蹴り出されたボールの回収を巡る攻防を制したアトレティコ。レアルの中盤と最終ラインのライン間でアトレティコの左サイドハーフ、コナー キャラガーが前向きにボールを受けると、アトレティコは一気にレアルゴールへと迫りゴールを奪う。
試合開始直後、電光石火の攻撃でゴールを奪ったアトレティコの一連の攻撃と、その中で重要な役割を担ったジュリアーノ シメオネの効果的なフリーランニングを以下のMEMOでみていきます。

ジュリアーノ シメオネのフリーランニング(その1)
【敵DFラインに対して中央へ動く事でサイドにスペースを生む】
レアルの中盤とDFラインのライン間で前向きにボールを受けた④コナー キャラガーは⑲フリアン アルバレスにボールを渡し、パスアンドムーブで前方へと走り込む。
パスを受けたフリアン アルバレスにレアルのセンターバック(CB)、ルディガーが視線を向けた瞬間、㉒ジュリアーノ シメオネはルディガーの背後に向かってフリーランニング。ジュリアーノ シメオネの動きに左サイドバックの㉓メンディが引っ張られ、右サイドにスペースが生じる。
このスペースへ向かって⑤デパウルが走り込み、フリアン アルバレスはデパウルへパスを送る。
[システム図②]
ジュリアーノ シメオネのフリーランニング(その2)
【ニアへ入って行く事で敵DFを引っ張る】
ペナルティエリアの右角付近でパスを受けた⑤デパウルは、慌てて守備対応に来た㉓メンディの股を抜くダイレクトクロスをゴール前に送る。デパウルのクロスに対して㉒ジュリアーノ シメオネはニアサイドへ飛び込み、ボールをファーサイドへフリック。
ジュリアーノシメオネの一連の動きに、ゴール前中央のエリアを守りに来たレアルのCB、㉟ラウル アセンシオはニアサイドへ引っ張られファーサイドにスペースが生じる。
パスアンドムーブでゴール前へと走り込む④コナー キャラガーはこのスペースへと侵入。ジュリアーノシメオネがフリックしたボールをゴールへと押し込む。
[システム図③]

ジュリアーノ シメオネの動きにレアルの守備陣はことごとく引っ張られ、それによって生じたスペースに周囲の選手が入る事が一連の攻撃の肝になっていた

フィニッシュのシーン、ファーサイドに飛び込むコナー キャラガー

ラウル アセンシオに対してプルアウェイで巧みにスペースへと飛び込んでいた

オフ・ザ・ボールの動き(その2) 反撃の狼煙を上げるアストン・ヴィラ

UEFA CL Quarter Final 2nd leg(2025年4月16日)
アストン・ヴィラ 3-2 パリ・サンジェルマン
(2試合合計スコア 4-5)
【パリSGの勝利】

スターティングラインアップとシステム

[システム図④]左:ヴィラ(臙脂) 右:パリSG(青)

アストン・ヴィラ、34分のゴールシーン

ポジティブトランジションからの縦攻撃
2人目、3人目の選手の動きが効果的に絡む

最強を誇るパリSGに対して激しく牙をむき、猛反撃をみせたアストン・ヴィラ。
反撃の狼煙となったのが34分、ユーリ ティーレマンスのゴール。
自陣でボールを奪いティーレマンスがパリSG中盤のプレッシャーラインを越える縦パスを受けると、一気にパリSGゴールを急襲するべく縦攻撃を敢行。そしてゴールを奪います。
一連の速い縦攻撃の中で、ヴィラの選手が如何にして連動した動きをみせたのかを以下のMEMOでみていきます。

縦攻撃の中でみせるアストン・ヴィラの連動性(その1)
【スペースを作る動きと、そのスペースを突く動き】
中盤とセンターバックの挟み込みでボールを奪ったアストン・ヴィラは、パリSGの中盤ラインとディフェンスラインのライン間にポジションを取る⑧ティーレマンスへボールを送る。
このパスを受けたティーレマンスが前を向いた事で攻撃のスイッチが入ったヴィラ。ティーレマンスがドリブルでボールを運び、その右側を㉗ロジャース、左側を⑨ラッシュフォードが縦方向へフリーランニング。リトリートするパリSGの最終ラインは右から⑤マルキーニョス、(51)パチョ、⑧ファビアンの3枚。そこへ⑰ヴィチーニャがプレスバックしティーレマンスへプレッシャーをかける。
3対4の状況となりヴィチーニャからプレッシャーを受けたティーレマンスは、前方へのドリブルを継続しつつ左方向へと流れると、左側から中央へと入って来たラッシュフォードとスイッチ。
このスイッチにパリSGはマルキーニョス、パチョ、ヴィチーニャの3枚が引き付けら、ペナルティアークの右側にスペースが生じる。
このスペースへ後方から⑦マッギンが走り込むと、スイッチでボールを受けたラッシュフォードがマッギンへダイレクトパスを送る。
[システム図⑤]
縦攻撃の中でみせるアストン・ヴィラの連動性(その2)
【パリSGの守備対応により次のスペースが生じる】
ゴール前中央のエリアでパスを受けた⑦マッギンに対してパリSGは⑤マルキーニョスが対応。パスを出した⑨ラッシュフォードはゴール方向へのパスアンドムーブで(51)パチョを引っ張る。
これらの動きにより今度は左ハーフスペースに新たなスペースが生じると、⑧ティーレマンスはそのスペースへと流れ、すかさずマッギンがティーレマンスへパスを送る。
ティーレマンスはゴール前でフリーの状態でパスを受ける。
[システム図⑥]

この図の後、フリーでパスを受けたティーレマンスは右足でダイレクトシュートを放つ。
ボールは慌ててブロックに来たパチョに当たるとパリSGゴールへと吸い込まれる。

縦に速い攻撃の中にも、斜めや横方向の動きを入れる事でスペースを生み出し

相手DFがそこに対応すれば、その動きによって生じた新たなスペースを使って次の展開を作る

ヴィラの攻撃は各々の動きに意味があり、それらが連動している

このゴールを挙げるまでの一連の流れを見れば、その事がよくわかる

 

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