人々を魅了するサッカー FCバルセロナの攻撃 24‐25シーズン前半戦

FCバルセロ 24-25シーズン前半戦のチームオフェンス UEFAのコンペティション

チャビ エルナンデス前監督の元、多くの若手が台頭したバルセロナ。
タイトル奪還を目指す24‐25シーズンは、開幕前にハンジ フリックを新監督に招聘。
今季もライバルとなるレアル・マドリード、アトレティコ・マドリードと激しい優勝争いを繰り広げています。

そんな今季前半戦のバルセロナですが、特に目についたのは高火力の攻撃ではないでしょうか。
今回は今季前半戦のなかでも、私の印象に残ったバルセロナの攻撃を取り上げたいと思います。

FCバルセロナ 今季前半戦の成績

【UEFA チャンピオンズリーグ リーグフェーズ
5勝0分1敗 勝ち点 15 得点 21 失点 7 差 +14 第2位

【ラ・リーガ】
12勝2分5敗 勝ち点 38 得点 51 失点 22 差 +29 第3位

【コパ・デルレイ】
3回戦から出場

※2025年1月4日現在

バルセロナの攻撃に関して、取り上げる試合

【その1】
ビルドアップ時の動き
ラ・リーガ 第5節(2024年9月15日) 対 ジローナFC 戦

【その2】
縦方向の攻撃
ライン間やラインの背後へのボールの差し込み

UEFA CL リーグフェーズ 第3節(2024年10月24日) 対 バイエルン・ミュンヘン 戦

【その3】
中盤でのパス回しから、逆サイドへの展開
ラ・リーガ 第5節(2024年10月27日) 対 レアル・マドリード 戦

ビルドアップ時の動き

ラ・リーガ 第5節(2024年9月15日)
ジローナFC 1-4 FCバルセロナ

メンバー及び試合開始時のシステム

ジローナFC
監督 ミチェル

【スタメン】

13 パウロ ガッサニガ (GK)
3 ミケル グティエレス
5 ダビド ロペス
8 ビクトル ツィガンコフ
9 アベル ルイス
11 アルノー ダンジュマ
16 アレハンドロ フランセス
17 ダレイ ブリント
20 ブライアン ヒル
22 ジョン ソリス
23 イバン マルティン

【交代】

10 ヤセル アルプリージャ (55分In)
➡ブライアン ヒル Out
24 ポルトゥ (55分In)
➡ダンジュマ Out
6 ドニー ファンデベーク (69分In)
➡ツィガンコフ Out
7 クリスティアン ストゥアニ
(69分In)
➡アベル ルイス Out
4 アルナウ マルティネス (85分In)
➡アレハンドロ フランセス Out

FCバルセロナ
監督 ハンジ フリック

【スタメン】

1 マルクアンドレ テアシュテーゲン(GK)
2 パウ クバルシ
3 アレハンドロ バルデ
5 イニゴ マルティネス
8 ペドリ
9 ロベルト レバンドフスキ
11 ラフィーニャ
17 マルク カサド
19 ラミン ヤマル
20 ダニ オルモ
23 ジュール クンデ

【交代】

24 エリック ガルシア (61分In)
➡ダニ オルモ Out
32 エクトル フォルト (61分In)
➡クバルシ Out
7 フェラン トーレス (69分In)
➡ペドリ Out
18 パウ ビクトル (69分In)
➡レバンドフスキ Out
35 ジェラール マルティン (90+2分In)
➡ラミン ヤマル Out

[システム図①]左:ジローナ(白赤) 右:バルセロナ(黒)
試合開始時

攻撃初期段階、起点となるマルク カサドの動き

中盤の底が的確にボールを受ける事で、良い形で攻撃の起点を作る

シーズン序盤のジローナ戦、両チーム共に基本システムは4‐2‐3‐1という事でシステムの嚙み合わせは「4‐4‐2対4‐4‐2」に近い状態。お互いにマッチアップを噛み合わせ易い位置関係となる。
この状況でバルセロナがビルドアップを行う際の後方のマッチアップは下図[システム図②]のようになる。

[システム図②]
バルセロナ、ビルドアップ時のマッチアップ図

マッチアップが噛み合う状況のなかで、マルク カサドが的確なタイミングで敵ツートップ間に顔を出してボールを受けて前を向く。
マルク カサドが良い状態でボールを持って攻撃の起点となる事で、スムーズにボールを前へと進められ、良い流れで崩しの局面へと入って行く事に繋がっている。

[システム図③]
ビルドアップ時、最終ラインからのボールを受ける際のマルク カサドの動き
ビルドアップの開始時は[システム図②]で示したような形でジローナの選手はマークを掴んでいる状態。
そこから⑰マルク カサドはタイミングよくジローナの最前線2枚(⑨アベル ルイス、⑧ツィガンコフ)の間に下りて、最終ラインからのパスを受けて前を向きボールを前方へと捌いて行く。
このマルク カサドの動きが非常に的確な為㉓クンデ、③バルデの両サイドバックや、⑧ペドリが早いタイミングで高いポジションへ上がって行く事が容易になっていた。

ビルドアップの時に、マルク カサドが的確にボールを受ける事で

バルセロナはその後の攻撃をスムーズに進める事ができるのですね

縦方向の攻撃 ライン間やラインの背後へのボールの差し込み

UEFA CL リーグフェーズ 第3節(2024年10月24日)
FCバルセロ 4-1 バイエルン・ミュンヘン

メンバー及び試合開始時のシステム

FCバルセロ
監督 ハンジ フリック

【スタメン】

13 イニャキ ペーニャ (GK)
2 パウ クバルシ
3 アレハンドロ バルデ
5 イニゴ マルティネス
8 ペドリ
9 ロベルト レバンドフスキ
11 ラフィーニャ
16 フェルミン ロペス
17 マルク カサド
19 ラミン ヤマル
23 ジュール クンデ

【交代】

21 フレンキー デヨング (61分In)
➡フェルミン ロペス Out
20 ダニ オルモ (76分In)
➡ラフィーニャ Out
6 ガビ (85分In)
➡ペドリ Out
10 アンス ファティ (85分In)
➡ラミン ヤマル Out
18 パウ ビクトル (85分In)
➡レバンドフスキ Out

バイエルン・ミュンヘン
監督 バンサン コンパニ

【スタメン】

1 マヌエル ノイアー (GK)
2 ダヨ ウパメカノ
3 キム ミンジェ
6 ヨシュア キミッヒ
7 セルジュ ニャブリ
9 ハリー ケイン
16 ジョアン パリーニャ
17 ミカエル オリーセ
19 アルフォンソ デイビス
22 ラファエウ ゲレイロ
25 トマス ミュラー

【交代】

8 レオン ゴレツカ (60分In)
➡パリーニャ Out
10 レロイ ザネ (60分In)
➡ニャブリ Out
11 キングスレイ コマン (60分In)
➡オリーセ Out
42 ジャマール ムシアラ (60分In)
➡ミュラー Out
27 コンラート ライマー (85分In)
➡ラファエウ ゲレイロ Out

[システム図④]左:バルセロナ(臙脂・紺) 右:バイエルン(白)
試合開始時

36分のゴールに繋がる縦方向の攻撃

最終ラインからのパスを受ける為に
複数の選手が敵プレッシャーラインの背後にパスコースを作る

36分、レバンドフスキのゴールへと繋がる攻撃の起点となるシーン([システム図⑤]の状態)。
最終ラインでボールを持つクバルシがバイエルンのプレッシャーラインを越えるパスを狙っている。ここでバルセロナはオフザボールで複数の選手が盛んに動いて、バイエルンが形成するプレッシャーラインの背後にパスコース作る。
クバルシは一旦、右サイドのラミン ヤマルにボールを預ける。すると、バイエルンの中盤と最終ラインのライン間でパスを受ける為の動きを行っていたフェルミン ロペスラフィーニャが動き直して次のパスコースを作る。
ここでも複数のパスコースを作るバルセロナ。ラミン ヤマルはバイエルンのディフェンスライン裏へと抜け出したフェルミンを選択しパスを出す。
このパスがバイエルンのディフェンダー、キム ミンジェのクリアミスを誘いレバンドフスキのゴールへと繋がって行く。

[システム図⑤]
バルセロナ、最終ラインからの攻撃(その1)
複数の選手が異なるエリアでパスコースを作る為の動きをみせる
バイエルンの守備ブロックの外で②クバルシがボールをキープ。
ここでバルセロナは、⑧ペドリと⑰マルク カサドが中央のレーンでバイエルンの第一プレッシャーライン(⑰オリーセ、⑨ハリー ケイン)背後でパスを受けに動く。
右ハーフスペースでは⑯フェルミン ロペスと⑪ラフィーニャが前後につるべの動きで、バイエルンの中盤と最終ラインのライン間にパスコースを作る。


この場面でクバルシは、一旦右サイドの⑲ラミン ヤマルにボールを預ける。
[システム図⑥]
バルセロナ、最終ラインからの攻撃(その2)
フェルミンとラフィーニャの動き直しで、再び複数のパスコースを作る
右サイドの⑲ラミン ヤマルにボールが入ると、⑯フェルミン ロペスと⑪ラフィーニャは再び前後につるべの動きで動き直し。ラミン ヤマルに対して手前と奥に二つのパスコースを作る。
ここでラミン ヤマルは奥側のパスコースを選択。バイエルンのディフェンスライン裏のスペースに向けて走るフェルミンへ浮き球のスルーパスを送る。

ラミン ヤマルの浮き球スルーパスをバイエルンは③キム ミンジェがクリアミス。バイエルンのゴール前へと流れたボールをフェルミンが受けると、カバーリングに来た②ウパメカノ、飛び出して来たゴールキーパーのノイアーをかわし、最後は後方から走り込んで来たレバンドフスキがシュートを決めた。

オフザボールで複数の選手が効果的にパスコースを作る事で

敵のプレッシャーラインを突破する縦パスを、容易に差し込む事ができていた

バイエルンは、かなりコンパクトで強固な守備ブロックを形成していたけど

バルセロナのパスを回すメカニズムは、それをも上回っていました

中盤でのパス回しから、逆サイドへの展開

ラ・リーガ 第5節(2024年10月27日)
レアル・マドリード 0-4 FCバルセロナ

メンバー及び試合開始時のシステム

レアル・マドリード
監督 カルロ アンチェロッティ

【スタメン】

13 アンドリー ルニン (GK)
3 エデル ミリトン
5 ジュード ベリンガム
6 エドゥアルド カマビンガ
7 ビニシウス ジュニオール
8 フェデリコ バルベルデ
9 キリアン エンバペ
14 オウレリアン チュアメニ
17 ルーカス バスケス
22 アントニオ ルディガー
23 フェルラン メンディ

【交代】

10 ルカ モドリッチ (63分In)
➡チュアメニ Out
21 ブラヒム ディアス (77分In)
➡カマビンガ Out
20 フラン ガルシア (86分In)
➡フェルラン メンディ Out

FCバルセロナ
監督 ハンジ フリック

【スタメン】

13 イニャキ ペーニャ (GK)
2 パウ クバルシ
3 アレハンドロ バルデ
5 イニゴ マルティネス
8 ペドリ
9 ロベルト レバンドフスキ
11 ラフィーニャ
16 フェルミン ロペス
17 マルク カサド
19 ラミン ヤマル
23 ジュール クンデ

【交代】

21 フレンキー デヨング
(ハーフタイムIn)
➡フェルミン ロペス Out
20 ダニ オルモ (65分In)
➡マルク カサド Out
6 ガビ (87分In)
➡ペドリ Out

[システム図⑦]左:レアル(白) 右:バルセロナ(臙脂・紺)
試合開始時

56分、右サイドのパス回しから逆サイドに展開

縦パスを封じにかかるレアルに対して
効果的な左右の揺さぶりをみせるバルセロナ

3日前のチャンピオンズリーグ、強豪バイエルンに対して的確に縦方向へボールを差し込む攻撃で4得点を奪って快勝したバルセロナ。
バルセロナの強力な縦への攻撃に対してレアルは中盤のバルベルデ、チュアメニ、カマビンガが縦への侵入コースを消す守備をみせ、バルセロナは前半を無得点に抑えられる。
レアルの中盤の守備に苦しんだバルセロナはハーフタイムにフレンキー デヨングを投入。後半は縦方向への攻撃に左右の揺さぶりを加える。
下のMEMOで示した56分の攻撃は、縦方向への侵入を防ごうとするレアルに対してフレンキー デヨングが逆サイドへボールを展開し、レバンドフスキのゴールを演出した。

[システム図⑧]
バルセロナ、逆サイドのスペースを突く攻撃(その1)
右サイドを縦に攻めるバルセロナと、縦攻撃を防ごうとするレアル
バルセロナは②クバルシ、㉓クンデ、⑰マルク カサド、⑧ペドリの4人が菱型の陣形でパスを回して前方の⑲ラミン ヤマルや⑨レバンドフスキへの縦パスを狙うが、レアルの最終ラインもボールサイドにラインを寄せてバルセロナの攻撃を警戒する。
菱型の陣形を出入りしながらパス回しをサポートしていた㉑フレンキー デヨングは、このまま縦へと進むのは難しいと判断し左方向へと移動して、ペドリからのパスを受ける。
[システム図⑨]
バルセロナ、逆サイドのスペースを突く攻撃(その2)
逆サイドのスペースを使いレアルの最終ラインを一気に攻略
左サイドのスペースに狙いを定めた㉑フレンキー デヨング。
一旦、自身の右前方に位置する⑪ラフィーニャへパス。このパスでレアル守備陣の視線をラフィーニャに集めると、ラフィーニャはフレンキー デヨングへダイレクトでリターンパス。
ボールを受けたフレンキー デヨングは左サイドのスペースへボールを送り、オーバーラップした③バルデがこのボールを受ける。

この図の後、ボールを受けたバルデはゴール前にクロスを上げ、⑨レバンドフスキがヘディングでゴールを決める。

縦方向への攻撃を防ごうとするレアルに対して、逆サイドへ展開しての守備ブロック攻略

今回のクラシコは、バルセロナにとって今シーズンの攻撃パターンの多彩さをみせつけた試合だった

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