人々を魅了するサッカー。
華麗なパスサッカーや圧倒的な個人技、高速のカウンターアタック等々あると思います。
その中で
『高い位置から数的同数でマークを嵌め込み、積極的にボールを奪いに行く』
そのようなサッカーも多くの人々を魅了するのではないでしょうか。
今回はそのようなサッカーを実践したチームとして23‐24シーズンのガラタサライSKを取り上げたいと思います。
ガラタサライSK
ビッグクラブとの対戦でも、数的同数のフォアプレスで戦いを挑む
23‐24シーズンのUEFAチャンピオンズリーグ(CL)のグループステージ、バイエルン・ミュンヘンとマンチェスター・ユナイテッドの強豪2チームに対して真っ向勝負を挑んだガラタサライ。
彼らの戦い方を、実際の試合をピックアップし具体的にみていきたいと思います。
【取り上げる試合】
【1】CL グループステージ 第3節(2023年10月25日) 対 バイエルン・ミュンヘン 戦
【2】CL グループステージ 第5節(2023年11月30日) 対 マンチェスター・ユナイテッド 戦
ガラタサライのフォアプレス
CL グループステージ 第3節(2023年10月25日) 対 バイエルン・ミュンヘン 戦
ガラタサライSK 1-3 バイエルン・ミュンヘン
[メンバー及び試合開始時のシステム]
ガラタサライSK
監督 オカン ブルク
【スタメン】
1 | フェルナンド ムスレラ (GK) |
6 | ダビンソン サンチェス |
7 | ケレム アクトゥルコール |
9 | マウロ イカルディ |
14 | ウィルフリード ザハ |
20 | テテ |
23 | カーン アイハン |
34 | ルーカス トレイラ |
42 | アブドゥルケリム バルダクチ |
88 | カズミカン カラカス |
93 | サシャ ボエ |
【交代】
10 | ドリエス メルテンス (56分In) |
➡テテ Out | |
53 | バルシュ ユルマズ (75分In) |
➡アクトゥルコール Out | |
22 | ハキム ジエシュ (75分In) |
➡ザハ Out | |
3 | アンヘリーニョ (75分In) |
➡カズミカン カラカス Out | |
91 | タンギ エンドンベレ (80分In) |
➡カーン アイハン Out |
バイエルン・ミュンヘン
監督 トーマス トゥヘル
【スタメン】
26 | スベン ウルライヒ (GK) |
3 | キム ミンジェ |
4 | マタイス デリフト |
6 | ヨシュア キミッヒ |
9 | ハリー ケイン |
10 | レロイ ザネ |
11 | キングスレ イコマン |
19 | アルフォンソ デイビス |
27 | コンラート ライマー |
40 | ヌサイ マズラウィ |
42 | ジャマル ムシアラ |
【交代】
20 | ブナ サール (78分In) |
➡マズラウィ Out | |
13 | エリクマキシム チュポモティング (83分In) |
➡ケイン Out | |
39 | マティス テル (83分In) |
➡コマン Out |
[システム図①]左:ガラタサライ(臙脂・橙) 右:バイエルン(黒)
試合開始時
前に出てマークを掴むフォアプレスで
ドイツの盟主を相手に確かな爪痕を残す
第2節、オールドトラフォードでマンチェスター・ユナイテッドを撃破したガラタサライ。続く第3節はホームにバイエルン・ミュンヘンを迎えての一戦。
ガラタサライは試合の立ち上がりから積極的なフォアプレスに出て、ドイツの盟主を苦しめる。
バイエルンがボールを持てば、ガラタサライの選手達は前に出て素早くマークを掴み激しくプレス。バイエルンのビルドアップに対しても前線から数的同数でマークを嵌め込みプレスに行く。
バイエルンが前進してきても基本はマンマークディフェンスを継続、しつこくマークにつき続ける事でバイエルンの前に出るエネルギーを削っていく。
但し、バイエルンが中盤のプレッシャーラインを越えて来れば4‐4‐2のブロックディフェンスに移行する。
ガラタサライのプレスディフェンスは、特に前半大きな効果を発揮(前半のスコアは1対1)。ドイツの盟主を大いに苦しめ、前半はガラタサライがバイエルンを内容的に押し込んでみせる。
ガラタサライ、非ボール保持時のマッチアップ
バイエルンがボールを保持した瞬間、ガラタサライの選手はマッチアップマンを掴み激しくマークする。
バイエルンがゴールキーパー(GK)にボールを渡せば、⑨イカルディがGKまでチェイシングをかける。
バイエルンの前線⑨ケインが中盤に下りれば㊷アブドゥルケリムが中盤までついて行きマークする。
後半に入ってもガラタサライは立ち上がりから数的同数でマークを掴むプレスディフェンスで、前半同様バイエルンに対してプレッシャーをかけに行く。後半開始から暫くは前半の流れを引き継ぎ、ガラタサライが押し気味に試合を進める。
ただバイエルンも後半は、後方でパスを回す際のボールホルダーに対するサポート位置を修正。更にガラタサライの選手にも体力の消耗がみられ、60分を過ぎた辺りから徐々にプレスディフェンスの威力が落ち始める。そして70分台に入りガラタサライは立て続けに失点を喫してしまう。
最終的にはバイエルンに押し切られるような形で1対3の敗戦となってしまうったガラタサライ。しかし前線から数的同数でマークを嵌め込むプレスは、試合の多くの時間帯でバイエルンを苦しめていた。
敗れたとは言えガラタサライはドイツの盟主を相手に爪痕を残す戦いをし、前節マンチェスター・U戦の勝利がフロックではない事を証明した。
続いて取り上げるのは
前半劣勢に立たされるも、後半に入り中盤の並びを変える事で盛り返した試合です。
CL グループステージ 第5節(2023年11月30日) 対 マンチェスター・U 戦
ガラタサライSK 3-3 マンチェスター・ユナイテッド
※ガラタサライ対マンチェスター・U戦の詳細なレビューはこちらになります。もしよろしければご覧下さい。
[メンバー及び試合開始時のシステム]
ガラタサライSK
監督 オカン ブルク
【スタメン】
1 | フェルナンド ムスレラ (GK) |
3 | アンヘリーニョ |
9 | マウロ イカルディ |
10 | ドリエス メルテンス |
14 | ウィルフリード ザハ |
22 | ハキム ジエシュ |
23 | カーン アイハン |
34 | ルーカス トレイラ |
42 | アブドゥルケリム バルダクチ |
91 | タンギ エンドンベレ |
93 | サシャ ボエ |
【交代】
7 | ケレム アクトゥルコール (60分In) |
➡メルテンス Out | |
27 | セルジオ オリベイラ (60分In) |
➡エンドンベレ Out | |
25 | ビクトル ネルソン (83分In) |
➡アンヘリーニョ Out | |
53 | バルシュ ユルマズ (83分In) |
➡ジエシュ Out | |
8 | ケレム デミルバイ (88分In) |
➡ザハ Out |
マンチェスター・ユナイテッド
監督 エリック テンハーフ
【スタメン】
24 | アンドレ オナナ (GK) |
2 | ビクトル リンデロフ |
4 | ソフィアン アムラバト |
5 | ハリー マグワイア |
8 | ブルーノ フェルナンデス |
11 | ラスムス ホイルンド |
17 | アレハンドロ ガルナチョ |
21 | アントニー |
23 | ルーク ショー |
29 | アーロン ワンビサカ |
39 | スコット マクトミネイ |
【交代】
9 | アントニー マルシャル (58分In) |
➡ホイルンド Out | |
37 | コビー メイノー (58分In) |
➡アムラバト Out | |
20 | ディオゴ ダロト (78分In) |
➡ワンビサカ Out | |
28 | ファクンド ペリストリ (78分In) |
➡ガルナチョ Out |
[システム図③]左:ガラタサライ(臙脂・橙) 右:ユナイテッド(白)
試合開始時
ユナイテッド中盤のキーマンを、ルーカス トレイラが抑え込む
試合開始直後からガラタサライは、得意のフォアプレスに出る。ユナイテッドがボールを持てば素早く前へ出て、前線から人数を合わせてマークを掴みプレスに行く。
対して、前回の対戦で苦杯を嘗めたユナイテッドも、この試合では中盤の動きでガラタサライのプレスに対応してくる。
試合の立ち上がりはユナイテッドの中盤の動きがガラタサライのプレスに対して功を奏し、20分までに2点を挙げる。
ガラタサライ、非ボール保持時のマッチアップ(試合開始時)
前半の㉞トレイラは、ユナイテッドのビルドアップの起点となる④アムラバトとマッチアップ。
中盤で浮いている⑧ブルーノ フェルナンデスに対しては㉓カーン アイハンが前へ出てマークする。
ユナイテッドのフォアプレス対策
・中盤のマクトミネイが右サイドに流れる事で中盤にスペースを作る
・チーム全体でのパスアンドムーブの徹底
ユナイテッドのフォアプレス対策は上記の2点が挙げられる。
マクトミネイの動きについて、11分頃のプレーを元に説明します(下図参照)。
GK㉔オナナからのパスを(91)エンドンベレと競りながら受けた㊴マクトミネイ。
マクトミネイはボールをキープすると、マッチアップするエンドンベレを引き連れながらドリブルで右サイドへ流れる。
この動きでエンドンベレがサイドに流れ、中央にスペースが生じる。
このプレーを起点にユナイテッドはガルナチョが先制ゴールを挙げる。
前半を1対2、更に55分にユナイテッドに追加点を許し1対3と劣勢に立たされたガラタサライ。
後半の立ち上がり、ルーカス トレイラがユナイテッド中盤の戦術的キーマンであるマクトミネイに一時的にマッチアップする場面があったが、60分にアクトゥルコールとセルジオ オリベイラが投入されるとルーカス トレイラは明確にマクトミネイをマークするようになる。
ガラタサライ、非ボール保持時のマッチアップ(60分以降)
⑦アクトゥルコールと㉗セルジオ オリベイラの投入を機に、ユナイテッドの戦術的キーマン㊴マクトミネイを㉞ルーカス トレイラがマーク。
マクトミネイの存在感は徐々に薄れていく。
広範囲に動くマクトミネイに対して、ルーカス トレイラは激しくマークにつく。マクトミネイは、それまでの活躍から一転、徐々に存在感を失っていく。
マクトミネイを抑える事でチーム全体でがっちりとマッチアップマンを掴んだガラタサライは試合の主導権を奪う。そして62分と71分に立て続けにゴールを挙げ同点に追いつく。
結局試合は3対3のタイスコアで終了。
ガラタサライは自慢のフォアプレスで強豪マンチェスター・Uを相手に1勝1分けと、見事に勝ち越して見せる。
おまけ
マンツーマンに近いフォアプレスを武器に、強豪チームを相手に素晴らしい戦いをみせた23‐24シーズンのガラタサライ。
そのガラタサライに対して見事なフォアプレス対策を実行したのが、グループステージ最終節で対戦したFCコペンハーゲンでした。
こちらのリンクではコペンハーゲン対ガラタサライ 戦の詳細なレビューをしています。もしよろしければご覧下さい。
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