欧州サッカー観戦記 22-23 UEFAチャンピオンズリーグ Quarter Final 注目チームの紹介

欧州サッカー 22-23シーズン 個人表彰 UEFAのコンペティション

終盤を迎えようとしている22-23シーズン。チャンピオンズリーグではベスト8の戦いが間もなく始まります。
ベスト8に勝ち残ったチームの中から投稿主が注目するチームの戦いをレポート。今回は2年連続で準々決勝進出を果たし国内リーグでも首位をひた走るポルトガルの雄、SLベンフィカを取り上げます。
ベンフィカが今シーズンどのように戦ってきたのか、またチャンピオンズリーグの準々決勝を迎えるにあたっての注目ポイント・注目選手を投稿主の視点で紹介します。

Quarter Final 対戦カード

※日付表記は日本時間

【1st leg】

2023年4月12日
SLベンフィカ 対 インテル

2023年4月12日
マンチェスター シティ 対 バイエルン ミュンヘン

2023年4月13日
レアル マドリード 対 チェルシー

2023年4月13日
ACミラン 対 SSCナポリ

【2nd leg】

2023年4月19日
SSCナポリ 対 ACミラン

2023年4月19日
チェルシー 対 レアル マドリード

2023年4月20日
インテル 対 SLベンフィカ

2023年4月20日
バイエルン ミュンヘン 対 マンチェスター シティ

ここからは冒頭でも紹介した通り、SLベンフィカについて取り上げます

SLベンフィカ

今シーズンの戦績

UEFAチャンピオンズリーグ

【予選】

3次予選
対 ミッティラン 2試合合計 7-2(4-1、3-1)

プレーオフ
対 ディナモ キーウ 2試合合計 5-0(2-0、3-0)

【グループステージ】

グループH
4勝 2分 0敗 勝ち点14 得点16 失点7 得失点差9 (1位)

【決勝トーナメント】

Round of 16
対 クラブ ブリュージュ 2試合合計 7-1(2-0、5-1)

ポルトガル プリメイラリーガ

22勝 2分 1敗 勝ち点68 得点66 失点14 得失点差52 (1位) ※第25節終了時

タッサ デ ポルトガル

準々決勝敗退

チームの特徴と見どころ

現状のベストメンバー

監督:ロジャー シュミット

99 オディセアス ブラホディモ (GK)
3 アレハンドロ グリマルド
6 アレクサンダー バー
8 フレデリック アウルスネス
20 ジョアン マリオ
22 シキーニョ
27 ラファ シウバ
30 ニコラス オタメンディ
61 フロレンティーノ ルイス
66 アントニオ シウバ
88 ゴンサロ ラモス

【22-23シーズン スターター変遷】

ポジション 開幕直後 現在 備考
CB モラート アントニオ シウバ
右SB ジウベルト アレクサンダー バー
ボランチ エンゾ フェルナンデス シキーニョ エンゾ フェルナンデス
チェルシーへ移籍
SH ダビドネレス フレデリック アウルスネス
基本システム

局面ごとの戦い方

【攻撃の組み立て】
シーズン序盤は中盤のフロレンティーノとエンゾ フェルナンデスが攻撃の組み立ての中心を担っていたが、W杯後の移籍市場でエンゾ フェルナンデスがチェルシーへ移籍(1月31日)。現在はシキーニョを中心に攻撃を組み立て、状況によってフロレンティーノとアウルスネスがシキーニョをサポートする体制へと移行した。

ビルドアップの初期配置、最終ラインの(66)アントニオ シウバと㉚オタメンディ、中盤の㉒シキーニョがトライアングルを形成しビルドアップの起点となる。
両サイドハーフ(SH)は中央に絞る。左の⑧アウルスネスは敵ライン間でビルドアップからのボールを引き取る為にポジションを下げ、右の⑳ジョアン マリオは敵最終ラインの手前にポジションを取り、トップ下的な役割を担う。⑥アレクサンダーバー、③グリマルドの両サイドバック(SB)は前進してポジションを上げる。

[システム図①-(1)]ビルドアップの初期配置

㉒シキーニョがボールを受ける事で前進局面へ。
シキーニョは左右に幅広く動き、相手チームの前線が2枚で最終ラインに対してプレスをかけて来れば、シキーニョ自ら最終ラインまで下がって最終ラインの数的有利を確保する。
ビルドアップの目的は敵ライン間にポジションを取る(61)フロレンティーノ、⑧アウルスネスにボールを差し込む事。相手チームの中盤へのマークが厳しい時は㉗ラファ シウバがパスを受けに中盤まで下がる。
ライン間の選手がボールを受けて前を向けば(88)ゴンサロ ラモスが敵ディフェンスライン裏のスペースをフリーランニングで突いて攻撃の深さを取り、ラファ シウバがゴンサロ ラモスの動きに連動して崩しのきっかけを作る為に敵ディフェンスラインの手前にポジショニング。⑥アレクサンダーバー、③グリマルドの両SBはオーバーラップしてSHが内に絞った事によって生じたサイドのスペースを突く。
基本的には後方からパスを繋いで前進するが、相手チームが前掛かりでプレスをかけてくる場合は前線のゴンサロ ラモスや敵ディフェンスラインの裏に向けて後方からロングボールを蹴り込む攻撃も織り交ぜる。

[システム図①-(2)]前進局面時の配置と人の動き

【ポジティブトランジション】
ボールを奪った瞬間、チーム全体で相手チームの選手間にポジショニングし素早く攻撃態勢を形成。
下図([システム図②])、各選手が相手チームの選手間に素早くポジションを取りトランジションの攻防で先手を取る。基本的にはポゼッションの確立を目指すが、前方に大きなスペースがある場合や相手チームの守備体勢が大きく崩れている場合は縦に素早くボールを運びカウンターを狙う。

下図はシキーニョがボールを奪った場合。
㉗ラファ シウバが敵ライン間でボールを受けられれる好ポジショニング。相手チームのセンターバックがラファシウバの動きに引っ張られた事でディフェンスラインにギャップが生じる。そのギャップを(88)ゴンサロ ラモスが突き、相手チームの右SBがギャップをケアすれば③グリマルドが左サイドのスペースを突く。

[システム図②]ポジティブトランジションの瞬間、各選手が素早くポジションを取る

【敵陣でのフォアプレス】
相手チームのビルドアップや後方でのパス回しに対して、積極的に前に出てプレスに行く。
下図([システム図③-(1)(2)])は相手チームのビルドアップの場面。ボールを持つ相手センターバック(CB)に対して(88)ゴンサロ ラモスが中盤へのパスコースを切りながらプレス。もう一方のCBを㉗ラファ シウバがみる。
相手チーム左側のCBはパスを受ける為にラファ シウバから距離を取る。

[システム図③-(1)]ゴンサロ ラモスとラファ シウバで相手CBにプレッシャーをかける

左側のCBへパスが通ると(88)ゴンサロ ラモスは内側を切りながら2度追いのプレス。ゴンサロ ラモスの動きによりボールホルダー(左側のCB)の選択肢は左SBへのパスに限定される。
⑳ジョアン マリオが次のパスを予測し相手チーム左SBへ寄せて行き、パスが出されればすぐにプレスに行ける体勢。
更に㉗ラファ シウバはその先の、プレスを受けた左SBが中央に折り返したパスをカットする為のポジションを取る。

[システム図③-(2)]右サイドへボールを誘導し、次の展開を予測したポジションを取る

【ブロック守備】
素早く前に出てプレスに行く事が相手ボール時の基本方針だが、プレスを外されたりすぐにプレスに行けない場合は迷わずリトリートしてブロック守備に切り替える。㉚オタメンディを中心とした強固なブロックを形成する。
チャンピオンズリーグのグループステージ、パリSG戦ではこのブロック守備が機能。強力な攻撃陣を擁するパリSG相手にもベンフィカのブロック守備は十分に通用した。

[システム図④]自陣にブロックを敷いた際の陣形

準々決勝での注目ポイント・注目選手

注目ポイント①:アタッキングサードでの崩しからフィニッシュ
注目選手:ラファ シウバ、ゴンサロ ラモス

右サイド、左サイド、中央とあらゆるエリアから多彩な攻撃を仕掛ける今シーズンのベンフィカ。そんなベンフィカのサッカーを観戦するにあたって、私自身が思う最も注目すべきポイント、攻撃面に関してはフィニッシュとそこへ至る最後の崩しではないでしょうか。
崩しの局面で最も威力を発揮する選手はトップ下のラファ シウバ。ペナルティエリア内でボールを受ければ、襲い来る相手ディフェンダーを高い技術力で翻弄、次々と剥がして相手の守備ブロックを崩壊へと導きます。

フィニッシュを担当するのはセンターフォワードのゴンサロ ラモス。味方選手がサイドや中央からゴール前にクロスやラストパスを出す直前のポジショニングが秀逸。マッチアップする相手ディフェンダーの背後を取り、そこからクロスやラストパスに向かって動き直すオフザボールの動きは正に点取り屋。
ボールを持つベンフィカの選手がアタッキングサードへ侵入した際には、ぜひともゴンサロ ラモスのクロスやラストパスを受ける為のオフザボールでの相手ディフェンダーとの駆け引きや動き方に注目してみて下さい。
因みに私自身は今シーズン、ゴンサロ ラモスのベストパフォーマンスを問われれば国内リーグの大一番、(日本時間)1月16日に行われたスポルティングCPとのリスボンダービーを推します(ハットトリックを達成したW杯 スイス戦を私は見逃してしまいました)。
この試合、ゴンサロ ラモスはゴール前での相手ディフェンダーとのポジション争いをことごとく制し、一試合を通じて常に優位なポジションを取った上で2ゴールを挙げる大活躍(試合は2-2の引分け)。「ゴンサロ ラモスの周囲からはゴールの匂いしかしない」正にそのような状態でした。

ラファ シウバゴンサロ ラモス。

ベンフィカがチャンピオンズリーグで昨シーズン以上の成果を挙げる為にも、この2人の活躍は必須。

ベンフィカの試合を観戦する際には、この2人に注目ですね。

注目ポイント②:リトリートからのブロック守備
注目選手:ニコラスオ タメンディ、アントニオ シウバ

ベンフィカを率いるロジャー シュミット監督。私が思う彼のサッカーの特徴は相手ボールになった瞬間、チーム全体が凄まじい勢いで前に出て相手チームに襲い掛かるプレスにあると思います。
今シーズンのベンフィカ、勿論前に出るプレスも素晴らしいのですが、それにプラスしてリトリートして自陣ゴール前にブロックを敷く守備も素晴らしいものがあります。
プレスを外されたりプレスがかからない場合、前に出るプレスに固執せず素早い切り替えから自陣方向に戻りゴール前に強固な守備ブロックを形成。この守備ブロックの中心になるのがCBのニコラス オタメンディ。例え相手チームに自陣へ押し込まれてもゴール前の危険なスペースを埋め、ゴール前に侵入してきた相手チームのアタッカーを的確なマークで封じ込めます。

そしてもう1人のCB、アントニオ シウバ。彼の働きもチームにとって非常に重要です。
アントニオ シウバの特徴は機動力を生かしたカバーリング能力の高さ。相手チームがサイドやディフェンスライン裏にボールを送り込んできても、素早い動き出しでパスの受け手がボールに触る前にカットします。
また、前に出る守備でもアントニオ シウバの機動力は威力を発揮します。相手チームがライン間にパスを差し込んで来れば、素早く前に出てパスの受け手を潰します。

今後の戦いに於いて、ベンフィカには苦しい時間帯が増える事が予想され、チームには粘り強く戦う事が求められます。

ベンフィカにとってブロック守備が機能するかどうかは、チームにとっての苦しい時間帯を凌ぎ切れるかどうかのカギになるのではないでしょうか。

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