昨シーズンのセリエAを制し、チャンピオンズリーグでもベスト8進出と躍進を遂げたナポリ
ベリンガムが加入し新たなチームへと生まれ変わろうとしているレアル マドリード
グループCの首位を争うであろうチーム同士の対戦は、お互いに持てる力を十分に発揮する熱戦となった
本レビューは、あくまで投稿主個人の考えや感想を記事にしたものです
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23-24 UEFA CL グループC 第2節 結果
2023年10月4日
ウニオン ベルリン 2-3 SCブラガ
SSCナポリ 2-3 レアル マドリード
【グループ順位】
順位 | クラブ | 試合数 | 勝点 | 得失点差 | 備考 |
1 | レアル マドリード | 2 | 6 | 2 | |
2 | SSCナポリ | 2 | 3 | 0 | |
3 | SCブラガ | 2 | 3 | 0 | |
4 | ウニオ ンベルリン | 2 | 0 | -2 |
SSCナポリ 対 レアル マドリード
2023年10月4日 UEFAチャンピオンズリーグ グループステージ 第2節
SSCナポリ 2-3 レアル マドリード
メンバー
SSCナポリ
監督 ルディ ガルシア
【スタメン】
1 | アレックス メレト (GK) |
3 | ナタン |
9 | ビクター オシムヘン |
17 | マティアス オリベラ |
20 | ピオトル ジエリンスキ |
21 | マッテオ ポリターノ |
22 | ジオバンニ ディロレンツォ |
55 | レオ エスティゴール |
68 | スタニスラフ ロボツカ |
77 | クビツァ クバラツヘリア |
99 | アンドレ ザンボアンギザ |
【交代】
7 | エリフ エルマス (70分In) |
➡ポリターノ Out | |
81 | ジャコモ ラスパドーリ (75分In) |
➡ジエリンスキ Out | |
6 | マリオ ルイ (88分In) |
➡マティアス オリベラ Out | |
18 | ジオバンニ シメオネ (88分In) |
➡ザンボアンギザ Out | |
24 | イエンス カユステ (88分In) |
➡ロボツカ Out |
レアル マドリード
監督 カルロ アンチェロッティ
【スタメン】
25 | ケパ アリサバラガ (GK) |
2 | ダニエル カルバハル |
5 | ジュード ベリンガム |
6 | ナチョ フェルナンデス |
7 | ビニシウス ジュニオール |
8 | トニ クロース |
11 | ロドリゴ |
12 | エドゥアルド カマビンガ |
15 | フェデリコ バルベルデ |
18 | オウレリアン チュアメニ |
22 | アントニオ ルディガー |
【交代】
10 | ルカ モドリッチ (64分In) |
➡クロース Out | |
23 | フェルラン メンディ (64分In) |
➡カマビンガ Out | |
14 | ホセル (75分In) |
➡ロドリゴ Out | |
19 | ダニ セバージョス (84分In) |
➡ビニシウス Out |
基本システム
左:ナポリ(青) 右:レアル(黒)
[システム図①]
試合開始時
[システム図②]
64分・レアル ⑩モドリッチ、㉓フェルラン メンディ投入(システム変更)
70分・ナポリ ⑦エルマス投入
[システム図③]
75分・ナポリ (81)ラスパドーリ投入
75分・レアル ⑭ホセル投入
[システム図④]
84分・レアル ⑲ダニ セバージョス投入
88分・ナポリ ⑥マリオ ルイ、⑱ジオバンニ シメオネ、㉔カユステ投入(システム変更)
局面ごとの方針
SSCナポリ
【ポジティブトランジション】
守備時にディフェンスラインが押し上げられている時はボールホルダー周辺の選手がボールホルダーに対して素早くパスコースを作り攻撃を展開する。
守備時にディフェンスラインが下がっている時はボールホルダーへのサポートが薄くなるので、早いタイミングでクバラツヘリアやオシムヘンにボールを入れて個人の力で攻めるパターンが増える。
【攻撃】
ビルドアップは、エスティゴールとナタンの2センターバック(CB)が最終ラインに立ち、ザンボアンギザとロボツカが中盤の底に入る。この4人による2-2の並びが起点となり、ロボツカを中心にボールを動かす。ディロレンツォ、マティアス オリベラの両サイドバック(SB)は前に出る。
中盤のジエリンスキは敵ライン間にポジショニングしてビルドアップの出口になる。
[システム図⑤]ナポリ、後方から攻撃を組み立てる際の初期陣形
最終ライン(55)エスティゴールと③ナタン、中盤の底(99)ザンボアンギザと(68)ロボツカの4人がビルドアップの起点となる。㉒ディロレンツォと⑰マティアス オリベラの両SBは高いポジションを取り㉑ポリターノと(77)クバラツヘリアをサポート。
⑳ジエリンスキは敵ライン間にポジショニングしビルドアップの出口になる。
敵ライン間への縦パスが通れば、周囲の選手が素早くサポート。縦パスの受け手はサポートに来た選手へ少ないタッチでボールを叩き、3人目の選手が次の展開へと動き出すという形で前進。フリーランニングでレアルのディフェンスライン裏を突くオシムヘンやサイドから仕掛けるポリターノ、クバラツヘリアへへボールを供給する。
敵陣の左サイドでクバラツヘリアがボールを持つとレアルはクバラツヘリアに対してダブルチームに来る。左SBのマティアスオリベラはその状況を利用。クバラツヘリアの脇を通り抜ける形で追い抜き、ダブルチームによって生じたスペースを突く。
右SBのディロレンツォはポリターノを後方でサポートしつつ、ポリターノが仕掛けて事によって生じるスペースへ侵入して崩しのきっかけを作る。
時間帯によってはサイドから早いタイミングでオシムヘンをターゲットにしてゴール前にクロスを上げ、オシムヘンをレアルのCBと競らすパターンを多用する。
88分、ナポリは3枚替えの選手交代。それに伴いシステムも変更。中盤のカユステ、ラスパドーリが攻撃の起点となりボールを前方へ運ぶ。中央のバイタルエリアにはエルマスがポジションを取り、クバラツヘリアは左サイドに張る。エルマスとクバラツヘリアが各々のポジションから仕掛けて行く。
後半のアディショナルタイムにはCBのエスティゴールを前線に上げてパワープレーを行う。
[システム図⑥-(1)]ナポリ、攻撃の組み立て(50分頃の攻撃 その1)
オフザボールの動きによりレアルの守備ブロックを押し下げる事で、ジエリンスキはプレッシャーが弱まった状態でボールを受けられる
⑳ジエリンスキはレアルの中盤のライン(⑮バルベルデ、⑱チュアメニ、⑧クロース、⑤ベリンガム)より前でボールを受けようとするがパスを貰う事が出来ず、一旦レアルの中盤のラインより後方に下がる。
その時、左サイドの⑰マティアス オリベラは後方から上がって行きレアルの中盤のラインよりも前に出る。また(77)クバラツヘリアへパスを出した(99)ザンボアンギザもパスアンドムーブでレアルの中盤のラインよりも前に出る。
マティアス オリベラとザンボアンギザのフリーランニングによりレアルの中盤のラインは押し下げられ、ジエリンスキへのプレレッシャーが弱まる。
[システム図⑥-(2)]ナポリ、攻撃の組み立て(50分頃の攻撃 その2)
前を向いたジエリンスキがレアルの中盤のラインをブレイク
自身へのプレッシャーが弱まった⑳ジエリンスキは、(77)クバラツヘリアからのパスを余裕を持って受けるとレアルの中盤のラインに向かってドリブルを開始。(99)ザンボアンギザが⑱チュアメニのマークを引きつけ、クバラツヘリアはパスアンドムーブでレアルの中盤のラインに生じたギャップに向かって斜めに走り込む事で⑧クロースの意識を後方へと向ける。
するとジエリンスキの目の前にはラインブレイクへの道筋が現れ、ドリブルで一気にレアルの中盤のラインをブレイクする。
この図の後、ジエリンスキは前線のオシムヘンへスルーパス。オシムヘンがゴール前へ折り返したボールがナチョフェルナンデスの手に当たりPKの判定(VAR介入)となる。
【守備】
レアルのビルドアップに対してはアタッキングサードからプレスに行く(マッチアップは[システム図⑦]参照)。
レアルが前進して来ればリトリートして4-1-4-1の陣形を敷きマークを掴む。
レアルの前進が滞る、又はレアルがボールを下げればジエリンスキがトップに上がり、オシムヘンとツートップを組み2人でボールホルダーに対してチェイシングをかける。2列目から後ろは4-4の2ラインを組み、ツートップに連動して前に出る。
[システム図⑦]レアルのビルドアップに対してフォアプレスをかける際のマッチアップ
⑳オシムヘンと⑨ジエリンスキでレアルの2CBをみる。そのうちジエリンスキはCBをみつつ、⑱チュアメニへのパスコースを消す。
㉑ポリターノと(77)クバラツヘリアはレアルの両SBを、(99)ザンボアンギザは⑧クロースをマークする。
レアル マドリード
【ポジティブトランジション】
ロドリゴ、ビニシウスのツートップはナポリの最終ラインに向かって走り出し、ベリンガムは敵ライン間でパスを受けられるようポジションを取る。ロドリゴ、ビニシウス、ベリンガムの前3人にボールが入れば積極的に縦に仕掛けて行きバルベルデが前3人をサポート。
前3人にボールが入らなければ、中盤や最終ラインでボールを繋ぎポゼッションの確立を目指す。
【攻撃】
ビルドアップ時の選手配置は下図の[システム図⑧]を参照。
チュアメニとクロースを中心にパスを回して、敵ライン間にポジションを取るベリンガムにボールを送る。ベリンガムにボールが入れば攻撃のスイッチが入り、ロドリゴとビニシウスのツートップはナポリのディフェンスラインや更にその先にあるディフェンスライン裏のスペースに向けて走り込み、そこへバルベルデがサポートに来る。また、攻撃の初期段階から縦方向に走り込むツートップに後方から直接ボールを入れる事もあった。
[システム図⑧]レアル、ビルドアップ時の選手配置
最終ラインは㉒ルディガーと⑥ナチョ フェルナンデス、中盤の底に⑱チュアメニと⑧クロース、左SBの⑫カマビンガは内に絞って中盤に入る。この5人がビルドアップの中心。
ナポリがフォアプレスでプレスを嵌めて来れば、チュアメニかクロースのどちらか1人がCB脇に下がり最終ラインの人数を確保する([システム図⑧]ではクロースが下がっているパターンを表示)。
②カルバハルと⑮バルベルデはボールの前進に備え、攻撃の初期段階から前に出る。カルバハルは攻撃の幅を取りバルベルデはアタッカー陣のサポートをする。
64分、モドリッチ投入に伴いシステムも変更。
前進局面でのパス回しの中心をベリンガム1枚から、モドリッチとベリンガムの2枚がシェアする形に。バルベルデは中盤で内に絞ったポジションを取る。
前線ではロドリゴとビニシウスが流動的に動くが、75分にホセルが投入されるとホセルが前線の基準点になる。
【ネガティブトランジション】
ボールホルダー周囲の選手はボールホルダーに対してプレッシャーをかけるが、ファーストプレスを外さた時は素早くリトリートして4-4-2のブロックを敷く。
【守備】
基本陣形はベリンガムが中盤ラインの左サイドに入る4-4-2。
ナポリのビルドアップに対しては、ナポリ陣内からプレスに行く。基本のマッチアップはロドリゴとビニシウスのツートップはナポリの2CBをみて、バルベルデはマティアスオリベラを、ベリンガムはディロレンツォを各々マークする。中盤のセンターに入るチュアメニとクロースはナポリの中盤、ロボツカとザンボアンギザをマークする。
ナポリにフォアプレスをかわされた時はすぐにリトリートして4-4-2のブロックを敷く。
クバラツヘリアに対してはカルバハルがマッチアップし、クバラツヘリアがボールを持てばバルベルデかチュアメニのどちらかがサポートに来てダブルチーム気味に守る。
ディフェンシブサードでの守備では、オシムヘンに対しては主にルディガーがマッチアップし、ナチョ フェルナンデスがカバーリングに入る。
[システム図⑨]レアル、守備時の基本陣形
⑪ロドリゴ、⑦ビニシウスがツートップとして守備ブロックの先頭に立ち、後方は4-4のブロックを敷く。
トップ下の⑤ベリンガムは中盤の左サイドに入る。
得点
【19分・ナポリ】得点者:レオ エスティゴール(1-0)
セットプレーからエスティゴールが執念のヘディングシュートで、ナポリが先制点を挙げる
左サイドでのコーナーキック(CK)。
クバラツヘリアが右足でインスイングのボールをゴール前へ送る。このボールにゴールキーパー(GK)のケパ アリサバラガは前に出てパンチングに行くも、ボールには届かず。
その先にいたナタンが肩でボールを押し込むが、ボールはクロスバーを直撃。跳ね返って来たボールをエスティゴールがヘディングで押し込み、ナポリが先制ゴールを挙げる。
【27分・レアル】得点者:ビニシウス ジュニオール(1-1)
ベリンガム、敵陣でのパスカットからビニシウスのゴールを演出
自陣後方でパスを繋ぐナポリ。ポリターノからバックパスを受けた右SBディロレンツォはロボツカへ横パス。
このパスに対してベリンガムが見事に狙いを定めてパスカットし、そのまま前進。ペナルティエリア内へ侵入する。
ベリンガムは自身の左側へ走り込むビニシウスへスルーパスを送る。スルーパスを受けたビニシウス、やや角度のない位置ではあったものの冷静にGKメレトの足元を抜いてファーサイドへ流し込むシュートを放ちゴール。
ベリンガムにパスをカットされたディロレンツォについて
放送席解説(WOWOW)の風間八宏氏は
「まさか(ベリンガムの足が)届くとは思っていなかったのではないか」
と説明していた。
【34分・レアル】得点者:ジュード ベリンガム(1-2)
ベリンガム、たった1人でナポリの守備ブロックを崩壊に追い込む凄まじいドリブルからのゴール
レアル、自陣でのパス回し。左サイドでナチョフェルナンデスからのパスを受けたクロースは、ハーフウェイライン付近の左タッチライン際にポジションを取るチュアメニにパス。
パスを受け中央方向を向くチュアメニ。そこへナポリ中盤のラインに生じたスペースにポジションを取ったベリンガムがチュアメニにパスを要求すると、チュアメニはベリンガムへパス。
パスを受けたと同時に前を向いたベリンガムはドリブルで一気に前進。ペナルティエリア内へ侵入すると、ディフェンスに来たエスティゴールをかわして右足でシュートを放ちゴール。
[システム図⑩]ゴール直前、ベリンガムのパスを受けてからドリブルでの前進
ナポリの中盤のラインを引っ張り、同時にディフェンスラインを押し込むベリンガム
(99)ザンボアンギザが⑱チュアメニのマークについていた事でナポリの中盤ラインには大きなスペースが生じる。⑤ベリンガムはそのスペースへ侵入、チュアメニからのパスを受けると同時に前を向きドルブルを開始する。
ベリンガムに対してザンボアンギザと(68)ロボツカが対応するもベリンガムが一歩先を行く事でナポリの中盤ライン全体を引っ張る。
更にやや左に流れながらナポリのディフェンスラインの間に向かってドリブルする事で、ナポリのディフェンスライン全体を押し込んで行く。
この図の後、ペナルティエリア内への侵入を果たしたベリンガムはディフェンスに来たエスティゴールをかわして右足でシュートを決める。
【54分・ナポリ】得点者:ピオトル ジエリンスキ(PK)(2-2)
VAR介入によって得たPKをジエリンスキが決めてナポリが同点に追いつく
ナポリ、フィールド左側での攻撃を組み立とジエリンスキの巧みなドリブルでレアルの守備ブロック内に侵入し前進(詳細は[システム図⑥-(1)(2)]参照)。ペナルティエリア内ではオシムヘンが斜めのランニングでレアルのディフェンスライン裏に抜け出すと、ジエリンスキはオシムヘンにスルーパス。
パスを受けたオシムヘンはゴール前に折り返しのボールを入れようとするが、マッチアップしていたナチョ フェルナンデスがスライディングで折り返しをブロックする。
ナチョ フェルナンデスのスライディングによるブロックに対してVARが介入。ナチョ フェルナンデスがブロックした際にボールが手に当たったとしてナポリにPKが与えられる。
このPK、キッカーのジエリンスキがゴール左に強いボールを蹴り込むとボールはポストの当たってゴールへ。
ナポリが同点に追いつく。
【78分・レアル】オウンゴール(アレックス メレト)(2-3)
バルベルデ、凄まじいい威力のミドルシュートでレアルが再度勝ち越し
レアルは右からのCK。モドリッチがゴール前に蹴ったボールをナポリはエスティゴールがヘディングでクリアする。
このクリアボールを左ハーフスペース、ゴールから約30m弱の位置でボールを拾ったバルベルデは思いっきり右足を振り抜き豪快なミドルシュートを放つ。ボールは凄まじい速さでナポリゴールを向かいクロスバーを直撃、跳ね返ったボールがGKのメレトに当たりボールはゴールへと吸い込まれる。
試合の感想・ポイント
前半
前半は点の取り合い、ナポリが先制点を挙げるもベリンガムの活躍でレアルが逆転に成功する
試合開始直後からお互いにボールを持てば攻め合う流れのなか、ナポリはポジティブトランジション、ビルドアップからの攻撃ともにボールホルダー周囲の選手がボールホルダーへ素早くサポートに入る事で良い攻撃を展開。ナポリが試合の流れを引き寄せると、19分にCKからエスティゴールが先制点を挙げる。
劣勢のレアルだが、20分台に入り敵ライン間にポジションを取るベリンガムにボールが入るようになると徐々に試合のペースを盛り返しナポリを押し込んで行く。
解説の風間八宏氏は
「ベリンガムに良い形でボールが入るようになった事でロドリゴとビニシウスのツートップが前向きにアタックできるようになった。その事によりナポリの守備陣が後ろ残りになり最終ラインを押し上げられなくなった。」
と説明していた。
実際にナポリは20分台に入って以降、ボール保持時のボールホルダーへのサポートが薄くなる。一方のレアルはベリンガム、ロドリゴ、ビニシウスの3枚が前を向いて迫力のある攻撃を展開。試合のペースを奪い取ったレアルはベリンガムの活躍により27分と34分にゴールを挙げ逆転に成功。
レアルが1点のリードで前半を終える。
20分台に入り、レアルはベリンガムにいい形でボールが入るようになったが、その効果の1つととしてナポリのビニシウスに対するディフェンスの変化が挙げられる。
立ち上がり、ナポリの最終ラインの押し上げが効いている時間帯ではビニシウスがボールを持つとディロレンツォやザンボアンギザがビニシウスに対して前向きにプレッシャーをかけていた。ビニシウスに簡単には仕掛けさせず、ボールを奪い取る場面もみられた。
それがベリンガムにいい形でボールが入り出し、ナポリの最終ラインの押し上げが効かなくなるとビニシウスに対して下がりながらの守備対応を強いられるようになる。そうなるとビニシウスは容易に前進し、ナポリゴール前へと侵入するようになる。
後半
後半も競った内容となるが、選手層の厚さと戦術面での幅で上回るレアルが勝利を挙げる
後半ナポリは守備時に再び最終ラインをリスク覚悟で押し上げる。それにより前半の立ち上がり20分頃までにみせていたボール保持時のボールホルダーに対する厚いサポートが蘇る。またサイドから早いタイミングでオシムヘンをターゲットにクロスを入れる攻撃も度々みせる。
そして50分、ナポリはポゼッションオフェンスでレアルの守備ブロックを押し込みペナルティエリア内へ侵入すると、VAR介入によりPKを獲得する。このPKを54分にジエリンスキが決めて、ナポリは同点に追いつく。
その後暫くはナポリがポゼッションを握りレアル陣内へと攻め込み、レアルがボールを奪えばベリンガム、ロドリゴ、ビニシウスの3人で反撃するという展開が続く。
64分、レアルはモドリッチを投入し、システムも変更。更に75分にはホセルを投入して前線に基準点を設ける。
この一連の流れについて解説の風間八宏氏は
「攻撃の起点をベリンガム1カ所からモドリッチを入れて2カ所にする事で攻撃の流れを作り直す。それが功を奏するとホセルを入れて仕留めに来た。」
と説明していた。
そしてホセル投入直後の78分、レアルはバルベルデの凄まじいミドルシュートが決まり(記録上はGKメレトのオウンゴール)再度勝ち越す。
リードを奪われたナポリ。しかし最後まで諦めずに攻め続ける。アディショナルタイムにはエスティゴールを前線に上げてパワープレーを敢行。対するレアル守備陣はナポリの攻撃を跳ね返し続け試合は2対3で終了。
両チームともに持てる力を発揮して攻め合った好ゲームは、アウェイのレアルが制する事となった。
試合はアウェイチームのレアルが勝利した。しかし試合終了直後、スタジアムは大きな拍手に包まれた。敗れたナポリ側のサポーターも納得できていると感じた。
観客達の反応が、この試合が如何にエキサイティングだったかを物語っていたのではないだろうか。
選手寸評
SSCナポリ
ビクター オシムヘン | ゴールを奪う事は出来なかったが、クロスが上がった際の空中戦やレアルのデュフェンスライン裏を狙う動きは迫力十分。試合を通じてレアルゴールを脅かし続けた。 |
クビツァ クバラツヘリア | レアルの厳しいマークに遭いながらも、その守備を突破してフィニッシュまで持ち込み「あわや」という場面を作る。やはり彼の攻撃力は絶大だった。 |
ピオトル ジエリンスキ | 前半は鳴りを潜めていたが、後半は敵ライン間から前線へボールを送り崩しのきっかけを作る。50分のPK獲得時の攻撃も彼が重要な役割を担っていた。 |
マティアス オリベラ | レアル守備陣がクバラツヘリアへダブルチームに行く事によって生じるスペースを突いて攻撃参加。左サイドの深いポジションを度々取っていた。 |
ジオバンニ ディロレンツォ | 右サイドでバランスを取りつつポリターノをサポート。守備でもビニシウスと対峙するなど、攻守で重要な役割を担う。 |
レアル マドリード
ジュード ベリンガム | オフザボールでの的確な動きから始まり、ボールを受ければ敵の急所を突くドリブル、ツートップを活かすパスと全てがハイレベル。前半の2つのゴールに繋がる動きはどちらも素晴らしかった。 |
ルカ モドリッチ | 後半、試合の流れをナポリに持って行かれそうだった状況も、彼の登場より一変。攻撃の流れを取り戻し、それが78分の決勝ゴールに繋がった。 |
フェデリコ バルベルデ | 78分に決めた決勝点となるミドルシュートは凄まじい威力だった。記録上はオウンゴールとなったが熱戦となった試合の決勝点に相応しいものだった。 |
ビニシウス ジュニオール | 戦術上の問題で、彼の最も得意とするポジションよりもやや内側でにポジショニングする事が多かった。それでもナポリのディフェンスラインに向かって積極的に仕掛けて行き、1ゴールを記録した。 |
ナチョ フェルナンデス | 主に最終ラインのカバーリングを行うタスクを担い、状況によってはオシムヘンとマッチアップ。どちらの役割もそつ無くこなし、非常に安定した働きをみせた。 |
投稿主選出の man of the match
フェデリコ バルベルデ
以上、SSCナポリ 対 レアル マドリード 戦のマッチレビューでした。
本レビューは、あくまで投稿主個人の考えや感想を記事にしたものです。
本レビューに対して、ご意見やご感想があれば下のコメント欄よりコメントを頂ければ幸いです。
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