2023シーズンのJ1リーグ、優勝を争う大一番
勝ち点55で首位に立つヴィッセル神戸、そのヴィッセルを1ポイント差で追う2位横浜F・マリノス
初優勝か連覇か、正に運命をかけた天王山ともいえる一戦の模様をレビューします
本レビューは、あくまで投稿主個人の考えや感想を記事にしたものです
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28節終了時点での成績
【横浜F・マリノス】
16勝 6分 6敗 得失点差 +18 勝点 54 2位
【ヴィッセル神戸】
16勝 7分 5敗 得失点差 +24 勝点 55 1位
横浜F・マリノス 対 ヴィッセル神戸
2023年9月29日 J1リーグ第29節
横浜F・マリノス 0-2 ヴィッセル神戸
メンバー
横浜F・マリノス
監督 ケヴィン マスカット
【スタメン】
1 | 一森 純 (GK) |
2 | 永戸 勝也 |
5 | エドゥアルド |
6 | 渡辺 皓太 |
7 | エウベル |
11 | アンデルソン ロペス |
20 | ヤン マテウス |
27 | 松原 健 |
28 | 山根 陸 |
30 | 西村 拓真 |
33 | 角田 涼太朗 |
【交代】
29 | ナム テヒ (68分In) |
➡西村 拓真 Out | |
23 | 宮市 亮 (74分In) |
➡エウベル Out | |
25 | 吉尾 海夏 (74分In) |
➡永戸 勝也 Out | |
18 | 水沼 宏太 (81分In) |
➡渡辺 皓太 Out |
ヴィッセル神戸
監督 吉田 孝行
【スタメン】
1 | 前川 黛也 (GK) |
2 | 飯野 七聖 |
5 | 山口 蛍 |
10 | 大迫 勇也 |
11 | 武藤 嘉紀 |
15 | 本多 勇喜 |
19 | 初瀬 亮 |
22 | 佐々木 大樹 |
23 | 山川 哲史 |
24 | 酒井 高徳 |
33 | 扇原 貴宏 |
【交代】
26 | ジェアン パトリッキ (68分In) |
➡大迫 勇也 Out | |
3 | マテウス トゥーレル (70分In) |
➡初瀬 亮 Out(脳震盪) | |
20 | 新井 瑞希 (78分In) |
➡佐々木 大樹 Out | |
6 | バーリントン ヴェーチェイ (89分In) |
➡扇原 貴宏 Out |
基本システム
左:F・マリノス(青) 右:ヴィッセル(白)
[システム図①]
試合開始時
[システム図②]
68分・マリノス ㉙ナム テヒ投入
68分・ヴィッセル ㉖ジェアン パトリッキ投入(ポジション修正)
70分・ヴィッセル ③マテウス トゥーレル投入(⑲初瀬 亮 脳震盪)
[システム図③]
74分・マリノス ㉓宮市 亮、㉕吉尾 海夏 投入
78分・ヴィッセル ⑳新井 瑞希 投入
[システム図④]
81分・マリノス ⑱水沼 宏太 投入(システム変更)
[システム図⑤]
87分・ヴィッセル ⑥バーリントン ヴェーチェイ投入(システム変更)
局面ごとの方針
横浜F・マリノス
【ポジティブトランジション】
ヤンマテウス、アンデルソンロペス、エウベルの前線3枚は素早く縦方向に動き出し前方のスペースを積極的に突き、ボールホルダーは素早くボールを前方に送る。
ゴールキーパー(GK)がボールをセーブした直後、積極的にカウンターアタックを狙う。前線の選手は素早く前方に動き出し、GK一森はセーブ後間髪入れずにボールをフィードする姿勢をみせる。
【攻撃】
ビルドアップはエドゥアルドと角田の両センターバック(CB)と、山根と渡辺のダブルボランチが2-2に並んでパスを回し両SBはサイドを上がる。2CHにボールが入れば前線3トップはフリーランニングで積極的に前方のスペースを突く。前線の選手のポジショニング、右のヤン マテウスは中央やフィールド左側まで流れるなど左右に幅広く動き、エウベルはサイドに張る事が多かった。
前線の選手が動いた事によってヴィッセルのディフェンスラインに生じたスペースやギャップに2列目から後ろの選手が入って来る。
2CHにボールが入れられない時は後方から前方にロングボールを送り、ヴィッセルの敷くハイライン裏のスペースを直接攻める。
【守備】
ヴィッセルのビルドアップに対してはヴィッセル陣内からマークを掴みフォアプレスに行く。
試合開始直後はヤン マテウスとエウベルの両サイドハーフが外を切りながらヴィッセルの2CBに寄せて行き、アンデルソン ロペスと西村がヴィッセルの中盤へのパスコースを切るポジション取るという形のフォアプレスを行っていたが、時間の経過とともにフォアプレス時のマッチアップが変化。アンデルソン ロペスと西村はヴィッセルの2CBを、ヤン マテウスとエウベルはヴィッセルのサイドバック(SB)を、山根と渡辺はヴィッセルの中盤、扇原と山口を各々マークする。
ミドルサードから後方での守備は4-4-2の陣形を組み、そこからマークを掴む。
ヴィッセル神戸
【ネガティブトランジション】
ボールホルダーに対して周囲の選手がすぐに寄せて行き、カウンタープレスに行く。
【守備】
マリノスのビルドアップに対してアタッキングサードからプレスに行く(フォアプレスの詳細は[システム図⑥参照])。
マリノスが前進して来れば、リトリートして大迫、佐々木が2トップとなる4-4-2のブロックを敷き守備の初期段階で渡辺と山根のダブルボランチを消す(ダブルボランチの消し方については[システム図⑦]参照)。
マリノスがボールをサイドに展開すればボールサイドに陣形をスライドしてマークを掴み、ボールホルダーに対してプレッシャーをかける。
自陣のディフェンシブサード付近まで下がれば、2トップと中盤の4枚は人を掴む形でマリノスの選手をマークするが、最終ラインの4枚はフラットなラインを敷き中央にラインを絞ってスペースを埋める。
68分以降、守備の基本方針は4-4-2のブロック守備。武藤、佐々木(78分以降はジェア ンパトリッキ)の2トップはボールホルダーに対してチェイシングに行き、2列目以降は4-4のブロックを敷いてスペースを埋める。
87分以降の守備、マリノス陣内では5-2-3の陣形を敷き武藤を中心とした前線3枚がボールホルダーに対して寄せて行く。自陣では5-4-1のブロックを敷きスペースを埋める。
[システム図⑥]マリノスのビルドアップに対するフォアプレス
⑩大迫と㉒佐々木がマリノスの2CBをみる。先にCBに対してプレスに行くのは大迫で、佐々木は背中でマリノスの中盤へのパスコースを消しながらCBへ寄せて行き、⑤山口もマリノスの中盤をマークする。
②飯野と⑪武藤はSBへのパスコースを切りながらCBへ寄せて行く。
[システム図⑦]マリノスが前進してきた時のフォワードと中盤の守備
マリノスのダブルボランチ(⑥渡辺、㉘山根)を消す守備
マリノスが前進して来れば後退し4-4-2の守備ブロックを敷く。
⑩大迫と㉒佐々木はマリノスの2CBをみつつ背中でボランチへのパスコースを消し、2列目4枚(右から②飯野、⑤山口、㉝扇原、⑪武藤)は下図のようにマークを掴む。
ダブルボランチに対しては下図の点線内のように4人で対応。極力ボールを入れさせず、ボールが入っても前を向かせないようにする。
【ポジティブトランジション】
素早く前線の選手にボールをつける。前線のターゲットになる選手は大迫が最優先。
【攻撃】
マイボールになれば早いタイミングでボールを前線につける。前線のターゲットになる選手は大迫が最優先。
前線の選手がボールを受ければサポートに来る初瀬、扇原、山口らにボールを落とし、そこから前方へと攻撃を展開する。またサイドで飯野や武藤がボールを受ければ直接マリノスのディフェンスラインに対して仕掛ける場面もみられた。
右サイドの酒井と中盤前めのポジションを取る佐々木は前線まで上がって行き攻撃参加。酒井はサイドを縦に上がって行き飯野をサポート。佐々木はマリノスのディフェンスラインに生じたスペースやギャップを突く。
68分以降、前線にボールをつける時は武藤が最優先になる。
得点
【23分・ヴィッセル】得点者:大迫 勇也(PK) (0-1)
武藤が獲得したPKを大迫が決める
ヴィッセル、コーナーキック(CK)のクリアボールを拾った右SBの酒井はゴール前にハイボールを放り込むがマリノスは再度クリア。クリアボールを拾った本多は酒井にボールを渡すと酒井はもう一度ゴール前にボールを入れる。
酒井がゴール前に入れたボールを大迫が角田と競り合いながらもヘディングで武藤へと落とすと、武藤はそのボールをボレーでシュートに行くがエドゥアルドがシュートブロック。その際エドゥアルドの足裏が武藤の蹴り足と接触。
このプレーに対してVARの介入がありエドゥアルドのシュートブロックがファールと判定されヴィッセルにPKが与えられる。
このPKを大迫がゴール右側に蹴り込みゴール。ヴィッセルが先制点を挙げる。
【42分・ヴィッセル】得点者:武藤 嘉紀(0-2)
スクリーンを使ってフリーになった武藤がヘディングで追加点
右サイドのCK。初瀬が左足でインスイングのボールをゴール前に入れる。
ファーサイドからゴール前中央に走り込んで来た武藤がスクリーンを使って渡辺のマークを外し一瞬フリーになると、初瀬のクロスをヘディングでマリノスゴールに叩き込み追加点を挙げる。
[システム図⑧]スクリーンを使ってフリーになる武藤
右サイドのCK、ファーサイドにポジションを取る⑪武藤にマリノスは⑥渡辺がマーク。
⑲初瀬がボールを蹴ると中央に向かって走り込む武藤。その際⑩大迫、⑮本多のすぐ横を走り抜ける。渡辺にとっては大迫と本多がスクリーン(壁)となり武藤のマークを離してしまう。
この図の直後、一瞬フリーになった武藤は初瀬からのボールをヘディングで合わせ追加点となるゴールを奪う。
試合の感想・ポイント
前半
ヴィッセル好守備で試合の主導権を握り、セットプレーからのゴールでリードを奪う
ヴィッセルはマリノスのダブルボランチ(山根、渡辺)を消す守備([システム図⑦]参照)が機能する。これによりマリノスは後方からパスを繋いで敵ライン間に侵入するパターンの攻撃が封じられ、後方から直接前線のスペースにロングボールを送る攻撃を多用する事になる。
試合はお互いにロングボールを多用する展開になる。マリノスはスピードのあるアタッカー陣を前方のスペースへ走ららせようとするが、ヴィッセル守備陣は素早いカバーリングでスペースを突くマリノスのアタッカー陣に対して的確な対応をする。
またヴィッセルは攻撃でも前線のメインターゲットとなる大迫がロングボールを受ける際の競り合いで優位に立ち攻撃のスイッチを入れる。
試合の主導権を握ったヴィッセルは武藤が獲得したPKを大迫が決めて、23分に先制のゴールを奪う。更に42分にはCKから武藤が決めて追加点。
前半は0対2でアウェイのヴィッセルが2点をリードして終える事となった。
攻守両面で優位に立ったヴィッセル。
特にマリノスのダブルボランチを消す前線の守備が良かった。
この前線の守備により、ヴィッセルはマリノスの最も得意とする攻撃パターンを封じる形で試合を進める事ができたのではないだろうか。
後半
後半も好守備が光るヴィッセルが前半のリードを守り切り、リーグ優勝に一歩前進
前半と同様ヴィッセルはマリノスのダブルボランチを的確に消す守備を行った事で、後半も両チーム共にロングボール主体の攻撃を行う展開になる。
ハイラインを敷くヴィッセルに対して、早いタイミングでヴィッセルのディフェンスライン裏を突くマリノス。対するヴィッセル守備陣も、素早く戻ってのカバーリングで対応。マリノスの攻撃を封じ込める。
ヴィッセルは68分の選手交代を機に徐々に守備ブロックの位置を下げ、時間の経過とともにスペースを埋める意識を高めていく。
マリノスも中盤の並びを変えるなどの抵抗をみせるがヴィッセルからゴールを奪うには至らず。ヴィッセルが的確な守備でマリノスの攻撃を抑えきり、試合は0対2で終了。
首位のヴィッセルがマリノスとの勝ち点差を4に広げ優勝に一歩前進となった。
ハイライン裏のスペースを狙って速い攻撃を仕掛けるマリノスと、的確なカバーリングでマリノスの攻撃を封じようとするヴィッセル。
後半この局面での攻防は非常に見ごたえがあったが、結果はヴィッセル守備陣が見事にマリノスの攻撃を抑えた。
選手寸評
横浜F・マリノス
松原 健 | ヤンマテウスが動いた事によって生じたスペースを突いて攻撃参加。特に前半は効果的な攻め上がりをみせていた。 |
一森 純 | セーブ後のポジティブトランジションでは間髪入れずに前方にボールをつけ、速攻の起点となる場面が何度かみられた。 |
ヤン マテウス | 前線や敵ライン間を左右に幅広く動き、ディフェンスラインに生じたギャップやスペースを突くなど、攻撃面での奮闘が目立った。 |
ヴィッセル神戸
大迫 勇也 | 後方からのボールを収め攻撃の起点となり、守備でもマリノスのボランチを消すなど攻守両面で絶大な貢献をした。 |
佐々木 大樹 | マリノス陣内での守備では大迫と共にマリノスのボランチを消す事でチームに貢献。攻撃面でもマリノスのディフェンスラインに生じたスペースやギャップを積極的に突いていた。 |
武藤 嘉紀 | 19分にはペナルティエリア内でエドゥアルドからファールを貰いPKを獲得。42分にはヘディングでゴールを奪うなど2得点に絡む。後半も攻撃の中心としてチームを牽引した。 |
本多 勇喜 | スピード自慢のマリノスアタッカー陣が繰り出す速攻を、的確なカバーリングで封じ込める。試合全体を通じて安定した守備をみせた。 |
山口 蛍 | 攻守両面で周囲の選手を的確にサポート。放送席解説(DAZN)の坪井慶介氏もポジショニングの良さを高く評価していた。 |
投稿主選出の man of the match
大迫 勇也
以上、 横浜F・マリノス 対 ヴィッセル神戸 戦のマッチレビューでした。
本レビューは、あくまで投稿主個人の考えや感想を記事にしたものです。
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