欧州では23-24シーズンがいよいよ開幕
今回のサッカー観戦記はエースのベンゼマが退団し、新加入のベリンガムを中心に新たなサイクルへと踏み出したレアルマドリードに注目してみました
開幕戦では重鎮のモドリッチ、クロースに代わり若いチュアメニとカマビンガが先発出場
若いチームがどのようなサッカーをみせたのかをレビューします
本レビューは、あくまで投稿主個人の考えや感想を記事にしたものです
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アスレティック ビルバオ 対 レアル マドリード
2023年8月13日 ラ・リーガ 開幕節
アスレティック ビルバオ 0-2 レアル マドリード
メンバー
アスレティック ビルバオ
監督 エルネスト バルベルデ
【スタメン】
1 | ウナイ シモン (GK) |
3 | ダニエル ビビアン |
4 | アイトール パレデス |
6 | ミケル ベスガ |
9 | イニャキ ウイリアムス |
10 | イケル ムニアイン |
11 | ニコ ウイリアムス |
15 | イニゴ レクエ |
16 | ルクス デ ガラレタ |
18 | オスカル デマルコス |
30 | ウナイ ゴメス |
【交代】
7 | アレックス ベレンゲル (ハーフタイムIn) |
➡ニコ ウイリアムス Out | |
8 | オイハン サンセ (ハーフタイムIn) |
➡ウナイ ゴメス Out | |
12 | ゴルカ グルセタ (ハーフタイムIn) |
➡ムニアイン Out | |
21 | アンデル エレーラ (65分In) |
➡ベスガ Out | |
19 | イマノル ガルシア (71分In) |
➡レクエ Out |
レアル マドリード
監督 カルロ アンチェロッティ
【スタメン】
13 | アンドリー ルニン (GK) |
2 | ダニエル カルバハル |
3 | エデル ミリトン |
4 | ダビド アラバ |
5 | ジュード ベリンガム |
7 | ビニシウス ジュニオール |
11 | ロドリゴ |
12 | エドゥアルド カマビンガ |
15 | フェデリコ バルベルデ |
18 | オウレリアン チュアメニ |
20 | フラン ガルシア |
【交代】
22 | アントニオ ルディガー (50分In) |
➡ミリトン Out(怪我) | |
8 | トニ クロース (71分In) |
➡カマビンガ Out | |
10 | ルカ モドリッチ (80分In) |
➡ビニシウス Out | |
14 | ホセル (80分In) |
➡ロドリゴ Out |
基本システム
左:ビルバオ(赤白) 右:レアル(白)
[システム図①]
試合開始時
[システム図②]
ハーフタイム・ビルバオ ⑦ベレンゲル、⑧サンセ、⑫グルセタ投入
[システム図③]
50分・レアル ルディガー投入(ミリトン怪我)
[システム図④]
65分・ビルバオ ㉑アンデル エレーラ投入
71分・ビルバオ ⑲イマノル投入
71分・レアル ⑧クロース投入
[システム図⑤]
80分・レアル ⑩モドリッチ、⑭ホセル投入
局面ごとの方針
アスレティック ビルバオ
【ポジティブトランジション⇒攻撃】
ビルドアップは4バックの4枚と中盤の底2枚でパスを回す。
ビルドアップからの攻撃、ポジティブトランジションからの攻撃ともにレアルのプレスを外せば、サイドやレアルのディフェンスライン裏のスペースへ直接ボールを送りニコ ウイリアムス、イニャキ ウイリアムス、ムニアインの前線3枚を走らせる。前線3枚にボールが渡ればウナイ ゴメスがサポートに入る。
ハーフタイムの選手交代により前線の並びを変更([システム図②]参照)。
サイドハーフ(SH)のポジションに入ったイニャキ ウイリアムスとベレンゲルは内側に絞ってポジションを取り、デマルコスとレクエの両サイドバック(SB)は前半よりポジションを上げ攻撃の幅を取る。センターフォワードのグルセタは前線に張る。トップ下に入ったサンセはバイタルエリアで後方からのパスを引き取り崩しの起点になる。
レアル陣内でSHやSBにボールが入れば早いタイミングでゴール前にクロスを送る。
クロスを上げるタイミングになれば3人以上の選手がゴール前に詰める。
【ネガティブトランジション】
レアルの各選手に対して素早くマークを掴む。
後半に入るとマークを掴む際の前へ出る圧力を強め、ボールホルダーに対するプレッシャーを強める。
【守備⇒(ポジティブトランジション)】
レアルのビルドアップに対してはレアル陣内からマークを掴む。
イニャキウイリアムスがレアルの2センターバック(CB)をみて、ニコ ウイリアムスとムニアインの両SHはレアルのSBをみる。ウナイ ゴメスはチュアメニをマークしデ ガラレタとベスガはレアルの中盤をみる(レアルのビルドアップに対する、前半のマッチアップは[システム図⑦-(1)(2)]参照)。
レアルが前進して来れば、リトリートして4-2-3-1の陣形を組みマークを掴む。
後半に入るとラインを上げ前に出てボールを奪いに行く姿勢を強める。
下記[システム図⑥]の形でアタッキングサードからマークを掴みプレスをかける。
レアル陣内でボールを奪えば、バイタルエリアやその付近にポジショニングするイニャキウイリアムス、サンセ、ベレンゲルへボールを差し込む。
[システム図⑥]レアルのビルドアップに対するプレス(後半)
前半よりもラインを上げプレスの強度を上げる
⑫グルセタはレアルの2CB(④アラバ、③ミリトン)へチェイシングをかけ、⑨イニャキ ウイリアムス、⑦ベレンゲルの両SHはレアルのSB(⑳フランガルシア、②カルバハル)へのパスコースを切りながら2CBへ寄せて行く。⑧サンセは⑱チュアメニを、⑯デ ガラレタは⑮バルベルデを各々マーク。ボールを受けに下がる⑫カマビンガに対してマッチアップする⑥ベスガはしっかりとついて行く。
前半よりもラインを上げて、レアルの中盤に対しても前からマークを掴みボールを奪いに行く。
レアル マドリード
【攻撃】
ビルドアップ時の基本形は[システム図⑦-(1)(2)]に示した通り。
ボールが前に進めばロドリゴ、ビニシウスの前線2トップにボールを送りビルバオゴールに向かって仕掛けて行き、バルベルデとベリンガムが2トップをサポート。
2トップの仕掛ける位置について、ロドリゴはフィールド中央から右ハーフスペースがメインで、状況によっては右サイドから仕掛ける事もあった。ビニシウスは左サイドや左ハーフスペースにポジショニングし、敵最終ラインから若干下がった位置が仕掛けのメインポジションだった。
[システム図⑦-(1)]レアルのビルドアップ(その1)
ビルドアップ時の初期配置
最終ラインは4バックで中盤はダイヤモンド型。
②カルバハルと⑳フラン ガルシアの両SBは攻撃の幅を取る為にサイドで高いポジションを取る。
CBは2対1、中盤は4対3と2カ所で数的有利があるがアンカーの⑱チュアメニは㉚ウナイ ゴメスにマークされ、⑮バルベルデと⑫カマビンガの両インテリオールも⑥ベスガ、⑯デ ガラレタにつかれている。⑤ベリンガムはマッチアップ上はフリーになりやすいが、攻撃の起点からは距離がある。
このままでは最終ラインから中盤には簡単にパスが入らない。
[システム図⑦-(2)]レアルのビルドアップ(その2)
ポジション移動によってマークのズレを作り前進を図る
CBは数的有利なので、空いている方がボールを持ち上がる。
⑱チュアメニはポジションを右にずらし、⑫カマビンガが下がり中盤の底はダブルボランチ気味の形になる。カマビンガが元々いたポジションには⑤ベリンガムが入る。
フリーのCBによるボールの持ち上がりと中盤のポジション移動によってマークのズレを作りパスを回して前進を図る。
下図ではカマビンガポジションを下げ、カマビンガが元々いたポジションにベリンガムが入る事で⑯デ ガラレタが1人でカマビンガとベリンガムの2人をみないといけない状態になる。
実際に、カマビンガやベリンガムがボールを持ち上がるシーンは試合中に度々みられた。
またビルドアップで上記とは別のパターンとして、バルベルデが最終ライン付近まで下がりビルバオの選手を釣り出す事で生じたスペースへカルバハルが上がって行くというものもあった。
【ネガティブトランジション】
ボールホルダーに対して素早く寄せてディレイをかける。
オフザボールで縦方向へ動き出すビルバオの選手に対して素早くマークを掴み、速い攻撃を抑えに行く。
【守備】
ビルバオのビルドアップに対してビルバオ陣内からマークを掴む。
レアルの中盤はダイヤモンド型なのでマッチアップの嚙み合わせ上フリーになりがちなSBに対しては、カルバハルの縦スライドとカマビンガの横スライドで対応する(守備時のマッチアップの詳細は[システム図⑧]参照)。
80分のシステム変更に伴い、守備方法を4-4-1-1のブロックを敷きバランス良くスペースを埋める方法に変更する。
[システム図⑧]ビルバオのビルドアップに対するマッチアップ
ビルバオの2CBは⑪ロドリゴ、⑦ビニシウスの2トップがみる。中盤の底、⑥ベスガと⑯デ ガラレタに対しては⑮バルベルデ、⑤ベリンガムがマーク。トップ下の㉚ウナイ ゴメスは⑱チュアメニがマークする。
レアルの中盤はダイヤモンド型なのでマッチアップの嚙み合わせ上フリーになりやすいビルバオの両SBに対する対応について、左SBの⑮レクエには②カルバハルが前に出て対応。右SBの⑱デマルコスには⑫カマビンガがサイドにスライドして対応する。
得点
【28分・レアル】得点者:ロドリゴ(0-1)
ビルバオ陣内でのパス回し。ビルバオの守備ブロックの外側を左サイドのカマビンガからチュアメニ、バルベルデと右方向へ横パスを繋ぎ、バルベルデは右タッチライン際に開くロドリゴへパス。
カットインを匂わせるロドリゴにビルバオはウナイ ゴメスとレクエがマークに行くが、ロドリゴは前方のカルバハルへパスを出しパスアンドムーブでペナルティエリア内へ侵入。
カルバハルからのリターンパスを受けたロドリゴは素早く右足を振り抜くと、ボールはゴールキーパー(GK)のニア側をブチ抜きビルバオゴールに突き刺さる。
【36分・レアル】得点者:ジュード ベリンガム(0-2)
左サイドのコーナーキック(CK)。キッカーのアラバは左足アウトスイングでファーサイドへボールを送る。
ゴール前ではニア方向へ動いていたベリンガムが、アラバがCKを蹴る瞬間に方向を変えファーサイドに走り込む。ベリンガムをマークするレクエはベリンガムについて行こうとするが、レクエの進行方向にはミリトンとカルバハルが立ちはだかる形となりマークを外してしまう。
ファーサイドでフリーとなったベリンガムはCKのボールを右足ダイレクトで合わせると、ボールはワンバウンドしてGKの頭上を越えビルバオゴールへと吸い込まれた。
[システム図⑨-(1)]CKからベリンガムのゴール(その1)
ベリンガムをマークするレクエにミリトンとカルバハルがスクリーンとして立ちはだかる
④アラバがCKを蹴る場面。
ニア方向に動いていた⑤ベリンガムはアラバがCKを蹴る瞬間、動く方向を変えファーサイドへと走り込む。その際ベリンガムは③ミリトンと②カルバハルのすぐ脇を通過する。
ベリンガムをマークする⑮レクエはベリンガムについて行こうとするがミリトントンとカルバハルが立ちはだかる形になる。
ミリトンとカルバハルはバスケットボールで言うところの「スクリーン」となり、レクエはベリンガムのマークを外してしまう。
[システム図⑨-(2)]CKからベリンガムのゴール(その2)
ファーサイドでフリーとなったベリンガムがCKのボールをダイレクトでボレーシュート
③ミリトンと②カルバハルの「スクリーン」でフリーになった⑤ベリンガムはファーサイドにあるスペースに入るとCKのボールを落ち着いて右足ダイレクトで合わせる。
試合の感想・ポイント
前半
レアルが少ないチャンスを活かして2ゴールを奪う
ビルバオが後方から攻撃を組み立てる際、レアルのシステムが中盤がダイヤモンド型の4-3-1-2という事もあり中盤は数的不利だがSBはマークが空き気味になる。ビルバオにとってはSBを活かす形でボールを運びたいところだが、レアルの守備によりプレッシャーラインを上手く超える事が出来ない。結局前半のビルバオは、直接サイドやレアルのディフェンスライン裏のスペースへボールを送る以外は有効な攻撃を行う事が出来なかった。
レアルはビルドアップの際、最終ライン2対1、中盤4対3と2カ所の数的有利とポジション移動によるマークのズレを活かして前進を図る。
ベリンガムやカマビンガがいい形でボールを受けて、そのままボールを持ち上がる事で前進しチャンスを作る事もあった。だがビルバオのフォアプレスに捕まり自陣でボールを失う事もあり、攻撃の組み立てについてはコンスタントに上手くいっていたとは言い難い感じではあった。
そのような中でもレアルは少ないチャンスを確実に活かし2ゴールを挙げる。
前半はレアルが2点をリードしハーフタイムとなる。
後半
後半ビルバオが攻勢に転じるも、レアルは守備陣の能力の高さと的確なゲームマネジメントで見事に逃げ切る
2点ビハインドのビルバオはハーフタイムに3枚替えを敢行。攻守両面で戦い方に修正を加える。
守備面では前半よりもラインを上げ、レアルのビルドアップに対して前からマークを掴みボールを奪う意識を強め、ボールを奪えば素早く敵ライン間にボールを差し込みレアルゴールへと迫る。
後半のビルバオの攻撃は、敵ライン間に侵入すればシステムの嚙み合わせ上優位性のあるサイドに展開し早いタイミングでレアルゴール前にクロスを上げる。
ただビルバオはゴール前でのフィニッシュの局面で人数は揃っているものの、ゴール前でクロスを受ける選手のオフザボールの動きに工夫があまり無いように感じられた。またレアル守備陣のフィニッシュに対する守備能力の高さもあり、ビルバオはゴールを奪うには至らず時間の経過とともに勢いを失っていく。
80分、レアルは選手交代に伴いシステムを変更。守備時には4枚×2ラインによる守備ブロックを敷きバランス良くスペースを埋めるとビルバオは攻め手を失い万事休する。レアルが2点のリードを手堅く守りきりタイムアップ。
レアルがアウェイでの開幕戦を見事に制し、今季初戦を白星でのスタートと成った。
ビルバオに対する感想
後半ビルバオはラインを上げて前に人数をかける戦法に転じたが、積極策に転じた中で最終ラインのビビアンがビニシウスに対して単独で対応したのは大きな収穫だったのではないだろうか。
強力なアタッカーが数多くいるラ・リーガに於いて、ビビアンが今後どのような活躍をするかはチームの浮沈の鍵を握ると感じた。
レアルに対する感想
中盤ダイヤモンド型の4-3-1-2システムを採用した開幕戦のレアル。
中盤中央での数的有利やポジション移動でマークのズレを作り前進するという、目指すサッカーの一端は見えたように思います。
今後、このサッカーの完成度を如何に高めるのかを注目したいと思いました。
それと新加入のベリンガムが戦術的に重要なタスクを担っていると感じたので、彼がどのようにチームにフィットするのかも併せて注目したいと思います。
選手寸評
アスレティック ビルバオ
ダニエル ビビアン | ビニシウスの仕掛けに対して単独でマッチアップし何度も止めてみせ、1対1での強さを発揮。放送席解説(DAZN)の林陵平氏も1対1での守備能力の高さを高く評価していた。 |
オイハン サンセ | ハーフタイムから途中出場すると敵ライン間で味方からのパスを引き出しアタッキングサード侵入へのきっかけを作る。後半の立ち上がりにチームの攻撃に勢いをもたらす。 |
アンデル エレーラ | 出場時間は短かったが、中盤のパス回しの中心となり攻撃の起点を担った。 |
レアル マドリード
ジュード ベリンガム | ネガティブトランジションではボールホルダーへ激しくプレッシャーをかけ、攻撃では中盤から独力でプレスを剥がしてボールを持ち上がる。36分にはCKからラ・リーガでの初ゴールを決める。 |
エドゥアルド カマビンガ | 中盤での数的有利を活かして後方からボールを持ち上がり前線にボールを供給。チームの攻撃に大きく貢献した。 |
ダビド アラバ | 後半レアルゴールへと迫るビルバオに対して、的確なポジショニングでゴール前へのボールを弾き返しチームのピンチを防いだ。 |
ロドリゴ | 28分右サイドからの鋭い仕掛けから先制ゴールを奪う。その際のフィニッシュはトーキック気味にGKのニアをブチ抜くトリッキーなものだった。 |
フラン ガルシア | 積極果敢に左サイドを攻め上がり、相手ボールになれば素早く自陣に戻って後方をカバー。攻守両面でチームに貢献した。 |
投稿主選出の man of the match
ジュード ベリンガム
以上、アスレティック ビルバオ 対 レアル マドリード 戦のマッチレビューでした。
本レビューは、あくまで投稿主個人の考えや感想を記事にしたものです。
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コメント
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