今シーズンのチャンピオンズリーグで躍進するミラノ勢
ACミラン、インテルともに準々決勝では前評判の高いチームを撃破し、準決勝のダービーを迎える
今回のサッカー観戦記は、ミランが見事な守備戦術で圧倒的破壊力を誇るナポリの攻撃を封じた
チャンピオンズリーグ準々決勝、SSCナポリ 対 ACミラン 2nd legのレビューです
※本レビューは、あくまで投稿主個人の考えや感想を記事にしたものです。
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Quarter Final 2nd leg 結果
2023年4月19日
チェルシー 0-2 レアル マドリード
(2試合合計 0-4 Rマドリード 勝利)
2023年4月19日
SSCナポリ 1-1 ACミラン
(2試合合計 1-2 ミラン 勝利)
2023年4月20日
インテル 3-3 SLベンフィカ
(2試合合計 5-3 インテル 勝利)
2023年4月20日
バイエルンミュンヘン 1-1 マンチェスター シティ
(2試合合計 1-4 シティ 勝利)
SSCナポリ 対 ACミラン
2023年4月19日 UEFAチャンピオンズリーグ Quarter Final 2nd leg
SSCナポリ 1-1 ACミラン
(2試合合計 1-2 ミラン 勝利)
1st leg 概要
2023年4月13日
ACミラン 1-0 SSCナポリ
立ち上がりナポリが攻勢に出るも、時間の経過とともにミランのプレスが嵌っていき30分を過ぎた辺りからナポリの攻撃が滞りだす。
この試合唯一のゴールは40分、ポジティブトランジション後の縦パスを受けたブラヒム ディアスがプレスに来たマリオ ルイとロボツカをターンで剥がすとカウンター発動。一気にペナルティエリア手前までドリブルでボールを運ぶと、右側を走るラファエウ レオンへパス。ラファエウ レオンはダイレクトでブラヒム ディアスにリターンパスを送るがボールは左ハーフスペースへ流れ、そこに後方から走り込んで来たベンナセルが左足ダイレクトでシュートを放ちゴール。
後半、お互いにマッチアップが噛み合い、中盤でがっつりマークを掴みあい試合の流れは膠着状態。
74分、ザンボアンギサがこの試合2枚目のイエローカードを提示され退場。1点ビハインドの上、10人となり苦境に立たされたナポリ。しかし81分に投入されたポリターノが積極的な仕掛けをみせるなど数的不利にもかかわらずミランゴールに迫る。最終的に同点ゴールを奪う事はできなかったが、1点差でホームの2nd legに希望を繋いだ。
メンバー
SSCナポリ
監督 ルチアーノ スパレッテ
【スタメン】
1 | アレックス メレト (GK) |
5 | ファン ジェズス |
6 | マリオ ルイ |
9 | ビクター オシムヘン |
13 | アミル ラフマニ |
20 | ピオトル ジエリンスキ |
21 | マッテオ ポリターノ |
22 | ジオバンニ ディロレンツォ |
68 | スタニスラフ ロボツカ |
77 | クビチャ クバラツケリア |
91 | タンギ エンドンベレ |
【交代】
11 | イルビング ロサーノ (34分In) |
➡ポリターノ Out(怪我) | |
17 | マティアス オリベラ (34分In) |
➡マリオ ルイ Out(怪我) | |
7 | エリフ エルマス (63分In) |
➡エンドンベレ Out | |
55 | レオ エスティゴール (74分In) |
➡ラフマニ Out | |
81 | ジャコモ ラスパドーリ (74分In) |
➡ジエリンスキ Out |
ACミラン
監督 ステファノ ピオーリ
【スタメン】
16 | マイク メニャン (GK) |
2 | ダビデ カラブリア |
4 | イスマエル ベンナセル |
8 | サンドロ トナーリ |
9 | オリビエ ジルー |
10 | ブラヒム ディアス |
17 | ラファエウ レオン |
19 | テオ エルナンデス |
23 | フィカヨ トモリ |
24 | シモン ケア |
33 | ラデ クルニッチ |
【交代】
30 | ジュニオール メシアス (59分In) |
➡ブラヒム ディアス Out | |
27 | ディボウ オリギ (68分In) |
➡ジルー Out | |
56 | アレクシス サレマーケルス (84分In) |
➡ラファエウ レオン Out |
基本システム
左:ナポリ(水色) 右:ミラン(赤黒)
[システム図①]
試合開始時
[システム図②]
34分ナポリ ⑪ロサーノ、⑰マティアス オリベラ投入(㉑ポリターノ、⑥マリオ ルイ怪我)
[システム図③]
59分ミラン ㉚ジュニオール メシアス投入
[システム図④]
63分ナポリ ⑦エルマス投入
68分ミラン ㉗オリギ投入
[システム図⑤]
74分ナポリ (81)ラスパドーリ投入(システム変更)
[システム図⑥]
84分ミラン (56)サレマーケルス投入
局面ごとの方針
SSCナポリ
【ポジティブトランジション】
ミランのネガティブトランジション時の動き方によって、素早く前方にボールをつけ早いタイミングでサイドにボールを送る場合と、中盤でボールを回してポゼッションを確立した後サイドにボールを送る場合を使い分ける。
【攻撃】
ビルドアップはラフマニ、ファンジェズスのセンターバック(CB)2枚の前にロボツカが立つ2-1の並び。ザンボアンギサは下がってビルドアップをサポートする。
ジエリンスキはボールが前に進むのが難しい時はビルドアップをサポートし、ボールが前に進めばポジションを上げて敵ライン間に侵入する。
フィールド右側でディロレンツォ、ザンボアンギサ、ポリターノがトライアングルを形成して前進を図り、ミランがボールサイドへラインを寄せて来れば左へサイドチェンジ。
時折、後方からミランディフェンスラインの裏へ直接ロングボールを送り、オシムヘンがディフェンスライン裏のスペースへ走り込む。
崩しの局面ではサイドからミランの守備ブロックを崩しにかかる。左サイドはクバラツケリアがドリブルで仕掛けマリオ ルイがクバラツケリアを後方からサポート。右サイドはポリターノを起点にし、ディロレンツォが絡む。ジエリンスキもボールサイドへ仕掛けのサポートに行き、サイドを取ればゴール前のオシムヘンをターゲットにクロスやラストパスを送る。
後半に入りビルドアップ時にエンドンベレ、ジエリンスキの両インテリオールがロボツカをサポート。ディロレンツォとマティアス オリベラの両サイドバック(SB)はボールの前進に合わせてサイドを上がり、ポリターノとクバラツケリアの両ウイング(WG)がサイドで攻撃の幅を取る。
後半クバラツケリアはミラン陣内でダブルチームされても強引に突破を図る。ミランがクバラツケリアのサイドへラインを寄せて更にサイドを締めて来ればマティアス オリベラやロボツカがクバラツケリアをサポートしに来て、彼らとのコンビネーションでディフェンスラインを攻略しに行く。
右サイドでもポリターノが前を向けばディロレンツォは前半以上にオーバーラップやインナーラップ(アンダーラップ)を仕掛けニアゾーンを取りに行く。
前半よりも深くゴール前に侵入し、よりゴールに近い位置からゴール前にクロスやラストパスを入れる。
74分ラスパドーリが投入されると、ラスパドーリがボールに絡む事で崩しの局面に入るパターンが多くみられた。
【ネガティブトランジション】
素早くボールホルダーへ寄せてミランのカウンターを阻止しつつ、ボールホルダー周囲の敵に対してもマークを掴む。
【守備】
ミランのビルドアップに対してアタッキングサードからマークを掴む。
オシムヘンとジエリンスキはミランの2CBを、ポリターノとクバラツケリアの両WGはミランの両SBを、エンドンベレとロボツカはミランの2センターハーフを各々マーク。ミランが前進して来るタイミングでプレスに行く。
基本的な守備の方針は前に出てプレスに行く事だが、ミランのカウンターが鋭く守備局面の多くをカウンター対応に費やされる。
ACミラン
【ネガティブトランジション】
基本は4-4-2のブロックを形成する事を優先するが、ラインを下げ過ぎずボールホルダーのすぐ後ろにブロックを敷き、陣形が整えば前へ出てマークを掴みボールホルダーに対してプレッシャーをかける。
【守備】
ナポリのビルドアップに対してはアタッキングサードとミドルサードの境目付近に4-4-2の陣形を組む。ベンナセル、ジルー(68分以降はオリギ)とボールサイドのサイドハーフ(SH)(主にラファエウ レオンが担当)が前に出てナポリの最終ラインに対してマークを掴む。
ロボツカに対してはクルニッチ、トナーリ、ベンナセルの3人のうちの1人がマンマーク気味にマーク。
クバラツケリアにボールが入ればダブルチームで守る。クバラツケリアに対するメインのマッチアップマンはカラブリアでそこにSHのブラヒム ディアス(59分以降はジュニオール メシアス)がヘルプディフェンスに来る。SHがヘルプに行けない時はクルニッチがスライドしてサポートに入る。
ナポリが第1プレッシャーラインを越えて前進して来ればディフェンシブサードまでリトリートして4-4-2のブロックを敷きスペースを埋め、ゴール前ではCBがオシムヘンをマーク(主にトモリが担当)しナポリのクロスやラストパスに備える。
ミラン1st legと2nd legでの守備戦術の変化
[システム図⑦-(1)]1st legでのナポリのビルドアップに対するミランの守備
マンオリエンテッド(人を基準にポジショニング)な守備でマークを掴む。
[システム図⑦-(2)]2nd legでのナポリのビルドアップに対するミランの守備
アタッキングサードとミドルサードの境目付近を基準点に4-4-2の陣形を組む。
マンオリエンテッドな要素は1st legと比べれて減少するが、(68)ロボツカに対しては㉝クルニッチ、⑧トナーリ、④ベンナセルの3人のうちの1人がマンマーク気味にマッチアップ(オレンジ色の囲み)。
またSHのうちのどちらか一方は前に出てナポリの最終ラインにプレッシャーをかける。
前に出るSHについては⑰ラファエウ レオンが前に出る事が多かった。
これはポジティブトランジション後のカウンターアタックに備えラファエウレオンを前残りさせたいという意図と、右のSHはクバラツケリアを守らないといけないという2つの意図があったからだと思われる。
【ポジティブトランジション】
ナポリのファーストプレスをかわせば前に出る。前掛かりなナポリに対して、ブラヒム ディアスやラファエウ レオンの推進力で前方のスペースを突く。
カウンターが発動されれば複数の選手が前方へと走り出し、チーム全体で速攻をサポート。
【攻撃】
ビルドアップはシモン ケア、トモリの2CBの前にクルニッチが立つ2-1のトライアングルが起点。トナーリはサイドやハーフスペースでプレスの逃げ場になるポジションを取りつつ、ボールが前に進めば自らも前進。カラブリア、テオ エルナンデスの両SBは前めのポジションを取る。
ナポリが前掛かりにプレスに来るので、第1プレッシャーラインを越えればブラヒム ディアス、ラファエウ レオンの両SHを中心に前方のスペースを突いてシンプルに縦方向に前進。周囲の選手達も縦方向に動き出し、ボールホルダーに対して複数の選択肢を作る。
得点
【43分・ミラン】得点者:オリビエ ジルー(0-1)
自陣からのロングカウンター、ラファエウ レオンが圧倒的な推進力で3人を抜き去る
自陣中央、ナポリはクバラツケリアがエンドンベレへパスを出すも、エンドンベレがトラップミス。左側へ流れたボールをラファエウ レオンが拾うとナポリゴールに向けてドリブル開始。
エンドンベレ、ディロレンツォをかわしペナルティエリア内に侵入するとラフマニも抜き去りゴール前へラストパス。最後はゴール前に走り込んで来たジルーが左足で合わせてゴール。
【90+3分・ナポリ】得点者:ビクター オシムヘン(1-1)
試合終了間際、終始厳しいマークにあっていたオシムヘンが一矢報いるゴール
ナポリ、右からのコーナーキック。そのクリアボールを左ハーフスペース、ペナルティエリアから5m程後方でクバラツケリアがボールを拾うと右サイドのラスパドーリへパス。
ラスパドーリはディフェンスに来たクルニッチをかわすと左足インスイングでゴール前にクロスを上げる。このクロスをオシムヘンがジャンプ一番、ヘディングシュートをミランゴールに叩き込む。
試合の感想・ポイント
前半
堅い守備でナポリの攻撃に耐えたミランがカウンターからゴールを奪う
ナポリは立ち上がりから攻勢に出て何度もアタッキングサードへ侵入。ミランゴールに迫る。
対するミランはナポリが前進すれば素早くリトリートしてゴール前に堅い守備ブロックを築く。
ミランを攻め立てるナポリ。しかしナポリはミランゴール前には何度も到達するが、ゴール前の人数が足りない。ゴール前に張るオシムヘンに対してもミランの両CBがしっかりとマークにつき、オシムヘンは常に孤立状態。ナポリはミランからゴールを奪うには至らない。
20分台に入るとミランは徐々に試合のペースを盛り返しチャンスを作るようになる。そして43分、ミランは自陣からのロングカウンター。ラファエウ レオンが長駆ドリブルでボールを運びナポリの選手3人を抜き去ると、最後はジルーが決める。ミランは貴重な先制ゴールを挙げ、2試合合計のスコアを2対0とし、リードを広げる。
前半のミランは堅い守備をみせた。ゴール前まで攻め込まれてもスペースを埋め、ナポリのクロスやラストパスに対してもシモン ケア、トモリの両CBがオシムヘンをしっかりとマーク。
クバラツケリアに対してもメインのマッチアップマンであるカラブリアを中心にダブルチームを敢行。良い対応をみせていた。
後半
ミラン、堅い守備と鋭いカウンターを武器に今季好調のナポリを見事に撃破
ナポリは後半立ち上がりから攻撃方法を修正。ビルドアップやサイドからの前進に微調整を施す。また、クバラツケリアはミランのダブルチームでの守備に対して、強引に2人の間を割って入る形で突破を図りミランゴールに迫り自らフィニッシュまで持って行く。ミランゴール前へのクロスやラストパスも、前半よりもゴールに近い位置に侵入してから出していた。
ただ、ミランは前半から引き続きゴール前で堅い守備をみせる。オシムヘンに対してはトモリがしっかりとマークにつき、オシムヘンがそのマークを外そうとしてもシモン ケアやクルニッチが的確にカバーリングに来る。ミランの強固な守備にナポリはあと一歩攻め切る事が出来ない。
この日のミランは引いて守るだけではなく、ネガティブトランジションやナポリのビルドアップに対して最初の段階では前へ出てプレッシャーをかける。そしてボールを奪いナポリのファーストプレスをかわせば複数の選手が縦方向に走り出し、チーム全体で攻める姿勢をみせていた。
70分台に入り、ミランは逃げ切りを図るべく自陣ゴール前に人数をかけナポリの攻撃を弾き返す。攻めあぐねるナポリをみて、このままミランが逃げ切り勝を収めると思われたが、試合は終盤を迎え守備に人数をかける事による弊害も表れ出す。
80分トモリがペナルティエリア内でハンドの反則を犯してしまう。ゴール前、特にペナルティエリア内に人数をかければPK献上のリスクはどうしてもつきまとう。このPKはゴールキーパーのメニャンがクバラツケリアのPKをストップしピンチを凌ぐが、試合終了間際にオシムヘンにゴールを決められる。この時ミランはゴール前に十分すぎるほど人数をかけていたが、多くの味方選手がいる事でマークが曖昧になってしまっていた。
ナポリは最後の最後に1点を返すが反撃もここまで。ミランが見事に、合計スコア2対1で逃げ切り準決勝進出を果たした。
SSCナポリに対する感想
今シーズンのナポリは国内リーグ、チャンピオンズリーグともに素晴らしい内容の戦いをみせていただけに、ここでの敗戦は残念。
ミランに対しては実力的に劣っていたというよりも、ミランの守備戦術に嵌められてしまったという印象だった。
ACミランに対する感想
1st leg、2nd legを通じて守備の堅さが目立っていたミラン。
特に素晴らしかったのは1st legと2nd legで異なる守備戦術を用い、ナポリの攻撃を封じ込めた事。
特にこの2nd legではスペースを消す守り方をメインにしつつも、局面ごとに抑えるべき選手を特定し、その選手に対してはしっかりとマークをつける事でナポリの攻撃を封じていた。
強豪チーム相手に堅い守備で相手の良さを消す。如何にもイタリア勢らしい勝ち上がり方だと感じた。
選手寸評
SSCナポリ
クビチャ クバラツケリア | 厳しいマークに遭いながらも凄まじい威力のドリブル突破でチャンスを作る。ただPK失敗を含め決定機を決める事はできなかった。 |
スタニスラフ ロボツカ | 攻撃ではパス回しの起点として、守備ではライン間のフィルター役として攻守で奮闘した。 |
ジオバンニ ディロレンツォ | サイドで攻撃を組み立て、ポリターノやロサーノが敵陣で仕掛ける際はオーバーラップやインナーラップ(アンダーラップ)等の味方を追い越す動きで、ミランのディフェンスラインを崩しにかかっていた。 |
ACミラン
ラファエウ レオン | 43分、自慢の推進力が炸裂。ナポリの選手3人を抜き去ると、ジルーのゴールを見事にアシストした。 |
フィカヨ トモリ | 自陣ゴール前でオシムヘンをマークし、シモン ケアとともに堅牢な城壁を築く。チームの守備を支え続けた。 |
ラデ クルニッチ | 中盤の底で攻撃の起点となり、守備ではナポリの局面ごとのキーマンに対峙するマッチアップマンをサポート。攻守両面で戦術上の重要な役割を担った。 |
サンドロ トナーリ | ネガティブトランジション、ポジティブトランジションの両局面に於いて素早い動き出しで力強くプレー。まさにハイインテンシティなプレーをみせていた。 |
マイク メニャン | 82分のPKストップは結果的にチームを勝利に導くビッグプレーだった。1st legに引き続き存在感をみせていた。 |
投稿主選出の man of the match
ラファエウ レオン
以上、SSCナポリ 対 ACミラン 戦のマッチレビューでした。
本レビューは、あくまで投稿主個人の考えや感想を記事にしたものです。
本レビューに対して、ご意見やご感想があれば下のコメント欄よりコメントを頂ければ幸いです。
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