欧州サッカー観戦記 22-23 UEFAチャンピオンズリーグ Round of 16 2nd leg

バイエルンミュンヘン対パリサンジェルマン UEFAのコンペティション

UEFAチャンピオンズリーグ、決勝トーナメント1回戦も勝負の2nd legに突入
エンバペ、メッシが率いるスター軍団パリSGは強豪バイエルン相手に逆転となるのか
それともバイエルンが返り討ちにするのか

今回のサッカー観戦記は世界が注目する強豪対決の決着戦をレビューします

Round of 16 2nd leg week1 結果

2023年3月8日
チェルシー 2-0 ボルシア ドルトムント
(2試合合計 2-1 チェルシー 勝利)

2023年3月8日
SLベンフィカ 5-1 クラブ ブリュージュ
(2試合合計 7-1 ベンフィカ 勝利)

2023年3月9日
バイエルン ミュンヘン 2-0 パリ サンジェルマン
(2試合合計 3-0 バイエルン 勝利)

2023年3月9日
トッテナム ホットスパー 0-0 ACミラン
(2試合合計 0-1 ミラン 勝利)

今回のサッカー観戦記は上記の試合の中から
バイエルン ミュンヘン 対 パリ サンジェルマン 戦をレビューします

※バイエルン対パリSG、1st legもこちらでレビューしております
もしよろしければご覧下さい

バイエルン ミュンヘン 対 パリ サンジェルマン

2023年3月9日 UEFAチャンピオンズリーグ Round of 16 2nd leg
バイエルン ミュンヘン 2-0 パリ サンジェルマン
(2試合合計 3-0 バイエルン ミュンヘン 勝利)

メンバー

バイエルン ミュンヘン
監督 ユリアン ナーゲルスマン

【スタメン】

27 ヤン ゾマー (GK)
2 ダヨ ウパメカノ
4 マタイス デリフト
6 ヨシュア キミッヒ
8 レオン ゴレツカ
11 キングスレイ コマン
13 エリクマキシム チュポモティング
19 アルフォンソ デイビス
25 トマス ミュラー
42 ジャマル ムシアラ
44 ヨシプ スタニシッチ

【交代】

10 レロイ ザネ (68分In)
➡チュポモティング Out
17 サディオ マネ (82分In)
➡ムシアラ Out
7 セルジュ ニャブリ (86分In)
➡コマン Out
22 ジョアン カンセロ (86分In)
➡ミュラー Out

パリ サンジェルマン
監督 クリストフ ガルティエ

【スタメン】

99 ジャンルイジ ドンナルンマ (GK)
2 アクラフ ハキミ
4 セルヒオ ラモス
5 マルキーニョス
6 マルコ ベラッティ
7 キリアン エンバペ
8 ファビアン ルイス
15 ダニーロ ペレイラ
17 ビチーニャ
25 ヌーノ メンデス
30 リオネル メッシ

【交代】

26 ノルディ ムキエレ (36分In)
➡マルキーニョス Out (怪我)
31 エルシャダイル ビチャブ
(ハーフタイムIn)
➡ムキエレ Out
33 ウォーレン ザイルエムリ (76分In)
➡ファビアン Out
44 ウーゴ エキティケ (82分In)
➡ビチーニャ Out
14 フアン ベルナト (82分In)
➡ヌーノ メンデス Out

基本システム

左:バイエルン(赤) 右:パリSG(白紺)

[システム図①]
試合開始時

[システム図②]
36分 パリSG ㉖ムキエレ投入(⑤マルキーニョス 怪我)

[システム図③]
ハーフタイム パリSG ㉛ビチャブ投入
ハーフタイム バイエルン (⑥キミッヒと⑧ゴレツカ、ポジションチェンジ)

[システム図④]
60分台 バイエルン (システム変更)
68分 バイエルン ⑩ザネ投入
76分 パリSG ㉝ザイールエムリ投入

[システム図⑤]
82分 バイエルン ⑰マネ投入
82分 パリSG ⑭ベルナト、㊹エキティケ投入(システム変更)

[システム図⑥]
86分 バイエルン ⑦ニャブリ、㉒カンセロ投入

得点

【61分・バイエルン】得点者:エリクマキシム チュポモティング(1-0)
前線からのフォアプレスにより、パリSGゴール前でのボール奪取に成功しゴールを奪う
パリSG、ゴールキックからのポゼッションオフェンスでディフェンスラインから中盤へパスを繋ぎ前進を図る。
(バイエルンからみて)右サイドのタッチライン際でパスを受けたファビアンに対してコマンが強くアプローチすると。ファビアンはディフェンスラインへとボールを戻す。
(バイエルンからみて)右ニアゾーンでボールを受けたビチャブへミュラーが激しくプレス。プレッシャーを受け厳しい状況のビチャブ。なんとか前方のベラッティへパスを送るが、パスを受けたベラッティの背後からゴレツカがプレス。更にミュラーも加勢してベラッティを挟み込むと、ミュラーがボール奪取。
ミュラーはゴレツカにボールを渡し、ゴレツカはゴール前左側のチュポモティングへパス。フリーの状態でパスを受けたチュポモティングは難なくシュートを決める。

[システム図⑦-(1)]ゴール直前、バイエルンのフォアプレス(1)
パリSG陣内深くでパスを受けたビチャブに対して、バイエルンはパスコースを制限する
自陣深くでボールを持ったパリSGのセンターバック(CB)、㉛ビチャブに対して⑬チュポモティングは逆サイドへのパスコースを消し、㉕ミュラーは⑥ベラッティへのマークに付きつつビチャブの動きをけん制する。
⑪コマンはビチャブへボールが渡った当初はチェイシングに行く動きをしていたが、ビチャブの選択肢が⑧ファビアンへのパスしかない状況をみてチェイシングを自重。ビチャブがファビアンにパスを出すとコマンはファビアンにプレスをかける。

[システム図⑦-(2)]ゴール直前、バイエルンのフォアプレス(2)
ビチャブにボールが返されると、ミュラーを起点にボール狩りへ
⑪コマンのプレスを受けた⑧ファビアンは㉛ビチャブにボールを戻すが、㉕ミュラーがすかさずビチャブへプレスに行く。
ビチャブはミュラーのプレスを受けながらもなんとか⑥ベラッティにパスを出すが、⑧ゴレツカがベラッティの背後からプレス。更にミュラーがも動き直してのプレスでベラッティを挟み込み、ミュラーがボールを奪う。

ボール奪取の後、最後はゴール前左側でフリーとなっていた⑬チュポモティングへボールが渡りシュートを決める。

【90分・バイエルン】得点者:セルジュ ニャブリ(2-0)
攻めるパリSGに対して、自陣でのボール奪取からロングカウンター
バイエルン陣内、(バイエルンからみて)ペナルティエリア右角付近でキミッヒがベラッティからボールを奪うとジョアン カンセロへボールを渡す。
ジョアン カンセロはドリブルでザイールエムリを抜き去ると一気に前進。パリSG陣内に侵入すると左ハーフスペースを走るニャブリへスルーパス。
絶妙なトラップでボールを前側に流したニャブリは、そのまま走り込むと左足でシュートを放ちゴールを決める。

局面ごとの方針

バイエルン

【ポジティブトランジション】
基本的にはキミッヒを中心にボールを繋ぎポゼッションを確立する。
パリSGが前掛かりに攻めてきた時に、ボールを奪った際前方に大きなスペースがあればカウンターに転じる。

【攻撃】
ビルドアップは最終ラインのスタニシッチ、ウパメカノ、デリフトの3CB、その前にキミッヒの3-1の並びでコマン、アルフォンソ デイビスの両ウイングバック(WB)はサイドで幅を取る。キミッヒを中心にパスを回し、敵ライン間にポジションを取るミュラー、ゴレツカ、ムシアラとのボールの出し入れで前進を図る。
時折、前線に張るチュポモティングへ後方から直接ロングボールを入れたり、後方からパリSGディフェンスライン裏へロングボールを入れてチュポモティングを走らせる事もあった。特にパリSGがネガティブトランジションや守備局面で積極的に前へ出て来る時間帯では後方からのロングボールの割合が増えていた。

60分台に基本システムを4バックに変更して以降もビルドアップからの攻撃時は、最終ラインがスタニシッチ、ウパメカノ、デリフトの3枚で、その前にキミッヒが立つ形は変わらず。
後方からミュラー、ムシアラ、68分以降にはザネなど2列目の選手にボールを入れ、彼らが敵ライン間で前を向けば右はコマン、左はアルフォンソ デイビスとの絡みで前進。キミッヒはボールサイドに流れてサポートに入り、ゴレツカは前線付近まで上がって攻撃に厚みを加える。

【ネガティブトランジション】
素早くマークを掴みカウンタープレスに行く。
すぐにプレスに行けない状態や、プレスが外された時は直ちにリトリートに切り替え素早く戻る。リトリートする場合でもメッシがボールを持てばキミッヒやゴレツカが素早く寄せて行き強く当たる。

【守備】
パリSGのビルドアップに対しては、チュポモティングがアタッキングサードからチェイシングをかける。ミュラー、ムシアラの2シャドーのうちボールサイド側のシャドーもボールホルダーにプレッシャーをかけ、ボールと逆サイドのシャドーは中盤と逆サイドへのパスコースを切る。
中盤を構成するコマン、キミッヒ、ゴレツカ、アルフォンソ デイビスは前3人の動きに合わせてボールサイドへスライド。パリSGの最終ラインに対するプレスが嵌ればボールサイドのWBが前に出てプレスを逃れようとしてサイドに出したボールを狩りに行く。
メッシが中盤に下がってボールを受ければゴレツカかキミッヒがマッチアップ。メッシが前線に上がればデリフトがマッチアップする。
ミドルサードから守備に入る場合は3-4-3の陣形を組み、前へ出てボールホルダーへプレッシャーをかける。
自陣に下がれば5-4-1のブロックを敷く。

後半フォアプレスに行く際、ビチャブをボール奪取のターゲットにする。
60分台に入りシステムを変更。ミドルサードから後方でブロックを敷く際の陣形は4-4-2になり、ボールレーンの選手が突出してプレスに行く。

パリSG

【ネガティブトランジション】
前半の立ち上がりから数分間はリトリートして5-3-2のブロックを敷く事を優先。
10分前後から20分台中頃までの時間帯では、ボールを失った瞬間に前へ出てマークを掴みボールホルダーに対して強く寄せる。
20分台後半以降は立ち上がり同様、リトリートする事を優先する。

後半に入ると、再び強く前へ出るようになる。ボールを奪われた瞬間にチーム全体で前へ出てマークを掴みボールホルダーに対して積極的に寄せて行く。

【守備】
守備時の基本陣形は5-3-2。
バイエルンのビルドアップに対して、前半の立ち上がりから数分間はミドルサードに5-3-2の陣形を敷きメッシ、エンバペの2トップはバイエルン3CBのパス回しを牽制し中盤はボールの動きに合わせてラインをスライドする。
時間帯が10分に近づいてくるとバイエルンのビルドアップに対して強くアプローチするようになる。2トップはアタッキングサードとミドルサードの境目辺りまで出てチェイシングをかけ、バイエルンがボールを下げれば更に前へ出てボールホルダーに対してプレッシャーをかける。2列目以降も2トップに連動してラインを押し上げる。ビチーニャ、ベラッティ、ファビアンの中盤3枚はボールサイドにラインを絞ってプレスに行く。
20分台後半になると、立ち上がりと同様にミドルサードで待ち構える守備がメインになる。
自陣での守備は5-3-2のブロック守備がメイン。バイエルンに強く押し込まれればベラッティがディフェンスラインに入り6バックになる。

後半は再度バイエルンのパス回しに対して前に出て強くアプローチするようになる。前半よりマンオリエンテッドな要素を強め、マークを掴むようになる。

【攻撃】
ビルドアップ時、セルヒオ ラモスは最終ラインに固定され、ダニーロ ペレイラとマルキーニョスはどちらか1人が最終ラインに残ってセルヒオ ラモスと並び、もう1人は前方に出てプレスの逃げ場的なポジションを取る。最終ライン2枚の前にベラッティが立ちパス回しの起点になる。
ビチーニャとファビアンが交互にボールを受けに下がり、前後を繋ぐ中継点になる。
ハキミ、ヌーノ メンデスの両WBはサイドで幅を取る。左サイドのヌーノ メンデスはエンバペをサポートし、右サイドのハキミはアタッキングサードまでボールが行けばバイエルンのゴール前へと詰めて行く。
後方から敵ライン間にポジションを取るメッシにボールを入れ、メッシがアタッキングサードへとボールを運ぶか、フィールド左側のスペースへボールを送りエンバペを走らせるという2つのパターンが攻撃の大きな柱となる。

試合の感想・ポイント

前半

オープンな展開になるも両チームのディフェンダーが的確な対応をみせ、前半はスコアレスとなる

立ち上がりはバイエルンが主体的にボールポゼッションを握るが、10分近くになるとパリSGが守備局面で積極的に前に出るようになる。また、圧倒的なスピードでディフェンスライン裏へ飛び出すエンバペの存在により、さすがのバイエルンもコンパクトな陣形を常に保つのは容易ではなく、オープンな状況が度々現れる。特に10分台から20分台の前半はオープンな状況になる傾向が強かった。
オープンになりがちな展開のなかでも両チーム共に球際の攻防は激しく、特にメッシがボールを持った時のゴレツカ、キミッヒ、デリフトの寄せは強烈だった。
また両チーム共にリトリートした時のCBの対応が素晴らしく、前半はスコアレスで終える事となる。

後半

後半インテンシティが更に高まるなか、バイエルンが攻守で的確な対応をみせる

後半の立ち上がり、両チーム共にネガティブトランジションから守備の局面で、前半より更に強度を上げる。お互いに、相手ボールになれば前に出て素早くマークを掴み、相手の攻撃を封じに行く。ハイインテンシティな展開のなか、バイエルンのネガティブトランジションでのマークの掴みがパリSGを上回り、試合のペースは徐々にバイエルンへ傾く。
52分、バイエルンはチュポモティングのヘディングシュートがパリSGのゴールネットを揺らすが、オフサイドポジションにいたミュラーがプレーに関わったとしてノーゴールの判定。
しかし、この後もバイエルンペースの傾向はより強まる。キミッヒを中心にポゼッションを確立するバイエルンは、後方からのパスでパリSGのプレッシャーラインを越えてライン間に着実にボールを差し込みパリSGゴールへ迫る。
そして61分、バイエルンはパリSGのディフェンスラインに対してフォアプレスをかけてボールを奪うとチュポモティングが今度は正真正銘の先制ゴールを奪う。

2試合合計で2点ビハインドとなり窮地に立たされたパリSG。反撃を試みるもバイエルンの的確な守備により攻撃は封じられる。ポジティブトランジションでハキミやァビアンなど数人の選手が前に走り出す事もあったが、バイエルンンのボールホルダーに対する寄せやマークの掴みが良く縦に出て行く場面は少なかった。メッシは中盤と前線の間で孤立し、頼みのエンバペもウパメカノの1st legとは見違える守備対応により、その攻撃力は削られる。
なんとか得点を奪おうと前掛かりになって攻めるパリSG。しかし90分、バイエルンは自陣からのロングカウンターでニャブリがゴールを奪いパリSGにとどめを刺す。
最終スコアは2試合合計 3対0。バイエルンがパリSGとの強豪対決を制し、準々決勝進出を果たした。

注目のマッチアップ

左右両サイド、WB同士のマッチアップは非常に見応えがあった。

 

コマン対ヌーノ メンデスのマッチアップはキミッヒやミュラーとの連携を使って攻守に於いて終始落ち着いてプレーしていたコマンが制した。

 

アルフォンソ デイビス対ハキミのマッチアップはスピード感のある激しい戦いとなったが、バイエルンがチームとして優勢だった事もあり、アルフォンソ デイビスに分があるように感じた。

バイエルンに対する感想

両チームのインテンシティが高まった後半立ち上がりの攻防に於いて、ネガティブトランジションで的確にマークを掴んでパリSGの攻撃を封じる。そして、ボールを奪えばキミッヒを中心にしてポゼッションを確立し、後方から敵ライン間に縦パスを差し込み攻撃のスイッチを入れる。

ここでの攻防を制した事が勝利に繋がったと感じた。

パリSGに対する感想

時間帯によってプレー強度を変えてメリハリをつけながらも、1st leg以上に積極的な姿勢をみせたものの、後半はトランジションの攻防を制されバイエルンに封じられてしまった。

 

ネイマールの怪我による欠場は痛かったが、それ以上にコンディションに不安を抱えていたマルキーニョスが前半途中で交代してしまったのは痛手だった。

選手寸評

バイエルン
ダヨ ウパメカノ 1st legで圧倒されたエンバペに対して、この試合では素晴らしい守備対応。時間の経過とともにエンバペの存在感は消えていった。
ヨシュア キミッヒ 攻撃の起点として中盤を制圧。パリSGが激しくプレスに来てもブレずにパスを回し、守備でもメッシに対して激しい寄せをみせた。
ヨシプ スタニシッチ 最終ラインからパリSGのプレッシャーラインを超えるパスを差し込み、ボールが前に進めば右サイドを上がり攻撃参加。出場停止のパバール不在を感じさせない活躍をみせた。
ジャマル ムシアラ ワンタッチ、ツータッチのボールコントロールで相手のプレスを巧みに剥がす技術力を遺憾なく発揮。アタッキングサードで違いを作る能力は一級品。
セルジュ ニャブリ 90分にゴールを挙げた際のファーストタッチは素晴らしいの一言。短い出場時間の中でも、しっかりと結果を出した。
トマス ミュラー ライン間での的確なポジショニングで攻撃を循環させ、パリSGのビルドアップに対しても的を絞ったプレス。先制ゴールに繋がるボール奪取でも重要な役割を担った。
パリSG
マルコ ベラッティ 攻撃の起点として奮闘。守備面でも最終ラインの手前をプロテクトし、時には自ら最終ラインに入る対応をみせた。
アクラフ ハキミ アルフォンソ デイビスとのマッチアップは見応え十分。サイドを駆け上がり、逆サイドからの攻撃ではバイエルンのゴール前に詰める動きをみせた。
キリアン エンバペ 時間の経過とともに封じられた感はあるが、前半彼のスピードはバイエルンにも確実に脅威を与えていた。

投稿主選出の man of the match

ダヨ ウパメカノ

以上、バイエルン ミュンヘン 対 パリ サンジェルマン 戦のマッチレビューでした。

本レビューは、あくまで投稿主個人の考えや感想を記事にしたものです。
本レビューに対して、ご意見やご感想があれば下のコメント欄よりコメントを頂ければ幸いです。

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