欧州サッカー観戦記 22-23 ブンデスリーガ 第16節

RBライプツィヒ対バイエルンミュンヘン ブンデスリーガ

他国より長いW杯ブレイクが明けたドイツ、ブンデスリーガ
ブレイク明け初戦の注目カード、首位のバイエルンと3位ライプツィヒの上位対決は予想通りの激しい試合となりました
今回のサッカー観戦記はブンデスリーガの首位攻防戦、RBライプツィヒ 対 バイエルン ミュンヘン 戦をレビューします

RBライプツィヒ 対 バイエルン ミュンヘン

2023年1月21日 ドイツ ブンデスリーガ 第16節
RBライプツィヒ 1-1 バイエルン ミュンヘン

メンバー

RBライプツィヒ
監督 マルコ ローゼ

【スタメン】

21 ヤニス ブラスビヒ (GK)
2 モハメド シマカン
4 ビリ オルバン
7 ダニ オルモ
10 エミル フォルシュベリ
17 ドミニク ショボスライ
19 アンドレ シウバ
23 マルセル ハルステンベルク
24 ザベル シュラーガー
27 コンラート ライマー
32 ヨシュコ グバルディオル

【交代】

11 ティモ ベルナー (67分In)
➡フォルシュベリ Out
8 アマドゥ ハイダラ (82分In)
➡ダニ オルモ Out
16 ルーカス クロスターマン (82分In)
➡シマカン Out
22 ダビドラウム (90+2分In)
➡ハルステンブルク Out

バイエルン ミュンヘン
監督 ユリアン ナーゲルスマン

【スタメン】

27 ヤン ゾマー (GK)
2 ダヨ ウパメカノ
4 マタイス デリフト
5 バンヤマン パバール
6 ヨシュア キミッヒ
7 セルジュ ニャブリ
8 レオン ゴレツカ
10 レロイ ザネ
13 エリクマキシム チュポモティング
19 アルフォン ソデイビス
42 ジャマル ムシアラ

【交代】

11 キングスレイ コマン (68分In)
➡ムシアラ Out
25 トマス ミュラー (83分In)
➡ニャブリ Out
39 マティアス テル (85分In)
➡チュポモティング Out

基本システム

左:ライプツィヒ(白) 右:バイエルン(黒)

[システム図①]試合開始時

[システム図②]
67分ライプツィヒ ⑪ベルナー投入
68分バイエルン ⑪コマン投入

[システム図③]
82分ライプツィヒ ⑧ハイダラ、⑯クロスターマン投入
83分バイエルン ㉕ミュラー投入
85分バイエルン ㊴テル投入

[システム図④]
90+2分ライプツィヒ ㉒ラウム投入

得点

【37分・バイエルン】得点者:エリクマキシム チュポモティング(0-1)
ライプツィヒのプレスを外すと一気の縦攻撃でライプツィヒゴールを急襲
自陣ペナルティエリア内のフリーキックからの攻撃。ゴールキーパーのゾマーはペナルティエリア右脇ウパメカノにパス。マンツーマンでプレスを嵌めに来るライプツィヒはダニ オルモがウパメカノへプレスに行く。ウパメカノは右サイドにいるサイドバック(SB)のパバールを飛ばして、その前にいるザネへ浮き球のパス。
ザネは内側前方にいるゴレツカの方向へヘディングでボールを流す。このボールをゴレツカをマークしていたシュラーガーがカット。こぼれ球がザネの元に戻る。
ザネはダイレクトでゴレツカにパスを出すと、自身は中央方向へ進む。ゴレツカはダイレクトでボールをザネに戻す。このワンツーパスでシュラーガーと、ザネをマークしていたグバルディオルの2人を剥がしザネは中央方向へドリブルで進む。ここでバイエルンに攻撃のスイッチが入る。
ライプツィヒはザネに対してライマーが対応に行くが、その前方でバイエルンは右からチュポモティング、ムシアラ、ニャブリの3人がライプツィヒゴールに向けて走り出す。ライプツィヒの最終ラインはこの時オルバン、シマカンの2人でバイエルンは前線3対2の数的有利。
ザネは前線3人の中から一番遠い左サイドのニャブリにボールを出し、ボールを受けたニャブリはドリブルでサイドを進む。ライプツィヒの選手達は必死に自陣へ戻り守備体勢を体勢を築こうとするが、その前にペナルティエリア左角の手前まで到達していたニャブリがアーリークロスを上げる。
このクロスにゴール前ファーポスト側に飛び込んで来たチュポモティングが合わせてゴール。

【52分・ライプツィヒ】得点者:マルセル ハルステンベルク(1-1)
前向きの守備でボールを奪ったハルステンベルク、そのまま前に出てゴールも奪う
バイエルンゴール前でキミッヒが前方へクリアしたボールをハルステンベルクが前に出て胸でカットすると、自身はそのままゴール前に向けて進む。
カットされたボールをショボスライが前方ヘとディングで送ると、ペナルティエリア内でこのボールを受けたフォルシュベリがディフェンスライン裏の右ニアゾーンへスルーパス。アンドレ シウバがこのパスに反応し、ディフェンスに来たキミッヒを弾き飛ばす形で競り勝ちボールを収めるとマイナスのクロスを上げる。
このクロスをファーサイドでショボスライがヘディングシュートも、当たり損ねた事によりゴール前へ絶妙な折り返しとなりゴール前まで来ていたハルステンベルクが左足のスライディングシュートでゴール。

局面ごとの方針

ライプツィヒ

【ポジティブトランジション】
ボールを奪えば縦に進む事を最優先。
縦に進める状況であれば、オフザボールで複数の選手が縦方向へ一斉に動き出す。

【攻撃】
ビルドアップは2センターバック(CB)のオルバンとグバルディオル、ダブルボランチのライマーとシュラーガーの4人が2-2のスクエアで並び、その形を維持しながらパスを回す。シマカン、ハルステンベルクの両SBはビルドアップをサポートしつつボールが前に進めば前へと上がる。
攻撃の基本方針は縦に速く進む事。ボールが前に進めばサイドハーフ(SH)は中央へとポジションを絞り、SBもオーバーラップする際は(ポジションを絞った)SHの脇を通る。
チーム全体で陣形を絞り、オフザボールで複数の選手が縦方向に動き出す。縦方向に攻撃を展開するなかで、最も中央に位置する選手へ最優先でボールを送り最短距離でバイエルンゴールを目指す。中央を攻めるのでボールロストのリスクは高いが、仮にボールを失ってもカウンタープレスでボールの即時奪回を目指す。

[システム図⑤]ライプツィヒ、縦攻撃のイメージ図
㉗ライマーが㉔シュラーガーにパスを出しバイエルンのファーストプレスをかわすとオフザボールでSBの②シマカン、㉓ハルステンベルク、SHの⑰ショボスライ、⑦ダニ オルモの4人がバイエルンゴールに向かって動き出す。
下図ではより中央方向へと向かっているダニ オルモに縦パスをつける。ダニ オルモはバイエルン守備陣のプレッシャーを強く受けるが、そこを突破すれば大きなチャンスになる。
仮にボールを奪われても、中央に陣形を絞っているのでカウンタープレスに素早く移行できる。

【ネガティブトランジション】
ボールの即時奪回を目指し、素早くボールホルダーにアプローチ。その周囲でも素早くマークを掴みカウンタープレスを敢行する。
攻撃の時に狭いエリアを攻めるので、ボールを奪われても相手選手との距離が近く、短い時間でボールホルダーに寄せたりマークを掴む事が出来る。

【守備】
バイエルンのビルドアップに対するフォアプレス、アンドレ シウバとボールサイドのSHがバイエルンの2CBをマークし、フォルシュベリは中盤へのパスコースをみながらキミッヒをマーク。前線の動きに連動してチーム全体でマークを掴みボールが動けばボールサイドに陣形を絞りプレッシャーを強める。基本的にはプレスの初期段階からマンオリエンテッドにマークを掴む。
バイエルンがゴールキック(又はゴール付近のフリーキック)からリスタートの際は下図[システム図⑥]のような形でバイエルンのビルドアップに対して数的同数でマッチアップし、プレー開始時からマークを掴みプレスに行く。
ミドルサードの守備では4-2-4の陣形を組む。最前線戦は右からショボスライ、フォルシュベリ、アンドレ シウバ、ダニ オルモの並びで前に出てボールホルダーにプレッシャーをかける。
自陣に下がれば4-4-2のコンパクトなブロックを組む。ブロックを組む際に選手間の距離を詰め縦横をコンパクトに保ちボールホルダーに対して積極的に前に出てプレッシャーをかける。
ブロックをコンパクトに保つ事で、ボールホルダーに対して複数の選手でのアプローチがしやすくなる。特にバイエルンが左右のハーフスペースからブロック内に侵入を図る際はダブルチームで守る。

[システム図⑥]バイエルンがゴールキックからプレーを再開する時のマッチアップ図
バイエルンのビルドアップに対して数的同数でマッチアップ。
⑲アンドレ シウバと⑦ダニ オルモはバイエルンの2CB、④デリフトと②ウパメカノをマーク。
⑩フォルシュベリはボランチの⑥キミッヒをマーク。
⑰ショボスライは左SBの⑲アルフォンソ デイビスをマークし、㉓ハルステンベルクは前に出て右SB⑤パバールをマークする。

バイエルン

【ネガティブトランジション⇒守備】
ボールを奪われれば素早くマークを掴みカウンタープレスに行く。
ライプツィヒのビルドアップに対して、チュポモティングはライプツィヒの2CBにチェイシングをかけ、ムシアラは中盤へのパスコースを切る。前2人でボールをサイドに誘導し、中盤以降の選手はボールサイドにラインを絞ってマークを掴む。狭いエリアに相手を追い詰める形でプレスをかける。
ミドルサードの守備では4-2-3-1の陣形でチュポモティングがファーストディフェンダーとしてチェイシングをかけ、2列目以降の選手はラインを絞りボールサイドに陣形を寄せてマークを掴みに行く。

【ポジティブトランジション】
縦に進んで速く攻める事を最優先。
ボールホルダーがプレッシャーを受けたり、前方を塞がれた場合はボールをキープしてポゼッションへ移行する。

【攻撃】
ビルドアップはウパメカノ、デリフトの2CBとボランチの一角キミッヒが2-1に並んでパスを回す。右SBのパバールはサイドでビルドアップをサポートし、左SBのアルフォンソ デイビスは前に上がる。ゴレツカはCBからキミッヒへパスが繋がりにくい時はビルドアップをサポートし、ボールが前に進める状況なら前に出て後方と前線の中継点になる。
前進局面でボールホルダーがプレスを受けた時は、サポートに来た選手に一旦ボールを逃がし動き直してダイレクトでリターンパスを受けるか、オフザボールで動く3人目の選手にダイレクトでボールを捌く事でプレスを回避する。ここでボールを受けた選手が前を向ければ、それが攻撃のスイッチになる。プレス回避から縦攻撃の起点の役割は、主にゴレツカとザネが担う(プレス回避に関しては下図[システム図⑦-(1)、⑦-(2)]参照)。
攻撃のスイッチが入ればムシアラ、ニャブリ、チュポモティング等が縦方向に走り出し、速い攻撃でライプツィヒゴールへ迫る。
攻撃の基本方針は縦に速く攻める事だが、攻めるより早く前方のスペースを埋められたり、ボールロストのリスクが高い場合は一旦ボールをキープしてポゼッションオフェンスへ移行する。
85分に投入されたテルは左右に流れて2列目以降の選手が前線に入って来る動きを誘発する。

[システム図⑦-(1)]バイエルンのプレス回避(37分、先制点直前のプレー)
ライプツィヒのプレスに対して前方のザネにボールを送る
マンツーマンでプレスを行うライプツィヒに対して②ウパメカノは⑤パバールを飛ばしてSHの⑩ザネにボールを送る。
ザネはヘディングで⑧ゴレツカにボールを送るが、ゴレツカをマークする㉔シュラーガーにカットされボールは再びザネの元に来る

[システム図⑦-(2)]バイエルンのプレス回避(37分、先制点直前のプレー)
ザネとゴレツカのパス交換でライプツィヒのプレスを外した事が攻撃のスイッチとなる
カットされたこぼれ球を⑩ザネはダイレクトで⑧ゴレツカに送ると、中央方向へと走り出す。パスを受けたゴレツカはダイレクトでザネにリターンパス。このワンツーパスで㉜グバルディオルと㉔シュラーガーのプレスを剥がす。
ライプツィヒは㉗ライマーがザネに対応せざるを得ない状況となり、その前方ではバイエルンからみて3対2の数的有利がの状況が出来上がる。
ここでバイエルンに攻撃のスイッチが入り、⑬チュポモティング、㊷ムシアラ、⑦ニャブリがゴール方向に向けて走り出す。

この図の後、ザネは左サイドのニャブリにパスを送り、ニャブリのアーリークロスをチュポモティングが合わせて先制ゴールを挙げる。

試合の感想・ポイント

前半

ハイインテンシティなトランジションゲーム、前半はバイエルンが制する

両チームともに攻守両面でコンパクトな陣形を敷きネガティブトランジションではすぐにボールホルダーに寄せてカウンタープレスをかけ合うトランジションゲームの様相。
お互いにネガティブトランジションで強くプレスに行く分ポジティブトランジション側がプレスを外せばチャンス到来。素早く縦方向に攻撃を展開し相手ゴールへ迫る。
ハイインテンシティでハイスピードな展開のなか両チームともにチャンスを作るが、前半はバイエルンがより多くのチャンスを作る。
そしてバイエルンは37分にザネとゴレツカのワンツーパスでライプツィヒのプレスを剥がすと、その瞬間に前線の選手が一気に縦方向に走り出しライプツィヒゴールへと迫る。ライプツィヒ守備陣も必死に自陣へと戻り守備陣形を整えようとするが、バイエルンはその前に攻め切り先制ゴールを挙げる。
このゴールが前半唯一のゴールとなり、アウェイのバイエルンが1点のリードを奪い前半終了となった。

後半

後半、トランジションの攻防で優位に立ったホームのライプツィヒが反撃開始

後半も前半から引き続き、立ち上がりからハイインテンシティな攻防となる。
激しい攻防が続くなか、後半はライプツィヒがトランジションの攻防で優位に立つ。ボールをサイドへ誘導しようとするバイエルンに対してポジティブトランジションで先手を取り、中央へボールを送り強引にでも前進する事で試合の主導権を奪う。そして52分にハルステンベルクの前に出る守備からチャンスを作ると、最後は攻撃の起点となったハルステンベルクが自らゴールを奪いライプツィヒが同点に追いつく。
その後もライプツィヒが試合のペースを握るが、ゴールは奪えず。70分台に入りライプツィヒのプレー強度が徐々に低下しバイエルンがボールを持てるようになるが、その後ににゴールは生まれず。
W杯ブレイク明け直後の上位対決は、1対1の同点で試合終了となった。

試合全体の感想

ライプツィヒ、バイエルンともにネガティブトランジションでは素早くマークを掴みプレスに行き、攻撃に転じれば縦に速い攻撃で相手ゴールを目指す。

よく似たサッカーを志向する両チームだが、そのディテールには違いがあった。

 

守備に関してライプツィヒは初期の段階からマークを掴みに行くが、バイエルンは前線のチェイシングでボールをサイドに誘導してからマークを掴む事が多かった。

 

攻撃に関しても、縦攻撃をファーストオプションに据えているところは同じだが、ボールロストのリスクが高まっても縦にボールを差し込むライプツィヒに対して、バイエルンはボールロストのリスクが高まったり、前方のスペースを埋められていればポゼッションオフェンスに移行するオプションも持っていた。

選手寸評

ライプツィヒ
ザベル シュラーガー 攻撃では素早く前線にボールを繋ぎ、守備では中盤で激しくプレッシャーをかける。激しい攻防が続く試合の中で大きな存在感をみせていた。
マルセル ハルステンベルク 52分の同点ゴールは前へ出てボールをカットし、その流れのままゴール前まで進出する積極性によって生まれた。
ドミニク ショボスライ 中央レーンに進出し高い技術力でボールを前へと運ぶ。52分にはハルステンベルクのゴールを(本人の意図とは違う形になった可能性が高いが)アシストした。
アンドレ シウバ 前半はあまり攻撃に絡めなかったが、後半は頻繁に攻撃に絡みチームオフェンスを活性化。彼が如何に攻撃に絡むかがチームオフェンスのバロメーターになっていた。
バイエルン
ダヨ ウパメカノ 1対1での落ち着いた対応や広範囲のカバーリングなど、終始安定した守備対応をみせていた。
セルジュ ニャブリ 左サイドから素早く縦に動き出しライプツィヒゴールに迫る。37分の先制ゴールはライプツィヒの守備体勢が整う前に彼が正確なアーリークロスを入れた事によって生まれた。
エリクマキシム チュポモティング 先制ゴールを挙げた際のゴール前への飛び出しは、タイミングが素晴らしかった。放送席解説(スカパー)の風間八宏氏もゴール直前の動きを高く評価していた。

投稿主選出の man of the match

ザベル シュラーガー

以上、RBライプツィヒ 対 バイエルン ミュンヘン 戦のマッチレビューでした。

本レビューは、あくまで投稿主個人の考えや感想を記事にしたものです。
本レビューに対して、ご意見やご感想があれば下のコメント欄よりコメントを頂ければ幸いです。

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