欧州サッカー観戦記 22-23 セリエA 第16節

セリエA インテル対SSCナポリ セリエA

クバラツヘリアやオシムヘンの活躍により、国内公式戦無敗でリーグ戦でも首位を快走するナポリ
そのナポリをホーム、ジュゼッペメアッツァに迎えたインテルは如何にして戦うのか
今回のサッカー観戦記はイタリア セリエA、インテル 対 ナポリ 戦をレビューします

インテル 対 SSCナポリ

2023年1月5日 イタリア セリエA 第16節
インテル 1-0 SSCナポリ

メンバー

インテル
監督 シモーネ インザーギ

【スタメン】

24 アンドレ オナナ (GK)
9 エディン ジェコ
15 フランチェスコ アチェルビ
20 ハカン チャルハノール
22 ヘンリク ムヒタリアン
23 ニコロ バレッラ
32 フェデリコ ディマルコ
36 マッテオ ダルミアン
37 ミラン シュクリニアル
90 ロメル ルカク
95 アレッサンドロ バストーニ

【交代】

10 ラウタロ マルティネス (64分In)
➡ルカク Out
8 ロビン ゴゼンス (64分In)
➡ディマルコ Out
11 ホアキン コレア (76分In)
➡ジェコ Out
2 デンゼル ドゥンフリーズ (76分In)
➡ダルミアン Out
5 ロベルト ガリアルディーニ(83分In)
➡ムヒタリアン Out

SSCナポリ
監督 ルチアーノ スパレッティ

【スタメン】

1 アレックス メレト (GK)
3 キム ミンジェ
9 ビクター オシムヘン
13 アミル ラフマニ
17 マティアス オリベラ
20 ピオトル ジエリンスキ
21 マッテオ ポリターノ
22 ジオバンニ ディロレンツォ
68 スタニスラフ ロボツカ
77 クビツァ クバラツヘリア
99 アンドレ ザンボアンギサ

【交代】

81 ジャコモ ラスパドーリ (65分In)
➡ポリターノ Out
11 イルビング ロサーノ (65分In)
➡ジエリンスキ Out
7 エリフ エルマス (76分In)
➡クバラツヘリア Out
91 タンギ エンドンベレ (76分In)
➡ザンボアンギサ Out
18 ジオバンニ シメオネ (85分In)
➡ロボツカ Out

基本システム

左:インテル(青黒) 右:ナポリ(白)

[システム図①]
試合開始時

[システム図②]
64分インテル ⑧ゴゼンス、⑩ラウタロ マルティネス投入
65分ナポリ ⑪イルビング ロサーノ、(81)ラスパドーリ投入、(システム変更)

[システム図③]
76分インテル ②ドゥンフリーズ、⑪ホアキン コレア投入
76分ナポリ ⑦エルマス、(91)エンドンベレ投入、(中盤のポジションを修正)

[システム図④]
83分インテル ⑤ガリアルディーニ投入
85分ナポリ ⑱シメオネ投入、(前線のポジションを変更)

得点

【56分・インテル】得点者:エディン ジェコ(1-0)
自陣スローインからの速攻で先制点を挙げる
インテル自陣右サイドでのスローイン。
スロワーのダルミアンはムヒタリアンに向けて中央方向にボールをスロー。ムヒタリアンはボールを中方向に流す事で守備に来たザンボアンギサをかわしセンターサークルの少し後方でボールに追いつくと、ダイレクトキックで左サイドのスペースへロングボールを送る。
このロングボールに左サイドを走り込んで来たディマルコが追いつき、即ゴール前にクロスを上げると、ゴール前に走り込んで来たジェコがヘディングシュートをナポリゴールに叩き込み先制のゴールを挙げる。

[システム図⑤-(1)]ジェコ、先制点を挙げるまでの動き(1)
左サイドからのクロスを受ける為にゴール前へ走り込むジェコ
左サイドのスペースに出されたボールに㉜ディマルコが追いついたシーン。
⑨ジェコはゴール前に走り込むが、走るコースを微妙に変える事でマッチアップする⑬ラフマニに揺さぶりをかける。
ゴール前に到達したジェコはディマルコがクロスを上げる瞬間ニア方向へと走る進路を向ける。
ラフマニはボールへ視野を向ける直前にジェコがニア方向へ動いた為、ニア方向に意識が向く。

[システム図⑤-(2)]ジェコ、先制点を挙げるまでの動き(2)
プルアウェイでマッチアップマンを引き離しフリーになる
㉜ディマルコがクロスを上げたシーン。
⑨ジェコはラフマニの死角で逆方向へ動き直し距離を取るプルアウェイの動きでラフマニを引き離す。この時⑬ラフマニの意識はニア、視線はボールにありジェコの動きに対応できない。ゴール前で完全にフリーになったジェコは難なくヘディングシュートを決める。

ゴールを決める直前のジェコのプルアウェイ。

動き方自体はシンプルだが、ゴール前まで走り込む時の微妙に走る方向を変えるコース取りとの組み合わせや、動き直しのタイミングの良さが相まって効果は抜群だった。

局面ごとの方針

インテル

【ネガティブトランジション】
前半の立ち上がりは5-3-2のブロックを形成する事を優先する。
20分頃からは、前に出ながらボールホルダーに強く寄せてボールを奪いに行く事を優先する。

【守備】
前半立ち上がりの守備時の基本方針は5-3-2のブロックを組んでスペースを消す事。
ナポリのビルドアップに対してルカク、ジェコの2トップはナポリの2センターバック(CB)に対して間合いを取って牽制しながら中盤(主にロボツカ)へのパスコースを消し、2列目から後方は2トップの背後で5-3のブロックを敷いて待ち構える。

20分台に入ると、立ち上がりの守備戦術から一転。チーム全体で前に出てマークを掴み、積極的にボールを奪いに行く。
ナポリのビルドアップに対して2トップはナポリの2CBへアタッキングサードからプレスに行き、中盤はチャルハノールが大きく前進してロボツカをマーク。バレッラ、ムヒタリアンの両インテリオールも、各々ナポリのインテリオールをマークする。
フィールド左側ではウイングバック(WB)のディマルコが前に出てナポリの右サイドバック(SB)、ディロレンツォをマークしプレスが嵌ればCBのバストーニが上がって来てプレスに加勢する。
フィールド右側ではバレッラがジエリンスキをマークしつつ、右SBマティアス オリベラもケアする。
インテルがボールを動かせば、チーム全体でボールサイドにラインを絞る。
自陣の守備でも5-3-2の陣形を組めば、ボールホルダーに対して強くアプローチする。

クバラツヘリア対策、シュクリニアルがマッチアップしクバラツヘリアがアタッキングサードでカットインして来ればディフェンスラインはシュクリニアル側にラインを絞りクバラツヘリアの前を塞ぐ。

[システム図⑥]インテル、フォアプレス時のマッチアップ図
ナポリのビルドアップに対してに対して、下図のようにマッチアップ。
中盤では⑳チャルハノールは大きく前に出て、ナポリのアンカー(68)ロボツカを掴みに行く。
左WB㉜ディマルコも前に出てナポリの右SB㉒ディロレンツォを掴まえる。
左サイドでマークが嵌れば(95)バストーニが前にできてフォアプレスに加勢する。

【ポジティブトランジション】
縦方向に素早く前進する事を最優先。
この局面でのバレッラの動き出しが抜群に良く、ボールを奪えば彼を経由して前線にボールを送る事がチーム全体で共有されていた。
ナポリ側がマークを掴めばボールをキープしてポゼッションオフェンスへ移行する。

【攻撃】
基本方針は縦に速く攻める事。タメを作るよりも縦方向へ直線的にボールを運び、状況によっては後方からナポリのディフェンスライン裏のスペースへ直接ロングボールを送り、2トップを走らせる事もあった。
ビルドアップでは、CBのアチェルビは前に出てアンカーのチャルハノールとダブルボランチ気味に並び、シュクリニアルとバストーニの2人はディフェンスラインに残って4人が2-2のスクエアに並ぶ。この4人を起点にフィールド右側からはダルミアンとバレッラが、フィールド左側からはディマルコとムヒタリアンが各々縦方向にボールを運ぶ。特にダルミアンとバレッラが流動的に動くフィールド右側からの前進が有効で、ダルミアンは前線にボールが入ると右サイドからダイアゴナルランでゴール前へと侵入して行く。
ルカク、ジェコの2トップは攻撃の初期段階からディフェンスライン裏のスペースをフリーランニングで狙い続ける。

後半、2トップがラウタロとホアキン コレアへ変更されると、フォワードが下がってボールを受けてドリブルで仕掛けるシーンが多くみられるようになる。

[システム図⑦]インテル、ビルドアップ時の選手配置イメージ図
⑮アチェルビがディフェンスラインから中盤の底に上がり、最終ラインは㊲シュクリニアル、(95)バストーニ、中盤の底は⑳チャルハノール、アチェルビ。この4人が2-2に並び、攻撃の起点になる。ここからボールを左右に振ってボールを前に進め、状況によっては前線に直接ロングボールを入れる。
フィールド右側では㉓バレッラが右サイドに開き㊱ダルミアンは押し出されるように右サイドを上がる。この2人は状況に応じて流動的にポジションを入れ替える。

ナポリ

【攻撃】
ビルドアップはラフマニ、キム ミンジェの2CBの前にロボツカが立つ2-1の並びが起点となってパスを回しディロレンツォ、マティアス オリベラの両SBはビルドアップをサポートしつつボールが前に進めばサイドを上がる。ロボツカを中心に、敵ライン間にポジションを取るザンボアンギサ、ジエリンスキの両インテリオールへパスを差し込む。ディフェンスラインからロボツカにボールが入らない時はインテリオールのどちらか一方がパスを受けに下がる。
敵ライン間でボールホルダーが前を向けばサイドにボールを振りナポリディフェンスラインに対して仕掛けて行く。フィールド右側からの仕掛けはディロレンツォ、ポリターノのコンビネーション。フィールド左側からの仕掛けはクバラツヘリアの単独突破が中心。

後半65分、選手交代とともにシステムを4-2-3-1に変更。システム変更当初は攻撃方法に大きな変更はみられないように感じたが、76分にエンドンベレが投入されると中盤のロボツカ、エンドンベレ、ラスパドーリの3人が中央レーン付近に縦に並んで縦方向にボールを繋いで前進し、イルビング ロサーノ、エルマスの両サイドハーフが左右のハーフスペースから中央に入って来てインテルのディフェンスラインに対して仕掛ける。
85分、同点に追いつく為に攻勢をかけるべくロボツカに代えてシメオネを投入。シメオネは前線に張り、オシムヘンはポジションを若干下げてラスパドーリ、イルビング ロサーノとともにフィールド右側から前線に飛び込んでくる。
フィールド右側が積極的な攻撃姿勢をみせる一方、フィールド左側はエンドンベレがバランスを取る為に左SBに入るが、ポジションを上げたマティアス オリベラが左サイドで孤立するなど攻撃態勢を築く事ができなかった。

【ネガティブトランジション⇒守備】
基本方針はマンオリエンテッドにマークを掴む事。
ボールを奪われれば素早くマークを掴んでプレスに行く。特にインテル陣内ではマンオリエンテッドにマークを掴む傾向が強かった。
インテルのビルドアップに対してオシムヘン、クバラツヘリアの2人がインテルの最終ライン、バストーニとシュクリニアルをマークし、ザンボアンギサとジエリンスキの両インテリオールはアチェルビとチャルハノールをみる。ロボツカは中盤のフィルターとして2ライン間にポジションを取りインテルの前進に備える。
インテルのビルドアップにゴールキーパー(GK)のオナナが加わる場合、オシムヘンがGKへチェイシングに行き右サイドからポリターノが外切りでインテルのディフェンスラインに寄せて行く。

試合の感想・ポイント

前半

インテルが20分頃に積極策へと戦術を変更し試合の主導権を握る

立ち上がりナポリがポゼッションを握るも、インテルは堅い守備ブロックを築きナポリに簡単にはチャンスを作らせない。注目のクバラツヘリアに対してもシュクリニアルを中心に守備陣が上手く対応。前半のクバラツヘリアはカットイン一辺倒になっており、シュクリニアルに中央に誘導されているように感じた。
堅い守備ブロックで試合の流れを掴んだインテルは、20分を過ぎた辺りから守備戦術を積極策へ移行。ラインを上げて積極的に前に出てナポリ陣内でマンオリエンテッドにマークを掴みボールを奪いに行く。
攻撃でもインテルは素早く縦にボールを運び、2トップにボールを入れて決定機を作る。
前半両チームともに無得点だったものの、試合の主導権はインテルが握っていた。

後半

先制したインテル、対するナポリは逆転に向け策を講じるも実らず、今季国内初黒星を喫する

前半をいい流れで終えたインテルは、後半も立ち上がりから積極策に出る。ナポリのビルドアップに対するフォアプレスやネガティブトランジションで強度を上げボールを奪いに行き、ボールを奪えばバレッラを中心に縦方向へ直線的にゴールを目指す。
ナポリも前半は足元でボールを受ける事が多かったクバラツヘリアが、後半の立ち上がりは動きながらボールを受けカットインだけではなく縦突破も交えて仕掛け、チャンスを作るシーンもあった。しかしインテルはミドルサードでのマークの掴みも良く、ナポリの攻撃を封じる。クバラツヘリアも時間の経過とともに存在感が消えていった。
主導権を握り続けるインテルは56分にジェコのゴールで待望の先制点を挙げる。
苦しい展開のナポリは65分以降、選手交代やシステム変更で局面の打開を図るがインテルの堅い守備を崩すには至らない。
85分ナポリはシメオネを投入。アタッカーの数を増やし同点ゴールを狙うナポリ。フィールド右側からは何度か攻撃を作るも、フィールド左側では選手の配置や攻撃方法が不明瞭で攻撃を組み立てられない。結局ナポリは左サイドの機能不全が影響し、最後の攻勢をかける事ができずタイムアップ。
今シーズンここまで国内無敗を誇ったナポリに対しインテルが殊勲の勝利を挙げた。

インテルに対する感想

あの手この手で攻めてくるナポリを完封した守備は圧巻の出来で、ボール奪取後の動き出しも素晴らしかった。

スコアは1対0だが、内容的にはインテルの完勝だった。

 

ナポリに対する感想

インテルの出来が素晴らしかった事もありナポリの良さが殆ど出せず、注目のクバラツヘリアも不発だった。

試合終盤、スパレッティ監督の打つ手もクバラツヘリア同様不発に終わった。

選手寸評

インテル
エディン ジェコ 56分の先制ゴールを挙げた際のシュートまでのオフザボールの動きは秀逸。守備でもフォアプレスやプレスバックでチームに貢献する。
ニコロ バレッラ トランジションの攻防で優位に立ったチームの中でも彼のトランジション時の動きは抜群だった。ポジティブトランジションからの攻撃は彼を経由する事で加速していた。
ミラン シュクリニアル チームとしてクバラツヘリアを抑える事が出来たのは彼の対応が良かったから。また攻撃面でも正確なフィードをみせていた。
ハカン チャルハノール 後方から的確にボールを繋いで攻撃を組み立て、守備でも前方まで上がってロボツカをマークするなど攻守両面で重要な役割を担う。ブロゾビッチ不在を感じさせない活躍だった。
フェデリコ ディマルコ ナポリの右SB、ディロレンツォに激しく寄せてプレスのきっかけを作り、攻撃面ではジェコの先制ゴールをアシストした。
ナポリ
スタニスラフ ロボツカ 攻撃ではチャルハノールのマークやナポリの堅いブロックに苦戦したが、守備では中盤のフィルターとして体を張ったプレーをみせた。
キム ミンジェ ルカクとマッチアップし的確な守備で完封。守備能力の高さをみせた。
アンドレ ザンボアンギサ 中盤を広範囲に動き回り、インテルの堅い守備ブロックを崩すべく奮闘した。

投稿主選出の man of the match

エディン ジェコ

以上、インテル 対 SSCナポリ 戦のマッチレビューでした。

本レビューは、あくまで投稿主個人の考えや感想を記事にしたものです。
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