最後までもつれた2022年度J1リーグの優勝争いも、最終節で遂に決着
今回は横浜F・マリノスが3年ぶり5度目のリーグ優勝を決めた 対 ヴィッセル神戸 戦をレビューします
2022 J1リーグ 最終順位
順位 | クラブ | 勝点 | 得失点差 | 備考 |
1 | 横浜F・マリノス | 68 | 35 | ACL出場 |
2 | 川崎フロンターレ | 66 | 23 | ACL出場 |
3 | サンフレッチェ広島 | 55 | 11 | ACL予選出場 |
4 | 鹿島アントラーズ | 52 | 5 | |
5 | セレッソ大阪 | 51 | 6 | |
6 | FC東京 | 49 | 3 | |
7 | 柏レイソル | 47 | -1 | |
8 | 名古屋グランパス | 46 | -5 | |
9 | 浦和レッズ | 45 | 9 | |
10 | 北海道コンサドーレ札幌 | 45 | -10 | |
11 | サガン鳥栖 | 42 | 1 | |
12 | 湘南ベルマーレ | 41 | -8 | |
13 | ヴィッセル神戸 | 40 | -6 | |
14 | アビスパ福岡 | 38 | -9 | |
15 | ガンバ大阪 | 37 | -11 | |
16 | 京都サンガF.C. | 36 | -8 | 降格プレーオフ |
17 | 清水エスパルス | 33 | -10 | 降格 |
18 | ジュビロ磐田 | 30 | -25 | 降格 |
ヴィッセル神戸 対 横浜F・マリノス
2022年11月5日 J1リーグ 最終節(第34節)
ヴィッセル神戸 1-3 横浜F・マリノス
メンバー
ヴィッセル神戸
監督 吉田 孝行
【スタメン】
28 | 坪井 湧也 (GK) |
3 | 小林 友希 |
5 | 山口 蛍 |
10 | 大迫 勇也 |
11 | 武藤 嘉紀 |
16 | 汰木 康也 |
17 | 菊池 流帆 |
19 | 初瀬 亮 |
24 | 酒井 高徳 |
25 | 大崎 玲央 |
49 | 小林 裕希 |
【交代】
15 | マテウス トゥーレル (ハーフタイムIn) |
➡小林 友希 Out | |
8 | アンドレス イニエスタ (63分In) |
➡小林 裕希 Out | |
41 | 小田 裕太郎 (74分In) |
➡汰木 康也 Out | |
14 | 槙野 智章 (80分In) |
➡初瀬 亮 Out | |
30 | ステファン ムゴシャ (80分In) |
➡武藤 嘉紀 Out |
横浜F・マリノス
監督 ケヴィン マスカット
【スタメン】
1 | 高丘 陽平 (GK) |
2 | 永戸 勝也 |
5 | エドゥアルド |
6 | 渡辺 皓太 |
7 | エウベル |
8 | 喜田 拓也 |
11 | アンデルソン ロペス |
18 | 水沼 宏太 |
24 | 岩田 智輝 |
25 | 小池 龍太 |
30 | 西村 拓真 |
【交代】
23 | 仲川 輝人 (70分In) |
➡エドゥアルド Out | |
9 | レオ セアラ (85分In) |
➡アンデルソン ロペス Out | |
20 | ヤン マテウス (85分In) |
➡水沼 宏太 Out | |
16 | 藤田 譲瑠チマ (90+1分In) |
➡渡辺 皓太 Out |
基本システム
左:ヴィッセル神戸(臙脂) 右:横浜F・マリノス(白)
[システム図①]
試合開始時
[システム図②]
後半開始時 神戸 ⑮マテウス トゥーレル 投入
[システム図③]
63分神戸 ⑧イニエスタ投入
70分横浜FM ㉓仲川 輝人 投入
74分神戸 ㊶小田 裕太郎 投入
[システム図④]
80分神戸 ⑭槙野 智章、㉚ムゴシャ投入 システム変更
85分横浜FM ⑳ヤン マテウス投入
90+1分横浜FM ⑯藤田 譲瑠チマ 投入
得点
【26分・横浜FM】得点者:エウベル
エウベルがペナルティエリア左角付近からカットインし放ったシュートは大崎がブロック。ハーフウェイライン手前まで弾き返されたボールをエドゥアルドが拾い渡辺にパス。右ハーフスペースで渡辺→水沼→渡辺→小池とパスを繋ぐ。
ゴール前で永戸がフリーランニングでディフェンスラインの裏を狙う。小池は一旦ゴール前へのパス(永戸へのスルーパス)を狙うも難しいと判断し、右サイドに開いてきた水沼へのパスに切り替える。
ボールを受けた水沼はゴール前の永戸をターゲットにアーリークロス。このクロスは菊池にクリアされるが、コースが絶妙で菊池、酒井、ゴールキーパー(GK)坪井と神戸の3人の選手をゴール前に引き付ける事になる。
菊池がクリアしたこぼれ球を、左サイドで完全にフリーになっていたエドゥアルドがGK坪井の頭上を抜くヘディングシュートを放ちゴール。
[システム図⑤]26分横浜FM先制ゴール直前のプレー
㉕小池にボールが渡った時に②永戸がフリーランニングでディフェンスラインの裏を狙う
小池も永戸へのスルーパスを狙うが、右サイドの⑱水沼へのパスに切り替える
永戸、小池のディフェンスラインの裏を狙う一連の動きと、この図の後に出される水沼の絶妙なコースへのアーリークロスによりゴール左側で⑦エドゥアルドが完全にフリーになりる
【45+3分・神戸】得点者:武藤嘉紀
GK坪井からのゴールキック。大きく蹴ったボールをフィールド中央で大迫と競り合った岩田が弾き返し、そのボールをセンターサークル内で山口が拾う。
山口は右サイドをオーバーラップしてきた酒井にパス。ボールを受けた酒井はドリブルでジワジワと前進。すると今度は、パスを出した山口が酒井の更に外側を大回りしながらオーバーラップする。
酒井は上がって行く山口の動きをデコイに使い、山口とは逆に自陣方向に戻りながらフィールド内側を向き左足でクロスを上げる。
このクロスに岩田の前を取った武藤がヘディングで合わせてゴール。
【53分・横浜FM】得点者:西村 拓真
横浜FMは神戸陣内、ペナルティエリア左角の少し外側でフリーキックを得る。
セットされたボールに対して右利きの水沼、左利きの永戸が立つがキッカーは水沼で直接ゴールを狙う。GKの前でワンバウンドしたボールを坪井は何とか止めるも、弾いたボールに西村が素早く反応しシュート。勝ち越しのゴールを決める。
【73分・横浜FM】得点者:仲川 輝人
神戸陣内、横浜FMからみて右サイド。横浜FMがスローインで入れたボールを神戸は初瀬がクリア。クリアボールはハーフウェイラインを越える。
このボールをフィールド中央にいるエドゥアルドが左足で前方右サイドへ浮き球を送ると、アンデルソン ロペスがバックヘッドで右サイド裏にあるスペースへボールを流す。
スペースへ飛び出してきた水沼が、ボールを受け右サイド深くからペナルティエリア内に侵入、ゴール前にマイナスのクロスを送る。
フィールド中央をゴールに向かって走り込んで来た仲川はクロスが出るタイミングで右斜めに走る角度を変えると、このクロスにドンピシャで飛び込みゴール。
局面ごとの方針
ヴィッセル神戸
【攻撃】
ビルドアップは最終ライン菊池、小林友希の2センターバック(CB)と、その前に山口、大崎が立つスクエアの並びで、両サイドバック(SB)はビルドアップをサポートする。
小林裕希は前に上がりライン間にポジションを取るので攻撃時の陣形は4-2-3-1に近いものになる。トップ下近辺に上がった小林裕希はフィールドを左右に幅広く動く。
両ウイング(WG)のポジショニング、右の武藤は内に絞りセンターフォワード大迫に絡むようなポジションを取り、左の汰木はサイドに張る。
後方でのパス回しから大迫に縦パスを差し込む事で攻撃のスイッチを入れようとしていた。その為大迫はパスを受ける為にライン間まで下がる事が多かった。
[システム図⑥-(1)]攻撃時のポジショニング(前半)
⑲小林裕希がトップ下に上がり、⑩大迫は縦パスを受けに下りる
両WG、⑪武藤は中央に入って行き、⑯汰木はサイドに張る
後半は中盤のポジションを修正。ビルドアップの際に大崎はディフェンスラインのすぐ手前までポジションを下げ小林裕希、山口はライン間までポジションを上げる。
両WGは後半も武藤は内に絞り汰木はサイドに張るので、左重心は前半同様。
左SBの初瀬が盛んにボールを持ち上がる。
[システム図⑥-(2)]攻撃時のポジショニング(後半、45~62分)
㉕大崎はディフェンスライン付近までポジションを下げ、㊾小林裕希と⑤山口は前へ
⑪武藤は前半同様内に絞る
⑲初瀬が盛んにボールを持ち上がる
【ネガティブトランジション】
横浜FM陣内では、すぐにマークを掴み横浜FMの攻撃を抑えに行く。
【守備】
横浜FMのビルドアップに対して、大迫が横浜FMの2CBをみてアタッキングサードからチェイシングをかける。2列目は右から武藤、山口、小林裕希、汰木の順に並んでラインを組み横浜FMの2センターハーフ(CH)と両SBをマーク。ボールが中盤やSBに入ればプレスに行き、チーム全体でボールサイドに寄せて行く。
5レーンを埋めて攻撃してくる横浜FMに対して自陣ゴール前では山口か大崎がディフェンスラインまで下がる事で人数を合わせる。
後半、横浜FMのビルドアップに対して大迫、小林裕希の2人が横浜FMの2CBをみるようになる。
自陣に下がれば後半は4-4-2のブロックを敷き、63分以降は守備ブロックの並びが4-1-4-1になる。
横浜F・マリノス
【ポジティブトランジション】
積極的に前に出て前進を図る。
前進する際、オフザボールの選手はボールホルダーの近くから5レーンを埋めていく。
【攻撃】
ビルドアップは岩田、エドゥアルドの2CBと喜田、渡辺の2CHがスクエアに並んでパスを回し、小池、永戸の両SBは前へと上がる。ビルドアップから縦にボールを差し込めば水沼、西村、エウベル、アンデルソン ロペスの前4人と両SBは5レーンを埋め、状況に応じてレーンを入れ替えながら少ないタッチでパスを回して神戸の守備ブロックを崩しにかかる。
両サイドのポジショニング、右サイドは小池と水沼が流動的に動いてポジションを入れ替え、左サイドはエウベルがサイドに張って永戸がインナーラップでハーフスペースを突く。
2CHの役割は片方が前線の選手をサポートし、もう一方が中央後方でバランスを取る。状況に応じて2人で役割をシェアし合う。
【ネガティブトランジション】
どのエリアでボールを奪われても素早くマークを掴みボールホルダーへチーム全体で寄せて行きプレスに行く。
【守備】
神戸のビルドアップに対して積極的にフォアプレスに行く。中央のアンデルソン ロペス、右の水沼、左のエウベルの前3人が神戸の2CBとボールサイドのSBをマークし西村が大崎(又は山口)をマーク。前からプレスを嵌められると判断すれば西村が前線に加わり、前4人で神戸の4バックとGKを掴み、喜田と渡辺が神戸の中盤をマークする。
自陣に下がっても神戸陣内と同様にマンオリエンテッドにマークを掴む。
※横浜FMの「局面ごとの方針」に関してはこちら(J1リーグ 第24節 川崎F 対 横浜FM 戦)の記事でも説明しております。特にフォアプレスに関しては図解付きで説明していますので、もしよろしければご覧ください。
試合の感想・ポイント
前半
立ち上がり硬さのみえた横浜FM、しかしトラジションの攻防から試合のペースを掴む
試合開始直後、優勝へのプレシャーからか横浜FMの選手達の動きは硬く神戸に簡単に攻め込まれてしまう。また7分には神戸ゴール前の混戦の中でアンデルソン ロペスが神戸ゴールにボールを押し込み一旦はゴールと判定されるも、VARにより判定が覆りノーゴールとなるなど、横浜FMにとっては厳しい立ち上がりとなる。
しかし今シーズン、常に攻撃的姿勢を貫いてきた横浜FMは時間の経過とともに本来の動きを取り戻し、ネガティブトランジションで的確にマークを掴むようになっていく。
試合は両チームともにネガティブトランジションで素早くマークを掴み合う事でボール保持が頻繁に入れ替わる展開になる。トランジションが連続する状況になると横浜FMが優位性を築くようになり26分には文句無しの先制ゴールを挙げる。
トランジションの攻防で後手に回り苦戦する神戸。しかし神戸にもポゼッションを確立すれば威力のある攻撃をするだけの力があり、アディショナルタイムには山口を起点に右サイドから攻め込み、酒井のクロスを武藤が決めて同点に追いついてみせた。
後半
横浜FMが前半に築いた優位性を生かし勝ち越し、見事に2022年度のJリーグチャンピオンとなる
前半終了間際に同点に追いついた神戸は、後半に入り中盤のポジション修正や選手交代、80分にはシステムを変更するなどいくつもの手を打ち試合の流れを掴みに行く。しかしトランジションの攻防を制する事によって生み出される横浜FMの優位性を覆すには至らない。
そして横浜FMは53分にセットプレーから西村が勝ち越しゴールを挙げると、73分には仲川がダメ押しのゴールを決める。
試合はこのまま1対3で終了し横浜FMが勝利。3年ぶり5度目のリーグ優勝を達成した。
V神戸に対する感想
一番の敗因はトランジションの攻防で後手に回った事。
但し、ポゼッションを確立できさえすれば酒井や小林裕希など攻撃の鍵となる選手がフリーになり、そこから攻め込む事ができていた。
前半終了間際のゴールに関しても、酒井がクロスを上げた瞬間に武藤と大迫の2人が横浜FMのディフェンスラインに対して優位になるポジションを取るなど、攻撃力の高さは随所にみられた。
条件さえ整えば高い攻撃力を持っているチームなので、後は如何にして良い条件を整えるかが来季神戸が上位進出の為のポイントになるのではないだろうか。
横浜FMに対する感想
試合開始直後は優勝へのプレッシャーからか動きが硬かったが、時間の経過とともに本来の動きを取り戻したのはさすがだった。
非ボール保持時には素早くマークを掴み相手チームにプレッシャーをかけてボールを奪いに行き、ボールを奪えばオフザボールの選手が的確なポジションを取りテンポよくボールを動かしながら前進して相手ゴールに迫るサッカーをこの試合は勿論、シーズンを通して実践できていた。
エキサイティングな攻撃サッカーを貫いてのリーグ制覇。
横浜F・マリノスの選手、スタッフ、ファンの皆様には心からおめでとうございます、という気持ちです。
選手寸評
ヴィッセル神戸
武藤 嘉紀 | 前半アディショナルタイムの同点ゴールは、クロスの上がるタイミングで岩田の前に入りヘディングで合わせる見事なものだった。 |
酒井 高徳 | エウベルに対する守備対応もあり攻撃参加は少なかったものの、それでもアシストを記録したのはさすがだった。 |
初瀬 亮 | 後方から積極的にボールを持ち上がり、横浜FM陣内では汰木をサポートするなど攻撃面でチームに貢献した。 |
横浜F・マリノス
水沼 宏太 | 右サイドや右ハーフスペースでチャンスを作り続け、高精度のキックでチームの3得点全てに絡む大活躍だった。 |
小池 龍太 | サイド、ハーフスペース、中央と上がってくる際のレーンを的確に使い分け、攻撃に厚みをもたらした。 |
喜田 拓也 | 攻撃の起点として後方から前線にボールを繋ぎ、前線にボールが渡れば前線のサポートやネガティブトランジションに備えてのポジション取りを行うなど、渡辺と共にチームを支え続けた。 |
エウベル | 酒井や菊池とのマッチアップという事で思い通りに攻め込めない事もあったが、それでもチャンスを生かして先制ゴールを挙げた。 |
仲川 輝人 | 73分のゴールは、クロスが上がるタイミングでゴール前に侵入する角度を変える、見事なフリーランニングによってのもの。途中出場からでもしっかりと結果を出した。 |
投稿主選出の man of the match
水沼 宏太
熱戦が続いた2022年度のJ1リーグは横浜F・マリノスの優勝で幕を閉じました
熱い戦いを繰り広げた各チームの選手と、選手達を支えたスタッフや関係者の方々
誠にありがとうございました
来シーズンも今シーズン以上に熱い戦いを期待しております
以上、ヴィッセル神戸 対 横浜F・マリノス 戦のマッチレビューでした
本レビューは、あくまで投稿主個人の考えや感想を記事にしたものです
本レビューに対して、ご意見やご感想があれば下のコメント欄よりコメントを頂ければ幸いです
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