伝統の一戦エル クラシコ
前回の対戦ではバルセロナがサンチャゴ ベルナベウで歴史的な大勝を果たした
雪辱を果たしたいレアル マドリード、ベルナベウでの連勝を狙うバルセロナ
両チームの意地と意地がぶつかり合った公式戦通算250回目のエル クラシコの模様をレビューします
エル クラシコ 過去の戦績
国内リーグ戦
レアル マドリード 76勝 引分 35 FCバルセロナ 73勝
公式戦通算
レアルマドリード 100勝 引分 53 FCバルセロナ 97勝
レアル マドリード 対 FCバルセロナ
2022年10月16日 スペイン ラ・リーガ 第9節(エル クラシコ)
レアル マドリード 3-1 FCバルセロナ
メンバー
レアル マドリード
監督 カルロ アンチェロッティ
【スタメン】
13 | アンドリー ルニン (GK) |
2 | ダニエル カルバハル |
3 | エデル ミリトン |
4 | ダビド アラバ |
8 | トニ クロース |
9 | カリム ベンゼマ |
10 | ルカ モドリッチ |
15 | フェデリコ バルベルデ |
18 | オーレリアン チュアメニ |
20 | ビニシウス ジュニオール |
23 | フェルラン メンディ |
【交代】
12 | エドゥアルド カマビンガ (78分In) |
➡モドリッチ Out | |
21 | ロドリゴ (85分In) |
➡ビニシウス Out | |
11 | マルコ アセンシオ (88分In) |
➡ベンゼマ Out | |
22 | アントニオ ルディガー (88分In) |
➡カルバハル Out |
FCバルセロナ
監督 チャビ エルナンデス
【スタメン】
1 | マルクアンドレ テアシュテーゲン(GK) |
5 | セルヒオ ブスケッツ |
7 | ウスマン デンベレ |
8 | ペドリ |
9 | ロベルト レバンドブスキ |
20 | セルジ ロベルト |
21 | フレンキー デヨング |
22 | ラフィーニャ |
23 | ジュール クンデ |
24 | エリック ガルシア |
28 | アレックス バルデ |
【交代】
11 | フェラン トーレス (60分In) |
➡ラフィーニャ Out | |
18 | ジョルディ アルバ (60分In) |
➡バルデ Out | |
30 | ガビ (60分In) |
➡ブスケッツ Out | |
10 | アンス ファティ (73分In) |
➡デンベレ Out | |
19 | フランク ケシエ (83分In) |
➡ペドリ Out |
基本システム
左:レアルマドリード(白) 右:バルセロナ(臙脂・紺)
[システム図①]
試合開始時
[システム図②]
60分バルセロナ ⑪フェラン トーレス、⑱ジョルディ アルバ、㉚ガビ投入
[システム図③]
73分バルセロナ ⑩アンス ファティ投入
78分レアル ⑫カマビンガ投入
[システム図④]
83分バルセロナ ⑲ケシエ投入
85分レアル ㉑ロドリゴ投入
88分レアル ⑪マルコアセンシオ、㉒ルディガー投入
得点
【12分・レアル】得点者:カリム ベンゼマ
レアルは自陣ゴール前、カルバハルがダイアゴナルのロングパスを左サイドに送る。ビニシウスがこのボールをヘッドで後方のクロースに落とし、自身は前へと走り出す。ボールを受けたクロースはドリブルで前進しハーフウェイラインを越えると、ブスケッツに倒されながらも左サイドを走るビニシウスにスルーパス。
ビニシウスはクロースからのパスを受けると一気にゴール前へと到達し、ゴールキーパーのテアシュテーゲンと1対1。ビニシウスの放ったシュートはテアシュテーゲンがストップするも、こぼれ球をベンゼマが左足でゴールに蹴り込む。
【35分・レアル】得点者:フェデリコ バルベルデ
ハーフウェイライン付近右サイドでレアルのパスが乱れタッチラインを割りそうになったボールをカルバハルがスライディングで中央バルセロナゴール方向に蹴り込む。ボールはエリック ガルシアの背中に当たりバルセロナのディフェンスライン中央にあるスペースへと流れる。ビニシウスがこのボールを拾うと中央からバルセロナゴールに向けて進む。
バルセロナ守備陣もビニシウスに対して中央に寄せてプレスに行こうとするが、ビニシウスの脇に入って来たチュアメニにビニシウスがボールを落とすと、チュアメニは左サイドをオーバーラップしてきたメンディにパス。
メンディへのパスが通った時、レアルはベンゼマ、ビニシウス、チュアメニの3人がバルセロナのゴール前へ向けて走り込む。それに反応したバルセロナの選手達はペナルティエリア内に殺到。
ゴール前を固めようとするバルセロナの選手達の動きに相反するようにバルベルデがペナルティアークの後方にポジションを取ると、メンディはフリーになっているバルベルデにパス。バルベルデは冷静に右足を振り抜きボールはバルセロナゴールに突き刺さる。
[システム図⑤-(1)]35分のゴール直前のプレー
㉔エリック ガルシアの背中に当たったボールを拾った⑳ビニシウスは前進し、フィールド中央でバルセロナのディフェンスラインに対して仕掛ける
バルセロナの守備陣も中央に寄せてビニシウスに対応するが、ビニシウスはすぐ横に入って来た⑱チュアメニにボールを落とすと、チュアメニは左サイドの㉓メンディにパス
[システム図⑤-(2)]
㉓メンディにパスが入るとレアルは⑨ベンゼマ、⑳ビニシウス、⑱チュアメニの3人がゴール前に入って行く
レアルの3人の動きに引っ張られるようにバルセロナの選手達がゴール前に殺到
バルセロナの選手達の動きに相反するように⑮バルベルデはペナルティアーク後方にポジションを取りフリーになると、メンディはバルベルデにパス
メンディからのパスにバルベルデは右足を振り抜きシュートを決める
【83分・バルセロナ】得点者:フェラン トーレス
バルセロナのコーナーキック(CK)を一旦はレアル守備陣がクリア。ボールはバルセロナ側からみて左サイドに流れ、このボールをガビが体を投げ出すようなスライディングで、左タッチライン際のアンス ファティに繋ぐ。
アンス ファティはドリブルでバルベルデをブチ抜き左サイドを突破。ニアゾーン深くに侵入しマイナスのクロスをゴール前に入れる。このクロスに左ハーフスペースからゴール前に入って来たレバンドブスキがヒールで逆サイドに流すと、フェラン トーレスが左足で合わせてゴール。
【90+1分・レアル】得点者:ロドリゴ(PK)
レアル陣内の深い位置、レアル側からみて右サイドでバルセロナのパスが乱れた所をルディガーがボールをカットしダイレクトでバルベルデに繋ぐ。
バルベルデはドリブルで右サイドを上がって行きバルセロナの選手2人を剥がすと、フィールド中央に進路を取りペナルティエリア直前まで進むと、右ハーフスペースのロドリゴにパス。パスを受けたロドリゴはドリブルでペナルティエリア内に侵入するとディフェンスに来たエリック ガルシアと交錯する。
ロドリゴとエリック ガルシアが交錯した際、エリック ガルシアがロドリゴの足を踏んでいた事がVARにより発覚。PK判定となる。
このPKをロドリゴがゴール右側に蹴り込みゴール。
局面ごとの方針
レアルマドリード
【ポジティブトランジション】
モドリッチ、クロースにボールを預け、彼らを中心に前進。ビニシウスはディフェンスライン裏のスペースを狙って走り出す。
バルセロナのカウンタープレスが強ければバルベルデが中盤に下りてサポートに入る。
バルセロナがリトリートしスペースが埋まればポゼッションオフェンスに移行。
【攻撃】
ビルドアップはミリトン、アラバの2センターバック(CB)とチュアメニがトライアングルに並ぶ形。カルバハル、メンディの両サイドバック(SB)はビルドアップをサポートしつつボールが前に進めばサイドを上がる。状況によってはバルベルデが中盤に下りて来てビルドアップをサポート。
モドリッチとクロースが交互に下りて来てビルドアップからのボールを引き取り縦に前進し、チュアメニが後方でサポートに入る。
前進から崩しの局面、フィールドの右側はバルベルデが広範囲に動き空いた右サイドのスペースにカルバハルが上がって来る。バルベルデがタッチライン際に張ればカルバハルはハーフスペースを上がる。
フィールドの左側ではビニシウスが縦に仕掛け、メンディがサポートに入る。
スタジオ解説(wowow)の野口幸司氏は攻撃時にモドリッチやベンゼマがブスケッツの周囲にポジショニングし中央を起点に攻撃する事で、守備局面(バルセロナからみて攻撃局面)に移った時にブスケッツを封じる事ができていると説明していた。
後半、バルセロナがラインを上げてプレスの強度を上げてきた事もあり、後方でパスを繋ぐ事が難しいと判断すればロングボールを蹴る割合が増える。
【ネガティブトランジション】
バルセロナ陣内ではすぐにマークを掴みプレスに行く。
自陣では4-5-1の陣形を組んで、そこからマークを掴む。
【守備】
バルセロナのビルドアップに対してベンゼマとビニシウスがバルセロナの2CBをマークしモドリッチはブスケッツをマーク。セルジ ロベルトに対してはメンディが前に出てマークするが、チーム全体で左にスライドすればビニシウスがつく。
右サイドのバルベルデはフリーマン的に振る舞い、状況に応じて広範囲に動く。
[システム図⑥]バルセロナのビルドアップに対する守備
前線から前に出てプレスに行く
バルベルデは広範囲に動き状況に応じてフリーマン的に動き、マークを掴みに行く
バルセロナがポゼッションを確立すればリトリートして4-5-1の陣形を組み、そこからマークを掴みに行く。4-5-1からの守備の時はモドリッチがフリーマン的に振る舞い、前に出てボールホルダーに対してプレッシャーをかけたり、後方のスーペースを埋めたりする。
後半に入ると、リードしている事もあり時間の経過とともに前半よりも早いタイミングでリトリートするようになり、自陣での守備により重きを置くようになる。
バルセロナ
【ポジティブトランジション】
中盤の選手がボールを持てばできる限りボールを前に運ぶ。
レアルがリトリートすればポゼッションオフェンスに移行。
【攻撃】
ビルドアップは4バックの前にブスケッツが立つ4-1のならびでデヨング、ペドリの両インテリオールのうちのどちらか一方がボールを受けに下がり、もう一方のインテリオールは前に出る。
下がったインテリオール側のSBが攻め上がる事が多かったが、セルジ ロベルトは試合開始から暫くは、ビニシウス対策により攻撃時でも攻め上がる事はあまりなかった。ただ早い時間帯に失点した事もあり時間の経過とともに徐々にオーバーラップをするようになる。
マークを嵌めに来るレアルに対してエリック ガルシアがボールを持ち上がり中盤で数的有利を作ろうとする事が度々あった。
デヨングが下がってボールを引き取れば、ドリブルやパスアンドムーブで前に出る。放送席解説(wowow)の安永聡太郎氏はデヨングはクロースの背後のスペース、更にはその先のアラバの背後を狙って動いている説明していた。
[システム図⑦]デヨングの狙い
㉑デヨングは青丸で囲ったエリア(⑧クロースの背後)への侵入を狙い、更には④アラバの裏までをも狙う
レバンドブスキがパスを受けに中盤まで下がればデンベレが前線中央へと入って行き、空いた左サイドにはバルデが上がって行く。そこへペドリがボールを供給する。
アタッキングサードでの崩しはラフィーニャ、デンベレの両ウイング(WG)が中心。彼らが仕掛けゴール前ではレバンドブスキがラストパスやクロスに備えてポジションを取る。
後半のビルドアップはクンデ、エリック ガルシアの2CBとブスケッツのトライアングルが中心になり、両SBは前半と比較すると高い位置にポジションを取る。また、CBがボールを持ち上がる回数も増える。この変化はレアルが前半より早いタイミングでリトリートするようになったことによるものと思われる。
60分の選手交代でブスケッツに代わりデヨングがアンカーに入り攻撃の組み立てに更なる変化がある。組み立ての変化について解説の安永氏は、ブスケッツは長短のパスで選手同士の距離感に変化をつけるのに対して、デヨングはドリブルでボールを持ち上がる事によって距離感に変化をつけると説明していた。
また、フィールドの左側ではデンベレが左サイドに張ってバルデが左ハーフスペースを上がるパターンが後半にみられた。
【ネガティブトランジション⇒守備】
レアル陣内でボールを奪われれば素早くマークを掴んでカウンタープレスに行く。
レアルのビルドアップに対しては、レバンドブスキとインテリオールの一方がレアルの2CBをマークしもう一方のインテリオールはチュアメニをみる。レバンドブスキと両インテリオールの動きに連動して周囲の選手もマークを掴んで行くが、解説の安永氏は後方で数的有利を確保する為に(ビニシウス対策か…)メンディは空けている、と指摘していた。
ただ後半はラフィーニャ、デンベレの両WGがレアルの両SBにビルドアップの初めからマークにつく事もあった。
レアルがポゼッションを確立すればリトリートして4-1-4-1の陣形を敷いて、そこからマークを掴みに行く。
試合の感想・ポイント
前半
レアルが効果的な攻撃で2点を奪い優勢に試合を進める
レアルはフィールド中央を起点にバルベルデやビニシウスが効果的な働きをし2点を奪う。
バルセロナは後方から中盤でのパス回しは決して悪くはなかった。ただインテリオールのうちの1人がブスケッツと並びダブルボランチのような形になったり、セルジ ロベルトが立ち上がりにディフェンスラインに留まりあまり攻め上がらなかったりと、やや後方に重心が傾いているように感じた。
その影響もあってかバルセロナは20分台から30分過ぎまでのペースを握った時間帯で、レアル陣内に盛んに攻め込むもフィニッシュの場面ではゴール前の人数が足りていない事がよくあった。
後半
バルセロナが前へ出る姿勢をみせるも、レアルが的確に対応
後半に入りバルセロナは攻守両面で前への圧力を強める。それによりレアルは攻撃時に後方からのロングボールを多用するようになり、守備でもリトリートする事を優先しラインを下げる。
ただレアルは自陣に下がってからの守備におけるマークの掴み、特に4バックのマークの掴みが非常に良く、バルセロナの選手がフリーランニングでゴール前に入って来たり、オフザボールの動きでマークを外しにかかってもレアルの守備陣は的確に対応し確実にバルセロナの選手を掴まえていた。
またレアルは攻撃面でもアディショナルタイムにみせたバルベルデの自陣からバルセロナゴール前へのドリブルでの持ち上がりのように、バルセロナの前進を一撃でひっくり返す力を持っていた。
レアルに対する感想
前半は中央を起点にバルベルデやビニシウスを走らせる攻撃が冴え渡る。また中央を起点にする事でブスケッツを攻撃時に孤立させるなど、バルセロナ対策も上手くいっていた。
後半は4バックの自陣ゴール前でのマークの掴みが抜群に良く、1点は失ったものの、ほぼ危なげなく逃げ切った。
バルセロナに対する感想
後方からの攻撃の組み立ては決して悪くはなく、パスを繋いでレアル陣内深くまで攻め込む場面は何度もみられた。但し最後の崩しの局面ではデンベレやレバンドブスキへの依存度が高いように感じた。
また守備面でも35分の失点シーンのように、ゴール前の人数は揃っているにもかかわらずマークが曖昧で最後はバルベルデにフリーでシュートを打たれてしまっていた([システム図⑤-(1)(2)]参照)。
この試合では、ファイナルサードでのプレーに課題があると感じた。
試合全体の感想
ミドルサードの攻防は両チームが高いレベルで拮抗していると感じた。
それに対してファイナルサードの攻防ではレアルが一枚上手で、その差がスコアに現れた試合だった。
特に象徴的だったのが35分、レアルが2点目のゴールを挙げたシーン([システム図⑤-(1)(2)]参照)。
レアルはベンゼマ、ビニシウス、チュアメニの3人が的確なコース取りのフリーランニングでゴール前に侵入してバルセロナのディフェンスラインを押し込み、バルベルデはディフェンスラインの前側で留まりフリーになった。
バルセロナはゴール前に人数はいるもののベンゼマ、ビニシウス、チュアメニを掴み切れておらず、最終的にバルベルデにフリーでシュートを打たれてしまう。ゴール前でのマークの掴みが的確だったレアルの守備とは対照的な対応だった。
選手寸評
レアルマドリード
フェデリコ バルベルデ | 自陣での攻撃の組み立て、敵陣へ侵入する為のボールの持ち上がり、アタッキングサードでの崩しからフィニッシュと攻撃のあらゆる局面に関与しチームに貢献。リーグ公式が選ぶこの試合のMVPに選出。 |
ビニシウス ジュニオール | ゴールやアシストは無かったが、前半の2得点は彼の仕掛けがもたらしたもの。高い個人能力を確実にチームに還元している。 |
ルカ モドリッチ | 攻撃では巧みなゲームメイクをみせ、守備でもチェイシングから後方のスペースのカバーと今日も攻守でハイレベルにチームに貢献。 |
オーレリアン チュアメニ | トライアングルの底に入ってチームメイトをサポートし、ボールを受ければ的確に前にボールを繋ぐ。まさに縁の下の力持ち。 |
エデル ミリトン | レアルのディフェンスラインは自陣ゴール前でのマークの掴みが的確だったが、その中心を彼が担っていた。 |
トニ クロース | 厳しいプレスを受けても高い技術力でプレスを剥がして的確にパスを繋ぐ。12分の先制ゴールも彼がブスケッツに倒されながらビニシウスに出したパスがきっかけだった。 |
バルセロナ
フレンキー デヨング | 後方からの前線へのパスの繋ぎや前方へのボールの持ち上がりなど、個人としては良いプレーをみせていた。 |
エリック ガルシア | ビルドアップから中盤へ縦や斜めに差し込むパスの質は非常に高かった。また、ドリブルによるボールの持ち上がりも良かった。 |
ガビ | 攻守でボールに食らいつくプレーをみせた。83分のゴールもCK後のボールを彼が体を張ってアンス ファティへ繋いだ事によって生まれた。 |
アンス ファティ | 83分のゴールに繋がるドリブル突破は見事だった。途中出場ながらインパクトを残した。 |
投稿主選出の man of the match
フェデリコ バルベルデ
以上、レアル マドリード 対 FCバルセロナ 戦のマッチレビューでした
本レビューは、あくまで投稿主個人の考えや感想を記事にしたものです。
本レビューに対して、ご意見やご感想があれば下のコメント欄よりコメントを頂ければ幸いです。
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