欧州サッカー観戦記 22-23 セリエA 第7節

ACミラン対SSCナポリ セリエA

今シーズンの公式戦無敗を誇るミランとナポリの直接対決
試合は首位攻防戦にふさわしく、ハイレベルな攻防が繰り広げられる好ゲームとなる

ACミラン 対 SSCナポリ

2022年9月19日 イタリア セリエA 第7節
ACミラン 1-2 SSCナポリ

メンバー

ACミラン
監督 ステファノ ピオーリ

【スタメン】

16 マイク メニャン (GK)
2 ダビデ カラブリア
4 イスマエル ベンナセル
8 サンドロ トナーリ
9 オリビエ ジルー
19 テオ エルナンデス
23 フィカヨ トモリ
24 シモン ケア
33 ラデ クルニッチ
56 アレクシス サレマーケルス
90 シャルレ デケーテラール

【交代】

20 ピエール カルル (ハーフタイムIn)
➡シモン ケア Out
21 セルジーニョ デスト
(ハーフタイムIn)
➡カラブリア Out
10 ブラヒム ディアス (66分In)
➡クルニッチ Out
30 ジュニオール メシアス (66分In)
➡サレマーケルス Out
7 ヤシン アドリ (82分In)
➡デケーテラール Out

SSCナポリ
監督(代理) マルコ ドメニチーニ

【スタメン】

1 アレックス メレト (GK)
3 キム ミンジェ
6 マリオ ルイ
13 アミル ラフマニ
20 ピオトル ジエリンスキ
21 マッテオ ポリターノ
22 ジオバンニ ディロレンツォ
68 スタニスラフ ロボトカ
77 クビツァ クバラツケリア
81 ジャコモ ラスパドーリ
99 アンドレ ザンボアンギサ

【交代】

18 ジオバンニ シメオネ (66分In)
➡ラスパドーリ Out
23 アレッシオ ゼルビン (66分In)
➡ポリターノ Out(怪我)
7 エリフ エルマス (87分In)
➡ジエリンスキ Out
91 タンギ エンドンベレ (87分In)
➡クバラツケリア Out
17 マティアス オリベラ (90+1分)
➡マリオ ルイ Out

基本システム

左:ミラン(赤黒) 右:ナポリ(青)

[システム図①]
試合開始時

[システム図②]
後半開始時
ミラン ⑳カルル、㉑デスト投入
ナポリ ポジション修正

[システム図③]
66分ミラン ⑩ブラヒム ディアス、㉚ジュニオール メシアス投入
66分ナポリ ⑱シメオネ、㉓ゼルビン投入(ポリターノ怪我) ポジション修正

[システム図④]
82分ミラン ⑦アドリ投入
87分ナポリ ⑦エルマス、(91)エンドンベレ投入
90+1分ナポリ ⑰オリベラ投入

得点

【55分・ナポリ】得点者:マッテオ ポリターノ(PK)
ポリターノがミラン陣内の右サイド、アタッキングサードに侵入しサイドチェンジ。左サイドでマリオ ルイがボールを受けて、クバラツケリアにパス。
クバラツケリアはデストとの1対1。カットインとみせての切り返しで突破を図るクバラツケリアに対してデストはペナルティエリア内で脚をかけてしう。

このプレーに対してVARの介入があり、PK判定となる。

PK、ポリターノが左足でゴールキーパー、メニャンの左下を抜くシュートを放ちゴール。

【69分・ミラン】得点者:オリビエ ジルー
ハーフウェイライン付近、カルルからの横パスを左ハーフスペースで受けたトモリがブラヒム ディアスへ縦パス。
ブラヒム ディアスはダイレクトのヒールパスでライン間にいるデケーテラールにボールを渡し、攻撃のスイッチが入る。デケーテラールは左サイドを駆け上がるテオ エルナンデスへスルーパス。
テオ エルナンデスはニアゾーン深くへと侵入し、ゼルビンと競り合いながらもゴール前へグラウンダーでのマイナスの高速クロスを入れる。このクロスをジルーが左足で合わせてゴール。

【78分・ナポリ】得点者:ジオバンニシメオネ
フィールド中央、ハーフウェイライン付近のラフマニから右サイドを上がっていたディロレンツォへフィードが入る。前線ではシメオネがフィールド左側からダイアゴナルランでゴール前へと入って来ると、ディロレンツォはシメオネにパス。
パスを受けたシメオネに対してミランはカルル、トナーリ、ベンナセルの3人がプレスをかける。プレスを受けたシメオネは下がりながらボールをキープすると左ハーフスペースのマリオ ルイへボールを逃がす。
ボールを捌いたシメオネはすぐにゴール方向に体を向き直すと、素早くゴール前に侵入。プレスに来た3人を置き去りにする。
左ハーフスペースでボールを受けたマリオ ルイは間髪入れずにストレート系の高速クロスをゴール前に入れると、センターバック(CB)トモリの背後から前を取ったシメオネがヘディングでボールをミランゴールに叩き込む。

[システム図⑤-(1)]シメオネがゴールするまでの流れ
ゴール前でパスを受けた⑱シメオネに対して、ミランは⑳カルル、⑧トナーリ、④ベンナセルがプレスに行きシメオネを押し戻す
プレスを受けたシメオネは下がりながらボールをキープし⑥マリオ ルイへパス

[システム図⑤-(2)]
パスを捌いた⑱シメオネはすぐに体をゴール方向に向き直すと、素早くゴール前へ侵入
プレスにいった⑳カルル、⑧トナーリ、④ベンナセルは置き去りにされる
ボールを受けた⑥マリオ ルイはミランの最終ラインが整っていないとみて、間髪入れずにゴール前へクロス
クロスが上がった瞬間、シメオネは㉓トモリの背後から前を取る動きでトモリの前に入りヘディングでゴールを奪う

シメオネのオフザボールでの素晴らしい動き、ボールを受け間髪入れずにクロスを上げたマリ オルイの判断とボールの質、2つの要素が合わさってゴールが生まれた

局面ごとの方針

ミラン

【ネガティブトランジション】
アタッキングサード、ミドルサードでは人を掴みに行く。素早くマークを掴んでプレスに行く。

【守備】
ナポリのビルドアップに対して前線はジルー、デケーテラールの2枚、2列目はサレマーケルス、トナーリ、クルニッチの3枚が3-2の並びでナポリのCBと中盤に対して前に出てプレスをかける。ナポリがサイドバック(SB)にボールを逃がせば、ボールサイドのSBが上がってプレスをかける([システム図⑥]参照)。
自陣では4-4-1-1の陣形を組みカラブリアがクバラツケリアを、トモリがラスパドーリをマークし、シモン ケアはカバーポジションに入る。

[システム図⑥]ナポリのビルドアップに対する守備
⑨ジルー、(90)デケーテラールがナポリの2CBをマークし(56)サレマーケルス、⑧トナーリ、㉝クルニッチがナポリの中盤を抑えに行く
ナポリがSBにボールを逃がせばSBが上がってプレスをかける
図ではナポリが右SBにボールを出したので左SBの⑲テオ エルナンデスが上がって来てプレスをかける

SBが前に出るので非常にリスクの高いプレスだが、上手くマークを嵌め込み高い効果を発揮していた
プレスを外された時は、中盤の底に構えるベンナセルのフィルター役としてカバーに入る
ベンナセルのカバーリングもこの守備戦術のポイントの一つである

【ポジティブトランジション】
基本方針は縦に進む事。最優先はジルーにボールを当て、ジルーの落としに対して周囲の選手が縦方向にサポートする。

【攻撃】
ビルドアップはシモン ケア、トモリの2CBの前にベンナセルが立つ2-1の並びでパスを回す。カラブリア、テオ エルナンデスの両SBとトナーリは前に出る。前半の立ち上がり、テオ エルナンデスが最終ラインに入る3-1の並びの時もあった。
ナポリの守備はジエリンスキとラスパドーリがシモン ケアとトモリをみるので、時間の経過とともにベンナセルがシモン ケアの脇に下がって3対2の数的有利を作るようになる([システム図⑦]参照)。
サレマーケルス、デケーテラール、クルニッチの2列目3枚と上がって来たトナーリの4人が中央に絞ってポジショニング。この4人に縦パスを差し込むか、前線のジルーにロングボールを入れると攻撃のスイッチが入る。前線と2列目の5人が近い距離でサポートし合いながら縦へ進み、ディフェンスラインの攻略を図る。
ナポリ守便陣が中央を固めればカラブリア、テオ エルナンデスの両SBがサイドのスペースを突く。

後半、ビルドアップでベンナセルがディフェンスラインまで下がる際、CB間に入る事が増える。
SBは前半より更に高いポジションを取り、上がって来たSBを使う割合も増える。特に左サイドのテオ エルナンデスが積極的な仕掛けをみせ、サイドの深い位置やニアゾーンに侵入する。テオ エルナンデスが仕掛けるとチーム全体でも前にポジションを押し上げ、4~5人の選手がペナルティエリアに入って来る。

[システム図⑦]ミラン、前半のビルドアップ
④ベンナセルがCB脇に下がる事で3対2の数的有利を作る

ナポリ

【ネガティブトランジション】
ボール周囲の選手がボールホルダーに対してアプローチし、それ以外の選手はブロックを形成する。

後半立ち上がりはチーム全体でマークを掴んで間合いを詰めボールを奪いに行く。
55分に先制しリードを奪うと徐々にリトリートする割合が増えていく。シメオネはボールホルダーに対してアプローチするが、それ以外の選手はブロックを形成しスペースを埋める。

【守備】
ミランのビルドアップに対してはジエリンスキが前に出てラスパドーリと2人でミランの2CBをみて、その後ろは4-4の2ラインでブロックを敷く。
ミドルサードでも4-4-2の並びのブロックディフェンスを行う。

後半立ち上がりは、チーム全体でラインを上げミラン陣内では前に出てマークを掴みに行く。
先制点を上げた後は、時間の経過とともにブロックディフェンスへ移行していく。陣形も4-1-4-1になり、ミランの後方でのパス回しに対してはシメオネが単独でチェイシングに行く。

【ポジティブトランジション】
ミランは前掛かりに来る分前方にスペースがあるが、無理にスペースを突くのではなくボールを繋ぐ事を優先する。

【攻撃】
ビルドアップはラフマニ、キム ミンジェの2CBの前にロボトカが立ち、サイドではディロレンツォ、マリオ ルイの両SBがサイドでプレスの逃げ場としてビルドアップをサポートするので4-1から2-3的な並びになる。
サイドにボールを振りSB、ロボトカ、ボールサイドのインテリオールの3人でトライアングルを形成しミランのプレスを剥がしに行く。サイドでプレスを外せば(剥がせば)ロボトカを経由してボールを逆サイドに振る。ラスパドーリも中盤に下りてパスの受け手になる。
左右に幅広くボールを動かしサイドにスペースができればポリターノ、クバラツケリアの両ウイング(WG)がサイドから仕掛ける。
ミランがリトリートした場合のポゼッションオフェンスではジエリンスキがパス回しの中心になり、クバラツケリアをメインに使おうとする。

後半に入り攻撃時のポジションを修正。ジエリンスキは前に出てザンボアンギサとロボトカがダブルボランチ気味に中盤の底に入るので4-2-3-1に近い並びになる([システム図②]参照)。
ミランのフォアプレスに対して、SBにボールに入った時にザンボアンギサとロボトカが近い位置でサポートに入り、少ないタッチでボールを回してプレスを剥がしにいく。
途中出場のシメオネは前線に張る。

試合の感想・ポイント

前半

効果的なフォアプレスでミランが主導権を握る

強力なフォアプレスが嵌り、ミランがナポリをナポリ陣内に閉じ込める。そして攻撃に移れば個人の突破力に頼るのではなくコンビネーションでディフェンスラインの攻略を図りチャンスを作った。
ミランの激しいプレスに遭い思うように攻められないナポリ。注目のクバラツケリアもカラブリアやシモン ケアに厳しくマークされチャンスを作れない。結局ナポリは、ジエリンスキが何度かミラン陣内にボールを運んだ以外は攻撃の形を作れなかった。

後半

攻守で前に出るミランとボールを繋いでプレスを剥がすナポリ、激しい攻防をナポリが制する

前半押し込まれたナポリ。しかし後半は立ち上がりから守備で前に出る姿勢をみせ、試合の流れを掴みに行く。すると57分クバラツケリアの個人技が炸裂。デストからPKを奪うと、このPKをポリターノが決めてナポリが先制ゴールを奪う。
ナポリは先制点を挙げると、一転してミランボールになるとリトリートするようになる。ミランにとってはディフェンスラインでのパス回しに対するプレッシャーが弱まる。
そして69分、ミランはディフェンスラインでのパス回しからトモリが中盤のブラヒム ディアスに縦パスを差し込むと、ブラヒム ディアスのダイレクトパスを起点に攻撃を展開。最後は左ニアゾーンを突破したテオ エルナンデスのクロスをジルーが合わせ、ミランが同点に追いつく。

その後、攻守で前へ前へと前掛かりに前進するミランと、守備ではリトリートするもののボールを持てばパスを繋いでプレスを剥がしにかかるナポリという攻防が続く。
そして78分、ミランゴール前でボールを受けた後、一旦はミラン守備陣のプレッシャーを受け後退させられたシメオネが、パスを捌いてからのオフザボールで質の高い動きをみせ勝ち越しゴールを奪う。
このゴールが決勝点となりナポリが無敗同士の首位攻防戦を制した。

ミランに対する感想

敗れたとはいえミランのサッカーの質自体は高いと感じた。

守備面ではかなりリスキーなフォアプレスを敢行していたが、人を掴む動きとスペースを埋める動きのバランスが素晴らしく、それにより守備がよく機能していた。

 

攻撃面ではラファエウ レオンが出場停止により欠場した事もあり、ボールホルダーに対するサポートを厚くしコンビネーションでディフェンスラインを崩す攻撃を選択。デケーテラールを中心に何度かいい形を作る事ができた。

惜しむらくはナポリのGKメレトの好セーブにより決定機を防がれた事か。

 

ナポリに対する感想

ミランのフォアプレスに苦しめられたが、逃げずにしっかりとボールを繋ぐサッカーに徹した事が後半の勝ち越しに繋がった。

チャンスは少なかったがクバラツケリアの突破力と、シメオネのオフザボールの動きの質はチームにとって大きな武器という事が良く伝わる試合だった。

選手寸評

ミラン
テオ エルナンデス 前半はサイドからボールを持ち上がり、後半はWGのような高い位置でのポジショニングでサイドから仕掛けてチャンスメイク。69分にはジルーの得点をアシストする。
オリビエ ジルー 得意のポストプレーでボールを収め、前線で攻撃の起点になる。69分には同点に追いつくゴールを決める。
シャルレ デケーテラール バイタルエリアでミラン攻撃陣のリンクマンとしてのタスクをこなす。攻撃の中心的役割を担っていた。
イスマエル ベンナセル 後方からのパス回しで攻撃を組み立て、相手ボールになれば前掛かりなチームの中で中盤のフィルターとしてチームに貢献した。
フィカヨ トモリ ナポリのセンターフォワードに対して厳しくマークにつき、攻撃では鋭いフィードを繰り出し中盤にボールを供給。69分の同点ゴールは彼の縦パスが起点だった。
ナポリ
ジオバンニ シメオネ 78分の決勝ゴール、一旦はミランディフェンス陣のプレッシャーを受けるも、左サイドにボールを捌いた後のオフザボールの動きは見事だった。
マリオ ルイ ミランのプレスを受け苦しむ時間帯もあったが、それでも左サイドを精力的に上下に動き続ける。78分の決勝ゴールをアシストした際、ボールを受け間髪入れずにクロスを上げた判断は素晴らしかった。
クビツァ クバラツケリア ミランディフェンス陣の厳しいマークに遭い思うようにプレーできない事が多かったが、それでも51分には鋭い切り返しからファウルを誘いPKをゲット。ゴールに繋がる仕事をした。
ピオトル ジエリンスキ ミランが厳しいプレスをかけて来るなかでも、後方と前線を繋ぐリンクマンとしての役割をこなし、チームの攻撃に貢献した。
アレックス メレト 決定的なピンチで好セーブをみせる。彼の活躍がなければ試合の結果は違っていたかもしれない。

投稿主選出の man of the match

ジオバンニ シメオネ

以上、ACミラン 対 SSCナポリ 戦のマッチレビューでした

本レビューは、あくまで投稿主個人の考えや感想を記事にしたものです。
本レビューに対して、ご意見やご感想があれば下のコメント欄よりコメントを頂ければ幸いです。

 

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