欧州サッカー観戦記 22-23UEFAチャンピオンズリーグ グループステージ 第2節

バイエルンミュンヘン対FCバルセロナ UEFAのコンペティション

欧州サッカー観戦記
今回はUEFAチャンピオンズリーグ、グループステージの第2節から
死のグループと呼ばれるグループCの中でも最注目の一戦
バイエルン対バルセロナの試合をレビューしたいと思います

バイエルンミュンヘン 対 FCバルセロナ

2022年9月14日 UEFAチャンピオンズリーグ グループステージ 第2節
バイエルン ミュンヘン 2-0 FCバルセロナ 

近年の対戦ではバイエルンがバルセロナを完膚なきまでに叩きのめす事が多かったこのカード

 

今回も結果はバイエルンの勝利だった

しかし今回のバルセロナはバイエルンに対して互角以上に戦っている時間帯もあり、内容的にはバルセロナ側からみても十分に評価できるのではないだろうか

メンバー

バイエルン ミュンヘン
監督 ユリアン ナーゲルスマン

【スタメン】

1 マヌエル ノイアー (GK)
2 ダヨ ウパメカノ
5 バンヤマン パバール
6 ヨシュア キミッヒ
10 レロイ ザネ
17 サディオ マネ
18 マルセル ザビツァー
19 アルフォンソ デイビス
21 リュカ エルナンデス
25 トマス ミュラー
42 ジャマル ムシアラ

【交代】

40 ヌサイ マズラウィ (21分In)
➡パバール Out(怪我)
8 レオン ゴレツカ (ハーフタイムIn)
➡ザビツァー Out
7 セルジュ ニャブリ (70分In)
➡マネ Out
38 ライアン フラーフェンベルフ
(80分In)
➡ムシアラ Out
39 マティス テル (80分In)
➡ザネ Out

FCバルセロナ
監督 チャビ エルナンデス

【スタメン】

1 マルクアンドレ テアシュテーゲン (GK)
4 ロナルド アラウホ
5 セルヒオ ブスケッツ
7 ウスマン デンベレ
8 ペドリ
9 ロベルト レバンドブスキ
15 アンドレアス クリステンセン
17 マルコス アロンソ
22 ラフィーニャ
23 ジュール クンデ
30 ガビ

【交代】

11 フェラン トーレス (61分In)
➡ラフィーニャ Out
21 フレンキー デヨング (61分In)
➡ガビ Out
24 エリク ガルシア (70分In)
➡クリステンセン Out
10 アンス ファティ (80分In)
➡デンベレ Out
19 フランク ケシエ (80分In)
➡ブスケッツ Out

基本システム

左:バイエルン(赤) 右:バルセロナ(灰)

[システム図①]
試合開始時

[システム図②]
21分バイエルン ㊵マズラウィ投入(パバール怪我)
30分過ぎバルセロナ ④アラウホと㉓クンデ、㉚ガビと⑧ペドリ、㉒ラフィーニャと⑦デンベレの3組がポジションチェンジ

[システム図③]
後半開始時
バイエルン ⑧ゴレツカ投入

[システム図④]
61分バルセロナ ⑪フェラン トーレス、㉑デヨング投入

[システム図⑤]
70分バイエルン ⑦ニャブリ投入
70分バルセロナ ㉔エリク ガルシア投入

[システム図⑥]
80分バイエルン ㊳フラーフェンベルフ、㊴テル投入
80分バルセロナ ⑩アンスファティ、⑲ケシエ投入

得点

【51分・バイエルン】得点者:リュカ エルナンデス
左コーナーキック(CK)、キミッヒが右足アウトスイングのキックでゴール前にボールを入れる。マンツーマンメインで守るバルセロナに対してリュカ エルナンデスがヘディングでゴールに叩き込みゴール。

【54分・バイエルン】得点者:レロイ ザネ
バイエルン陣内でウパメカノは右サイドに張るザネへハーフウェイライン越えのフィードを送る。
マルコス アロンソ、ペドリ、デンベレでザネを囲みに行こうとするバルセロナに対して、バイエルンはザネ、マズラウィ、ムシアラのトライアングルでこの囲みを剥がすと、ムシアラとザネがバルセロナの守備網が整っていない事を見逃さず一気に中央を前進。ムシアラがドリブルでボールを運びその背後からスプリントしてきたザネにラインブレイクのパス。
ザネはバルセロナのディフェンスラインを突破すると右足でボールをゴールに流し込む。

[システム図⑦]ザネがバルセロナの最終ラインを突破するまでの流れ
②ウパメカノからのフィードを受けた⑩ザネを中心に㊵マズラウィ、㊷ムシアラがトライアングルを形成してパスを回しバルセロの中盤の守備を剥がす
この時、バルセロナの後方の守備陣形は未整備の状態、ディフェンスラインの前にフィルターは無く、④アラウホと㉓クンデの距離が空いており中央にぽっかりとスペースが空いている
さらに㉕ミュラーが右に移動する事でアラウホを引っ張り穴を塞がせないようにする

上記の図の後
バルセロナは⑮クリステンセンが中央をカバーしに行くが時すでに遅く、ムシアラからのパスを受けたザネがディフェンスラインを突破しゴールとなる

局面ごとの方針

バイエルン

【ポジティブトランジション】
バルセロナのプレスを外せば縦に出る。
バルセロナの両ウイング(WG)のドリブルを引っ掛けてボールを奪い、そこからカウンターを打つパターンが多くみられた。

後半、センターバック(CB)がボール奪取からそのままボールを持ち上がる場面が度々みられた。

【攻撃】
ビルドアップはウパメカノ、リュカ エルナンデスの2CBの前にキミッヒが立つ2-1の並びでパスを回す。そこから縦方向に進み前が詰まればキミッヒにボールを戻し攻め直す。
前半は縦方向に進む意識が強く、攻撃のリズムは「縦へ縦へ」と進む事がメインとなっていた。
後半、攻撃の初手は前半同様縦方向に進むが、前が詰まった際は前半より早いタイミングでキミッヒにボールを戻すようになる。また、状況に応じて左右にボールを振る割合も前半より増えた。

前線のポジショニング、右サイドのザネはサイドに張り、左サイドのマネはハーフスペースや中央に絞って来るのでチーム全体の陣形は右重心になる。特に前半はこの右重心の傾向が強かった。
前線の4人、ザネ、ムシアラ、マネ、ミュラーに縦パスが入れば4人が縦に動き出しフィニッシュへと向かう。前線4人は近い距離でサポートし合いバルセロナのディフェンスラインの突破を図る。
また攻め上がって来たボランチにボールを落としてミドルシュートを狙うパターンもあった(前線の崩し、詳細は[システム図⑧-(1)(2)]参照)。

[システム図⑧-(1)]バイエルン、アタッキングサードでの崩し(50分頃の攻撃を例に説明)
⑩ザネが縦方向のドリブルでバルセロナ陣内へ侵入
同時に㊷ムシアラがフリーランニングで㉕ミュラーとクロスして前線へ
ペナルティエリア角まで来たザネ、今度はムシアラとのワンツーパスで横方向に進む

[システム図⑧-(2)]
㉕ミュラーとクロスする形でゴール前に来た⑰マネ、さらにミュラーとパスを繋ぐ
ミュラーは中盤から上がって来た⑧ゴレツカにボールを落とすと、ゴレツカはミドルシュートを放つ

ペナルティエリア幅の中で複数の選手がクロスするフリーランニングやワンツーパスを使いバルセロナのディフェンスラインを崩しにかかる
この後、ゴレツカのミドルシュートで得たCKがリュカ エルナンデスの先制ゴールに繋がる

【ネガティブトランジション】
バルセロナ陣内では積極的にマークを掴みプレスに行く。

【守備】
バルセロナのビルドアップに対してアタッキングサードからプレスに行く。
前線はミュラーがCBクリステンセンを、ザネは左サイドバック(SB)マルコス アロンソをマーク。ムシアラはアンカーのブスケッツをマークし、マネは右SBクンデへのパスコースを消しつつCBアラウホをみる。以上が前線のマッチアップだが状況によっては左にスライドしてマークを掴む場合もある。
中盤から後ろの選手は前4人の動きに連動してマークを掴みプレスに行く。

自陣に下がれば4-4-2の陣形でのブロックディフェンス。
80分以降はバルセロナ陣内でもブロックディフェンスを行う。その時の陣形は4-4-1-1でミュラーのみ前に出てチェイシングをかける。

前半、バイエルンの攻撃は縦へ縦へと進む意識が前面に出ていた

これは事前に用意していたプラン通りなのか、バルセロナの守備に対応したからなのか、どっちだったのだろうか?

 

後半は縦方向に進むという攻撃の基本方針は継続されたものの、状況に応じて左右にボールを振ったり、一旦ボールをキミッヒに戻して攻め直すなど攻撃のリズムに変化をつけてきた

後半立ち上がりの連続ゴールはその変化が功を奏したものだった

 

 

バルセロナ

【ネガティブトランジション】
素早くボールホルダーに寄せてカウンタープレスを狙う。

【守備】
バイエルンのビルドアップに対してバイエルン陣内からプレスに行く。
レバンドブスキとインテリオールの一方(前半は主にガビ、後半は主にペドリ)の2人がバイエルンの2CB、ウパメカノとリュカ エルナンデスをみて、残ったほうのインテリオールはキミッヒをマークする。両WGは残ったほうのインテリオールの脇にポジショニングし前5人がボールサイドに寄せる形でプレスをかける。
ミドルサードからの守備ではインテリオールの一方がトップに出て4-4-2のブロックを敷き、自陣まで下がれば4-1-4-1の並びになる。

【ポジティブトランジション】
トランジション直後にガビ、ペドリ、ラフィーニャ、デンベレのうちの誰かがボールを持てばできる限り前進。
前が詰まって前進が止まればポゼッションオフェンスに移行する。

【攻撃】
ビルドアップは最後尾にアラウホ、クリステンセンの2CB。その前にクンデ、マルコス アロンソの両SBとアンカーのブスケッツが立つ2-3の並び。この5人を起点にしてガビ、ペドリの両インテリオールや中盤まで下りて来るレバンドブスキに縦パスを差し込む。
ガビ、ペドリは周囲との連携を使いながらボールを前に運び、レバンドブスキは周囲の選手にボールを捌き自らは前線に上がる。ラフィーニャ、デンベレの両WGはサイドに張って幅を取り、ボールの前進と共にサイドを上がる。
SBの攻撃参加、クンデは自重気味で後方に留まる事が多かった。マルコス アロンソはハーフスペースを上がり左サイドからの攻撃をサポート。
ボールをディフェンスラインまで下げて攻め直す時は、選手間の距離を大きく取りチーム全体が広めにポジションを取る事でバイエルンがフォアプレスをかけにくい状態にする。
崩しの局面では両WGがサイドからハーフスペースへ入って行く形で仕掛け、ゴール前ではレバンドブスキがクロスやラストパスに備えてゾーンの間やディフェンダーの背後を取りに行く。

[システム図⑨]バルセロナ、攻撃時の陣形

敗れたバルセロナ

但し、いい形での決定機もあり、試合内容だけみれば大きな成果があったのではないだろうか

もしペドリやレバンドブスキが決定機を決めていれば勝機も十分にあったのではないかと感じた

 

この試合での課題は、バイエルンが後半の立ち上がりに攻撃のリズムを変えてきた時の対応ではないかと思う

この点は今後のチームにとっての伸びしろではないかと思う

試合の感想・ポイント

前半

バルセロナがアウェイでバイエルン相手に互角以上の戦いをみせる

試合のペースは両チームの間を行き来しお互いに相手ゴールに迫った前半だった。
そんななか、バルセロナはペドリやガビの活躍もあり互角以上の戦いができていた。特に10分台の後半から30分頃までの時間帯はバイエルン陣内でのプレスが上手く嵌っており、明確に主導権を握っていたように感じた。
また30分以降もバルセロナは複数の組み合わせでポジションチェンジを行い(ポジションチェンジに関しては[システム図①][システム図②]を参照)マッチアップを入れ替えるなど、自分達からの動きで試合を動かそうとしていた。

後半

後半、攻撃のリズムを修正したバイエルンが2点を奪い試合を決める

後半、バイエルンは立ち上がりから攻撃のリズムに変化をみせると10分間に2ゴールを挙げる。
前半は良いサッカーをみせたバルセロナだが、後半は立ち上がりに立て続けにゴールを決められると、その後は体力の消耗もあったのか勢いは尻すぼみになってしまった。

後半立ち上がり10分間の差が今の両チームの差だったように思う。
リズムの変化に対してバルセロナが対応しきる前にゴールを奪ったバイエルンの状況を読む力と決定力は流石の一言だった。
バルセロナは前半せっかく良いサッカーをしていただけに、後半立ち上がりの連続失点は勿体なかったが、ここを我慢できるようになれば十分に戦える事は証明されたように思う。

選手寸評

バイエルン
ジャマルムシアラ ゴール前の密集地帯で高い技術力を生かし積極的に仕掛ける。54分にはバルセロナの守備が整っていないとみるや一気にバルセロナゴールを急襲し、ザネのゴールを演出した。
ダヨウパメカノ 1対1の守備、ゴール前のカバーリングといった守備面での活躍は勿論、攻撃面でも迫力あるボールの持ち上がりやフィニッシュに繋がるフィードなど及第点以上のプレーをみせた。
レロイザネ 自慢のスピードでラインブレイクし、冷静に(利き足と逆の)右足で冷静にボールをゴールに流し込んだ54分のゴールは見事だった。
リュカエルナンデス 51分CKからの見事なヘディングで先制ゴールを挙げる。本業の守備でも奮闘しクリーンシートに貢献。
レオンゴレツカ 中盤から積極的に前線へと上がりフィニッシュへと絡む。彼のミドルシュートで得たCKが先制点に繋がる。
バルセロナ
ペドリ 中盤では高い技術力と周囲とのコンビネーションでボールを運び、前線に上がればフィニッシュに絡む。惜しむらくは2度あった決定機を決められなかった事。
ガビ 攻撃の組み立て、ボールの持ち上がり、前線からのチェイシングと攻守で多くのタスクをこなしてチームに貢献した。
ラフィーニャ サイドやハーフスペースで積極的に前に出て仕掛ける事でチャンスを作っていた。

投稿主選出の man of the match

ジャマル ムシアラ

以上、バイエルンミュンヘン 対 FCバルセロナ 戦のマッチレビューでした

本レビューは、あくまで投稿主個人の考えや感想を記事にしたものです。
本レビューに対して、ご意見やご感想があれば下のコメント欄よりコメントを頂ければ幸いです。

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