22-23シーズンのUEFAチャンピオンズリーグ(CL)が日本時間の9月7、8日に開幕
今回はCL開幕戦の中からMNMを擁するパリ サンジェルマンと古豪ユベントスの一戦をレビューします
パリ サンジェルマン 対 ユベントス
2022年9月7日 UEFAチャンピオンズリーグ グループステージ 第1節
パリ サンジェルマン 2-1 ユベントス
メンバー
パリ サンジェルマン
監督 クリストフ ガルティエ
【スタメン】
99 | ジャンルイジ ドンナルンマ (GK) |
2 | アクラフ ハキミ |
3 | プレスネル キンペンベ |
4 | セルヒオ ラモス |
5 | マルキーニョス |
6 | マルコ ベラッティ |
7 | キリアン エンバペ |
10 | ネイマール |
17 | ビチーニャ |
25 | ヌーノ メンデス |
30 | リオネル メッシ |
【交代】
15 | ダニーロ ペレイラ (78分In) |
➡ビチーニャ Out | |
26 | ノルディ ムキエレ (78分In) |
➡ハキミ Out | |
28 | カルロス ソレール (84分In) |
➡メッシ Out | |
18 | レナト サンチェス (87分In) |
➡ベラッティ Out |
ユベントス
監督 マッシミリアーノ アッレグリ
【スタメン】
36 | マッティア ペリン |
3 | ブレーメル |
6 | ダニーロ |
9 | ドゥシャン ブラホビッチ |
11 | フアン クアドラード |
14 | アルカディウシュ ミリク |
17 | フィリップ コスティッチ |
19 | レオナルド ボヌッチ |
20 | ファビオ ミレッティ |
25 | アドリン ラビオ |
32 | レアンドロ パレデス |
【交代】
8 | ウェストン マッケニー (ハーフタイムIn) |
➡ミレッティ Out | |
5 | マヌエル ロカテッリ (68分In) |
➡ミリク Out | |
2 | マッティア デシーリオ (74分In) |
➡クアドラード Out | |
18 | モイゼ キーン (87分In) |
➡ラビオ Out |
基本システム
左:パリSG(紺) 右:ユベントス(白灰)
[システム図①]
試合開始時
[システム図②]
後半開始時
ユベントス ⑧マッケニー投入 システム変更
[システム図③]
68分ユベントス ⑤ロカテッリ投入 ポジション修正
[システム図④]
74分ユベントス ②デシーリオ投入
78分パリSG ⑮ダニーロ ペレイラ、㉖ムキエレ投入
[システム図⑤]
84分パリSG ㉘カルロス ソレール投入
87分パリSG ⑱レナト サンチェス投入
87分ユベントス ⑱キーン投入
得点
【5分・パリSG】得点者:キリアン エンバペ
パリSGは自陣でゴールキーパー(GK)やディフェンスラインでパスを繋ぐと、キンペンベがドリブルでボールを持ち上がりハーフウェイライン付近で左サイドのネイマールへパス。ネイマールはドリブルで内側に入って行き中央にいるビチーニャへパス。この動きでユベントス中盤の視線を中央に集め、中央にいたエンバペはネイマールとクロスしてユベントス中盤の視線から外れるように左サイドへ。
ビチーニャは左サイドへ出たエンバペにパス。ユベントスのディフェンスライン手前でパスを受けたエンバペはネイマールとのワンツーパスでディフェンスラインの裏に抜け出し、浮き球のリターンパスを右足でダイレクトのボレーシュートを放ち、ゴール。
[システム図⑥-(1)]ゴールに至るまでの流れ
⑩ネイマールがドリブルで中央に進出し、⑰ビチーニャへパスを出す
この時、ユベントス中盤3人(⑳ミレッティ、㉜レアンドロ パレデス、㉕ラビオ)の視線は中央に集まる
⑦エンバペはネイマールとクロスしユベントスの中盤3人の視線から外れるように左サイドへ移動
[システム図⑥-(2)]
中央に視線が集中したことで⑰ビチーニャから⑦エンバペにパスが入った時、ユベントス守備陣はエンバペに対して後手を踏んだ状態
この図の後、エンバペは⑩ネイマールとのワンツーパスでユベントスのディフェンスラインをブレイクし、鮮やかなボレーシュートを決める
【22分・パリSG】得点者:キリアン エンバペ
ベラッティは右サイドでタッチライン際にいるセルヒオ ラモスとのワンツーパスでユベントスのライン間に侵入すると、右サイドの大外にいたハキミがディフェンスライン裏のスペースに抜け出す。
ベラッティは中央、ペナルティエリアすぐ外のエンバペにパス。
パスを受けたエンバペは、ディフェンスラインの裏に抜け右ニアゾーンに入って来たハキミにワンタッチでボールを落とすと、ハキミはダイレクトでエンバペにリターン。このリターンパスをエンバペは右足でダイレクトにシュートしゴール。
[システム図⑦]ライン間への侵入からディフェンスラインの崩し
⑥ベラッティは④セルヒオ ラモスとのワンツーパスでライン間に侵入
②ハキミはオフザボールで⑰コスティッチとのマッチアップを制してディフェンスラインの裏を取り、ベラッティは⑦エンバペにパス
この図の後、パスを受けたエンバペは裏抜けからニアゾーンに入って来たハキミにボールを落とし
ハキミからのリターンパスをダイレクトでユベントスゴールに蹴り込む
【53分・ユベントス】得点者:ウェストン マッケニー
左サイドのコーナーキック(CK)。
レアンドロ パレデスはショートコーナーでコーナー脇にいるコスティッチにボールを渡すと、コスティッチは左足でハイクロスを上げる。
ボールは、前に出て来たGKドンナルンマの頭上を越えファーサイドへ。ヌーノ メンデスの背後から競り合ったマッケニーがヘディングでボールをゴールに叩き込みゴール。
局面ごとの方針
パリ サンジェルマン
【ポジティブトランジション】
基本方針はボールをキープしてポゼッションオフェンスに移行する事。
前半ユベントスはネガティブトランジションでリトリートする事が多かったのでカウンターを打つ事は殆どなかった。
後半、ユベントスが前掛かりになった事とリードしてチームが全体的にラインを下げた事で、立ち上がりから暫くはメッシを起点にロングカウンターを打つ事が何度かあった。
但し、60分を過ぎてからはボールキープを優先する意識が強まり、カウンターを打つ姿勢は殆どみられなくなった。これは逃げ切りを図る為に状況をコントロールしようとする意図があったと思われる。
【攻撃】
ビルドアップはセルヒオ ラモス、マルキーニョス、キンペンベの3センターバック(CB)の前にビチーニャ、ベラッティが立つ3-2の並びでパスを回し、ハキミ、ヌーノ メンデスの両ウイングバック(WB)はサイドを上がる。ビチーニャ、ベラッティを中心にパスを回しメッシ、ネイマールはビルドアップからのパスを受けに中盤まで下りて来て、攻撃の組み立てに加わる。
ビルドアップから攻撃を組み立てる時、ユベントスは3CBに対して2トップにプラスしてミレッティを上げてマッチアップの人数を噛み合わせようとする。すると中盤はメッシやネイマールが下りて来るので3~4対2で数的有利になる。
ユベントスが中盤での数的不利を嫌ってミレッティを中盤に残せばセルヒオ ラモスが右サイドを上がって行く。
[システム図⑧-(1)]前半、ビルドアップからの攻撃の組み立て
ユベントスはディフェンスラインに対してマッチアップの人数を噛み合わせる為⑳ミレッティを上げる
メッシとネイマールが中盤に下りる事で中盤で数的有利ができる
[システム図⑧-(2)]
ユベントスが中盤での数的不利を嫌ってミレッティを中盤に残せばセルヒオ ラモスが攻め上がる
崩しの局面では中央とユベントスの3センターハーフ(CH)脇のエリアでボールを出し入れしてバイタルエリアを攻略(5分の得点直前のシーン[システム図⑥-(1)(2)]を参照)。
フィニッシュへの道筋はメッシ、ネイマール、エンバペの前3人にビチーニャ、ベラッティの両CHやボールサイドのWBがダイレクトタッチを含むパス交換でユベントス守備陣を剥がしエンバペや時にはハキミ、ヌーノ メンデスがオフザボールでディフェンスラインの裏を突く。
両WBの裏抜けについて、ハキミはマッチアップするコスティッチと駆引きしながら単独でコスティッチの背後を突き、ヌーノ メンデスはワンツーパスなど周囲とのコンビネーションを使う。
後半ユベントスはシステムを変更。フォアプレス時の前線の枚数は明確に2枚になり、3CBのうち1枚は余る状態に。さらにユベントスは、後半立ち上がりから暫くはフォアプレスの際にかなりラインを絞るようになる。
この守備に対して3CBのうち余った1枚がサイドを上がって攻撃参加。
【ネガティブトランジション】
ボールホルダーに対して周囲の選手がアプローチしてディレイをかけ、その間にリトリートして守備陣形を組む。
【守備】
基本方針はミドルサードに5-2-3のブロックを敷くブロックディフェンス。ディフェンシブサードまで下がればネイマールが中盤に下がり5-3-2の並びになる。
前からマークを嵌めてプレスに行く時は3-4-3の陣形で前に出る。
84分カルロス ソレール投入以降は5-4-1が守備時の基本陣形。
得点に至る崩しは、的確なパスワークとダイナミックなフリーランニングが組み合わさっており、MNMらしさが出ていて観ていて楽しかった。
後半は苦戦したもののトランジションの攻防で無理に激しく行かずにボールをキープする事で攻撃のペースをコントロールしつつ、守備的な選手を投入。54分以降は無失点で試合を締める事ができた。
全般的に良い形の試合運びができた印象だった。
不安材料として守備の際、簡単に縦パスを差し込まれるシーンが度々みられた。
相手の攻撃の組み立てに対して前線からの制限はあまり期待できないので、そこをどのように対処するのかは今後の課題と感じた。
ユベントス
【ポジティブトランジション】
縦方向にボールを出してスペースを突く。
パリSGのリトリートが速く、前が塞がれた場合はポゼッションオフェンスに移行。
【攻撃】
ビルドアップはブレーメル、ボヌッチ、ダニーロの3CBの前にレアンドロ パレデスが立つ3-1の並びでパスを回す。インテリオールはラビオは下がってビルドアップをサポートし、ミレッティは前に上がりライン間で後方と前線の中継点になる。
縦にボールを運んで前進し、前線に張る2トップにボールが入れば2トップのコンビネーションや前線からの落としのパスからパリSGディフェンスライン攻略を図る。
後半システムを変更([システム図①、②]参照)。それに伴いビルドアップもブレーメル、ボヌッチの2CBとレアンドロ パレデスのトライアングルをベースにラビオとクアドラード、ダニーロの両サイドバックがサポートにはいる形に変更される。
ボールが前に進めばクアドラードは右サイドを上がって幅を取り、右のサイドハーフに入ったマッケニーは内側に絞る。左サイドはコスティッチが幅を取りつつ状況によってはハーフスペースにポジショニングする。
攻撃のベクトルは前半と同様に縦方向だが、後半はパリSGディフェンスラインの手前でミリク(68分以降はロカテッリ)がタメを作り、状況によってはサイドにボールを振るなど変化をつけた攻撃をみせた。
[システム図⑨]後半、攻撃時のポジショニング
基本は縦方向に進む攻撃がメインだが、状況によってはサイドにボールを振ってサイドから攻める
⑭ミリク(68分にロカテッリと交代)が前線から少し下がり目のポジションを取る。
【ネガティブトランジション】
前半はリトリートしてブロックを敷く事を優先。プレスに行く事は希だった。
後半はボールホルダーに対する寄せが速くなりプレスに行く割合も増える。
但し、時間の経過とともにパリSGはポジティブトランジションでボールをキープし状況をコントロールしたので、プレスに行きづらくなっていった。
【守備】
パリSGのビルドアップに対して前からプレスに行く時はミリク、ブラホビッチの2トップと中盤から上がって来たミレッティがパリSGの3CBをマークし、前3人の動きに連動して中盤から後ろの選手もマークを掴む。
プレスを剥がされる又は、プレスに行けない時はリトリートして5-3-2のブロックディフェンス。
後半システムを変更([システム図①、②]参照)。
相手ボールになれば4-4-2の陣形を組み、ボールサイドにラインを絞ってボールホルダーに対して前向きに寄せてプレスに行く。後半はボールホルダーに対するアプローチが速くなりプレスの強度も増す。
プレスに行きずらい状況では極端にラインを絞るのではなく、スペースを埋める形で4-4-2のブロックを敷く。
前半3バックのシステムを採用(公式戦での3バック採用は今シーズン初との事)するも全くと言っていいほど機能しなかった。
特にクアドラード、コスティッチの両WBは本来の力を殆ど発揮できずパリSGのWBとのマッチアップでも苦戦を強いられていた。
後半、システムを4バックに変更。
立ち上がりからプレスの強度が増したのは、使い慣れたシステムに戻したからだと思われる。但し、パリSGも攻撃の流れを上手くコントロールしプレスに行きずらい状況を作られたように感じた。
この試合を観た限りでのユベントスに対する印象は、今は発展途上で戦い方を試行錯誤している状態にあると感じた。
試合の感想・ポイント
前半
パリSGの攻撃陣が躍動し、2点のリードを奪う
パリSGが数的有利を作る巧みな動きと、個々人の能力の高さをベースにしたポゼッションオフェンスでユベントスを圧倒する。攻撃に関しては、組み立てから前線の崩しまで非常に質が高く、エンターテイメント性も兼ね備えていた。
ユベントスはフォアプレスに行っても剥がされる事が多く、リトリートして守る事を強いられていた。トランジション時に特に目立った攻防がみられなかったが、これもユベントスがネガティブトランジションでカウンタープレスに行ってもパリSGに剥がされてしまうのでリトリートせざるを得なかったからだと思われる。
苦戦のユベントス。中央からの攻撃でチャンスを作るシーンはあったものの、サイドからの攻撃はあまり機能しなかった。
後半
システムを変更しユベントスが反撃に出るが、パリSGは試合の流れを巧みにコントロールして見事に逃げ切る
後半に入りユベントスはシステムを変更し、ネガティブトランジションから守備の局面での強度を上げる。球際の攻防が前半よりも激しくなりユベントスは守備で簡単にやられなくなると、それに伴って良い形で攻撃に入れるようになる。試合のペースもユベントスが五分近くまで押し戻し、53分にはセットプレーから1点を返す。
前半に握っていた試合の主導権を手放す事となったパリSGだが、時間の経過とともにトランジションでの動きをコントロールし、試合の流れをスローダウンさせる。また試合終盤には守備的な選手を立て続けに投入し試合を締めにかかると、見事に逃げ切った。
試合終盤、パリSGの試合の締め方は比較的に上手くいったように感じた。
選手寸評
パリサンジェルマン
キリアン エンバペ | ワンタッチでボールを捌いてからのパスアンドムーブでディフェンスラインの裏へ抜ける動きは非常に有効。裏に抜ける際のタイミングと速さは抜群で、決定力も高い。正にアンストッパブルな存在 |
ビチーニャ | パス回しの中心として、ハイレベルなパリSGの攻撃陣を操るゲームメイクをみせた。 |
アクラフ ハキミ | 圧倒的なスピードとパワーでサイドを駆け上がり、特に前半はコスティッチとのマッチアップを完全に制した。22分のゴールをアシストするまでの動き方も見事だった。 |
マルコ ベラッティ | 中盤でビチーニャと共に攻撃を組み立て、守備でも危険なエリアに素早くカバーに入る。攻守でチームを支えた。 |
リオネル メッシ | 以前のような圧倒的な存在感は感じさせなくなったが、ライン間での攻撃の組み立てや、カウンターの起点としてプレスを剥がして前進する動きなど、チームに貢献できる能力はまだまだ健在。 |
ユベントス
ウェストン マッケニー | サイドから内側に絞ったポジショニングで攻撃を縦方向に進めチームに貢献。53分にはCKからのヘディングでゴールを挙げる。 |
フィリップ コスティッチ | 本来の力を発揮できたとは言い難い内容だったが、53分のゴールをアシストした際のキックの精度はさすがの一言。 |
マヌエル ロカテッリ | 後半途中からの出場だったが、ライン間で後方と前線やサイドを繋ぐリンクマンとして機能した。 |
投稿主選出の man of the match
キリアン エンバペ
以上、パリ サンジェルマン 対 ユベントス のマッチレビューでした
本レビューは、あくまで投稿主個人の考えや感想を記事にしたものです。
本レビューに対して、ご意見やご感想があれば下のコメント欄よりコメントを頂ければ幸いです。
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