昨シーズン8位に沈んだアタランタが王者ミランに挑んだこの試合
今シーズンの両チームがどのような戦いをするのかを占う意味でも大切な一戦となった
アタランタBC 対 ACミラン
2022年8月22日 イタリア セリエA 第2節
アタランタBC 1-1 ACミラン
メンバー
アタランタBC
監督 ジャンピエロ ガスペッリーニ
【スタメン】
1 | ファン ムッソ (GK) |
2 | ラファエウ トロイ |
3 | ヨアキム メーレ |
7 | テウン コープマイネルス |
15 | マルテン デローン |
18 | ルスラン マリノフスキ |
19 | ベラト ジムシティ |
28 | メリフ デミラル |
33 | ハンス ハテブール |
88 | マリオ パシャリッチ |
91 | ドゥバン サパタ |
【交代】
9 | ルイス ムリエル (73分In) |
➡サパタ Out | |
11 | アデモラ ルックマン (73分In) |
➡マリノフスキ Out | |
42 | ジョルジョ スカルビーニ (73分In) |
➡パシャリッチ Out | |
5 | カレブ オコリ (82分In) |
➡ジムシティ Out | |
21 | ナディル ゾルテア (89分In) |
➡メーレ Out |
ACミラン
監督 ステファノ ピオーリ
【スタメン】
16 | マイク メニャン (GK) |
2 | ダビデ カラブリア |
4 | イスマエル ベンナセル |
8 | サドンロ トナーリ |
10 | ブラヒム ディアス |
12 | アンテ レビッチ |
17 | ラファエウ レオン |
19 | テオ エルナンデス |
20 | ピエール カルル |
23 | フィカヨ トモリ |
30 | ジュニオール メシアス |
【交代】
9 | オリビエ ジルー (58分In) |
➡レビッチ Out | |
90 | シャルレ デケーテラール (58分In) |
➡ブラヒム ディアス Out | |
56 | アレクシス サレマーケルス (66分In) |
➡ジュニオール メシアス Out | |
27 | ディボク オリギ (66分In) |
➡ラファエ ウレオン Out | |
25 | アレクサンドロ フロレンツィ (84分In) |
➡カラブリア Out |
基本システム
左:アタランタ(青黒) 右:ミラン(白)
[システム図①]
試合開始時
[システム図②]
58分ミラン ⑨ジルー、(90)デケーテラール投入
[システム図③]
66分ミラン ㉗オリギ、(56)サレマーケルス投入 システム変更
[システム図④]
73分アタランタ ⑨ルイス ムリエル、⑪ルックマン、㊷スカルビーニ投入 システム変更
[システム図⑤]
82分アタランタ ⑤オコリ投入
84分ミラン ㉕フロレンツィ投入
89分アタランタ ㉑ゾルテア投入
得点
【29分・アタランタ】得点者:ルスラン マリノフスキ
右サイドからハテブールが上げたクロスをマリノフスキとカラブリアがヘディングで競り合いボールは左サイドへ。このボールをメーレが拾う。
この時ミランの最終ラインはペナルティエリア内のかなり深い位置にあり、そこに人数もかかっている状態([システム図⑥]参照)。それを見たメーレはミランのディフェンスライン前側のスペースへマイナスのクロスをグラウンダーで入れる。
右サイドから中央に走り込んで来たマリノフスキが、このクロスを左足でダイレクトにシュートしゴール
[システム図⑥]マリノフスキがゴールを決める直前のゴール前の状況
ミラン最終ラインの位置はかなり深く、人数もかかっている
さらに(88)パシャリッチがフリーランニングで縦に入る事で、ミラン最終ラインの前にはスペースが生じる
そのスペースに③メーレのラストパスと⑱マリノフスキのフリーランニングがピタリと合い、最後はマリノフスキが左足でダイレクトシュート
【68分・ミラン】得点者:イスマエル ベンナセル
ミランは右からのコーナーキックでショートコーナー。ボールを受けたサレマーケルスはペナルティエリア右角にいるベンナセルへパス。
ベンナセルはコープマイネルスとの1対1。縦に行くとみせかけて切り返してのカットインから左足でのシュート。ボールはファーサイドから巻いてゴールへ。
局面ごとの方針
アタランタ
【ネガティブトランジション】
素早くマークを掴みに行く。
前半はマークを掴んでもマッチアップマンに対して無理には寄せず、普段よりも間合いを取っているように感じた。
後半は普段と同様にマークを掴めばすぐに寄せてマッチアップマンに対してプレッシャーをかけていた。
【守備】
ミランのビルドアップに対してマリノフスキ、サパタが最前線に立ち、ミランの最終ライン3枚、テオ エルナンデス、トモリ、カルルをみる。パシャリッチは前2人より少し下がった位置で中盤へのパスコースを消す。
アタッキングサードでは間合いを取り、ミドルサードに入った辺りから間合いを詰めてプレスを開始。中盤から後ろの選手は前3人の動きに連動してマークを掴みプレスに行く。
自陣に下がれば5-2-3の陣形からマークを掴む。
前半は普段に比べマッチアップマンに対して深追いをせず陣形のバランスを保っているように感じた。
後半はマッチアップマンに対してマークを掴んだ段階で間合いを詰め、多少陣形のバランスを崩してでもマッチアップマンをしっかりと追って行く普段通りのスタイルになる。フィールド全体でミランに対してプレッシャーをかけようとする。
ジュニオール メシアス、ラファエウ レオンの両サイドハーフ(SH)がボールを持って仕掛ける体勢になればダブルチームで対応。
73分以降自陣での守備の基本陣形は5-3-2。ここでもいつも通り素早くマークを掴み、マッチアップマンを追ってプレッシャーをかける。
【ポジティブトランジション】
前向きにボールを奪えばボール周囲の選手たちがカウンターを狙うべく縦へと動き出す。縦方向にスペースを突き、ミランが前方のスペースを埋めれば別のレーンへパスを出しまた縦へと進む。
ボールホルダーがすぐに前を向けなかったり、すぐに縦へと進めない場合はポゼッションオフェンスに移行。
【攻撃】
ビルドアップはトロイ、デミラル、ジムシティの3センターバック(CB)とデローン、コープマイネルスの両ボランチで行うが、トロイとジムシティのうちのどちらかとコープマイネルスはボールが前に進められると判断すれば早い段階で攻め上がる。
前進は主にサイドからで右はトロイ、ハテブール、マリノフスキが、左はジムシティ、メーレ、パシャリッチが各々トライアングルを形成し縦に進む。前が詰まれば逆サイドにボールを振り、ミランがラインをスライドするより先に逆サイドの選手がボールを受ければ縦にスペースを突く。
アタッキングサードまで前進すればニアゾーンへの侵入を図る。
パス回しが難しい時はサパタをターゲットにロングボールを蹴り込む。サパタは前線でロングボールを受けると、ボールをキープして他の選手達が攻め上がる為の時間を作る。
73分のシステム変更後のビルドアップはトロイ、デミラル、ジムシティの3CBの前にデローン、スカルビーニが立つ3-2の並びでパスを回し、ミランのプレスを回避する為にデローンはディフェンスラインまで下がる事もあった。
攻撃の初期段階でコープマイネルスは前に出てトップ下的なポジションを取り、ビルドアップからボールが前に進めばボールを引き取り、後方と前線の中継点になる。73分以降の攻撃はコープマイネルスを経由する事が多くなったので、中央からの攻撃の割合が増加する。
アタランタの守備、前半はいつもと違ってかなりバランス重視で慎重に戦っているように感じた。
後半はいつものアタランタらしく多少バランスを崩しても構わず人を掴む守備をしていたが、ジュニオール メシアス、ラファエウ レオンの仕掛けには早い段階からダブルチームの構えを取るなど、後半も慎重に対応する部分もみられた。
ミラン
【ネガティブトランジション】
すぐにマークを掴みボールホルダーに寄せて行く。
【守備】
敵陣ではアタッキングサードからマークを掴んでプレスに行く。
自陣では4-4-2のブロックを敷きボールレーンの選手がボールホルダーに対してアプローチ。
後半はマークを掴む動きの良さもあり、前半よりもマンオリエンテッドにマークにつきアタランタの動きを封じにかかっていた。
【攻撃】
ビルドアップは最終ラインにカルル、トモリ、テオ エルナンデスが並び、その前にベンナセル、トナーリの両ボランチうちのどちらかが立つ3-1の形でパスを回す。カラブリアとボランチのうちのもう1人は前に上がる。テオエルナンデスはビルドアップからのボールを積極的に持ち上がり、サイドだけではなく中央にも進出するなど広範囲に動いていた。またビルドアップ後も前方の選手をサポートしていた。
ボールが前に進めばジュニオール メシアス、ブラヒム ディアス、ラファエウ レオンの2列目3人がパスを受ける為に順番に下りて来る。2列目の選手が下りた事によりできたスペースに別の2列目の選手や3列目の選手が入って来る。前後のボールの出し入れで縦方向に進む形をみせつつ、アタランタが中央を閉じればボールをサイドに振りジュニオール メシアス、ラファエウ レオンの両SHがドリブルで仕掛ける。
59分ジルー投入後は、前線に張るジルーにボールを当てて、ジルーの落としから攻撃を展開したり、後方からジルーに直接ロングボールを入れるといった形も攻撃オプションに加わる。
66分システムを変更。最終ラインは変則的なスリーバックで、前線はオリギ、ジルーの2トップという布陣になる([システム図③④⑤]参照)。
2トップの役割。ジルーは前線に張り、オリギはセカンドトップ的に左右に動く。
テオエルナンデスはマイボールになればSHのようなポジションを取る。
[システム図⑦-(1)]スターティングメンバーでの攻撃時の布陣
④ベンナセルが攻撃の起点の場合
⑩ブラヒム ディアスがボールを引き取りに下りれば、空いたスペースに⑧トナーリが上がって行く
前後にボールを出し入れし㉚ジュニオール メシアスや⑰ラファエウ レオンにボールが渡ればサイドから仕掛ける
[システム図⑦-(2)]66分、システム変更以降の攻撃時の布陣
変則3バック的な並びになる
⑲テオ エルナンデスはサイドを上がりSH的なポジションに
㉗オリギはライン間から前線を左右に広く動く
この試合のミランはネガティブトランジションから守備の局面でのマークの掴みが良かった
特に後半はその良さがさらに増したように感じた。
試合の感想・ポイント
前半
普段と違いバランス重視の慎重な守備のアタランタ、押し込まれる展開ながらも先制点を挙げる
前半のアタランタは普段と比べてマッチアップマンに対して間合いを取りそれほど強くプレスには行かないように感じた。その分ミランは比較的容易に後方でパスを回し、テオ エルナンデスの持ち上がりなどで前進。アタランタ陣内に盛んに侵入を果たす。
試合のペースはミランが握っているかにみえる展開となる。ただアタランタはいつものようにマッチアップマンに寄せて行かない分陣形のバランスが保たれており、ディフェンシブサードまで侵入されてもゴール前で3CBがしっかりと守備対応をし、ミランの攻撃を弾き返す。
押し込まれながらも的確な守備対応でミランの攻撃を凌ぐアタランタは29分に数少ないチャンスをものにする。
アタランタの先制ゴールの場面、ミランの最終ラインはかなり深くに位置しており人数も多くなっていた([システム図⑥]参照)。アシストパスを出したメーレ、ゴールを決めたマリノフスキはミラン最終ラインの前側のスペースを上手く使った。
後半
ミラン、相手ボール時のマークを掴む動きが良く明確に試合の主導権を握る
前半バランス重視の守備を行っていたアタランタだが、後半は普段通りマークを掴むとマッチアップマンにしっかり寄せてマークし続ける守備を行う。
対するミランはアタランタボール時のマークを掴む動きが良く、ネガティブトランジションではアタランタに簡単にカウンターを打たせず、アタランタのビルドアップに対してもパス回しを封じる。思うように攻撃できないアタランタはサパタへロングボールを送る割合が増加していく。
苦しい展開のアタランタだがジュニオール メシアス、ラファエウ レオンのサイドからの仕掛けに対してダブルチームで守るなどしてリードを守ろうとする。対するミランはジルーを投入し中央からの攻撃を増やす。
攻勢に出るミランは68分、ショートコーナーからベンナセルがコープマイネルスとの1対1を制して見事なゴールを決め同点に追いつく。
その後両チームともにゴールを挙げる事はできず、試合は1対1のタイスコアでタイムアップ。
内容的にはミランが押し気味の展開だったが、結果は両チームが勝ち点1を分け合う形となった。
選手寸評
アタランタ
ヨアキム メーレ | 左サイドで攻撃の組み立てを担いサイドを前進。29分マリノフスキのゴールをアシストしたパスはミランの最終ライン前のスペースを的確に捉えていた。 |
ルスラン マリノフスキ | 29分、先制ゴールを決めた時のゴール前に入る動きは見事だった。守備でもファーストディフェンダーとしてミランのビルドアップを牽制した。 |
メリフ デミラル | 押し込まれる事が多い展開の中、ゴール前でどっしりと構えミランの攻撃を弾き返した。 |
テウン コープマイネルス | 後方に下がればパス回しの起点として、前に出れば後方と前線を繋ぐ中継点として各々で役割を担った。守備でも前に出てミランのディフェンスラインに対して激しいチェイシングをみせた。 |
ミラン
イスマエル ベンナセル | 攻撃の起点として的確にパスを回す。68分コープマイネルスとの1対1を制しての同点ゴールは素晴らしかった。 |
ラファエウ レオン | 右サイドのジュニオール メシアスと共にサイドからの仕掛けで攻撃を牽引した。 |
テオ エルナンデス | 後方から積極的にボールを持ち上がり、敵陣に入っても前の選手をサポートするなど攻撃に幅広く関与した。 |
オリビエ ジルー | 彼が投入された事で攻撃の戦術が明らかに変化した。攻撃に変化をもたらすジョーカーとして機能した。 |
投稿主選出の man of the match
イスマエル ベンナセル
以上、アタランタBC 対 ACミラン 戦のマッチレビューでした
本レビューは、あくまで投稿主個人の考えや感想を記事にしたものです。
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