熱戦が続くJ1リーグ、24節では前年度王者の川崎Fと首位を行く横浜FMが激突
試合は期待にたがわぬ熱戦となり、最後は劇的決勝ゴールでの決着となった
J1リーグ 第24節 結果
2022年8月6日
鹿島アントラーズ 0ー2 サンフレッチェ広島
京都サンガ 1ー2 柏レイソル
名古屋グランパス 3ー0 浦和レッズ
セレッソ大阪 3ー0 ヴィッセル神戸
アビスパ福岡 (中止) ガンバ大阪
2022年8月7日
FC東京 0ー2 清水エスパルス
川崎フロンターレ 2-1 横浜Fマリノス
湘南ベルマーレ 1ー5 コンサドーレ札幌
サガン鳥栖 2ー0 ジュビロ磐田
今回は冒頭で紹介した通り 川崎フロンターレ 対 横浜Fマリノス 戦のレビューです
川崎フロンターレ 対 横浜F・マリノス
2022年8月7日 J1リーグ 第24節
川崎フロンターレ 2-1 横浜F・マリノス
24節で最も注目の好カード
試合はお互いの守備戦術が高いレベルで機能する締まった展開
横浜FMが主導権を握るもタイスコアのまま試合は進み、ラストワンプレーで衝撃的なゴールが生まれる
メンバー
川崎フロンターレ
監督 鬼木 達
【スタメン】
1 | チョ ンソンリョン (GK) |
4 | ジェジエウ |
5 | 谷口 彰悟 |
6 | ジョアン シミッチ |
8 | 橘田 健人 |
9 | レアンドロ ダミアン |
13 | 山根 未来 |
14 | 脇坂 泰斗 |
18 | チャナティップ |
23 | マルシーニョ |
41 | 家長 昭博 |
【交代】
19 | 遠野 大弥 (62分In) |
➡チャナティップ Out | |
11 | 小林 悠 (71分In) |
➡マルシーニョ Out | |
16 | 瀬古 樹 (71分In) |
➡脇坂 泰斗 Out | |
31 | 山村 和也 (90分In) |
➡レアンドロ ダミアン |
横浜F・マリノス
監督 ケヴィン マスカット
【スタメン】
1 | 高丘 陽平 (GK) |
2 | 永戸 勝也 |
5 | エドゥアルド |
7 | エウベル |
8 | 喜田 拓也 |
11 | アンデルソン ロペス |
16 | 藤田 譲瑠チマ |
23 | 仲川 輝人 |
24 | 岩田 智輝 |
25 | 小池 龍太 |
30 | 西村 拓真 |
【交代】
10 | マルコス ジュニオール (34分In) |
➡西村 拓真 Out(怪我) | |
9 | レオ セアラ (63分In) |
➡アンデルソン ロペス Out | |
18 | 水沼 宏太 (83分In) |
➡エウベル Out | |
28 | 山根 陸 (83分In) |
➡喜田 拓也 Out |
基本システム
左:川崎フロンターレ(コーヒー色) 右:横浜Fマリノス(白)
[システム図①]
試合開始時
[システム図②]
34分横浜FM ⑩マルコス ジュニオール投入(㉚西村 拓真 怪我)
[システム図③]
62分川崎F ⑲遠野 大弥 投入
63分横浜FM ⑨レオ セアラ投入
[システム図④]
71分川崎F ⑪小林 悠、⑯瀬古 樹 投入 システム変更
[システム図⑤]
83分横浜FM ⑱水沼 宏太、㉘山根 陸 投入
[システム図⑥]
90分川崎F ㉛山村 和也 投入
得点
【25分・川崎F】得点者:レアンドロ ダミアン
アタッキングサード、左サイドのスローインから一旦ボールをハーフウェイライン付近の谷口まで戻す。
横浜FMはアンデルソン ロペスがプレスに行くが、谷口はプレスが来るより一瞬早く前線右サイドのスペースへ対角線のロングフィードを送る。このロングフィードを右サイドを上がっていた山根 未来がダイレクトでゴール前に蹴り込むと、レアンドロダミアンが頭で合わせてゴール。
【45+3分・横浜FM】得点者:仲川輝人
川崎Fが横浜FM陣内に攻め込み、山根 未来がクロス。このクロスのクリアーボールをエウベルがマルコス ジュニオールとのワンツーパスとドリブルで川崎F陣内へボールを運ぶ。エウベルの前には仲川とアンデルソン ロペスが川崎Fゴールに向かって走っており橘田、谷口と2対2の状況。
エウベルは橘田の前を取った仲川にスルーパス。ディフェンダーの裏へ抜け出しパスを受けた仲川は、飛び出してきたゴールキーパー、チョン ソンリョンの頭上を抜くチップキック気味のシュートを放ちゴール。
【90+9分・川崎F】得点者:ジェジエウ
川崎F陣内中央で谷口は右サイドのハーフウェイラインを少し超えた辺りにいる小林に向けて、ダイレクトでロングボールを送る。
小林はダイアゴナルに右サイドのスペースを突く家長にパス。家長はマークに来たエドゥアルドのディフェンスをかわすと、ゴール前に向けてハイクロス。このクロスにジェジエウが岩田に競り勝ちヘディングでシュートをしゴール。
ジェジエウはこのゴールの少し前のプレーで足を攣ってしまう。それによりディフェンスラインに下がらず前線に残っていた。それがこのゴールに繋がる。
局面ごとの方針
川崎フロンターレ
【ポジティブトランジション】
横浜FMのカウンタープレスに対してジョアン シミッチを中心とした細かいパス回しでプレスを剥がしにかかる。但し、パスを回すのが困難な場合は早いタイミングで前方にボールを送る。
【攻撃】
ビルドアップはジェジエウ、谷口の2センターバック(CB)とジョアン シミッチがトライアングルに並ぶ。横浜FMのフォアプレスが強い事もあり、早いタイミングで前線のサイドにあるスペースにロングボールを送る。サイドでボール持てばゴール前の態勢が整う前の早いタイミングでクロスを上げる。
横浜FMがリトリートすればジョアン シミッチを起点としたポゼッションオフェンスに移行。
横浜FMの中盤の選手は的確にマークを掴み強くプレスに来るので川崎Fの中盤は思うように機能しない事が多かったが、71分にシステムを4-4-2に変更すると中盤にマークのズレが生じるようになる。
厳しくマークされフリーになる事が少なかったジョアン シミッチも71分以降浮くようになり、積極的に前に出てライン間でパスを受け横浜FMのディフェンスラインを崩しにかかる。
【ネガティブトランジション】
ボールホルダーから少し間合いを取って4-1-4-1の陣形を組んで守備の体勢を作る。
【守備】
横浜FMのビルドアップに対してレアンドロ ダミアンが横浜FMの2CBをみて、脇坂とチャナティップは藤田、喜田をマーク。プレスの開始位置はアタッキングサードとミドルサードの境目辺り。
ミドルサードからの守備では4-1-4-1の陣形を敷き、パスコースを切るようにポジショニング。パスの受け手に対して強くアプローチする。
ディフェンシブサードでは4-1-4-1のブロックディフェンス。ゴール前では2CBとボールと逆サイドのサイドバック(SB)がゴール前に入って来た横浜FMの選手をマーク。
71分のシステム変更後、横浜FMのビルドアップに対してはレアンドロ ダミアンが2CBをみて小林が中盤へのパスコースを切る。その背後では4-4のブロックを敷く。
ミドルサード以降の守備方針は基本的にはシステム変更前と同様だが、陣形は4-4-2になる。
横浜F・マリノス
【ネガティブトランジション】
フィールド全体で素早くマークを掴み積極的にカウンタープレスに行く。
【守備】
川崎Fのビルドアップに対してアタッキングサードから前に出てプレス。アンデルソン ロペスはボールを持つCBにプレスに行き中盤は[システム図⑦]で示した形でマークを掴む。特に西村(34分以降はマルコス ジュニオール)はジョアン シミッチに対してマンマーク気味にマークにつき続ける。
川崎FのCBがボールを動かせばボールが動いた側のサイドハーフ(SH)がパスを受けた選手に強くアプローチし、それを機にチーム全体がボールサイドに寄せて行きプレスに行く。
基本的には、川崎Fボールになればフィールドの殆どのエリアでマンオリエンテッドにマークを掴みボールサイドに人を寄せてプレスに行っていた。
[システム図⑦] 川崎Fのビルドアップに対するフォアプレス(右SH仲川からプレスに行く場合)
⑪アンデルソン ロペスがファーストプレスに行き、㉚西村は❻ジョアン シミッチを、⑧喜田は⓲チャナティップを、⑯藤田は⓮脇坂をマーク
➍ジェジエウはボールを右(川崎Fからみて左)へ展開
ボールが展開された右サイドで㉓仲川がボールホルダーへプレスに行き、チーム全体でボールサイドに寄せて行く
㉚西村は基本的には❻ジョアン シミッチをマンマークでみるが、状況によってはパスを受けたCBへプレスに行く事もあった
【攻撃】
ビルドアップは岩田とエドゥアルドの2CBと喜田、藤田がスクエアに立つ2-2の並びでパスを回し、小池、永戸の両SBは基本前へと上がる。喜田と藤田でボールを動かすが起点になるのは喜田で、ボールが前へと進めば藤田は前に出て西村(34分以降はマルコス ジュニオール)と共に前線での崩しをサポート。
中盤で前を向けばサイドにボールを振り、仲川、エウベルの両SHがドリブルで仕掛ける。SBはSHをサポートしつつオーバーラップやインナーラップでサイドのスペースを突く。
試合の感想・ポイント
前半
両チームともに守備面での出来が非常に良く、締まった展開になる
川崎Fはミドルサードでの守備を重視し、パスコースを切りながらパスの受け手にアプローチする。横浜FMは前に出てプレスをかける守備方針の元、ネガティブトランジションでのカウンタープレスや川崎Fのビルドアップに対するフォアプレスを軸にマンオリエンテッドにマークを掴みボールホルダーに対して激しく寄せて行く。
お互いに守備戦術がよく機能していたが、その分攻撃面では苦労する事が多かった。
川崎Fは本来であればジョアン シミッチを中心にパスを回して攻めるはずだが、ジョアン シミッチはしつこくマークされなかなかフリーになれなず、他の選手も横浜FMの激しいプレスにより思うようにボールを回す事ができなかった。そこで川崎Fは早いタイミングで前方のサイドのスペースにボールを送り早いタイミングでゴール前にクロスを上げる攻撃を選択。25分の先制ゴールはこの攻撃方針が実ったものだった。
川崎F陣内に攻め込みながらも、思うように攻め切れない横浜FMも前半終了間際に自陣ゴール前からの鋭いカウンターで同点ゴールを挙げる。
両チームとも良い守備をし相手の攻撃を封じる。それによりお互いに攻撃面では苦戦したが、それでもゴールを奪ってみせるという素晴らしい前半だった。
後半
鋭い出足で主導権を握る横浜FM、苦しい展開の川崎Fをジェジエウが救う
後半もお互いに良い守備をみせていたが、特に横浜FMがフォアプレス、カウンタープレスの鋭さを増し、後半は横浜FMが立ち上がりから明確に主導権を握る。
ジョアン シミッチに対してはマルコス ジュニオールががっちりマンマーク。脇坂、チャナティップの両インテリオール両インテリオールにボールが入れば激しくプレスと、中盤を横浜FMが制圧。
攻撃でも横浜FMは強力なサイド攻撃で川崎Fゴールに迫る。特に右サイドにボールを入れ、ワンタッチで上がって来た小池へボールを落としてサイドを攻略する攻撃が有効だった。
川崎Fも時折、山根 未来やチャナティップが個人の力でプレスを剥がして局面を打開しようとする動きはあったものの、横浜FMペースは変わらず。71分川崎Fはシステムを変更([システム図④]参照)。マッチアップに齟齬が生じジョアン シミッチが浮くようになる。ジョアン シミッチは積極的に前に出てボールを受けるようになり川崎Fは試合のペースを若干は押し戻したが、それでも形勢を逆転するには至らなかった。
川崎Fにとっては苦しい試合展開が続くが、ディフェンシブサードで最終ラインの選手たちが固い守備をみせ横浜FMに勝ち越しゴールを許さない。この守備が最終的に川崎Fへ勝利を呼び込む。
ラストワンプレー、右サイド家長のハイクロスはゴール前のジェジエウに。脚が攣った事によりゴール前に残っていたジェジエウだが、このクロスに対して岩田に競り勝ち渾身のヘディングシュートを横浜FMゴールに叩き込む。
ジェジエウの試合終了間際の劇的な決勝ゴールにより、川崎Fが首位横浜FMを見事に撃破する。
選手寸評
川崎フロンターレ
ジェジエウ | 苦しい試合展開の中で谷口と共に的確な守備でゴールを守り、試合終了間際には決勝ゴールを叩き込む。首位横浜FM撃破の最大の立役者。 |
谷口 彰悟 | 横浜FMの激しいプレスによりビルドアップの球出しにかなり苦労していたが、それでもロングフィードで2つのゴールを演出。守備面も含めチームを勝利に導いた。 |
チャナティップ | 横浜FMのプレスに中盤を制圧されるなか、個人の力でプレスを剥がし局面の打開を図っていた。 |
山根 未来 | 横浜FMのプレスに対して早いタイミングクロスをいれる事を選択。先制ゴールをアシストしたクロスはディフェンスラインからのロングボールをダイレクトで蹴り込むものだったが、見事にコントロールされたボールをゴール前に入れた。 |
横浜F・マリノス
小池 龍太 | 右サイドで仲川をサポートし、自らもサイドのスペースを突き川崎Fのディフェンスラインを崩しにかかる。守備でもマルシーニョとのマッチアップで激しいバトルを繰り広げる。 |
喜田 拓也 | 激しいプレスで川崎Fの攻撃を潰す。攻撃でもパス回しの起点として中盤でボールを捌き続ける。 |
マルコス ジュニオール | 西村の怪我で急遽の出場となったが、的確なマークでジョアン シミッチを封じる。攻撃でもライン間を幅広く動き川崎Fのディフェンスラインを崩しにかかっていた。 |
仲川 輝人 | オフザボールの動きで橘田を制しての同点ゴールは見事だった。守備でもプレスの起点としてボールホルダーに対して強く前にプレッシャーをかけていた。 |
エウベル | 45+3分ロングカウンターからの同点ゴールを演出する動きは見事だった。また試合全体を通じても攻守で積極的な動きをみせた。 |
投稿主選出の man of the match
ジェジエウ
以上、川崎フロンターレ 対 横浜Fマリノス 戦のマッチレビューでした
本レビューは、あくまで投稿主個人の考えや感想を記事にしたものです。
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