サッカー日本代表観戦記 2022 EAFF E-1サッカー選手権 第3節

代表戦

パリSG来日の陰に隠れてしまった感のある今回のEAFF E-1サッカー選手権ですが、最終的には日本代表が男女同時優勝を果たしました
当サイトでは男子の最終戦、日本代表 対 韓国代表 の一戦をレビューしたいと思います

EAFF E-1サッカー選手権 最終結果

【男子】

順位 チーム名 勝点 勝敗 得失点差
優勝 日本代表 2勝 1分け 0敗 +9
2位 韓国代表 2勝 0分け 1敗 +3
3位 中国代表 1勝 1分け 1敗 -2
4位 香港代表 0勝 0分け 3敗 -10

【女子】

順位 チーム名 勝点 勝敗 得失点差
優勝 日本代表 7 2勝 1分け 0敗 +4
2位 中国代表 5 1勝 2分け 0敗 +2
3位 韓国代表 4 1勝 1分け 1敗 +3
4位 チャイニーズタイペイ代表 0 0勝 0分け 3敗 -9

日本代表 対 韓国代表

2022年7月27日 EAFF E-1サッカー選手権 第3節
日本代表 3-0 韓国代表
(日本代表 4大会ぶり2度目の優勝)

Jリーグ所属選手中心の日本代表が多彩な攻撃を披露

今回の出場選手の中から年末のワールドカップメンバーに選出される選手が何名いるのか注目ですね

メンバー

日本代表
監督 森 保一

【スタメン】

12 谷 晃生 (GK)
3 谷口 彰悟
5 畠中 慎之輔
6 岩田 智輝
9 西村 拓真
11 町野 修斗
16 相馬 勇紀
18 水沼 宏太
19 佐々木 翔
25 小池 龍太
26 藤田 譲瑠チマ

【交代】

17 宮市 亮 (59分In)
➡水沼 宏太 Out
8 森島 司 (78分In)
➡宮市 亮 Out(怪我)
14 脇坂 泰斗 (78分In)
➡西村 拓真 Out
15 橋本 拳人 (87分In)
➡藤田 譲瑠チマ Out
21 満田 誠 (87分In)
➡相馬 勇紀 Out

韓国代表
監督 パウロ ベント

【スタメン】

21 チョ ヒュンウ (GK)
3 キム ジンス
4 チョ ユミン
7 ナ サンホ
9 チョ ギュソン
10 キム ジンギュ
11 オム ウォンサン
15 キム ムンファン
18 パク ジス
20 クォン ギョンウォン
22 クォン チャンフン

【交代】

13 ソン ミンギュ (56分In)
➡オム ウォンサン Out
5 イ ヨンジュ (68分In)
➡パク ジス Out
17 チョ ヨンウク (68分In)
➡クォン チャンフン Out
16 キム ドンヒョン (85分In)
➡キム ジンギュ Out

基本システム

左:日本代表(青) 右:韓国代表(桃)

[システム図①]
試合開始時

[システム図②]
56分韓国 ⑬ソン ミンギュ投入
59分日本 ⑰宮市 亮 投入

[システム図③]
韓国68分 ⑤イ ヨンジュ、⑰チョ ヨンウク投入、システム変更

[システム図④]
78分日本 ⑧森島 司(⑰宮市 亮 怪我)、⑭脇坂 泰斗 投入

[システム図⑤]
韓国85分 ⑯キム ドンヒョン投入
日本87分 ⑮橋本 拳人、㉑満田 誠 投入

得点

【49分・日本】得点者:相馬勇紀
自陣でボールを持つ谷口が右サイドのスペースへ走り込む小池へロングフィード。右サイドの深い位置でボールを受けた小池は戻りながら藤田、水沼とトライアングルを形成しパスを回す。
トライアングルのパス回しの中で水沼がフリーランニングでペナルティエリアに侵入すると、次は小池、藤田、岩田でトライアングルを形成。この3人でパスを回し、ペナルティエリアの右角付近でフリーになった藤田がゴール前へ浮き球のクロスを上げる。
このクロスをファーサイドの相馬がヘディングでシュートしゴール。

[システム図⑥-(1)]ゴール直前の右サイドのパス回し
トライアングルを連続で形成してパスを回し、トライアングルの形を変形させる事でフリーを作る
谷口からのロングフィードを受けた㉕小池は㉖藤田、⑱水沼とトライアングルを形成
この3人でパスを回す中、⑱水沼がフリーランニングでペナルティエリア内に侵入

[システム図⑥-(2)]
⑱水沼がペナルティエリア内に侵入すると、次は㉕小池、㉖藤田、⑥岩田がトライアングルを形成
パスを回しつつ意図的にトライアングルを崩す

3人が一直線上に並び㉕小池からのパスを⑥岩田がスルーする事で㉖藤田がフリーでボールを受けクロスを上げる

【64分・日本】得点者:佐々木翔
右サイドのコーナーキック、相馬が右足アウトスイングのキック。
ゴール前をゾーンで守る韓国に対して後方からゾーンの間に入って来た佐々木がヘッドで合わせてゴール。

【72分・日本】得点者:町野修斗
日本陣内の左サイド、ハーフウェイライン付近で佐々木から西村にパス。西村はドリブルで前進しながらイ ヨンジュのプレスを外すと中央へ進み右ハーフスペースを上がって来た小池へパス。
小池は藤田にボールを渡すと韓国ディフェンスラインの裏に向かってフリーランニング。藤田、西村とパスを繋ぎ西村はダイレクトでディフェンスラインの裏に抜けて来た小池にボールを出す。
ラインブレイクを果たした小池が中央に折り返しのボールを入れると、ゴール前に詰めていた町野が合わせてゴール。

[システム図⑦]ゴール直前、小池のラインブレイク
㉕小池は㉖藤田にパスを出すとフリーランニングでディフェンスラインの裏を突く
ボールは㉖藤田、⑨西村と繋がり⑨西村はダイレクトでディフェンスライン裏の小池へ

ラインブレイクを果たした㉕小池は中央にボールを折り返し、町野が決める

局面ごとの方針

日本代表

【ポジティブトランジション】
素早くボールを前につけ、周囲の選手も縦に動き出し前方にあるスペースを突く。
前半はフォアプレスからのボール奪取が多く、この局面からチャンスを作る事が多かった。

後半はポゼッションオフェンスに移行する割合が増える。

【攻撃】
ビルドアップは谷口、畠中の2センターバック(CB)と藤田、岩田の2センターハーフ(CH)がスクエアに立つ2-2の並びでパスを回し、小池、佐々木の両サイドバック(SB)はビルドアップをサポートしつつボールが前に進めばサイドを上がる。岩田がパス回しの起点になりボールを周囲に捌き、藤田は中盤を広範囲に動き周囲の選手をサポート。
韓国陣内に侵入すると町野はライン間に下りてパスを引き出し、西村はライン間を左右に動いてサイドからの攻撃をサポートしながら韓国ディフェンスラインの裏を狙う。
前半は相馬の単独での突破が崩しのきっかけになる事が多かった。

後半に入ると小池はオフザボールのフリーランニングで積極的にオーバーラップし、佐々木は自らボールを持ち上がる。韓国陣内に侵入すれば藤田は前半以上に的確にボール付近に顔を出す事で崩しの局面で効果的にパス回しに関わるようになり、岩田は攻撃の起点としてパスを捌き、そこからタイミング良く前線まで攻め上がり攻撃参加する。
後半は後方からの押し上げが厚くなり複数の攻撃ルートを形成。多彩な攻撃で韓国の守備ブロックを崩しにかかる。
(具体的な崩しの方法は得点欄の[システム図⑥-(1)(2)][システム図⑦]参照)

【ネガティブトランジション】
素早くマークを掴みボールホルダーにプレッシャーをかけてミスを誘いボールをカットする。

後半、韓国陣内では素早くボールホルダーにアプローチしていたが、自陣では4-4-2のブロックを形成する。

【守備】
韓国のビルドアップに対しては、アタッキングサードから前に出てプレス。町野が韓国の2CBのうちの一方へプレスに行き、西村はクォン ギョンウォンへのパスコースを切りつつもう一方のCBへプレスに行く。町野、西村の動きに連動してチーム全体でマークを掴みボールサイドのサイドハーフ(SH)が二の矢のプレスに行き高い位置でのボール奪取を狙う。(前半のフォアプレスの詳細は後述する[システム図⑨]参照)
自陣では4-4-2のブロックディフェンス。韓国のサイドからのクロスに対してディフェンスラインの選手はゴール前で的確にクロスの受け手のマークを掴む。

後半、韓国のビルドアップに対してプレスの開始位置がやや下がりミドルサードに入った辺りになる。
68分、韓国がシステムを変更すると日本もビルドアップに対する守備方法を変更。町野、西村(78分以降は脇坂)が韓国の2CBを見つつイ ヨンジュ、キム ジンギュ(85分以降はキム ドンヒョン)の2CHへのパスコースを消し、藤田(87分以降は橋本)、岩田が前線の2人と挟み込む形で韓国の2CHをマークする。

[システム図⑧]68分以降、韓国のビルドアップに対する守備

韓国代表

【ネガティブトランジション⇒守備】
敵陣からマークを掴みマッチアップする相手にボールが入ればプレス、パスの受け手に対してプレスに行く形。
自陣に下がれば4-1-4-1のブロックを敷き、日本がブロックの外でパスを回している時はボールサイドのインテリオール(クォン チャンフン、キム ジンギュのどちらか)が前に出て日本のパス回しにプレッシャーをかける。
内側を切り、ボールがサイドに出ればボールサイドにラインを寄せ3人でボールを奪いに行く。

68分のシステム変更後、チョ ギュソン、チョ ヨンウクの2トップが日本の2CBにチェイシングに行き、中盤より後方は4-4のブロックを敷き待ち構える。

【攻撃】
ビルドアップはチョ ユミン、パク ジスの2CBとアンカーのクォン ギョンウォンがトライアングルに並ぶ2-1の形。日本のフォアプレスへの対応もあり時間の経過とともにクォン ギョンウォンはディフェンスラインまで下がる(日本のフォアプレスに対するは後述する[システム図⑩]参照)。
ビルドアップ時キム ムンファン、キム ジンスの両SBは高い位置を取ろうとする。
ビルドアップのパス回しからクォン チャンフン、キム ジンギュの両インテリオールにボールを入れ、彼らを起点に前進しアタッキングサードへの侵入を図る。
日本がマンオリエンテッドに前からマークを掴むのでプレスをかわせば前方の主に逆サイドにスペースがあるので、そのスペースを突いてゴール前にクロスを上げる。

後半立ち上がり、日本がプレスの開始位置をやや下げた為かビルドアップ時の並びを2-1のトライアングルに戻す。
68分のシステム変更により、ビルドアップ時の並びはチョ ユミン、クォン ギョンウォンの2CBとイ ヨンジュ、キム ジンギュ(85分以降はキム ドンヒョン)の2CHがスクエアに並ぶ2-2の形になる。システム変更後、当初は両SBは低い位置でビルドアップをサポートしていたが時間の経過とともにビルドアップの初期段階から高い位置取りをするようになる。
両SBが幅を取りサイドにボールを振ってサイドから日本の守備ブロック内への侵入を図る。

試合の感想・ポイント

前半

日本のフォアプレスが有効、ポジティブトランジションからチャンスを作る

日本は立ち上がりから積極的に前に出る。韓国陣内から積極的にマークを掴んでプレスをかけ、ボールを奪うとそのまま前に出てチャンスを作る。
日本のプレスに苦戦していた韓国だが、ビルドアップ時の並びを修正する事で徐々に日本のプレスに対応。30分台に入ると日本のプレスをかわしてサイドのスペースを突いてクロスを上げる事で日本ゴールに迫る。
ただ韓国の攻撃は単純なクロスが多く、ゴール前に入って来る選手の動きにもあまり工夫が感じられなかった。日本の守備陣は比較的容易に韓国の攻撃を弾き返していた。

[システム図⑨]日本のフォアプレス
⑪町野が韓国のCBへプレス、⑨西村は⑳クォンギョンウォンへのパスコースを切りつつもう一方のCBを掴む
サイドにパスを出させて、SH(この図の場合⑱水沼)がボールホルダーがプレッシャーをかける

[システム図⑩]日本のフォアプレスに対する韓国の対応
⑳クォン ギョンウォンがディフェンスラインまで下がる事で、最後尾で3対2の数的優位を作る
⑮キム ムンファン、③キム ジンスの両SBが高い位置を取る事で⑯相馬、⑱水沼に対してディフェンスラインに行くのかSBにつくのかの選択を強いる

後半

日本が多彩な攻撃で韓国を圧倒し3点を奪う

日本は後方からのサポートを厚くする事で左右中央といずれのエリアからでも多彩な攻撃を披露し韓国を圧倒する。3得点を異なったパターンで奪った事がこの日の日本の攻撃の多彩さを物語っている。
完敗の韓国。ビルドアップでは日本のプレスに対応する動きもあったが、そこから先の崩しの局面ではあまり工夫が感じられなかった。それによりフィニッシュの場面での迫力が不足し、日本に脅威を与える事は殆どなかった。

選手寸評

日本代表
藤田 譲瑠チマ 常にボールサイドに顔を出しパス回しの中心として日本の多彩な攻撃を演出。49分には先制ゴールをアシストする。ネガティブトランジションでも素早い反応からのカウンタープレスでボールを奪い返していた。
小池 龍太 積極果敢なオーバーラップで日本の攻撃に厚みをもたらし、2得点に絡む大活躍をみせた。
相馬 勇紀 ドリブルでサイドを突破し、ヘディングでゴールを奪い、プレースキックで佐々木のゴールをアシストと攻撃のあらゆる場面でチームに貢献した。
岩田 智輝 攻撃の起点としてパスを捌くだけでなく、前線まで攻め上がり攻撃に厚みをもたらす。守備でも的確にマークを掴み韓国の中盤を封じた。
谷口 彰悟 前半何度か攻め込まれる場面があったが、ゴール前で的確にマークを掴み韓国の攻撃を弾き返す。先制ゴールに繋がる小池へのロングフィードも見事だった。
町野 修斗 72分小池の折り返しにしっかりゴール前に詰めてゴールをゲット。またライン間に下りてパスを捌き、積極的にフォアプレスに行くなど得点以外の面でもチームに貢献した。
韓国代表
クォン ギョンウォン 日本のフォアプレスをかわす為にパスを受ける位置を変えるなど、厳しい状況の中でも工夫をしながら攻撃を組み立てていた。
チョ ギュソン ボールを触る機会は少なかったが、前線でパスを受ければ強さと速さをみせていた。
キム ムンファン サイドの高い位置にポジショニングする事で、日本のブロック内への侵入の為の中継点としての働きをこなしていた。

投稿主選出の man of the match

藤田 譲瑠チマ

以上、日本代表 対 韓国代表 戦のマッチレビューでした

本レビューは、あくまで投稿主個人の考えや感想を記事にしたものです。
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