これまで欧州サッカーを中心に取り上げていた当サイトですが、今回はJリーグを取り上げたいと思います
リーグ首位をひた走る横浜Fマリノスに上位に踏みとどまりたいサガン鳥栖が挑む一戦
試合は手に汗握る熱戦となりました
J1リーグ 第22節 結果
2022年7月16日
鹿島アントラーズ 1-1 ヴィッセル神戸
清水エスパルス 1-2 浦和レッズ
ガンバ大阪 1-2 セレッソ大阪
湘南ベルマーレ 0-0 アビスパ福岡
柏レイソル 1-0 コンサドーレ札幌
サガン鳥栖 2-2 横浜Fマリノス
名古屋グランパス (中止) 川崎フロンターレ
2022年7月17日
FC東京 2-0 ジュビロ磐田
京都サンガ 1-1 サンフレッチェ広島
今回は第22節の中からサガン鳥栖 対 横浜Fマリノス 戦をレビューします
サガン鳥栖 対 横浜F・マリノス
2022年7月16日 J1リーグ 第22節
サガン鳥栖 2-2 横浜F・マリノス
高い攻撃力と激しプレスディフェンスの横浜FMに対し、鳥栖も人を掴む守備と縦に速い攻撃で対抗
球際やトランジションの局面で激しい攻防が繰り広げられる熱い試合となる
メンバー
サガン鳥栖
監督 川井 健太
【スタメン】
40 | 朴 一圭 (GK) |
5 | ジエゴ |
6 | 福田 晃斗 |
8 | 本田 風智 |
10 | 小野 裕二 |
11 | 宮代 大聖 |
20 | ファン ソッコ |
29 | 岩崎 悠人 |
30 | 田代 雅也 |
37 | 小泉 慶 |
42 | 原田 亘 |
【交代】
23 | 菊地 泰智 (60分In) |
➡小野 裕二 Out | |
44 | 堀米 勇輝 (66分In) |
➡本田 風智 Out | |
18 | 西川 潤 (87分In) |
➡岩崎 悠人 Out | |
19 | 垣田 裕暉 (87分In) |
➡宮代 大聖 Out |
横浜F・マリノス
監督 ケヴィン マスカット
【スタメン】
1 | 高岳 陽平 (GK) |
6 | 渡辺 皓太 |
9 | レオ セアラ |
17 | 宮市 亮 |
23 | 仲川 輝人 |
24 | 岩田 智輝 |
25 | 小池 龍太 |
27 | 松原 健 |
28 | 山根 陸 |
30 | 西村 拓真 |
33 | 角田 涼太朗 |
【交代】
7 | エウベル (64分In) |
➡宮市 亮 Out | |
10 | マルコス ジュニオール (64分In) |
➡西村 拓真 Out | |
11 | アンデルソン ロペス (64分In) |
➡レオ セアラ Out | |
18 | 水沼 宏太 (73分In) |
➡仲川 輝人 Out | |
16 | 藤田 譲瑠チマ (77分In) |
➡渡辺 皓太 Out |
基本システム
左:サガン鳥栖(水色) 右:横浜Fマリノス(白)
[システム図①]
試合開始時
[システム図②]
後半開始直後
鳥栖の中盤、ダイヤモンド型に近い布陣になる
[システム図③]
60分鳥栖 ㉓菊地 泰智 投入
[システム図④]
64分横浜FM ⑦エウベル、⑩マルコス ジュニオール、⑪アンデルソン ロペス 投入
66分鳥栖 ㊹堀米 裕輝 投入
[システム図⑤]
73分横浜FM ⑱水沼 宏太 投入
77分横浜FM ⑯藤田 譲瑠チマ 投入
87分鳥栖 ⑱西川 潤、⑲垣田 裕暉 投入
得点
【19分・横浜FM】得点者:レオ セアラ(PK)
横浜FM陣内右サイドの岩田はハーフウェイライン付近で中央から右サイドに流れて来た西村に縦パス。流れながらパスを受けた西村に対してマークする福田は半身出遅れた状態になる。そこで左サイドバック(SB)のジエゴが西村を掴まえに前に出るが、その瞬間右サイドの仲川がジエゴが前に出た事によって生じたスペースをフリーランニングで突くと西村は仲川へスルーパス。
パスを受けた仲川はドリブルでペナルティエリア内へ侵入。ディフェンスに来た田代に対して1対1を仕掛けると、見事にファウルを誘いPKをゲットする。
仲川が得たPKをレオ セアラがゴール中央に決める。
[システム図⑥-(1)] 横浜FMがPKを得る直前のプレー
㉔岩田からの縦パスを㉚西村は中央から右サイドへ流れながら受ける
この時西村をマークする⑥福田は半身分出遅れてしまう。
[システム図⑥-(2)]
鳥栖の左SB⑤ジエゴは福田が出遅れた事により前に出て西村を掴まえに行くが
ジエゴが空けたスペースを仲川がフリーランニングで突き、西村は仲川にスルーパス
スルーパスを受けた仲川はペナルティエリア内に侵入し積極果敢な仕掛けからPKを得る
【24分・鳥栖】得点者:宮代 大聖
鳥栖のディフェンスラインは、ゴールキーパー(GK)も加わり左から右にパスを回す事で横浜FMのフォアプレスをかわすし中盤にボールを入れると、今度は福田、小泉、本田と右から左にパスを繋ぎハーフウェイラインを越え、左サイドをオーバーラップしていたジエゴにパス。パスを受けたジエゴは左サイドを前進する。
横浜FMディフェンス陣は自陣ゴール前に戻ろうとするも、ジエゴは横浜FMの守備陣形が整う前にディフェンスラインの背後にクロスをいれると、後方からディフェンスラインのギャップに飛び込んで来た宮代が合わせてゴール。
【59分・鳥栖】得点者:ファン ソッコ
右サイドのコーナーキック。
ゴール前をゾーンで守るの横浜FMに対してジエゴ、ファン ソッコ、田代がペナルティスポット付近で密集。この3人に対しては横浜FMはマンマーク気味に対応。
小野が右足でアウトスイングでゴール前中央にボールを蹴ると、ジエゴ、田代はニアへ。中央に残ったファン ソッコがゴール前、ゾーンの間に飛び込むと山根に競り勝ちヘディングでゴール。
【85分・横浜FM】得点者:水沼 宏太
鳥栖陣内に攻め込んだ横浜FMはマルコス ジュニオールが右ハーフスペースからマイナスのクロスを上げるも、ボールは流れてペナルティエリアの外へ。
このボールを小池が拾うと中央の山根、右サイドでフリーの松原とパスが繋がる。
松原はゴールに向かう低空の高速クロスをいれると、中央からニアに飛び込んで来た水沼がバックヘッドでゴール。
局面ごとの方針
サガン鳥栖
【ポジティブトランジション】
トランジションの攻防で先手を取ったり、横浜FMのカウンタープレスをかわせば縦にボールを入れて積極的にカウンターアタックを狙う。
後半、リードしている時間帯ではボールキープを選択する事が増える。
【攻撃】
ビルドアップはセンターバック(CB)のファン ソッコ、田代とボランチの福田、小泉がスクエアに並び、原田、ジエゴの両SBも低いポジションでサポートに入る。またGKの朴もビルドアップのパス回しに加わるので1-4-2の陣形でパスを回す事になる。
ボールが前に出れば縦にスペースを突きSBもサイドを上がって行く。前半はジエゴが積極的に横浜FM陣内深くまで攻め上がっていた。
後半に入るとボランチは福田が後ろ、小泉が前と明確に役割分担がなされ、中盤の並びはダイヤモンド型に近くなる。
ビルドアップの形もファン ソッコ、田代の2CBと福田がトライアングルの陣形でパスを回し、小泉は前に出て後ろと前線を繋ぐ中継点や前線のサポートを行う事が増える。ビルドアップから横浜FM陣内へと前進を果たすと田代(又はファン ソッコ)が上がって行き中盤の攻撃の組み立てに加わる。
前半は左サイドでジエゴのオーバーラップからの攻撃が目立ったが、後半は岩崎が右サイドから仕掛け、原田が前に出てサポートに入るパターンが多くみられた。
【ネガティブトランジション】
ボールを奪われればすぐにマークを掴みに行く。
高いポジションに上がり攻撃参加していた田代がトランジションの瞬間にボールホルダーに対して後方から素早くチェックに行きボールを奪い返すシーンが度々みられた。
【守備】
横浜FMのビルドアップに対してアタッキングサードからマークを掴み前に出てプレスをかける。福田、小泉の両ボランチは横浜FMの中盤をマークする時と、中盤へのパスコースを切りながら前に出て横浜FMのディフェンスラインにプレスをかける時とを使い分ける。
フィールド全体でマンオリエンテッドにマークを掴む事が基本となっていた。
横浜F・マリノス
【攻撃】
ビルドアップは岩田、角田の2CBと山根、渡辺の両ボランチがスクエアに並び攻撃の起点になる。
松原、小池の両SBはハーフスペースを上がりアタッカー陣をサポート。仲川、宮市の両サイドハーフ(SH)はサイドに張って幅を取りサイドから仕掛ける。トップ下の西村はライン間を左右に動いて後方からのパスを引き出す。
鳥栖のマンオリエンテッドな守備に対しては、前の4人(仲川、西村、宮市、レオ セアラ)と両SBが流れながら後方からのパスを受ける事で鳥栖の選手を動かしてスペースを作り、パスの受け手の周囲の選手がそのスペースを突く事で鳥栖のマークを剥がしにかかる。
64分の選手交代以降、SHはハーフスペースに絞ったポジションを取る。トップ下に入ったマルコス ジュニオールは、ビルドアップ時は後方にさがってパスを引き出しながら攻撃を組み立て、アタッキングサードまで攻め込めば前線まで上がりフィニッシュに絡む。
【ネガティブトランジション】
できる限り素早くマークを掴みカウンタープレスを狙う。
【守備】
鳥栖のビルドアップに対してはアタッキングサードからプレス。
レオ セアラが鳥栖の2CBに対してチェイシングをかけ、鳥栖がボールを動かせばボールサイドのSHが前に出てボールホルダーにプレッシャーをかける。SHの動きを起点にチーム全体でボールサイドに陣形を絞りマークを掴んでプレスをかける。
ミドルサードから後方での守備は4-4-1-1の陣形を敷き、中盤はボールサイドのSHが前に出てボールホルダーにプレッシャーをかけ、残りの3人は半円状の並びでボールホルダーを囲むように寄せて行く。
試合の感想・ポイント
前半
お互いにマッチアップを嵌め合う展開、サイドの攻防が前半の鍵に
鳥栖は4-4-2、横浜FMは表記上は4-3-3だが4-2-3-1に近い並びという事で、マッチアップの噛み合わせ的には4-4-2のミラーゲームに近い状態。それ故、お互いにマッチアップが自然と噛み合う場面が多くみられた。ボール非保持側にとってはプレスが嵌めやすいので、高い位置でボールを奪う可能性が高い一方、一度プレスを剥がされると一気に自陣までボールを運ばれてしまいピンチに陥りやすいという試合展開になる。
必然的に攻撃側からみて低いエリアでの球際の攻防が激しくなる傾向があった。
前半の大きな争点となったのは鳥栖からみて左サイド(横浜FMからみて右サイド)の攻防。
鳥栖は左SBジエゴ、横浜FMは右SH仲川が攻撃を牽引。横浜FMの先制点はジエゴが釣り出された事によって生じたスペースを仲川が突いた事がきっかけであり、鳥栖の同点ゴールは横浜FMのフォアプレスをかわしたタイミングでジエゴがオーバーラップした事によって生まれた。
後半
鳥栖が上手い試合運びで一旦は逆転するが、横浜FMは終了間際に執念の同点ゴールを挙げる
後半も素早くマークを掴みプレスをかける姿勢をお互いにみせ、前半と同様に球際で激しい攻防が繰り広げられる。
ただ、鳥栖は中盤の並びに変化をつけマッチアップの噛み合わせを微妙にずらすと、59分セットプレーから逆転のゴールを奪う。
ここから試合の流れは鳥栖に傾く。鳥栖はネガティブトランジションや横浜FMのビルドアップの局面で的確にマークを掴み横浜FMの攻撃を封じ、ボールを持てば陣形のバランスを保ちながらパスを繋ぎ逃げ切りを図る。
横浜FMは苦しい状況が続いていたが、85分水沼がゴール前のクロスに見事な飛び込みでヘディングシュートを決め同点に追いつく。横浜FMは逆転に向けてさらに攻勢を強めるが逆転のゴールが生まれる前にタイムアップ。
両チームが勝ち点1を分け合う事となった。
選手寸評
サガン鳥栖
福田 晃斗 | 攻撃ではパス回しの起点として横浜FMの厳しいプレスの中でもボールを繋ぎ、守備でもマッチアップする西村に食らいついた。 |
ジエゴ | 前半は積極的なオーバーラップをみせて攻撃を牽引。24分には宮代の同点ゴールをアシストした。 |
原田 亘 | 後半はジエゴに代わり彼が積極的な攻め上がりをみせ、右サイドから仕掛ける岩崎をサポートした。 |
田代 雅也 | 攻撃時には高い位置まで上がって行き攻撃の組み立てに加わり、ネガティブトランジションでは攻撃時のポジショニングを生かした素早いプレスでボールを奪い返した。 |
朴 一圭 | 度重なるスーパーセーブでチームの窮地を救う。攻撃でもビルドアップで的確な繋ぎをみせチームに貢献した。 |
横浜F・マリノス
水沼 宏太 | 85分の同点ゴール、ダイアゴナルの動きで田代の背後から前に出る動きは見事だった。 |
仲川 輝人 | 前半は高い技術力とスピードで右サイドを蹂躙し、先制点に繋がるPKをゲット。後半は鳥栖に警戒されて勢いは尻すぼみだった。 |
松原 健 | 効果的な攻め上がりで右サイドのアタッカーをサポート。85分、水沼の同点ゴールをアシストしたクロスも見事だった。 |
マルコス ジュニオール | 先発出場の西村がフィールドを左右に動くのに対して、途中出場の彼は前後の動きを中心にする事で攻撃に変化をつけた。 |
投稿主選出の man of the match
水沼 宏太
以上、サガン鳥栖 対 横浜Fマリノス 戦のマッチレビューでした
本レビューは、あくまで投稿主個人の考えや感想を記事にしたものです。
本レビューに対して、ご意見やご感想があれば下のコメント欄よりコメントを頂ければ幸いです。
コメント