前回の投稿に引き続きUEFAネイションズリーグを取り上げます
今回はW杯で日本と同組のスペイン代表がチェコ代表と対戦した試合のレビューです
UEFAネイションズリーグ とは
前回の記事でも説明しましたが、改めてUEFAネイションズリーグを簡単に説明します。
UEFAネイションズリーグは2018年から始まった欧州代表チーム(UEFAに所属する協会)による常設のリーグ戦です。
開催は1シーズンおきで、過去に18-19シーズン、20-21シーズンの2度開催されており、今回の22-23シーズンは3度目の開催となります。
【大会フォーマット】
リーグは最上位のリーグAから最も下位のリーグDまで4つのカテゴリーに分かれる
リーグAからリーグCは各リーグ16チームが所属
リーグDは7チームが所属
リーグAからリーグCは16チームを4つのグループにグループ分け
リーグDは7チームを2つのグループにグループ分ける
グループごとにホームアンドアウェイによる2回戦総当たりのリーグ戦を行う
グループ1位のチームは上のリーグに昇格、グループ最下位のチームは下のリーグに降格
リーグAの各グループ1位の4チームは決勝トーナメントを行い、シーズンの優勝チームを決定する
(一部 Wikipedia参照)
スペイン代表 対チェコ代表
2022年6月13日 UEFAネイションズリーグ 第4節 リーグA グループA2
スペイン代表 2-0 チェコ代表
チェコはカウンターからの縦攻撃でスペインを苦しめる場面もあったが
中盤の構成力や展開力で上回るスペインがより効果的な攻撃を繰り出し、難敵チェコを撃破する
メンバー
スペイン代表
監督 ルイス エンリケ
【スタメン】
23 | ウナイ シモン (GK) |
3 | イニゴ マルティネス |
7 | アルバロ モラタ |
8 | コケ |
10 | マルコ アセンシオ |
14 | エリック ガルシア |
16 | ロドリ |
17 | マルコス アロンソ |
19 | カルロス ソレール |
20 | ダニエル カルバハル |
21 | ダニ オルモ |
【交代】
9 | ガビ (59分In) |
➡カルロス ソレール Out | |
11 | フェラン トーレス (59分In) |
➡モラタ Out | |
22 | パブロ サラビア (72分In) |
➡マルコ アセンシオ Out | |
5 | セルヒオ ブスケッツ (78分In) |
➡コケ Out | |
18 | ジョルディ アルバ (78分In) |
➡マルコス アロンソ Out |
チェコ代表
監督 ヤロスラフ シルハビィ
【スタメン】
23 | アレス マンドゥス (GK) |
2 | ダビド ジマ |
3 | バクラフ イェメルカ |
4 | ヤクブ ブラベツ |
5 | ブラディミル ツォウファル |
8 | ヤクブ ペシュク |
10 | ヤン クフタ |
15 | ミハル サディレク |
17 | バクラフ チェルニィ |
18 | ヤロスラフ ゼレニィ |
22 | トマシュ ソウチェク |
【交代】
21 | アレックス クラール (30分In) |
➡サディレク Out(怪我) | |
9 | アダム ハロジェク (59分In) |
➡チェルニィ Out | |
11 | バクラフ ユレチカ (59分In) |
➡クフタ Out | |
7 | ルカシュ カルバフ (79分In) |
➡ゼレニィ Out | |
14 | スタニスラフ テツル (79分In) |
➡ペシュク Out |
基本システム
左:スペイン(赤) 右:チェコ(白)
[システム図①]
試合開始時
[システム図②]
30分チェコ ㉑クラール投入(⑮サディレク怪我)
[システム図③]
59分スペイン ⑨ガビ、⑪フェラン トーレス投入
59分チェコ ⑨ハロジェク、⑪ユレチカ投入
[システム図④]
72分スペイン ㉒サラビア投入
78分スペイン ⑤ブスケッツ、⑱ジョルディ アルバ投入
79分チェコ ⑦カルバフ、⑭テツル投入
得点
【24分・スペイン】得点者:カルロス ソレール
スペイン陣内左ハーフスペースでイニゴ マルティネスからフィールド中央のコケへハーフウェイラインを越える縦パスが入る。チェコ中盤のコケへのマークが若干ズレた事もあり、パスを受けたコケは素早く前を向くと右ハーフスペースでディフェンスラインの裏に向けて走るマルコ アセンシオへダイアゴナルのロングボールを送る。
マルコ アセンシオは右ニアゾーンの深い位置でボールをキープし後方へボールを落とすと、ゴール前へ走り込んで来たカルロス ソレールが右足でダイレクトに合わせてシュートしゴール。
【75分・スペイン】得点者:パブロ サラビア
スペインのポゼッション攻撃。自陣左ハーフスペースでイニゴ マルティネスからコケへ縦パス。コケはダイレクトで前方のガビへボールを送る。ハーフウェイライン付近でパスを受けたガビはマークするブラベツを剥がしながら前へドリブルで進みフィールド中央を走り込むダニ オルモへパス。
ダニ オルモはダイレクトで右ハーフスペースでフリーのフェラン トーレスにボールを送ると、パスを受けたフェラン トーレスはシュート性の強いボールをゴール前に蹴り込む。このボールをファーサイドのサラビアが合わせてゴール。
局面ごとの方針
スペイン代表
【攻撃】
ビルドアップ時の初期配置はエリック ガルシアとイニゴ マルティネスの2センターバック(CB)とロドリ、コケがスクエアに並ぶ。状況によってはロドリがCB脇におりて最終ライン3枚でパスを回す。ダニエル カルバハルとマルコス アロンソの両サイドバックはビルドアップをサポートしつつボールが前に進めばサイドを上がる。モラタはライン間に下りてビルドアップからのボールを引き取り周囲にボールを捌くと、自らは前線に上がる。
フィールドの幅を使ったパス回しでアタッキングサード、そしてゴール前への侵入を図る。サイドの幅取り、右はマルコ アセンシオ、左はマルコス アロンソが担当。
主にフィールドの左側でコケ、ダニ オルモが攻撃を組み立て右サイドに張るマルコ アセンシオにダイアゴナルのサイドチェンジ。マルコ アセンシオにボールが渡ればカルロ スソレールが前線に走り込むというパターンが有効で、先制点もこのパターンから生まれる。
[システム図⑤]
スペイン、攻撃時の配置(試合開始時から58分まで)
フィールドの左側で攻撃を組み立て右サイドの⑩マルコ アセンシオにボールが渡れば⑲カルロス ソレールが前線に走り込む
後半チェコの守備方法が変更され中盤にマークが浮く選手(主にロドリ)が出るようになると、そこを起点に攻撃を展開する(チェコの守備方法やマッチアップの噛み合わせについては後述)。
59分に投入されたガビは攻撃時トップ下的な動きを行うので、攻撃時の陣形は4-2-3-1になる。
[システム図⑥]
59分ガビ投入以降の攻撃時の配置
【ネガティブトラジション⇒守備】
チェコボールになれば素早くマークを掴み、ボールサイドにラインを絞ってボールホルダーに寄せて行く。複数の選手でボールホルダーを囲むようにしてプレスをかけ、ロドリがボールの逃がし所を塞ぐ。
最初のプレッシャーラインを突破されそうになると、早い段階でリトリートする守備に切り替えていた。
チェコ代表
【ネガティブトラジション⇒守備】
前半は前に出てマンオリエンテッドに前線からマークを掴み、スペインの中盤を封じに行く(前線のマッチアップは[システム図⑦]参照)。
スペインがボールを下げれば前に出てプレスに行く。
リトリートすればミドルサードでは3-4-3(5-2-3)、ディフェンシブサードでは5-4-1のコンパクトなブロックを敷き、そこからマークを掴む。
自陣ではパスの受け手に対して背後からアプローチする形の守備で前向きにボールを奪いに行く。
[システム図⑦]
前半の守備
スペイン陣内に於ける前線の守備開始時のマッチアップ
⑰チェルニィ、⑧ペシュクは2CBをマーク、⑩クフタはアンカーへのパスコースを切る
㉒ソウチェク、⑮サディレクは両インテリオールをマーク
前線の動きに応じて後方の5枚も各々でマークを掴む
後半、守備の入り方を変更。センターフォワードのクフタ(59分以降はユレチカ)がスペインの2CBをみて、その後ろは5-4の陣形を組み、そこからマークを掴む。
マンオリエンテッド的要素がやや弱まり、その分ボールオリエンテッド的な要素が加味される。この変更により中盤以降の人数的な厚みは出るが、マークの掴みがやや曖昧になる。
[システム図⑧]
後半の守備陣形
【ポジティブトラジション】
ボールを奪えば縦に出てカウンターを狙う。
前半、スペインのパスの受け手に対して背後からのチェックでボールを奪うと、そのまま前に出てのカウンターアタックが有効だった。
【攻撃】
ビルドアップはジマ、ブラベツ、イェメルカの3CBの前にソウチェク、サディレクが立つ3-2の並びでパスを回す。ツォウファル、ゼレニィの両ウイングバック(WB)はビルドアップをサポートしゴールキーパーへのバックパスも活用しパスを回す。
ボールが前に出ればチェルニィ、ペシュク、クフタの前線3枚が縦に動き出す。
縦攻撃が基本方針だが縦に進めない時は中盤で一旦ボールをキープし、ボールホルダーの周囲の選手が縦にボールホルダーを追い越して行き、そこにボールを入れてプレッシャーラインの突破を図る。
60分台中頃以降はツォウファル、ゼレニィ(79分以降はカルバフ)の両WBが前に出て攻撃参加。アタッキングサードまで侵入すれば逆サイドのWBはゴール前に詰める。
試合の感想・ポイント
前半
スペインがチェコのマンマークに苦しむも、一瞬のマークのズレを突いて先制点を奪う
試合開始直後、スペインがポゼッションを握りチェコ陣内へとパスを繋いで攻め込むが、時間の経過とともにチェコがネガティブトラジションから守備の局面で的確にマークを掴むようになるとスペインのパス回しが停滞していく。そして10分台中頃になるとチェコはスペインのパスの受け手に対してアプローチする守備からのカウンターでチャンスを作るなど優位に試合を進める。
苦しい展開となったスペインだが24分、チェコの中盤のマークがズレた一瞬の隙をコケが見逃さず、右サイド裏のスペースを狙うマルコ アセンシオにダイアゴナルのロングボールを送ると、後方から走り込んで来たカルロス ソレールが決めて先制点を奪う。
後半
中盤の構成力で上回るスペインが追加点を挙げる
後半に入りチェコは守備方法を変更。それにより中盤から後ろの人数は確保できるようになったが、中盤のマッチアップが曖昧になり、スペインは攻撃の初期段階で中盤の誰かがフリーになるという事が頻繁に起こる。
前半、スペインの中盤の選手がフリーになるのはオフザボール時の動きの良さによるものだったが、後半はマッチアップの噛み合わせによって中盤の選手がフリーになっていた。
スペインは中盤のフリーになった選手を起点に攻撃を組み立てる。そこにスペインは59分、ガビを投入。ガビは攻撃時にトップ下的な動きでチェコのライン間を左右に動き回ると、チェコの守備陣はこの動きを掴まえるのに手を焼く。またチェコとしてはビハインドの状況で前に出ないといけないという事もありWBが前に出るようになるが、その分サイドにはスペースが生じるようになっていた。
以上のような要素が重なる状況で、75分コケの球出しからガビがドリブルでマークを剥がしながら前進してチャンスを作るとサラビアが追加点を挙げる。
この2点目のゴールは実質的にチェコに対するとどめとなる。チェコも縦に出る攻撃で反撃の意思はみせたもののゴールを奪うには至らず、スペインが2対0で勝利を得る。
選手寸評
スペイン代表
コケ | 中盤での的確な動きで攻撃を組み立てる。スペインの2得点はいずれも彼が起点だった。 |
ガビ | 途中出場からチェコの守備陣を混乱に陥れる。75分の得点に繋がるブラベツを剥がす動きは見事だった。 |
カルロス ソレール | マルコアセンシオにサイドチェンジのボールが入った時の縦への動き出しは有効で、その動きから先制点を奪う。 |
ダニ オルモ | 中盤での攻撃の組み立て、サイドからの仕掛け、前線でのディフェンスラインの崩しと攻撃のあらゆる場面に顔を出し、高い技術力でチームに貢献した。 |
チェコ代表
ヤクブ ブラベツ | スペインが前からプレッシャーをかけてきてもしっかりとパスを繋ぎ、前方へボールをフィード。攻撃面で高い能力をみせていた。 |
アレックス クラール | やや動きすぎるきらいはあったが、攻守で広範囲に動き局面を打開しようという意識は感じられた。 |
ヤクブ ペシュク | 左サイドから積極的に仕掛け、特に前半はスペインゴールまであと一歩というところまで迫った。 |
投稿主選出の man of the match
コケ
以上、スペイン代表 対 チェコ代表 戦のマッチレビューでした
本レビューは、あくまで投稿主個人の考えや感想を記事にしたものです。
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