21-22シーズン終了直後のインターナショナルマッチウィーク
欧州ナショナルチーム常設のリーグ戦であるネイションズリーグを観戦しました
今回はその中からイングランド代表 対 イタリア代表 戦をレビューします
UEFAネイションズリーグ とは
今回当サイトで取り上げるUEFAネイションズリーグ。日本ではあまり馴染のない大会で、ご存知ない方もいらっしゃると思います。
なので、ここで簡単に説明させて頂きます。
UEFAネイションズリーグは2018年から始まった欧州代表チーム(UEFAに所属する協会)による常設のリーグ戦です。
開催は1シーズンおきで、過去に18-19シーズン、20-21シーズンの2度開催されており、今回の22-23シーズンは3度目の開催となります。
【大会フォーマット】
リーグは最上位のリーグAから最も下位のリーグDまで4つのカテゴリーに分かれる
リーグAからリーグCは各リーグ16チームが所属
リーグDは7チームが所属
リーグAからリーグCは16チームを4つのグループにグループ分け
リーグDは7チームを2つのグループにグループ分ける
グループごとにホームアンドアウェイによる2回戦総当たりのリーグ戦を行う
グループ1位のチームは上のリーグに昇格、グループ最下位のチームは下のリーグに降格
リーグAの各グループ1位の4チームは決勝トーナメントを行い、シーズンの優勝チームを決定する
(一部 Wikipedia参照)
イングランド代表 対 イタリア代表
2022年6月12日 UEFAネイションズリーグ 第3節 リーグA グループA3
イングランド代表 0ー0 イタリア代表
前半はスリリングな展開からお互いに決定機を作るも決め切れず
後半はお互いにネガティブトラジション重視の姿勢により攻撃は尻すぼみ
強豪国対決はスコアレスドロー決着に…
メンバー
イングランド代表
監督 ギャレス サウスゲイト
【スタメン】
1 | アーロン ラムズデイル (GK) |
2 | リース ジェイムス |
3 | キーラン トリッピアー |
4 | デクラン ライス |
5 | フィカヨ トモリ |
6 | ハリー マグワイア |
7 | ジャック グリリッシュ |
8 | ジェイムズ ウォードプラウズ |
9 | タミー エイブラハム |
10 | ラヒム スターリング |
11 | メイソン マウント |
【交代】
20 | ハリー ケイン (65分In) |
➡エイブラハム Out | |
18 | カルバン フィリップス (65分In) |
➡デクラン ライス Out | |
17 | ジャロッド ボウエン (65分In) |
➡マウント Out | |
23 | ブカヨ サカ (79分In) |
➡スターリング Out | |
15 | マーク グエイ (88分In) |
➡トモリ Out |
イタリア代表
監督 ロベルト マンチーニ
【スタメン】
1 | ジャンルイジ ドンナルンマ (GK) |
2 | ジオバンニ ディロレンツォ |
3 | フェデリコ ガッティ |
5 | マヌエル ロカテッリ |
8 | サンドロ トナーリ |
9 | ジャンルカ スカマッカ |
10 | ロレンツォ ペッレグリーニ |
12 | マッテオ ペッシーナ |
13 | フェデリコ ディマルコ |
15 | フランチェスコ アチェルビ |
21 | ダビデ フラッテージ |
【交代】
23 | サルバトーレ エスポジト (64分In) |
➡ペッレグリーニ Out | |
11 | ウィルフリード ニョント (64分In) |
➡ロカテッリ Out | |
22 | ジャコモ ラスパドーリ (77分In) |
➡スカマッカ Out | |
16 | ブライアン クリスタンテ (87分In) |
➡ペッシーナ Out | |
7 | アレッサンドロ フロレンツィ (87分In) |
➡ディマルコ Out |
基本システム
左:イングランド(白) 右:イタリア(青)
[システム図①]
試合開始時
[システム図②]
64分イタリア ⑪ニョント、㉓エスポジト投入
65分イングランド ⑰ボウエン、⑱フィリップス、⑳ケイン投入
[システム図③]
77分イタリア ㉒ラスパドーリ投入
79分イングランド ㉓サカ投入
[システム図④]
87分イタリア ⑦フロレンツィ、⑯クリスタンテ投入
88分イングランド ⑮グエイ投入
局面ごとの方針
イングランド代表
【攻撃】
ビルドアップの初期配置はマグワイア、トモリの2センターバック(CB)の前にウォードプラウズ、デクラン ライスが立つ2-2の並び。デクラン ライスを起点に前進し、ボールが前に進めばウォードプラウズは前線付近まで上がる。
イタリアのプレス開始位置が下がれば、ディフェンスライン全体は上がりデクラン ライスはCBの脇に下りて最終ライン3枚でパスを回し、デクラン ライスを起点に前進する。
アタッキングサード付近まで来ればスターリング、グリリッシュの両サイドハーフ(SH)がサイドから仕掛け、サイドバック(SB)のリース ジェイムス、トリッピアーとトップ下のマウントがSHをサポートする。
両SHの仕掛けに対してイタリアがサイドのスペースをケアすれば、スターリング、グリリッシュはハーフスペースに絞りリース ジェイムス、トリッピアーの両SBがタッチライン際を上がって幅を取る。
65分に投入されたケインはライン間に下がってビルドアップからのボールを受け、周囲の選手にパスを捌く。
後半、時間の経過とともにマグワイアがボールを持ち上がる事が増えていく。ボールを持ち上がったマグワイアはそのまま中盤にステイして攻撃の組み立てに加わる。
【ネガティブトラジション⇒守備】
ボールを奪われれば敵陣からでもマークを掴みプレスに行く。プレスに行けない時はリトリートして4-4-2のブロックを敷く。
イタリアのビルドアップに対してアタッキングサードからプレスに行く場合、エイブラハムがボールを持つCBにプレッシャーをかけ、マウントはロカテッリへのパスコースを切りつつもう一方のCBをみる。前線2人の動きを起点にチーム全体でマークを掴みプレスに行く。
プレスをかわされればリトリートして4-4-2のブロック守備に移行する。
後半、アタッキングサードからのプレス方法を変更([システム図⑤-(1)(2)]参照)。
ゴールキックなどのセットされた状態からのプレーの場合センターフォワード(CF)と右SHがイタリアの2CBをマークして、トップ下の選手がアンカーへのパスコースを切る。
ネガティブトラジションから守備に入ってプレスに行く場合は、CFとトップ下の選手がイタリアの2CBをマークし、その後ろは4と4の2ラインを敷く4-4-2の並びでマークを掴む。
[システム図⑤-(1)]
後半の守備
ゴールキックなど、セットされた状態に対するフォアプレス
CF⑳ケインと右SH⑰ボウエンが2CBをマークし、トップ下の⑩スターリングがアンカーへのパスコースを切る
[システム図⑤-(2)]
後半の守備
ネガティブトラジションから守備にに入ってプレスに行く時の陣形
CF⑳ケインとトップ下⑩スターリングが2CBをマーク
チーム全体では4-4-2の並びに
イタリア代表
【攻撃】
ビルドアップはガッティ、アチェルビの2CBとロカテッリのトライアングルで、ロカテッリにボールを入れ彼を起点にボールを左右や中央に振り分ける。
試合の立ち上がりはボールを左右に振ってサイドやハーフスペースから仕掛ける事が多かった。フィールドの右側、左側各々でSB、インテリオール、ウイング(WG)がトライアングルをローテーションしながら前進。アタッキングサードまで侵入すればニアゾーンを取りに行きイングランドのディフェンスラインを崩しにかかる。
20分台に入るとスカマッカがライン間に下りてボールを収める。彼のポストプレーを起点にトナーリ、フラッテージの両インテリオールやハーフスペースに絞って来たペッシーナ、ペッレグリーニの両WGにボールを落とし、ラインのギャップやディフェンスライン裏のスペースを攻める事で、フィールドの左右に加えフィールドの中央からの攻めも攻撃のレパートリーに加える。
[システム図⑥]
イタリアの攻撃
ビルドアップは③ガッティ、⑮アチェルビ、⑤ロカテッリのトライアングル。
フィールドの右側は②ディロレンツォ、㉑フラッテージ、⑫ペッレグリーニが、左側は⑬ディマルコ、⑧トナーリ、⑩ペッレグリーニが各々トライアングルを形成しローテーション。
また、左サイドから⑩ペッレグリーニが中央にカットインして仕掛け、⑬ディマルコがペッレグリーニをサポートしつつサイドのスペースを突くパターンもみられた。
フィールド中央では⑨スカマッカが下がってポストプレー。
エスポジトがアンカーに入っていた64~87分の時間帯のビルドアップは、インテリオールに入っていたペッシーナ、トナーリのうちのどちらかが下がってダブルボランチ気味の並びになりエスポジトをサポートする形をとっていた。
【ネガティブトラジション⇒守備】
試合の立ち上がり、守備の基本陣形は4-3-3。
相手ボールになれば4-3-3の陣形を組み、ボールサイドに絞る形で敵陣からでもプレスに行く。
リトリートする場合も試合序盤での守備のファーストポジションは4-3-3。インテリオールが通常のポジションならWGはそのまま下がってサイドのスペースを埋めるが、インテリオールがサイドに出ればWGはハーフスペースのスペースを埋める。
20分台に入ると守備の基本陣形は4-1-4-1に移行していく。
イングランドの両SHがサイドから強く仕掛けてくるので、ペッシーナ、ペッレグリーニの両WGはSBをサポートする為に下がる事が多くなる。また、時間の経過とともにネガティブトラジションでフォアプレスに行く割合が下がり、ミドルサードあたりまで下がりブロックを敷く割合が高まる。以上が4-1-4-1へ移行していった理由として挙げられる。
守備の基本陣形が4-1-4-1に移行して以降も、ネガティブトラジションでは素早くブロックを組む事を優先する。
アタッキングサードからフォアプレスに行く場合、状況に応じてトナーリが前線に上がり前線が2枚になる事があった。
ミドルサードからディフェンシブサードでの守備は、まず4-1-4-1のブロックを組みスペースを埋めてからマークを掴む。イングランドのサイド攻撃に対して両WGは低い位置までプレスバック。特にグリリッシュとマッチアップするペッシーナはディフェンスラインまで下がる事があった。
試合の感想・ポイント
前半
両チームともに狙い通りの攻撃の形からチャンスを作るもゴールならず
両チームの基本システム、イングランドは4-2-3-1、イタリアは4-1-2-3で、初期のポジショニングで自然とマッチアップが噛み合いやすい配置(基本システム欄[システム図①]参照)。その状態で立ち上がり両チームともにアタッキングサードからプレスに行くので、上手くプレスが嵌ればボール非保持側がボールを奪いショートカウンターでチャンスを作る。
逆にプレスを一枚剥がされると、マークのズレが玉突き式に発生。お互いに中盤の選手の展開力が高いこともあり、マークのズレを的確に突いて今度はボール保持側がチャンスを作る。
このようにフォアプレスを敢行した結果がどちらに転んでも決定的なチャンスに繋がるという状態が試合序盤は続く。
お互いに決定的チャンスを作り合うスリリングな試合展開になるが、互いに決定機を決め切れない。時間の経過とともに両チームともにラインを下げて相手チームの攻撃に対処していった事もあり、スコアレスで前半は終了する。
後半
後半はお互いの攻撃が尻すぼみ、試合はスコアレスドローでの決着となる
トラジションの攻防に於いて、両チームともにネガティブトラジションでの動きを重視する意識が高まっていく。その影響や攻撃の中心を担う選手の途中交代もあり、お互いの攻撃は時間の経過とともに尻すぼみになっていく。
イタリアのプレスバックの意識の高さもあり、特にイングランドに攻撃の尻すぼみ感が強いように感じた。イングランドもマグワイアの攻め上がりや、フィリップスとウォードプラウズのポジションチェンジといった対策を講じたが、目に見える効果は得られず。
スコアレスのまま試合終了となった。
選手寸評
イングランド代表
デクラン ライス | 攻撃の起点として高い展開力を発揮。パスを捌くだけではなく前にスペースがあれば自らボールを持ち上がる、といった判断の良さが光っていた。 |
メイソン マウント | 前線3枚をサポートしつつ自らもフィニッシュに絡む。彼が早い時間帯に退いた事もイングランドの攻撃が尻すぼみになった要因の一つではないだろうか。 |
フィカヨ トモリ | 放送席解説(DAZN)の林陵平氏はサイドのスペースをカバーする時の速さを高く評価。試合全体を通しても最後尾で落ち着いてプレーしていた。 |
ジェイムズ ウォードプラウズ | ビルドアップをサポートしつつボールが前に進めば高い位置まで上がって行き前線のサポートをするなど、広範囲に攻撃に関与していた。 |
イタリア代表
サンドロ トナーリ | 攻撃では左サイドや左ハーフスペースを流動的に動き、組み立てから崩しまで多くの役割をこなす。守備でも素早いプレスバックでイングランドの攻撃を潰していた。 |
マヌエル ロカテッリ | 長短のパスを自在に操り左右中央にボールを供給。レジスタとして高いゲームメイキング能力をみせた。 |
ロレンツォ ペッレグリーニ | 攻撃の初期段階では左サイドに張り、そこからハーフスペースや中央にカットインする事でチャンスを作っていた。 |
ダビデ フラッテージ | フィールドの右側でディロレンツォ、ペッシーナと連携してチャンスを作り、状況によってはディフェンスラインの裏のスペースへの飛び出しもみせた。 |
ジャンルカ スカマッカ | ライン間に下りてのポストプレーで攻撃の組み立てに貢献。ボールを収める能力はかなりの高さだった。 |
投稿主選出の man of the match
サンドロ トナーリ
以上、イングランド代表 対 イタリア代表 戦のマッチレビューでした
本レビューは、あくまで投稿主個人の考えや感想を記事にしたものです。
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