欧州サッカー観戦記 21-22UEFAヨーロッパリーグ Final

アイントラハトフランクフルト対レンジャーズ UEFAのコンペティション

UEFAヨーロッパリーグ決勝戦 アイントラハト フランクフルト 対 レンジャーズ
お互いが異なるゲームプランを持ち、それを発揮し合う好ゲームとなった

決勝戦進出チーム 勝ち上がり

アイントラハト フランクフルト

Round of 16 対 ベティス 3-2 (2-1,1-1)

Quarter Final 対 バルセロナ 4-3(1-1,3-2)

Semi Final 対 ウエストハム 3-1(2-1,1-0)

レンジャーズ

Round of 16 対 レッドスター 4-2(3-0,1-2)

Quarter Final 対 ブラガ 3-2(0-1,3-1)

Semi Final 対 ライプツィヒ 3-2(0-1,3-1)

アイントラハト フランクフルト 対 レンジャーズ

2022年5月19日 UEFAヨーロッパリーグ Final
アイントラハト フランクフルト 1(0EX0)1 レンジャーズ
(PK戦 5-4 フランクフルト 勝利)

PK戦までもつれる激闘を制したのはフランクフルト

日本のサッカー界にとっても、20年ぶりに日本人選手が欧州主要タイトルを獲得する記念すべき試合となった

メンバー

アイントラハト フランクフルト
監督 オリバー グラスナー

【スタメン】

1 ケビン トラップ (GK)
2 エバン エンディカ
8 ジブリル ソウ
10 フィリップ コスティッチ
15 鎌田 大地
17 セバスティアン ローデ
18 アルマミ トゥレ
19 ラファエル ボレ
29 イェスパー リンドストローム
35 トゥタ
36 アンスガー クナウフ

【交代】

20 長谷部 誠 (59分In)
➡トゥタ Out(怪我?)
23 イェンスペッテル ハウゲ (71分In)
➡リンドストローム Out
6 クリスティアン ヤキッチ (90分In)
➡ローデ Out
25 クリストファー レンツ (101分In)
➡エンディカ Out
7 アイディン フルスティッチ
(延長ハーフタイムIn)
➡ソウ Out

レンジャーズ
監督 ジオバンニ ファンブロンクフォルスト

【スタメン】

1 アラン マクレガー (GK)
2 ジェイムス タバーニア
3 カルビン バッシー
4 ジョン ランドストラム
6 コナー ゴールドソン
8 ライアン ジャック
14 ライアン ケント
17 ジョー アリボ
18 グレン カマラ
23 スコット ライト
31 ボルナ バリシッチ

【交代】

10 スティーブン デイビス (74分In)
➡ライアン ジャック Out
30 ファッション サカラ (74分In)
➡スコット ライト Out
37 スコット アーフィールド
(延長開始前In)
➡カマラ Out
19 ジェイムズ サンズ (101分In)
➡アリボ Out
25 ケマル ルーフェ (118分In)
➡バリシッチ Out
16 アーロン ラムジー(118分In)
➡サカラ Out

基本システム

左:フランクフルト(白) 右:レンジャーズ(青)

[システム図①]
試合開始時

[システム図②]
59分フランクフルト ⑳長谷部 投入

[システム図③]
71分フランクフルト ㉓ハウゲ投入
74分レンジャーズ システム変更 ⑩スティーブンデイビス、㉚サカラ投入

[システム図④]
90分フランクフルト ⑥ヤキッチ投入
延長戦開始時
レンジャーズ システム変更 ㊲アーフィールド投入

[システム図⑤]
101分フランクフルト ㉕レンツ投入
101分レンジャーズ システム変更 ⑲サンズ投入

[システム図⑥]
延長戦終了直前

得点

【57分・レンジャーズ】得点者:ジョー アリボ
フランクフルトのゴールキーパー(GK)、トラップのロングキックがレンジャーズ陣内へ。フィールド中央でこのボールをゴールドソンがヘディングで弾き返す。弾き返されたボールをソウがバックヘッドで後方へ戻すが、ボールはディフェンスラインの裏へ。
トゥタがボールを拾いに行くが、そこにアリボが競りに行くとトゥタが転倒。ボールを拾ったアリボがGKトラップの正面から冷静に左足でボールをゴールに流し込み、ゴール。

【69分・フランクフルト】得点者:ラファエル ボレ
アタッキングサード、左サイドでのスローイン。コスティッチが後方のエンディカへスロー。エンディカは少し前進してタッチライン際のコスティッチへボールをリターン。
ボールを受けたコスティッチに対してスコット ライトが寄せてプレッシャーをかけようとするが、コスティッチはディフェンスライン裏の僅かなスペースに向けて低い弾道のクロス。ニアでボレがバッシーの前に飛び込んでクロスに合わせてゴール。

局面ごとの方針

アイントラハト フランクフルト

【ポジティブトラジション⇒攻撃】
ボールを奪った際、前にスペースがあれば、そのスペースを突いて縦へと進む。
ビルドアップは最終ラインにトゥレ、トゥタ、エンディカの3センターバック(CB)が並び、その前にソウが立つ3-1の並び。クナウフ、コスティッチの両ウイングバック(WB)はサイドで幅を取る。
サイドから前進する際、右はトゥレ、左はエンディカが前に出て中盤のトライアングルに加わる。
中央やハーフスペースではリンドストローム、鎌田、ボレの3人が流動的に動きながらライン間に下りてボールを引き取りに来る。
前線3人の流動的な動きは、マンオリエンテッドにマークを掴みに来るレンジャーズディフェンスに対する対抗策と思われる。

左右中央の各レーンにボールを回し、前にスペースができれば前進。
後半以降は時間の経過とともにサイドから前進する事が増える。

【ネガティブトラジション】
スペースを埋める事を優先し5-2-3(ディフェンシブサードでは5-4-1)のブロックを敷く。
スペースが埋まればボールサイドからマークを掴み、ボールホルダーに寄せて行く。

【守備】
レンジャーズのビルドアップに対してはミドルサードに5-2-3の陣形を敷き、前に出る。
自陣に下がればリンドストローム、鎌田が中盤のサイドに入る5-4-1のブロックを敷く。

レンジャーズ

【ポジティブトラジション】
前にスペースがあれば素早く縦方向へと進むが、フランクフルトが先にスペースを埋めればポゼッションオフェンスに移行。
後半以降は時間の経過とともにポゼッションオフェンスに移行する割合が増える。

【攻撃】
ビルドアップはタバーニア、ゴールドソン、バッシー、バリシッチの4バックが並び、その前にランドストラム(状況によってはライアン ジャック)が立つ4-1の並び。フランクフルトが守備時に前線が3枚なのに対し、最終ラインに4枚を揃える事で数的優位を作りパスを回し中盤にボールを送る。
前進はサイドからが多く、ボールが前に進めばタバーニア、バリシッチの両サイドバック(SB)も上がる。前が詰まるなどでボールを後方に下げて攻撃をやり直す時はSBも下がって後方のパス回しに加わる。
後方のパス回しにライアン ジャックやランドストラムが下がってサポートに入ればSBは押し出される形で再び前に上がる。
右サイド、タバーニアとスコット ライトが連携してフランクフルトのWB、コスティッチに対して数的優位を作り押し込んで行きCBエンディカをサイドに釣り出すシーンが何度かみられた。

74分、システム変更によりビルドアップの並びは4バックの前にランドストラム、スティーブン デイビスのダブルボランチが立つ4-2になる。

延長戦に入りシステムが再度変更されるとビルドアップの形も再変更。
ランドストラムがゴールドソンの脇に下がり、3CBとなる。最終ライン3枚でパスを回し、中盤のスティーブン デイビス、アーフィールドがビルドアップの出口としてパスを受けに来る。

【ネガティブトラジション⇒守備】
放送席解説(wowow)戸田和幸氏曰く「マッチアップする相手を予め決めてマークに行っている」と説明(各マッチアップは[システム図⑦]参照)。マンオリエンテッドの要素が強い守備戦術を用いていた。

[システム図⑦]
守備時のマッチアップ

後半、システム変更や体力の消耗により徐々にマークを掴む動きが鈍化。時間の経過とともにボールオリエンテッドの要素が強まっていく。

延長戦に入ると4-3-3のブロックを敷く形が守備の基本になる。前線の3枚はボールサイドにラインを絞り前に出てボールホルダーにプレッシャーをかける。
自陣に下がればランドストラムがディフェンスラインまで下がり5-4-1気味のブロックを敷く。

101分、システム変更。守備では明確に5-4-1のブロックを敷く事になる。

試合の感想・ポイント

前半

一進一退の攻防が続き、スコアレスのまま前半を終える

左右中央とボールを振り分けバランス良く攻めるフランクフルト。後方で数的優位を作り、そこからサイドを突くレンジャーズ。
ボールオリエンテッドにスペースを埋めながら守備に入るフランクフルト。ネガティブトラジションでマンオリエンテッドにマークを掴むレンジャーズ。
両チームが攻守に於いて全く異なるサッカーを展開し、ペースの奪い合いとなった前半だった。

後半

後半もお互いに譲らず一進一退で、延長戦に突入する

後半も一進一退の攻防が続くなか、57分アリボの献身的な動きがフランクフルト守備陣の綻びを突きレンジャーズが先制する。
ビハインドとなったフランクフルトは、守備時にラインを上げレンジャーズのディフェンスラインに対してアタッキングサードからプレスに行くなど、より前に出る姿勢をみせると69分、コスティッチのクロスにボレが合わせてゴールを奪い同点に追いつく。
その後も両チームともに攻撃的な姿勢をみせるもゴールは奪えず。試合は1対1のままタイムアップ。試合の決着は延長戦へと持ち越される事となる。

延長戦・PK戦

延長戦でも決着がつかず、勝負の行方はPK戦に…

延長戦に入り、お互いにコンパクトな陣形を形成しようとするが、体力の消耗もありスペースが生じやすくなる。それによりオープンな展開が続く状況が度々みられ、決定的なシーンもあったがゴールはならず。
決勝戦は昨年に引き続き2年連続のPK決着となる。

PK戦。レンジャーズ4人目のキッカー、ラムジーのシュートをフランクフルトのGKトラップがストップ。
対するフランクフルトは5人全員がPKを決めて勝負あり。

フランクフルトが79-80シーズンのUEFAカップ優勝以来、42年ぶりの欧州タイトル獲得となった。

選手寸評

アイントラハト フランクフルト
ラファエル ボレ 厳しくマークされるなかでも、前線からライン間まで広範囲に動き攻撃を牽引。69分には同点のゴールを決める。
フィリップ コスティッチ タバーニア、スコット ライトとのマッチアップに苦戦するも、69分には見事なクロスで同点弾をアシスト。
アルマミ トゥレ 守備ではマッチアップするライアン ケントへのボールの供給を断ち、攻撃でも右サイドでの攻撃の組み立てに参加するなど、攻守でチームに貢献した。
長谷部 誠 途中出場ながら的確なカバーリングと正確な球出しで、安定感抜群のプレーをみせていた。
イェンスペッテル ハウゲ 中盤に下がったり前線でディフェンスラインの裏へ飛び出すなど、オフザボールの多彩な動きでパスを引き出す。ボールを持っても前方にスペースがあればドリブルでボールを持ち上がるなど、多方面でチームオフェンスに貢献した。
レンジャーズ
ジェイムス タバーニア 状況に応じて右サイドを上下に動き続けた。彼の動きやポジショニングは、マッチアップするコスティッチに対してかなり有効だった。
ライアン ケント 厳しいマークにあいボールに触る機会は少なかったが、ボールを持てば高い技術力とスピードでフランクフルトの脅威となっていた。
ジョー アリボ 前線で献身的に動き続ける。その動きが57分の先制ゴールに繋がった。
カルビン バッシー アジリティを生かした守備は粗削りながらも強さを感じた。解説の戸田和幸氏も彼の働きを高く評価していた。
ジョン ランドストラム 攻守で数多くの役割を担い、戦術上のキーマンとして奮闘した。

投稿主選出の man of the match

ラファエル ボレ

以上、ヨーロッパリーグ決勝戦 アイントラハト フランクフルト 対 レンジャーズ 戦のマッチレビューでした

本レビューは、あくまで投稿主個人の考えや感想を記事にしたものです。
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