プレミアリーグ首位のシティと、ラリーガ首位のレアルの対戦は派手な打ち合いに
お互いのアタッカー陣が力を発揮する好試合になる
Semi Final 1st leg 結果
2022年4月27日
マンチェスター シティ 4-3 レアル マドリード
2022年4月28日
リヴァプール 2-0 ビジャレアル
今回は マンチェスター シティ 対 レアル マドリード 戦をレビューします
※同カードの2nd legはこちらでレビューしておりますので、よろしければご覧下さい
マンチェスター シティ 対 レアル マドリード
2022年4月27日 UEFAチャンピオンズリーグ Semi Final 1st leg
マンチェスター シティ 4-3 レアル マドリード
大量点が入る試合は往々にして大味になりがちだが
この試合は、高い技術力による攻防や高度な戦術的駆け引きがみられ、非常に面白い試合だった
メンバー
マンチェスター シティ
監督 ジュゼップ グアルディオラ
【スタメン】
31 | エデルソン モラエス (GK) |
3 | ルベン ディアス |
5 | ジョン ストーンズ |
9 | ガブリエ ウジェズス |
11 | オレクサンドル ジンチェンコ |
14 | アイメリク ラポルト |
16 | ロドリ |
17 | ケビン デブライネ |
20 | ベルナルド シウバ |
26 | リヤド マフレズ |
47 | フィル フォデン |
【交代】
25 | フェルナンジーニョ (36分In) |
➡ストーンズ Out(コンディション不良) |
|
7 | ラヒム スターリング (83分In) |
➡ジェズス Out |
レアル マドリード
監督 カルロ アンチェロッティ
【スタメン】
1 | ディボウ クルトワ (GK) |
2 | ダニエル カルバハル |
3 | エデル ミリトン |
4 | ダビド アラバ |
8 | トニ クロース |
9 | カリム ベンゼマ |
10 | ルカ モドリッチ |
15 | フェデリコ バルベルデ |
20 | ビニシウス ジュニオール |
21 | ロドリゴ |
23 | フェルラン メンディ |
【交代】
6 | ナチョ フェルナンデス (ハーフタイムIn) |
➡アラバ Out(怪我?) | |
25 | エドゥアルド カマビンガ (70分In) |
➡ロドリゴ Out | |
19 | ダニ セバージョス (79分In) |
➡モドリッチ Out | |
11 | マルコ アセンシオ (88分In) |
➡ビニシウス Out |
基本システム
左:シティ(水色) 右:レアル(紺)
[システム図①]
試合開始時
[システム図②]
36分シティ ㉕フェルナンジーニョ投入(⑤ストーンズ、コンディション不良の為交代)
[システム図③]
後半開始時
レアル ⑥ナチョ フェルナンデス投入
[システム図④]
70分レアル ㉕カマビンガ投入
[システム図⑤]
79分レアル ⑲セバージョス投入
83分シティ ⑦スターリング投入
88分レアル ⑪アセンシオ投入
得点
【2分・シティ】得点者:ケビン デブライネ
シティ、レアル陣内でのポゼッションオフェンス。
ルベン ディアスが右サイドのマフレズにボールを送ると、マフレズはペナルティエリアの角に向かってドリブルカットイン。メンディとビニシウスの間を割って入り中央へと進むと、レアルディフェンス陣の視線はマフレズに集中し、ディフェンスラインの中央にはギャップが生じてしまう。
そのギャップにデブライネが走り込むと、マフレズはデブライネに向けて浮き球のクロスを上げる。そのクロスにデブライネはダイビングヘッドでゴール。
【11分・シティ】得点者:ガブリエウ ジェズス
左サイド、ハーフウェイライン付近でのパス回し。
ロドリが左にいるラポルトにパス。その時フォデンが左サイドのスペースに向けてタッチライン際を走り込むと、ラポルトはフォデンに浮き球のパスを送る。
パスを受けたフォデンはディフェンスに来たミリトンをかわすと左サイドを前進し、後方のデブライネにボールを戻す。
デブライネはゴール前に速いボールを入れると、ジェズスがそのボールを背後に流す事でマークについていたアラバをかわし、そのままシュートしゴール。
【33分・レアル】得点者:カリム ベンゼマ
シティ陣内でのボールの競り合いから中央にこぼれたボールをモドリッチが左に流し、ボールは左ハーフスペースのメンディへ。
メンディは左足アウトスイングでディフェンスラインの手間をなめるようなクロスを上げる。そのクロスをファーサイドにいたベンゼマがジンチェンコの前に出てボレーで合わせてゴール。
【53分・シティ】得点者:フィル フォデン
レアル陣内の右サイド、メンディからビニシウスへの縦パスをフェルナンジーニョがビニシウスの背後から走り込みカットすると、そのまま前へと走り込む。カット後のこぼれ球をマフレズが拾いサイドを走るフェルナンジーニョへパス。
パスを受けたフェルナンジーニョは右サイドを抉ってクロスを上げると、ゴール前カルバハルの前に入って来たフォデンがヘディングで押し込みゴール。
【55分・レアル】得点者:ビニシウス ジュニオール
レアルは自陣左サイドの深い位置でシティのプレスを受けるもナチョ フェルナンデス、クロースとパスを繋いでプレスをかわすと、クロースはダイレクトで左サイドのメンディへボールを渡す。
メンディは左サイドのハーフウェイラインライン手前にいるビニシウスに縦パス。ビニシウスはパスをターンしながら流す事でマークするフェルナンジーニョを剥がすと、約60メートルの距離をドリブルで駆け抜けゴール前まで到達。そのままシュートを放ちゴール。
【74分・シティ】得点者:ベルナルド シウバ
シティは右サイドの攻撃でレアルの守備ブロックを押し込むと右ハーフスペースのロドリが左ハーフスペースのジンチェンコにサイドチェンジ。
ジンチェンコはペナルティエリアの手前までドリブルで上がると、ディフェンスに来たクロースを切り返しでかわそうとする。この時クロースはジンチェンコの脚を引っ掛け、ジンチェンコは転倒。
このプレーに対してレフリーはアドバンテージを取りそのままプレーを流すと、こぼれ球をベルナルド シウバが拾う。
ベルナルド シウバは細かいタッチのドリブルでペナルティーエリア内に侵入すると、カルバハルの前からシュートを放ちゴール。
【82分・レアル】得点者:カリム ベンゼマ(PK)
シティ陣内、右サイドでのフリーキック。
クロースがゴール前、ディフェンスラインの裏へハイボールを入れる。ボールを競ったラポルトの手にボールが当たりハンドの判定でペナルティーキックとなる。
このPKをベンゼマがチップキックでゴール中央に決める。
局面ごとの方針
マンチェスター シティ
【攻撃】
ビルドアップはルベン ディアス、ラポルトの前にロドリが立つ2-1の並び。ストーンズ、ジンチェンコの両サイドバック(SB)はビルドアップをサポートしジンチェンコはボールが前に出ればサイドを上がる。36分、ストーンズに代わって投入されたフェルナンジーニョもジンチェンコと同様にボールが前に出れば上がって行く。
後方でパスを繋ぎながら、ライン間のベルナルド シウバやデブライネ、サイドのフォデンにパスを差し込み前進。レアルが守備ブロックを下げてスペースを埋めれば後方のルベン ディアス、ラポルト、ロドリにボールを戻し、そこから再度左右にボールを振り分けサイドから仕掛ける。
10分台の後半頃からフィールドの左側からの前進が増える。
左サイド・左ハーフスペースにトライアングルを作りに前進し、前にスペースができればフォデンが縦に仕掛ける。前が詰まればサイドチェンジし、マフレズが右サイドからカットインする形で仕掛ける。フェルナンジーニョやベルナルド シウバがマフレズのサポートに入る。
[システム図⑥]
フィールド左側から前進する際の配置
前半は主にフィールドの左側から前進していたが、後半はロドリ、デブライネがフィールドの右側にきて右側から前進する事も度々あった。
これは、ボールを奪われた際(レアルのポジティブトラジション)、ビニシウスが自由に動けるスペースを消す事が目的ではないだろうか。
【ポジティブトラジション】
基本方針はポゼッションの確立だが、前線の選手は素早く動き出すので前にスペースがあれば鋭いカウンターを繰り出す。
【ネガティブトラジション】
敵陣では素早くマークを掴んでプレスに行く。
自陣では状況に応じてマークを掴みに行く時と、ブロックを形成する時とを使い分ける。
80分過ぎ頃からチーム全体の脚が鈍り、マークを掴みに行くよりブロックを形成する事を優先するようになる。
【守備】
敵陣ではアタッキングサードからプレス。
ジェズスはアラバを、デブライネはミリトンをマークし、そこを起点にプレス。クロース、モドリッチ、ボールサイド側のSBやウイング(WG)とマークを掴んでいく。
自陣ではジェズス、デブライネが2トップの4-4-2のブロックを敷く。
レアル マドリード
【ネガティブトラジション⇒守備】
基本の陣形は4-1-4-1。
試合開始直後から暫くはベンゼマが単独でシティのディフェンスラインやゴールキーパーに対してチェイシングに行き、2列目以降は少し下がった位置で中央を締める形で待ち構える。
10分台後半頃から、2列目の4人のうちの1人が前に出てベンゼマと共にシティのディフェンスラインに対してチェイシングに行くようになり、それに合わせてチーム全体でも前に出てボールホルダーに対してプレッシャーをかけるようになる。チェイシングに関して、ビニシウスがベンゼマと共に行く時が効果が高く、特に前半はこの2人が敵陣の高い位置でボールを奪う事で攻撃に繋げていた。
自陣に下がれば4-1-4-1のブロックを敷き、ミリトンは主にフォデンを、アラバは主にジェズスをマークする。
後半、守備陣形を修正。モドリッチをトップ下に置く4-4-1-1とし、モドリッチは中盤の前でフィルター的な働きをする。
またロドリゴ、ビニシウスの両WGは自分のサイドにボールが来ればチェイシングに行く。
守備陣形の変更について放送席解説(wowow)の安永聡太郎氏は「ダブルボランチにする事で、デブライネを封じる事が狙いではないか」と説明していた。
[システム図⑦]
後半の守備陣形
【ポジティブトラジション⇒攻撃】
ビルドアップはミリトン、アラバの前にクロースが立ち、モドリッチもボールを受けに下りて来る2-2の並び。両SBはビルドアップをサポートし、ボールが前に出れば上がって行く。
前半レアル陣内でのシティの守備が良く、後方からの攻撃の組み立てはあまり機能しなかったが、前線でのチェイシングによりシティ陣内深くでのボール奪取が度々あり、そこからシティゴールに迫っていた。
後半はビルドアップのメカニズムを変更。
クロースがディフェンスライン付近まで下がりミリトン、ナチョ フェルナンデスと共にパスを回しバルベルデ、モドリッチ(後半途中からはカマビンガ、ダニ セバージョス)がボールを引き取りに下がって来る2-1-2の並びになる。クロースの動きでシティのフォアプレスを回避する事で、前半よりも前方にボールが繋がるようになる。
[システム図⑧]
後半のビルドアップ
クロースが下がる事でセンターバックの前が空く
空いたスペースにモドリッチがボールを受けに下がって来る
ボールが前に出ればスペースのあるサイドにボールを出し、右はロドリゴ、左はビニシウスがサイドから仕掛ける。
試合の感想・ポイント
前半
シティが猛攻をみせるがレアルもシティの弱点を衝き対抗、お互いに点を取り合う
立ち上がりからシティが素早いプレスと質の高い攻撃をみせ試合の主導権を握ると、あっさりと2点を奪う。その後もシティは遅攻と速攻を織り交ぜ多彩な攻撃でレアルを攻め立てる。
解説の安永氏はレアルがシティボール時に強くプレスに行かない事を懸念していた。
10分台後半になりレアルはボールを奪いに行く姿勢を強める。特にシティ陣内でベンゼマとビニシウスが2人で行くチェイシングは有効で、敵陣深くでボールを奪いシティゴールに迫るシーンを作るようになると、チーム全体でも徐々に陣形を前に押し上げられるようになる。
そして33分、レアルはベンゼマのゴールで1点を返す。ここからレアルは試合の流れをひっくり返す可能性もあったが、シティのグアルディオラ監督はすかさず手を打つ。
コンディション不良により自陣でのボールロストを多発していたストーンズに替えてフェルナンジーニョを投入する。
フェルナンジーニョはビニシウスのチェイシングをかわし素早くボールを前線につけるなど、的確なプレーで右サイドの不安定さを一発で解消。シティが悪くなりかけていた流れを断ち切る形で前半を終える。
後半
点の取り合いは後半さらに激しさを増して行く
後半も試合はシティペース、前半から引き続き質の高い攻撃を繰り出し多くの決定機を作り、その中から2つのゴールを挙げる。
対するレアルもビルドアップのメカニズム変えたり、守備陣形を変更したりといった修正を施しシティに対抗。ビニシウスの独走ゴールなどこちらも2点を奪いシティに食らいつく。
80分を過ぎたあたりからシティはチーム全体の脚が鈍りだす。それに伴い試合のペースもスローダウン。試合は4対3のスコアでタイムアップ。
シティが1点をリードし、次の舞台ベルナベウに向かう事になる。
2nd legに向けて
1st legは激しい点の取り合いとなったが、その要因の一つとしてシティはカイル ウォーカー、レアルはカゼミーロという両チームの守備の要といえる選手の欠場が挙げらるのではないだろうか。
2nd leg、カイル ウォーカーとカゼミーロは出場できるのか。もし出場でいるとしてコンディションはどの程度回復しているのか。
この事が勝負を分ける要因の一つになるのではないだろうか。
選手寸評
マンチェスター シティ
ベルナルド シウバ | フィールドを広範囲に動き回り、高い技術力で局面を前進させる。74分のゴールも見事だった。 |
フェルナンジーニョ | ストーンズに代わって出場すると、巧みなボール捌きでパス回しを安定させる。53分には前に出るディフェンスでボールを奪うとフォデンのゴールをアシストした。 |
ルベン ディアス | ラポルト、ロドリと共に後方で的確にパスを回し、アタッカー陣にボールを供給した。 |
ケビン デブライネ | 遅攻・速攻どちらの局面でも自在にボールを回し攻撃のタクトを振るう。先制ゴールのシーンではディフェンスラインのギャップを的確に突き、2点目のアシストパスも凄まじかった。 |
オレクサンドル ジンチェンコ | 左サイドを上がり攻撃の組み立てに加わると、的確な繋ぎと前に差し込むパスで攻撃に貢献した。 |
レアル マドリード
ビニシウス ジュニオール | 前半はチェイシングで、後半はサイドからの仕掛けでシティに脅威を与える。フェルナンジーニョにやられて失点した直後に、今度はフェルナンジーニョを抜き去り独走ゴールを決めるなど、この試合で一番目立つ存在だった。 |
カリム ベンゼマ | レアルにとって難しい展開だったにも拘らずPKを含む2ゴールを挙げる決定力は、正にエースと呼ぶにふさわしい。 |
トニ クロース | 前半はあまり目立たなかったが、後半はビルドアップ時のポジショニングを修正。シティのフォアプレスを巧みにかわし攻撃の起点としてボールを前に繋いだ。 |
ルカ モドリッチ | 難しい局面も高い技術力で打開。また守備やルーズボール争いでは体を張る事を厭わず、33分のゴールも彼が体を張った事によって生まれた。 |
投稿主選出の man of the match
ベルナルド シウバ
以上、マンチェスター シティ 対 レアル マドリード 戦のマッチレビューでした
本レビューは、あくまで投稿主個人の考えや感想を記事にしたものです。
本レビューに対して、ご意見やご感想があれば下のコメント欄よりコメントを頂ければ幸いです
最後になりましたが
去る5月1日、サッカー界の巨星であるイビチャ オシム氏がご逝去されました。
生前のオシム氏はジェフユナイテッド千葉・市原、日本代表の監督として、日本のサッカー界の発展にも多大な貢献をされ、一サッカーファンとしても感謝の念に堪えません。
イビチャ オシム氏のご冥福を心よりお祈り申し上げます。
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