欧州サッカー観戦記 21-22UEFAチャンピオンズリーグ Quarter Final 2nd leg その①

バイエルン対ビジャレアル UEFAのコンペティション

まさかのジャイアントキリング
圧倒的な攻撃力を誇る優勝候補のバイエルンに対し、ウナイ エメリ監督の采配が見事に嵌る

Quarter Final 2nd leg 結果

2022年4月13日
バイエルン ミュンヘン 1-1 ビジャレアル
(2試合合計 1-2 ビジャレアル 勝利)

2022年4月13日
レアル マドリード 2-3 チェルシー
(2試合合計 5-4 レアル マドリード 勝利)

2022年4月14日
アトレティコ マドリード 0-0 マンチェスター シティ
(2試合合計 0-1 マンチェスター シティ 勝利)

2022年4月14日
リヴァプール 3-3 SLベンフィカ
(2試合合計 6-4 リヴァプール 勝利)

今回は バイエルン ミュンヘン 対 ビジャレアル 戦をレビューします

バイエルン ミュンヘン 対 ビジャレアル

2022年4月13日 UEFAチャンピオンズリーグ Quarter Final 2nd leg
バイエルン ミュンヘン 1-1 ビジャレアル
(2試合合計 1-2 ビジャレア 勝利)

千載一隅のチャンスを決め勝利したビジャレアル
勝負を分けたのは試合終盤の選手交代だった

メンバー

バイエルン ミュンヘン
監督 ユリアン ナーゲルスマン

【スタメン】

1 マヌエル ノイアー (GK)
2 ダヨ ウパメカノ
5 バンヤマン パバール
6 ヨシュア キミッヒ
8 レオン ゴレツカ
9 ロベルト レバンドブスキ
10 レロイ ザネ
11 キングスレイ コマン
21 リュカ エルナンデス
25 トマス ミュラー
42 ジャマール ムシアラ

【交代】

7 セルジュ ニャブリ (82分In)
➡ムシアラ Out
19 アルフォンソ デイビス (87分In)
➡リュカ エルナンデス Out
13 エリクマクシム チュポモティング
(90分In)
➡ミュラー Out

ビジャレアル
監督 ウナイ エメリ

【スタメン】

13 ヘロニモ ルジ (GK)
3 ラウル アルビオール
4 パウ トーレス
5 ダニエル パレホ
6 エティエンヌ カプエ
7 ジェラール モレーノ
8 フアン フォイス
12 ペルビス エストゥピニャン
15 アルノー ダンジュマ
17 ジオバンニ ロチェルソ
19 フランシス コクラン

【交代】

11 サムエル チュクウェゼ (84分In)
➡コクラン Out
24 アルフォンソ ペドラサ (84分In)
➡ダンジュマ Out
25 セルジュ オリエ (90+3分In)
➡パレホ Out

基本システム

左:バイエルン(赤) 右:ビジャレアル(黄)

[システム図①]
試合開始時

[システム図②]
82分バイエルン ⑦ニャブリ投入
84分ビジャレアル ⑪チュクウェゼ、㉔ペドラサ投入

[システム図③]
87分バイエルン ⑲アルフォンソ デイビス投入

[システム図④]
90分バイエルン ⑬チュポモティング投入 パワープレーを行う
90+3分ビジャレアル ㉕オリエ投入

得点経過

【52分・バイエルン】得点者:ロベルト レバンドブスキ
ビジャレアのゴールキックに対してバイエルンはフォアプレス。ビジャレアル陣内中央でゴールキーパー(GK)、ルジからのボールを受けたパレホの縦パスをコマンがハーフウェイライン手前でカットし、そのこぼれ球をゴレツカ、ミュラー、レバンドブスキと縦に繋いでゴール前へ。
レバンドブスキの前をアルビオールとパウ トーレスが塞ぐが、レバンドブスキはパウ トーレスの股を抜くシュートを放ちゴール。

【88分・ビジャレアル】得点者:サムエル チュクウェゼ
ビジャレアルゴール前、バイエルンの上げたクロスのクリアボールを自陣左ハーフスペースでパレホが確保。パレホはパバールのプレスをかわしロチェルソへ縦パス。
ロチェルソはコマンと競りながらドリブルで前進し、左ハーフスペースでバイエルンのディフェンスライン裏へ向けて走るジェラール モレーノへスルーパス。この時ジェラールモレーノの逆のサイドにいたアルフォンソ デイビスが後方に残ってしまい、バイエルンはジェラール モレーノをオフサイドにする事ができず(下図参照)。
スルーパスを受けたジェラール モレーノはディフェンスラインの裏を通すクロス。そのクロスを逆サイドから走り込んで来たチュクウェゼがシュートしゴール。

ゴールに繋がる⑰ロチェルソから⑦ジェラールモレーノへのスルーパス
パスが出た時⑲アルフォンソ デイビスが後方に残っており、バイエルンはオフサイドが取れなかった

このパスを受けた⑦ジェラール モレーノはディフェンスラインの裏を通すクロスを出し
⑪チュクウェゼが合わせて、決勝点となるゴールを決める

局面ごとの方針

バイエルン ミュンヘン

【攻撃】
ビルドアップはパバール、ウパメカノ、リュカ エルナンデスの3センターバック(CB)の前にキミッヒが立つ3-1の並び。
前進はフィールドの左側からが多く、狭いエリアにトライアングルを作りライン間に侵入。ビジャレアルのライン設定が低い事もありリュカ エルナンデスやパバールがサイドを上がって来てサイドバック(SB)的に攻撃の組み立てに参加する。
ライン間に拠点を作るとコマンが突破を図りビジャレアルのディフェンスラインをラインブレイクしたり、右サイドのザネへ向けてサイドチェンジしザネが中央へカットインするといった形で両サイドのウイングバック(WB)が崩しの起点になる。レバンドブスキは前線中央に張り、ミュラー、ムシアラはビジャレアルのディフェンスライン付近を流動的に動きパスを引き出す。
ラストパスは、前半はファーサイドへのクロスが多く、後半はビジャレアルのディフェンスラインの裏へスルーパスやアーリー気味のクロスが多かった。

【ネガティブトラジション⇒守備】
ムシアラがトップ下、ミュラー、レバンドブスキが2トップの3-4-1-2の陣形でアタッキングサードからプレスに行き、ボールがサイドに行けばラインをボールサイドに絞る。放送席解説(wowow)の風間八宏氏はバイエルンのプレスについて「スペースを埋める事で相手の攻撃を封じている」と説明していた。

[システム図⑤]
敵陣でプレスに行く時の陣形

ビジャレアルがカウンターでディフェンスラインの背後のスペースを突いてきた時は、前半はGKノイアーが前に出て対応。後半はウパメカノを中心にした3CBがダンジュマ、ジェラール モレーノをしっかり掴む形で対応する。

【ポジティブトラジション】
ビジャレアルのリトリートに合わせて前進。無理にカウンターを狙う事はせず、確実にボールをキープしてキミッヒを中心としたポゼッションオフェンスに移行する。

ビジャレアル

【ポジティブトラジション⇒攻撃】
自陣でバイエルンのプレスを受けてもサイドを使ってプレスをかわし、中央のパレホにボールを送るとパレホを起点に縦攻撃。
バイエルンがハイラインを敷いているので、その裏のスペースにボールを送る。
前線でのカウンターのターゲットはジェラール モレーノとダンジュマ。ジェラール モレーノは右サイドのスペースを突き、ダンジュマは中央からバイエルンのハイラインの裏を狙う。
ディフェンスラインの裏にボールを出せない時はロチェルソ、コクランを経由して前進を図る。

84分の選手交代以降、前線でのカウンターのターゲットはフィールドの右半分はチュクウェゼ、左半分はジェラール モレーノが担う。

【ネガティブトラジション】
ミドルサードまでリトリートしてブロックを形成。2トップがボールホルダーをみるが強くプレスには行かない。

【守備】
ミドルサードに4-4-2のブロックを敷いて構える。ブロックは縦・横ともにかなりコンパクトでバイエルンがブロック内に侵入して来ればボールサイドに寄せて行く。
ザネ、コマンの両WBに対してはフォイス、エストゥピニャンの両SBがマッチアップして対応。

ディフェンシブサードまで押し込まれた時は、カプエが中盤のラインとディフェンスラインの間のアンカーポジションまで下がってディフェンスラインの前をプロテクト。アルビオール、パウ トーレスはゴール前のスペースを埋める。

試合の感想・ポイント

前半

バイエルンが主導権を握るが、ビジャレアルも反撃の術を持つ

基本的にはバイエルンペースで試合は進み、ビジャレアル陣内でのハーフコートゲームになる時間帯もあった。ただ、バイエルンのフォアプレスやカウンタープレスは完全に嵌ってはおらず、ビジャレアルは自陣でパスを繋ぎバイエルンのプレスを外し度々反撃のカウンターを繰り出していた。

後半

後半も攻め続けるバイエルンに対し、ビジャレアルは会心のカウンターアタックを決める

バイエルンはネガティブトラジションでのボールホルダーへのアプローチが前半より向上し、後半の立ち上がりからビジャレアル陣内で効果的なプレスをかけ素早くボールを回収。一方的に攻め続けると52分、フォアプレスでのボール奪取から最後はレバンドブスキが決めて2試合合計で同点に追いつく。
その後もライン間に容易に縦パスを差し込み、攻め込み続けるバイエルン。ビジャレアルも時折ジェラール モレーノ、ダンジュマの2トップにボールを送りカウンターを試みるが、2トップにボールが収まる事は少なく、仮にボールが収まっても押し込まれ続けている影響で2トップへのサポートは殆どない状態。バイエルンが勝ち越しゴールを挙げるのも時間の問題と思われた。
しかしビジャレアルはゴール前を固めて粘り強く守り失点を防ぐ。

80分を過ぎると両チームとも立て続けに選手交代を行うが、その中で

(1)84分ビジャレアル チュクウェゼ投入、それに伴いジェラール モレーノは左にポジションを移す
(2)87分バイエルン アルフォンソ デイビス投入

この二つの選手交代が試合を決定づける88分のゴールを生む。
ゴールが生まれる直前、ロチェルソがコマンと競りながらドリブルで上がって行くと、それまで右にいたジェラール モレーノは左ハーフスペースからディフェンスラインの裏へ走り込む。
ロチェルソからジェラール モレーノへパスが出た瞬間、アルフォン ソデイビスが後方に残ってしまいバイエルンはオフサイドが取れなかった。
今までとは違う配置からの攻撃。投入直後の選手がいたことによりギャップが生じたディフェンスライン。
二つの要素が88分のゴールを生む大きな要因になったと私自身は感じた。

2試合合計で勝ち越したビジャレアルに対し、バイエルンはパワープレーを敢行。同点ゴールを狙うが、ビジャレアルは虎の子の1点を守り切り、見事にバイエルンを撃破。準決勝進出を果たした。

選手寸評

バイエルン ミュンヘン
ロベルト レバンドブスキ ゴール前で前を向いてボールを持てば前を塞がれてもシュートを決めてしまう決定力は流石の一言。
ジャマール ムシアラ ビジャレアルのディフェンスライン前後を突くオフザボールの動きの質はかなり高かった。
キングスレイ コマン サイドからの仕掛けで幾度もラインブレイク。マッチアップするフォイスとも激しいバトルを繰り広げた。
ダヨ ウパメカノ 88分に失点してしまったが、試合全体を通じて的確なカウンター対応をしていた。
ビジャレアル
エティエンヌ カプエ 終始バイエルンに押し込まれ続ける試合展開のなかで、ディフェンスラインの前をプロテクトしてチームを支えた。
ジェラール モレーノ 一方的に押し込まれ続ける試合展開のなか、諦めずにバイエルンゴールを目指し続ける姿勢が88分の決勝ゴールに繋がった。
サムエル チュクウェゼ 途中出場ながら狙い通りの動きでゴールを挙げ、チームを準決勝進出に導いた。
パウ トーレス 自陣ゴール前でアルビオールとともにスペースを埋めバイエルンの猛攻を1点で凌いだ。
ダニエル パレホ 攻撃の機会は少なかったが、その中でもボールを前方へと繋いだ。88分のゴールも彼が起点となった。

投稿主選出の man of the match

エティエンヌ カプエ

以上、バイエルン ミュンヘン 対 ビジャレアル 戦のレビューでした。
この対戦カードは高確率でバイエルンが勝ち上がると予想していたので、今回の結果は衝撃的でした。
このような予想外・想定外な事が起こるのがサッカーの醍醐味であり、このような事があるからサッカー観戦はやめられない(バイエルンファンの方々には申し訳ありませんが…)
そう感じた一戦でした。

本レビューは、あくまで投稿主個人の考えや感想を元にしております。
本レビューに対して、ご意見やご感想があれば下のコメント欄よりコメントを頂ければ幸いです。

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