ラ リーガで首位を走り、チャンピオンズリーグでもパリSGとの激闘を制したレアル マドリード
チャビ エルナンデスを新監督に招聘し、チーム再建に好感触のバルセロナ
今回のエル クラシコは両チームともに登り調子の中での対戦となった
レアルマ ドリード 対 FCバルセロナ
2022年3月21日 スペイン ラリーガ 第29節(エル クラシコ)
レアルマドリード 0-4 FCバルセロナ
レアルはベンゼマ不在を補う為に講じた策が悉く裏目に…
対してバルセロナは自分達のサッカーをやり通した
結果的には、それが歴史的な大勝に繋がる
メンバー
レアル マドリード
監督 カルロ アンチェロッティ
【スタメン】
1 | ディボウ クルトワ (GK) |
2 | ダニエル カルバハル |
3 | エデル ミリトン |
4 | ダビド アラバ |
6 | ナチョ フェルナンデス |
8 | トニ クロース |
10 | ルカ モドリッチ |
14 | カゼミーロ |
15 | フェデリコ バルベルデ |
20 | ビニシウス ジュニオール |
21 | ロドリゴ |
【交代】
25 | エドゥアル ドカマビンガ (ハーフタイムIn) |
➡クロース Out | |
24 | マリアーノ (ハーフタイムIn) |
➡カルバハル Out | |
11 | マルコ アセンシオ (63分In) |
➡ロドリゴ Out | |
17 | ルーカス バスケス (63分In) |
➡ナチョ フェルナンデス Out |
FCバルセロナ
監督 チャビ エルナンデス
【スタメン】
1 | マルクアンドレ テアシュテーゲ(GK) |
3 | ジェラール ピケ |
4 | ロナルド アラウホ |
5 | セルヒオ ブスケッツ |
7 | ウスマン デンベレ |
16 | ペドリ |
18 | ジョルディ アルバ |
19 | フェラン トーレス |
21 | フレンキー デヨング |
24 | エリック ガルシア |
25 | ピエールエメリク オバメヤン |
【交代】
9 | メンフィス デパイ (71分In) |
➡オバメヤン Out | |
30 | ガビ (71分In) |
➡フレンキー デヨング Out | |
11 | アダマ トラオレ (80分In) |
➡ウスマン デンベレ Out | |
14 | ニコ (86分In) |
➡ペドリ Out | |
8 | ダニエウ アウベス (86分In) |
➡ジョルディ アルバ Out |
基本システム
左:レアル マドリード(黒) 右:バルセロナ(黄赤)
[システム図①]
試合開始時
[システム図②]
後半開始時 レアル ㉕カマビンガ、㉔マリアーノ投入
[システム図③]
63分レアル ⑪アセンシオ、⑰ルーカス バスケス投入
71分バルセロナ ⑨デパイ、㉚ガビ投入
[システム図④]
80分バルセロナ ⑪アダマ トラオレ投入
86分バルセロナ ⑭ニコ、⑧ダニエウ アウベス投入
得点経過
【29分・バルセロナ】得点者:ピエールエメリク オバメヤン
自陣でレアル マドリードのクリアボールを拾ったジョルディ アルバからセンターサークル内にいるピケ、右サイドのウスマン デンベレとパスが繋がりウスマン デンベレはタッチライン際をドリブルで上がって行くとマッチアップするナチョ フェルナンデスを縦に抜いてクロスを上げる。
このクロスにミリトンの背後からニアのセンターバック(CB)間に飛び込んで来たオバメヤンがヘディングでシュートを叩き込む。
【38分・バルセロナ】得点者:ロナルド アラウホ
右コーナーキック(CK)、ウスマン デンベレ右足アウトスイングのボール。中央でゾーンの間に飛び込んで来たアラウホがヘディングでシュートし、ゴール。
【47分・バルセロナ】得点者:フェラン トーレス
自陣でアラウホがレアル陣へ大きくクリア。
そのクリアボールをアラバがダイレクトでカマビンガに送るも、デヨングが前に出てボールをカットしそのまま前方へと走る。カットしたボールを右サイドのウスマン デンベレがダイレクトで内側を走るデヨングに渡すと、デヨングは中央のオバメヤンに浮き球のスルーパス。
ペナルティーアーク付近でボールを受けたオバメヤンはディフェンスに来たナチョ フェルナンデスを引き付けると、左サイドから走り込んで来たフェラン トーレスにヒールパス。パスを受けたフェラン トーレスがシュートしゴール。
【51分・バルセロナ】得点者:ピエールエメリク オバメヤン
自陣でのフリーキック。ピケが前線へロングボールを蹴ると、フェラン トーレスがナチョ フェルナンデスの裏を取りボールを受ける。
フェラン トーレスはナチョ フェルナンデスを背負いながらボールをキープすると、中央のレーンをゴール前へと走り込むオバメヤンへスルーパス。オバメヤンはゴールキーパーとの1対1でループシュートを決めるがオフサイドの判定。
このオフサイド判定にVARの介入があり、その結果オフサイドが取り消されゴールが認められる。
局面ごとの方針
レアル マドリード
【システム】
前半、バルベルデとモドリッチが盛んにポジションチェンジをし、この2人のうちのどちらかが1トップに入る。彼らがポジションチェンジをする事でチーム全体のポジションが流動的になる。
[システム図⑤]
バルベルデとモドリッチがポジションチェンジ
[システム図⑥]
メディア側が示した前半のシステム、4-2-4-0と表記されていた
後半は4-2-3-1を基本システムにし(システム図②③④参照)、ポジションをある程度固定する。
【ネガティブトラジション】
敵陣では前に出てマークを掴みカウンタープレスを狙う。
但し、攻め終わった時の後方からの押上が時間の経過とともに弱まり、カウンタープレスの威力は弱まっていく。結果的にカウンタープレスに行き切れずにリトリートする事が時間の経過とともに増えていった。
【守備】
バルセロナのビルドアップ時、2CBに対して2人がマークに行く。
前半この2人のマーカーはかなり流動的。2人のマーカーの1人目はバルベルデとモドリッチのうち1トップに入っている方が担当し、2人目はロドリゴ、ビニシウス、クロースのうちの誰か1人が前に出る形となる。また状況によってはロドリゴとビニシウスの2人が2CBにマークに行く事もあった。
このファーストディフェンスは殆ど嵌らず、バルセロナに簡単に前進を許す事になる。
後半は2CBに対するマーカーをモドリッチとマリアーノに固定し、バルベルデがブスケッツをみる形に変更するが、それでも守備は嵌らずリトリートする事を余儀なくされる。
前の守備が嵌らない影響は大きく、自陣に引いてもあまり組織としては機能していないように感じた。結局は自陣でも個人の能力で守らざるを得ない感じになっていた。
【攻撃】
前半、ビルドアップはミリトン、アラバの2CBが起点。そこにバルベルデ、モドリッチ、クロースのうちの誰か1人がボールを引き取りにくる形。パス回しの中心はモドリッチが担う事が多かった。
ボールが前に進めば、両サイドのロドリゴ、ビニシウスにボールを振り、彼らがサイドから仕掛ける。
後半のビルドアップは2CBの前にカマビンガが立つ2-1の並びで、カマビンガが早いタイミングでボールを左右に振り分ける。
後半はアセンシオが右ハーフスペースのディフェンスラインから少し手前でボールを受け、ルーカス バスケス、モドリッチと絡みながらディフェンスラインを崩しに行くパターンが比較的形になっていた。
バルセロナ
【ポジティブトラディション】
前にスペースがあれば、そのスペースを突いて縦に前進。スペースが埋められればボールをキープしてポゼッションを確立。
時間の経過とともにレアルのカウンタープレスが弱まっていったので、それに伴い前を向く難易度は下がっていった。
【攻撃】
ビルドアップはピケ、エリック ガルシアの2CBの前にブスケッツが立ち、両サイドバック(SB)はブスケッツと同じ高さまで上がる、2-3の並び。右SBのアラウホは大外のレーン、左SBのジョルディ アルバは大外から1列内側のレーン(サイドとハーフスペースの境界線あたり)にポジションを取る。
この形をベースにパスを回し前進。
[システム図⑦]
ビルドアップの並び
前5人の初期配置は綺麗に5レーンを埋める形。
デヨング、ペドリはライン間で絶妙なポジションを取る事でビルドアップからのボールを受け、ウスマン デンベレ、フェラン トーレスはタッチライン際に開いて攻撃の幅を確保。オバメヤンは前線でディフェンスラインの裏を狙って動き出す。
[システム図⑧]
前5人の初期配置
この形をベースにレアルの守備ブロックを崩しに行く。
後半、レアルのディフェンスラインにギャップが多くみられたのでウスマン デンベレ、オバメヤン、フェラン トーレスの前3人はポジティブトラジション後の早い段階でそのギャップを突いてディフェンスラインの裏を狙って動き出し、後方の選手も前線の選手の動きに合わせてロングボールをディフェンスラインの裏に送っていた。
【守備】
レアルのビルドアップに対してはオバメヤン、ペドリが前に出て2CBにプレスをかけ、そこを起点にチーム全体でアタッキングサードからマークを掴みプレスに行く。このフォアプレスの姿勢は試合終盤まで一貫して続けられた。
自陣に下がった時はペドリがトップ下に入る4-4-1-1の形でブロックを敷く。
試合の感想・ポイント
前半
レアル マドリードが流動的なサッカーをするも、それが仇になる
レアルマド リードが攻守で流動的にポジションを変えるサッカーを展開。ただ、流動的なサッカーをするメリットよりデメリットの方が多く出た前半だった。
立ち上がりはレアル マドリードがビルドアップでバルセロナのプレスをかわし前進。ネガティブトラジションでのプレスも良く試合のペースを握るかに思えた。
しかし、1トップが盛んに入れ替わる影響か前線からの守備が嵌らず、その影響は攻守全体に及びチームは安定感を欠いていく。その結果レアル マドリードは徐々に勢いを失っていく。
バルセロナは自分たちのスタイルを貫き、時間の経過とともに試合の主導権を握ると2つのゴールを挙げ2点のリードを奪い前半終了となる。
後半
レアル マドリードが立て直しを図るも不発、バルセロナが終始主導権を握り歴史的大勝
レアル マドリードはハーフタイムに2枚替えの選手交代をし、システムも変更。戦術的にも前半のポジション流動性を改め、後半はある程度ポジションを固定する事で安定性を確保しようとした。
しかし後半の立ち上がり、選手交代やシステム変更の影響かレアル マドリードの陣形にギャップが多数生じると(ギャップが生じた詳細は後述)、バルセロナはそのギャップを巧みに突きあっさりと2点を奪う。
結局アンチェロッティ監督が後半チームを立て直す為に行った施策は上手くいかず、前半からの不安定さを解消する事は出来なかった。
バルセロナは守備時には的確にマークを掴みプレスに行き、ボールを奪えばスペースやラインのギャップを的確に突いた攻撃で後半も主導権を握り、終始安定した試合運びをみせた。
バルサの勝因・レアルの敗因
ベンゼマ不在(怪我による欠場)のレアル マドリードはセンターフォワード(CF)を固定せず流動的なサッカーをする事を選択。しかし、CFを固定しなかった事で守備の起点が定まらず、その影響は攻守全体に波及。チーム全体が不安定な状態に陥ってしまう。
立て直しを図りたいレアル マドリードはハーフタイムに選手交代をしシステムも変更、戦術的にもポジションをある程度固定して後半に臨む。しかし、選手交代とシステム変更でマッチアップの噛み合わせが変わったにもかかわらず、まだマークを掴み切れていない状態で前がかりになりディフェンスラインにギャップを生じさせてしまう。
このギャップをバルセロナが見逃すはずは無く、的確に突いて後半の立ち上がりにあっさりと2点を追加する。
その後もレアル マドリードは前線の守備は固定化されたものの、後方からの押上が足りないといった状態で不安定な状態を解消する事は最後までできなかった。
バルセロナはレアル マドリードの戦い方に惑わされる事無く終始自分達のサッカーを貫いた事で結果的に試合の主導権を握り、それが大きな勝利を得る要因になった。
選手寸評
レアル マドリード
マルコ アセンシオ | 厳しい試合展開の中、右ハーフスペースから周囲との連携で攻撃の形を作った。 |
ルカ モドリッチ | この試合のチーム戦術のキーマンとして期待されたが、上手く機能させる事が出来なかった。 |
バルセロナ
ピエールエメリク オバメヤン | ディフェンダーのブラインドやディフェンスラインのギャップを巧みに突く動きで2得点1アシスト。リーグ公式のking of the matchに選出される。 |
ロナルド アラウホ | 守備ではビニシウスとのマッチアップで奮闘し、攻撃面でもCKからゴールを挙げる。攻守でチームに大きく貢献した。 |
ウスマン デンベレ | サイドでの仕掛けから先制ゴールを演出するなど2アシストの活躍。レアル マドリードの守備陣に脅威を与えた。 |
フェラン トーレス | レアル マドリードのディフェンスラインのギャップを巧みに突いて決定機を作り、ゴールを挙げる。 |
ペドリ | ライン間での巧みなポジショニングでビルドアップの出口となり、デヨングとともにチームの前後の繋ぎ役として攻撃面で大きく貢献した。 |
投稿主選出の man of the match
ピエールエメリク オバメヤン
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