欧州サッカー観戦記 UEFAチャンピオンズリーグ Round of 16 2nd leg week2

チャンピオンズリーグ観戦記 アヤックス対ベンフィカ UEFAのコンペティション

UEFAチャンピオンズリーグ決勝トーナメント1回戦
投稿主が最も楽しみにしていたカード アヤックス 対 ベンフィカ
2nd legも期待にたがわぬ熱戦となりました。

Round of 16 2nd leg week2 結果

2022年3月16日
マンチェスター ユナイテッド 0-1 アトレティコ マドリード
(2試合合計 1-2 アトレティコ 勝利)

2022年3月16日
アヤックス 0-1 SLベンフィカ
(2試合合計 2-3 ベンフィカ 勝利)

2022年3月17日
ユベントス 0-3 ビジャレアル
(2試合合計 1-4 ビジャレアル 勝利)

2022年3月17日
LOSCリール 1-2 チェルシー
(2試合合計 1-4 チェルシー 勝利)

今回は アヤックス 対 SLベンフィカ 戦をレビューします。

※同カードの1st leg はこちらでレビューしております、よろしければご覧下さい

アヤックス 対 SLベンフィカ

2022年3月16日 UEFAチャンピオンズリーグ Round of 16 2nd leg
アヤックス 0-1 SLベンフィカ
(2試合合計 2-3 ベンフィカ 勝利)

良質なサッカーのアヤックスに対してベンフィカは周到なゲームプランを準備し

粘り強く実行、見事に前評判を覆し勝利を得た

メンバー

アヤックス
監督 エリック テンハーグ

【スタメン】

24 アンドレ オナナ (GK)
2 ユリアン ティンベル
4 エドソン アルバレス
8 ライアン フラーフェンベルフ
10 ドゥシャン タディッチ
11 アントニー
12 ヌサイ マズラウィ
17 ダレイ ブリント
21 リサンドロ マルティネス
22 セバスティアン アレ
23 ステファン ベルフハウス

【交代】

6 ダビィ クラッセン (81分In)
➡ベルフハウス Out
18 ライアン ブロビー (81分In)
➡エドソン アルバレス Out
20 モハメド クドゥス (90+6分)
➡ティンベル Out

SLベンフィカ
監督 ネルソン ペリッシモ

【スタメン】

99 オディセアス ブラホディモス (GK)
2 ジウベルト
3 アレハンドロ グリマルド
5 ヤン ベルトンゲン
7 エベルトン
9 ダルウィン ヌニェス
27 ラファ シウバ
28 ユリアン バイグル
30 ニコラス オタメンディ
49 アデル ターラブト
88 ゴンサロ ラモス

【交代】

11 スアリオ メイテ (ハーフタイムIn)
➡ターラブト Out
15 ロマン ヤレムチュク (72分In)
➡エベルトン Out
17 ジオゴ ゴンサウベス (81分In)
➡ダルウィン ヌニェス Out(怪我)
55 パウロ ベルナルド (90+1分)
➡ゴンサロ ラモス Out
22 バレンティノ ラザロ (90+1分)
➡ジウベルト Out(怪我)

基本システム

左:アヤックス(白赤) 右:ベンフィカ(黒)

[システム図①]
試合開始時

[システム図②]
後半開始時 ベンフィカ ⓫メイテ投入

[システム図③]
72分ベンフィカ ⓯ヤレムチュク投入

[システム図④]
81分アヤックス ⑥クラッセン、⑱ブロビー投入
ベンフィカ ⓱ジオゴ ゴンサウベス投入

得点経過

【77分・ベンフィカ】得点者:ダルウィン ヌニェス
右サイド深い位置(コーナーフラッグ付近)でのフリーキック。アヤックスはマンツーマンメインの守備陣形。
グリマルドが左足インスイングでゴール前に鋭く落ちるハイボールを蹴る。そのボールをダルウィン ヌニェスがマークにつくティンベルに競り勝つ形でヘディングシュートしゴールを決める。

局面ごとの方針

アヤックス

【ネガティブトラジション⇒ポジティブトラディション】
ボールを奪われた瞬間、フィールド全体で素早くマークを掴み強く寄せてカウンタープレスに行く。
ボールを奪えばポゼッションを確立する事を優先する。

【攻撃】
ビルドアップはティンベル、リサンドロ マルティネスの2センターバック(CB)の前にエドソン アルバレスが立つ2-1の並びで、状況によってはマズラウィかブリントのうちのどちらかがサポートに入り、最終ラインは3バック気味に並ぶ時もあった。エドソン アルバレスは無難にボールを繋ぐ事を優先し、ベンフィカのプレッシャーラインを超える縦や斜めのパスはティンベル、エドソン アルバレスの両CBが主に出していた。

ベンフィカの守備ブロックを押し込めば左右のサイドにボールを振り、サイドから守備ブロックを崩しにかかる。
右はタッチライン際に張るアントニーのカットインがメインオプションで、マズラウィがインナーラップやボールを持つアントニーの脇を縦カットで走り抜ける事でアントニーをサポート。
左はブリント、フラーフェンベルフ、タディッチがトライアングルを流動的に動かしながらボールを回し、ニアゾーンからディフェンスラインのラインブレイクを狙う。ティンベル、リサンドロ マルティネス、ベルフハウスも状況に応じて左のパス回しに加わる。
フィニッシュはファーサイドへのクロスをヘッドで折り返すパターンが多くみられた。

81分クラッセン、ブロビー投入を機にシステムを変更([システム図④]参照)。これは、マッチアップの噛み合わせをズラす意図があったと思われる。

【守備】
アタッキングサード、ミドルサードではマンオリエンテッドにマークを掴みプレスをかける。

ディフェンシブサードまで下がればディフェンスラインの4人はフラットに並ぶが中盤より前の選手はマンオリエンテッド的にマークを掴む。自陣でのエドソン アルバレスはフリーマン的に振る舞い、ディフェンスラインが破られそうになれば下がってカバーに入る。

ベンフィカ

【ネガティブトラジション⇒守備】
前半、敵陣では4-2-3-1の陣形で1トップのダルウィン ヌニェスはアヤックスのCBまでチェイシングに行き、後ろはミドルサードで待ち構え、ゴンサロ ラモスはエドソン アルバレスをみるようにポジションを取る。状況によてはラファ シウバかエベルトンのうちのどちらかがダルウィン ヌニェスをサポートする為に前に出る。
自陣では4-4-2のブロック守備。ゴール前まで下がればディフェンスラインは中央に絞りゴール前のスペースを人数をかけて埋める。

[システム図⑤]
前半、敵陣での守備陣形

[システム図⑥]
自陣での守備陣形

後半は、立ち上がりから守備戦術を大幅に変更。
マッチアップを明確に噛み合わせ敵陣からマークを掴みに行く。特に中盤3枚は完全にマンオリエンテッドにマークにつきアヤックスの中盤にプレッシャーをかける。

[システム図⑦]
後半の守備 中盤のマッチアップを嚙み合わせ前からマークを掴む

【ポジティブトラディション】
ボールを奪い前を向く事ができればダルウィン ヌニェスをターゲットにボールを送る。ダルウィン ヌニェスは中央や左ハーフスペースからアヤックスのディフェンスラインの裏を狙う。
70分以降はライン間のラファ シウバやゴンサロ ラモスにボールが渡るようになる。

【攻撃】
ビルドアップはオタメンディ、ベルトンゲンの2CBの前にバイグルが立つ2-1の並びで、状況に応じてターラブトがサポートに入る。
アヤックスのプレスがかなり強く試合開始から70分頃まで流れの中からは殆ど攻撃を組み立てる事ができなかった。ただ、この試合のベンフィカは「流れの中から点を取る事は難しい」という考えの元、セットプレーで点を取る事に集中していたように思う。

試合の感想・ポイント

前半

トラジションで優位に立つアヤックスが多彩な攻撃を展開するも、ベンフィカの堅い守備にゴールは奪えず

アヤックスがネガティブトラジションでの的確なカウンタープレスにより試合の主導権を握り、ボールを奪えばポゼッションを確立。そこから多彩な攻撃をみせ、ベンフィカを攻め立てる。
防戦一方でセットプレー以外では殆どチャンスを作る事ができなかったベンフィカだが、アヤックスの猛攻を前半無失点で凌いだ。ベンフィカは自陣ゴール前まで下がれば、ディフェンスラインを中央に絞りゴール前のスペースを埋めていた。「サイドやハーフスペースは破られてもゴールだけは割らせない」という形の割り切った守備を集中して行っていた。
この試合でのアヤックスの攻撃は、崩しの局面では多彩なパターンを持っていたがフィニッシュではやや単調だったのかもしれない。それ故にベンフィカの割り切った守備は有効だったのではないだろうか。

後半

守備戦術の変更でアヤックスの勢い奪ったベンフィカが、セットプレーから乾坤一擲の一撃を見舞う

アヤックスの的確なプレスにより前半は殆ど攻撃を組み立てられなかったベンフィカ。しかし後半立ち上がりから守備戦術を変更。これがアヤックスに対して徐々に効いていき、アヤックスの勢いを削ぐと、70分を過ぎたあたりからライン間のラファ シウバ、ゴンサロ ラモスにボールが入るようになる。彼らが前を向く事でアヤックスの守備ブロックをアタッキングサードまで押し込めるようになり、そこで得たフリーキックのチャンスをゴールに繋げ、見事に先制点を奪う。
リードを許したアヤックスはクラッセン、ブロビーを投入し攻勢をかけようとするが、一度失った流れを取り戻す事はできず、また時間の経過による焦りもありベンフィカの守備ブロックを崩せないままタイムアップ。
千載一隅のチャンスをものにしたベンフィカが勝利し、準々決勝進出を果たした。

ベンフィカの勝因

ベンフィカはこの試合のゲームプランを立てるにあたって

(1)アヤックスは主体的にボールを支配し、そこから質の高い攻撃を行う

(2)アヤックスはセットプレーからの失点が多い

の2点をベースに考えたのではないだろうか。

そこから導き出された答え、(1)に対しては
ベンフィカはアヤックスにボールを支配される事を前提とし、特に前半は割り切って自陣ゴール前を固め、失点をしない事に集中。
後半は途中出場のメイテをフラーフェンベルフとマッチアップさせるなど中盤のマッチアップを噛み合わせる事で主体的な守備を行い、アヤックスの攻撃の威力を削ぎ一方的だった試合の流れを五分近くまで引き寄せチャンスを窺う。

(2)に対しては
アヤックスのCB、ティンベルとリサンドロ マルティネスは非常に優秀ではあるものの、空中戦は若干弱いという弱点がある。
攻撃に関してはこのCBの弱点を考慮した上で、無理に人数をかけて攻撃を組み立てに行けばアヤックスと同じ土俵に立ってしまうので、あくまで時間や人数をかけずにセットプレーを取りに行き、そこで点を取り切ってしまう。

ベンフィカはアヤックスの力を認めた上で、対アヤックス戦用のプランを上記のように立て、試合で見事に実行した。それが前評判を覆しての勝利を掴んだ要因ではないだろうか。

選手寸評

アヤックス
リサンドロ マルティネス ビルドアップではベンフィカのプレッシャーラインを超える縦パスを差し込み、崩しの局面でも積極的に攻撃参加。如何にもアヤックスのCBらしい高い攻撃能力をみせた。
ライアン フラーフェンベルフ 左サイドからの攻撃を組み立て、ブリント、タディッチらとともに質の高い攻撃を演出。ただ、後半はメイテの的確なマークにあい勢いは尻すぼみだった。
ヌサイ マズラウィ 右サイドを上がって行き、インナーラップやボールホルダー脇の縦カットでサイド攻撃をサポートした。
ドゥシャン タディッチ ブリント、フラーフェンベルフとともに左サイドを崩すとゴール前にクロスを上げ、逆サイドからの攻撃ではゴール前に詰めるなど、フィニッシュへの局面で中心的役割を担った。
ベンフィカ
ダルウィン ヌニェス 守備局面では自陣まで下がるなど厳し状況が続く中で、千載一隅のチャンスでゴールを挙げチームを勝利に導いた。
スアリオ メイテ 後半の守備戦術変更のキーマン。フラーフェンベルフを的確なマークで抑えアヤックスの攻撃の勢いを奪った。
アレハンドロ グリマルド アントニーをマークしつつ、ボールが逆サイドにある時は的確に中央に絞った位置取りをするなど、守備時のポジショニングの良さを放送席解説(wowow)の関塚隆氏は高く評価していた。
ニコラス オタメンディ アヤックスの猛攻を受けながらもゴール前の砦としてゴールを守り抜き、勝利に貢献した。

投稿主選出の man of the match

ダルウィン ヌニェス

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