UEFAチャンピオンズリーグ Round of 16 は勝負の2nd leg に突入
1st leg の結果を踏まえた上で、各チームがどのような戦い方をみせるかに注目をして観戦しました
Round of 16 2nd leg week1 結果
2022年3月9日
バイエルン ミュンヘン 7-1 レッドブル ザルツブルク
(2戦合計 8-2 バイエルン 勝利)
2022年3月9日
リヴァプール 0-1 インテル
(2戦合計 2-1 リヴァプール 勝利)
2022年3月10日
マンチェスター シティ 0-0 スポルティングCP
(2戦合計 5-0 シティ 勝利)
2022年3月10日
レアル マドリード 3-1 パリ サンジェルマン
(2戦合計 3-2 レアル 勝利)
今回は リヴァプール 対 インテル 戦をレビューします
※同カードの1st leg はこちらでレビューしております、よろしければご覧下さい
リヴァプール 対 インテル
2022年3月9日 UEFAチャンピオンズリーグ Round of 16 2nd leg
リヴァプール 0-1 インテル
(2戦合計 2-1 リヴァプール 勝利)
トラジションの局面で激しい攻防を繰り広げる死闘
インテルは1点を奪い追い上げをみせるも、アレクシス サンチェスの退場とブロゾビッチの怪我による途中交代で万事休す
リヴァプールが逃げ切り準々決勝進出を果たす
メンバー
リヴァプール
監督 ユルゲン クロップ
【スタメン】
1 | アリソン ベッカー (GK) |
3 | ファビーニョ |
4 | ウィルジル ファンダイク |
6 | チアゴ アルカンタラ |
10 | サディオ マネ |
11 | モハメド サラー |
17 | カーティス ジョーンズ |
20 | ディオゴ ジョタ |
26 | アンドリュー ロバートソン |
32 | ジョエル マティプ |
66 | トレント アレクサンダーアーノルド |
【交代】
8 | ナビ ケイタ (65分In) |
➡カーティス ジョーンズ Out | |
14 | ジョーダン ヘンダーソン (65分In) |
➡チアゴ Out | |
23 | ルイス ディアス (83分In) |
➡ジョタ Out |
インテル
監督 シモーネ インザーギ
【スタメン】
1 | サミル ハンダノビッチ (GK) |
2 | デンゼル ダンフリーズ |
6 | ステファン デフライ |
7 | アレクシス サンチェス ➡63分 退場 |
10 | ラウタロ マルティネス |
14 | イバン ペリシッチ |
20 | ハカン チャルハノール |
22 | アルトゥーロ ビダル |
37 | ミラン シュクリニアル |
77 | マルセロ ブロゾビッチ |
95 | アレッサンドロ バストーニ |
【交代】
33 | ダニーロ ダンブロージオ (ハーフタイムIn) |
➡デフライ Out(怪我) | |
19 | ホアキン コレア (75分In) |
➡ラウタロ Out | |
5 | ロベルト ガリアルディーニ (75分In) |
➡ブロゾビッチ Out(怪我) | |
36 | マッテオ ダルミアン (75分In) |
➡ダンフリーズ Out | |
8 | マティアス ベシーノ (83分In) |
➡チャルハノール Out |
基本システム
左:リヴァプール(赤) 右:インテル(黒)
[システム図①]
試合開始時
[システム図②]
後半開始時
デフライが怪我により交代、ダンブロージオが入る
[システム図③]
63分インテル アレクシス サンチェス退場
65分リヴァプール ケイタ、ジョーダン ヘンダーソン投入
75分インテル ホアキン コレア、ガリアルディーニ、ダルミアン投入
[システム図④]
83分リヴァプール ルイス ディアス投入
83分インテル ベシーノ投入
得点経過 退場者
【62分・インテル】得点者:ラウタロ マルティネス
インテルは敵陣でリヴァプールのビルドアップに対してマークを掴むと、左サイドでマティプから出された縦パスをペリシッチがパスカットしダイレクトでチャルハノールへ。チャルハノールはワンタッチで左サイドのスペースを突いたアレクシス サンチェスへパス。
ペナルティーエリアのすぐ外でラウタロが中央からボールサイドへ寄っていくと、アレクシス サンチェスはダイレクトでラウタロへパス。パスを受けたラウタロはすぐに前を向くと、目の前にファンダイクがいても構わずシュートを放ち、ゴールを奪う。
【レッドカード 63分・インテル】退場者:アレクシス サンチェス(2枚目のイエローカード)
局面ごとの方針
リヴァプール
【ネガティブトラジション】
ボールを奪われれば即カウンタープレス。ボールに近い選手から寄せて行く。
特に、45~60分頃の動き出しは非常に速かった。
【守備】
インテルのビルドアップに対してアタッキングサードからプレス。
サラー、マネが最終ラインのセンターバック(CB)にプレス。ジョタがブロゾビッチ背中で抑え、チアゴが機をみてブロゾビッチを挟みに行く。
インテルのCB、シュクリニアル、バストーニのうちのどちらかがサイドに張る形のビルドアップに対しては、シュクリニアルがサイドに張りそこにボールが渡ればマネがスライドしてプレス。バストーニがサイドに張る際はサラーが同様にスライドしてプレス。この時、デフライに対してはジョタが前に出てマークにつく。
[システム図⑤]
インテルのビルドアップに対するプレス
[システム図⑥]
右サイドに張る㊲シュクリニアルにボールが渡れば、⑩マネがスライドして対応
⑥デフライに対しては⑳ジョタが前に出てマーク
ボールがサイドに出ればラインをボールサイドに絞り密集してプレス。
カウンタープレスやフォアプレスをかわされインテルに前進を許した時は戻りながらマークを掴む。
自陣に下がった際は4-1-4-1の陣形をベースにマークを掴み激しくボールホルダーに寄せて行く。
【ポジティブトラジション】
インテルのカウンタープレスを剥がしボールを前につける。
アレクシス サンチェスが退場した63分以降はフリーの選手に確実にボールを繋ぎ状況を落ち着かせる事を優先。
【攻撃】
ビルドアップはマティプ、ファンダイクの両CBの前にファビーニョが立ち、チアゴがファビーニョの高さまで下がる2-2の並びで、ロバートソンが左サイドでサポートに入る。
チアゴが下がる事とロバートソンが左サイドで浮いている事で、ビダルに対してはチアゴとロバートソンのどちらをマークするのかという選択を迫り、ダンフリーズに対しては前に出てロバートソンをみるのか後方のスペースをみるのかという選択を迫る。
[システム図⑦]
リヴァプールのビルドアップ ㉖ロバートソンが浮いている
[システム図⑧]
⑥チアゴが下がった事により
㉒ビダルはチアゴかロバートソンのどちらをマークするのかという選択に迫られ
②ダンフリーズは前に出てロバートソンをみるのか後方のスペースをみるのかの選択に迫られる
ビルドアップからの前進はライン間のカーティス ジョーンズ、ジョタに縦パスを差し込みインテルの守備ブロックを押し下げ、そこからファビーニョ、チアゴが左右にボールを振りサイドから仕掛けるパターンと、早めにサイドにボールを振りサイドでトライアングルを形成して前進し仕掛けるパターンがあった。
65分の選手交代でジョーダン ヘンダーソン、ケイタが投入されるとビルドアップはマティプ、ファンダイクの前にファビーニョ、ジョーダン ヘンダーソンが立つ並びとなる。
アタッキングサードでの仕掛けからフィニッシュは右サイドはサラー、左サイドはマネのドリブルカットインが中心。そこにアレクサンダーアーノルド、ロバートソンの両サイドバックがサポートし2番目以降のオプションとしてゴール前中央や逆サイドにボールを振る。
63分(アレクシス サンチェス退場)以降は数的有利である事と、2試合合計スコアでリードしていることもあり、リスクの高い仕掛けは控えフリーの選手に確実にボールを繋ぐ事を優先した。
インテル
【ネガティブトラジション】
素早くマークを掴んでプレスに行く。
【守備】
敵陣ではアレクシス サンチェス、ラウタロの2トップがリヴァプールのCBに対してチェイシング、それを起点にチーム全体でラインを押し上げプレスに行く。
ブロゾビッチが前に出てファビーニョをマーク。ビダルはチアゴを、チャルハノールはカーティス ジョーンズをそれぞれマークする。
自陣に下がれば5-3-2のブロックを敷く。
63分(アレクシス サンチェス退場)以降は自陣に下がって5-3-1のブロック守備。
時折、敵陣からボールホルダーに対してチェイシングに行くが、人数が足りていない為組織的なプレスになりにくい。結局容易にリヴァプールに前進を許す為、リトリートせざるを得なくなる。
【ポジティブトラジション⇒攻撃】
ビルドアップは下記の3種類
(1)シュクリニアル、デフライ、バストーニの3CBの前にブロゾビッチが立つ3-1の並び
(2)デフライ、バストーニがCBの位置でその前にブロゾビッチが立つ2-1の並びで、シュクリニアルが右サイドに張る
(3)シュクリニアル、デフライがCBの位置でその前にブロゾビッチが立つ2-1の並びで、バストーニが左サイドに張る
(2)(3)は可変システムで、3種類の中では(2)を最も多用していた。
自陣でリヴァプールから激しいプレスを受けるが、逃げずにパスを繋いで打開を図る。ブロゾビッチを中心にダイレクトパスやワンタッチでのパスでプレスを剥がすと左右にボールを展開。右サイドはダンフリーズ、左サイドはペリシッチを中心に前進。周囲の選手も連動して縦方向に動き出す。
後半は前進する際に、斜めのサイドチェンジや後方からのロングボールで、リヴァプールのディフェンスライン裏のスペースを直接狙うパターンを増やす。
63分(アレクシス サンチェス退場)以降は思うように攻撃の形が作れずにいた。狙いとしてはホアキン コレアが前線からライン間にかけて広く動いてパスを受け、そこを起点にしようとしていたようにみえた。
試合の感想・ポイント
前半
激しい攻防が連続で繰り広げられ中でも、緻密な駆引きが行われる
ハイインテンシティの激しい攻防。その中でリヴァプールがトラジションの攻防で僅かに上回りインテルを押し込む。
リヴァプールがトラジションの攻防で上回った理由について、放送席解説(wowow)の戸田和幸氏は「リヴァプールは攻守で似たシステムを採用している為、ポジション移動が少ない分速く動ける」と説明していた。
ポゼッションを取りインテル陣内へと攻め込むリヴァプールは、ボールを奪われてもインテルに対して嵐のようなプレスをお見舞いする。
しかしインテルは巧みなパス回しでプレスを剥がすと、リヴァプール陣内へと逆襲に転じる。プレスをかわされたリヴァプールも素早い戻りでインテルの前進を食い止めると、マークを掴み直してボールを奪い返す。すると今度はインテルがプレスに行く…
といった具合に激しい攻防が連続で行われる。
この激しい攻防の中でも、インテルの可変式のビルドアップや、それに対するリヴァプールのマークのスライドといった緻密な駆引きがあり、非常にハイレベルな試合となっていた。
後半
インテル反撃の狼煙を上げるも直後にアレクシス サンチェスが退場、状況が一変する
後半も開始直後から、お互いにマークの掴みやトラジション後のカウンタープレスが速く「これぞトラジションゲーム」という展開。特にリヴァプールは敵陣でボールの競り合いになった時のこぼれ球に対する反応の速さは特筆もので、ここを制する事でインテルゴールに迫り決定機を作る。
対するインテルはディフェンス陣がゴール前で体を張りなんとか失点を防ぐと、62分敵陣でのボール奪取かラウタロがゴールを奪い2試合合計スコアで1点差に迫る。
ここから追い上げムードとしたかったインテルだが直後のプレーでアレクシス サンチェスが2枚目のイエローカードを貰い退場となると状況は一変。攻め手を失ってしまう。
75分、インテルはチーム状況の立て直しを図るべく3枚替えを行うが、この直前にブロゾビッチに故障が発生、彼を下げざるを得なくなる。アレクシス サンチェスの退場と同様にブロゾビッチの交代もインテルにとっては痛手だったのではないだろうか。
それでもインテルは敵陣からボールを奪いに行く姿勢をみせるが、リヴァプールは数的有利な状態を生かし確実にボールを繋いでインテルに反撃の余地を与えず、試合は0対1のまま終了。
2試合合計スコア2対1でリヴァプールが準々決勝進出となった。
選手寸評
リヴァプール
モハメ ドサラー | ゴールポストを2度叩くもゴールは奪えず。それでも右サイドからカットインしてフィニッシュまでの動きは、インテルに対して圧倒的な脅威を与えていた。 |
アンドリュー ロバートソン | ビルドアップでは絶妙な立ち位置でマークのズレを作り、アタッキングサードに侵入すれば的確なサポートと正確なキックを披露。逆サイドのアレクサンダーアーノルドとともに攻撃に貢献した。 |
ディオゴ ジョタ | 攻撃では中盤に下がってパスの中継点になり、守備でもブロゾビッチへのパスコースを切りながらCBにプレスをかけるなど、攻守でチームに貢献。 |
ファビーニョ | 中盤で睨みを利かせ、前からのプレスが嵌ればボールを刈り取り、プレスを突破されれば下がってインテルの前進を食い止めた。 |
インテル
ミラン シュクリニアル | サラー、マネの飛び出しや突破に対して的確な読みとポジショニングで対応。決定的ピンチでも体を張ってシュートブロックに入るなど終始集中したパフォーマンスをみせた。 |
マルセロ ブロゾビッチ | 攻撃ではリヴァプールの強烈なプレスを巧みなパスアンドムーブで剥がし、守備では前に出てのプレスやディフェンスライン手前のプロテクトと攻守に絶大な貢献。それだけに怪我による途中交代はチームとって大きな痛手だった。 |
アレッサンドロ バストーニ | サラーとのマッチアップでは圧倒される場面もあったが、ゴール前のピンチではシュートブロックに入るなど体を張ったプレーをみせた。攻撃でもリヴァプールのプレスに怯まず的確にパスを繋いだ。 |
アルトゥーロ ビダル | 攻撃では前へ展開する場面で周囲の動きと合わない事もあったが、守備では危ないエリアに長駆して飛び込むなど、本来の力を発揮した。 |
アレクシス サンチェス | 敵陣でのチェイシングでチームを引っ張るなど先発起用に応える働きをしていただけに、63分の退場は悔やまれる。 |
投稿主選出の man of the match
ミラン シュクリニアル
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