熱戦が続くUEFAチャンピオンズリーグ
1回戦の1st legも第2週目に突入しました
Round of 16 1st leg week2 結果
2022年2月23日
チェルシー 2-0 LOSCリール
2022年2月23日
ビジャレアル 1-1 ユベントス
2022年2月24日
アトレティコ マドリード 1-1 マンチェスター ユナイテッド
2022年2月24日
SLベンフィカ 2-2 アヤックス
今回は1回戦の中でも、私が個人的に最も楽しみにしていたカード
ベンフィカ 対 アヤックス 戦をレビューします。
※アトレティコマドリード 対 マンチェスターユナイテッド 戦もこちらでレビューしております
よろしかったらご覧下さい
SLベンフィカ 対 アヤックス
2022年2月24日 UEFAチャンピオンズリーグ Round of 16 1st leg
SLベンフィカ 2-2 アヤックス
試合の争点はベンフィカのポジティブトラジション対アヤックスのネガティブトラジションでの攻防
前半はカウンタープレスでアヤックスが制し、後半はカウンターアタックでベンフィカが盛り返すという、期待にたがわぬエキサイティングな展開となる
メンバー
SLベンフィカ
監督 ネルソン ペリッシモ
【スタメン】
99 | オディセアス ブラホディモス (GK) |
2 | ジウベルト |
3 | アレハンドロ グリマルド |
5 | ヤン ベルトンゲン |
7 | エベルトン |
9 | ダルウィン ヌニェス |
27 | ラファ シウバ |
28 | ユリアン バイグル |
30 | ニコラス オタメンディ |
49 | アデル ターラブト |
88 | ゴンサロ ラモス |
【交代】
15 | ロマン ヤレムチュク (62分In) |
➡エベルトン Out | |
55 | パウロ ベルナルド (85分In) |
➡ターラブト Out | |
22 | バレンティノ ラザロ (90+1分) |
➡ジウベルト Out | |
17 | ジオゴ ゴンサウベス (90+1分) |
➡ダルウィン ヌニェス Out |
アヤックス
監督 エリック テンハーグ
【スタメン】
32 | レンコ パスフェール (GK) |
2 | ユリアン ティンベル |
4 | エドソン アルバレス |
8 | ライアン フラーフェンベルフ |
10 | ドゥシャン タディッチ |
11 | アントニー |
12 | ヌサイ マズラウィ |
17 | ダレイ ブリント |
21 | リサンドロ マルティネス |
22 | セバスティアン アレ |
23 | ステファン ベルフハウス |
【交代】
31 | ニコラス タグリアフィコ (73分In) |
➡ブリント Out | |
6 | ダビィ クラッセン (74分In) |
➡フラーフェンベルフ Out | |
15 | デフィネ レンスフ (90+2分) |
➡マズラウィ Out |
基本システム
左:ベンフィカ(赤) 右:アヤックス(黒)
[システム図①]
試合開始時
[システム図②]
62分ベンフィカ ヤレムチュク投入
[システム図③]
72分~73分アヤックス タグリアフィコ、クラッセン投入
85分ベンフィカ パウロ ベルナルド投入
得点経過
【18分・アヤックス】得点者:ドゥシャン タディッチ
敵陣でのボール奪取からのショートカウンター。
ゴールキーパー(GK)からのフィードを受けたベンフィカの左サイドバック(SB)グリマルドに対してマズラウィが走り込んでプレスに行きボール奪取。ボールはアントニーが拾いマズラウィはそのまま前に走り込む。アントニーは少しタメを作ってから右サイドに走り込むマズラウィへリターンパス。
パスを受けたマズラウィは即クロスを上げると、ファーサイドから走り込んで来たタディッチがフリーの状態でボレーシュートを放ちゴール。
【26分・ベンフィカ】オウンゴール(セバスティアン アレ)
ベンフィカ右コーナーキックからベルトンゲンが立て続けにシュートも、いずれもシュートブロックされボールは左ニアゾーンにこぼれる。このボールをベルトンゲンが自ら拾うとゴールライン方向へのドリブルでマズラウィをかわしGKの鼻先にグラウンダーの高速クロス。
このクロスにGKパスフェールが反応するも僅かに届かず、ボールは指先をかすめ抜けて行くと、アレに当たりアヤックスゴールに吸い込まれる。
【29分・アヤックス】得点者:セバスティアン アレ
敵陣中央でティンベルは後方のアルバレスにボールを戻すと、アルバレスは左サイドのブリントへスクエアーパス。ブリントはベルフハウスへ縦パスを送るとベルフハウスは低い弾道のアーリークロス。
このクロスに対してベルトンゲンの前を取ったアレが合わせてダイレクトシュート。GKブラホディモスがこのシュートを弾くも、こぼれ球をアレが再度押し込みゴール。
【72分・ベンフィカ】得点者:ロマン ヤレムチュク
自陣ゴール前からのロングカウンター。
ジウベルトからパスを受けたラファ シウバが右サイドをドリブルで上がり、タックルに来たアルバレスをかわして敵陣に侵入。ヤレムチュクが前方を走りアヤックスディフェンス陣を引き付けるとラファ シウバは中央を上がって来たゴンサロ ラモスへパス。パスを受けたゴンサロ ラモスはミドルシュートを放つ。このシュートはGKパスフェールに防がれるも、こぼれ球をヤレムチュクが頭で押し込みゴール。
局面ごとの方針
ベンフィカ
【守備】
陣形は4-4-1-1。アヤックスのビルドアップに対してはダルウィン ヌニェスがボールを保持するセンターバック(CB)にプレスをかけ、ゴンサロ ラモスがアルバレスを消しつつ、もう一方のCBをみる。後方8人はミドルサードに4-4のブロックを敷く。
30分台に入ると(リードされていることもあり)チーム全体でラインを上げ、敵陣でのプレスの強度を上げる。
後半に入ると自陣・敵陣いずれに於いても前半よりコンパクトな陣形を築く。
敵陣ではアヤックスのビルドアップに対しダルウィン ヌニェス(62分以降はヤレムチュク)、ゴンサロ ラモスに加えバイグルが前に出て前線で3対3と人数を合わせると(アヤックスのビルドアップ対ベンフィカのプレスに関する詳細は後述)、後方のラインも上げ選手間の距離を縮める事でプレスの強度を上げ、ボールがサイドに出ればラファ シウバ、エベルトンの両サイドハーフ(SH)が積極的に前に出てボールを奪いに行く。
自陣に下がった際のブロック守備(陣形は4-4-2)でも4と4のライン間の距離をかなり狭めていた。
62分の選手交代で左SHに入ったダルウィン ヌニェスはアントニー対策としてディフェンスラインまで下がる場面が度々みられた。
【ポジティブトラディション⇒攻撃】
ボール奪取後にアヤックスのプレスを外せばターラブト、バイグルを起点に早いタイミングでボールを前方両サイドのラファ シウバ、エベルトンにつけアタッキングサードへの侵入を図る。
サイドからの崩し、右はハーフスペースのラファ シウバを中心に前進しターラブト、ダルウィン ヌニェスが絡みコンビネーションを使う。左はエベルトンがサイドから仕掛け、グリマルドがサポート。
フィニッシュに近づけばゴンサロ ラモスがゴール前に入って来る。
後半に入りカウンターアタックの威力が向上する。その要因は
(1)守備時の陣形を自陣・敵陣ともにコンパクトに保つことでボール奪取後のサポートが良くなりアヤックスのカウンタープレスより先にボールを前に出せるようになった
(2)ラファ シウバ、ダルウィン ヌニェスのポジティブトラジションでの動き出しが良くなった
上記2点が大きいと思われる。
そこへ62分ヤレムチュクを投入しシステムも変更(システム変更は[システム図①及び②]参照)する。
攻撃時には[システム図④]のような位置取りになり、より縦攻撃の道筋が明確になる。
[システム図④]
ヤレムチュク投入後の攻撃時の陣形
㉗ラファ シウバ、⑨ダルウィン ヌニェスの両SHが中に絞り4-2-2-2的な並びに
アタッカー陣の動きが良くなったことで中盤にスペースができ、ターラブトが中盤からボールを持ち上がる事が増えた。
アヤックス
【ネガティブトラジション⇒守備】
ボールを奪われれば素早くマークを掴んでプレスに行く。敵陣ではフィールド全体でマッチアップを噛み合わせてマンマーク気味にマークにつきボールを奪いに行く。
ファーストプレスを外されたり、ネガティブトラジションからすぐプレスに行けないなどでラインを下げる時でもマンオリエンテッドにマークを掴む形は継続し、マークを掴めばラインを絞ってボールサイドに寄せて行く。
73分、タグリアフィコ投入について放送席解説(wowow)の関塚隆氏はラファ シウバ対策と説明していた。
【ポジティブトラディション】
アタッキングサードでボールを奪えばベンフィカが守備の陣形を整える前にカウンターでゴールへと迫る。
ミドルサードより後方でのボール奪取ではポゼッションの確立を優先し、後方から攻撃を組み立てる形に持って行く。
後半、ベンフィカのトラジションからのハイテンポな攻撃に対抗すべく、ボール奪取からより速く前に出ようとする時間帯もあったが、70分以降はボール奪取後に一旦スローダウンし状況を落ち着かせることを優先していた。
【攻撃】
ビルドアップはティンベル、リサンドロ マルティネスの両CBの前にアルバレスが立つ2-1の並び。ここに対して、前半のベンフィカのプレスはダルウィン ヌニェス、ゴンサロ ラモスの2枚でアヤックスからみて3対2の状態。アヤックスはこの状態を利用してCBがハーフウェイライン付近までボールを持ち上がり、そこから両サイドにボールを振り分ける。中盤にボールが入ってからもCBのどちらか1人(主にティンベル)が中盤のパス回しに加わる。
後半ベンフィカはバイグルが前線のプレスに加わり、ビルドアップ対プレスは3対3になるがそれでもできる限りCBがボールを前に持ち上がる。
[システム図⑤]
前半、アヤックスのビルドアップは3枚に対してベンフィカのプレスは2枚
[システム図⑥]
数的有利を利用しパスを受けた②ティンベルがボールを持ち上がる
[システム図⑦]
後半、ベンフィカは㉘バイグルが前線のプレスに加わり3対3に
ベルフハウス、フラーフェンベルフの両インテリオールについて、フラーフェンベルフはディフェンスラインと前線を繋ぐリンクマンとしての働きが主な役割で、ビルドアップが詰まりそうになればビルドアップをサポートするために後方に下がることもあった。
ベルフハウスは前に出てトップ下的な役割をこなしつつ、左サイドのタディッチが中央に入ってくれば自身は左サイドに流れるといったバランサーとしての動きもみせていた。
アタッキングサードへの侵入からディフェンスラインの崩しは左右両サイドから。
サイドに斜めのパスが入ると、後方から3枚目の選手が縦に抜けてラインブレイクを狙うといったコンビネーションプレーを多用。特に左サイドではフラーフェンベルフとタディッチがパス交換をする間にブリントがインナーラップといった形がよくみられた。
右サイドはコンビネーションをに加え、アントニーが個人で仕掛けることもあり、その際はマズラウィがサイドから上がってサポートに入る。
サイドからディフェンスラインを崩し、フィニッシュはゴール前のアレがターゲットとなる。
試合の感想・ポイント
前半
アヤックスがトラジションの攻防を制し優位に立つ
立ち上がりは両チームともにポジティブトラジションでの動きが良くボールを奪えば即アタッキングサードまで前進する展開。
10分頃になるとアヤックスがネガティブトラジションで的確にマッチアップを噛み合わせマークを素早く掴むようになる。それによりベンフィカの攻撃を封じるとともに、攻撃でもいい形でポゼッションを確立するようになり試合はアヤックスペースとなる。
ペースを握ったアヤックスは的確なプレスと多彩な攻撃をみせ2点を奪う。
苦しい展開のベンフィカだが、時折アヤックスのプレスをかわし反撃をみせ、セットプレーの流れから1点を奪う。
結局前半は1対2でハーフタイムを迎える。
後半
前半と打って変わって、後半はベンフィカのカウンターアタックが冴え渡る
後半に入りベンフィカは守備に入った時にチーム全体のラインを押し上げ、コンパクトな陣形で敵陣深くまでプレスに行き、自陣に下がった時の守備ブロックもコンパクトさを維持。この守備面での修正と攻撃陣のポジティブトラジションでの動き出しが向上したことによりカウンターアタックの威力が大きく向上。試合の流れはベンフィカへと傾くと、62分ヤレムチュク投入に伴いシステムも変更(システム図②④参照)、より攻撃時に縦に向かう形を明確にする。すると72分、自陣からロングカウンターを発動、最後はヤレムチュクが頭で押し込みベンフィカが同点に追いつく。
73分以降アヤックスはラファ シウバ対策としてのタグリアフィコ投入や、ポジティブトラジションで攻撃をスローダウンし試合全体のペースを落とすなど、ベンフィカの勢いを削ぐ戦い方を選択。
試合は2対2のまま終了し、同点で2nd legに向かうこととなった。
選手寸評
ベンフィカ
ラファ シウバ | 後半の攻撃の中心人物。72分の同点ゴールも彼のロングドリブルが起点だった。 |
ダルウィン ヌニェス | 中央からサイドまで前線を幅広く動き攻撃を牽引。ボールのオン、オフどちらでもキレのある動きをみせ、守備でも自陣深くまで戻ってチームに貢献していた。 |
アデル ターラブト | 推進力を生かしたボールの持ち上がりや、後方からの攻撃参加で存在感を発揮した。 |
ロマン ヤレムチュク | 彼の投入でチームの縦攻撃の道筋がより明確に。それが同点ゴールに繋がった。 |
ヤン ベルトンゲン | 26分のゴール(アレのオウンゴール)時の動きは見事。守備でもアレとのマッチアップで激しいバトルを繰り広げた。 |
アヤックス
ドゥシャン タディッチ | 左サイドで攻撃を牽引しつつ、機をみて中央にも進出。18分の先制ゴールも見事だった。 |
ヌサイ マズラウィ | 守備ではエベルトンやダルウィン ヌニェスとマッチアップしながらも攻撃に移ればアントニーをサポートと攻守で貢献。18分の先制ゴールも彼のプレスが起点だった。 |
セバスティアン アレ | 29分のゴールシーンでの、ベルトンゲンの前を取る動きとこぼれ球への反応は見事。前線からのプレスや、苦しい時間帯でのボールキープなど得点以外でもチームに大きく貢献。 |
ユリアン ティンベル | 守備能力の高さだけではなく、ビルドアップでのパス回やボールの持ち上がりなど、攻撃面でも存在感をみせた。 |
ステファン ベルフハウス | 前線やライン間での適切なポジショニングで陣形のバランスを取り、守備面でも的確にマークを掴んで守備の起点になっていた。 |
投稿主選出の man of the match
ラファ シウバ
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