欧州サッカー観戦記 ブンデスリーガ 第20節

ブンデスリーガ

21-22シーズンも折り返し地点を過ぎ後半戦へ。
優勝争いや、来季の欧州コンペティション出場権獲得を狙うチームの試合を観戦しました。

観戦した試合

2022年1月17日 イタリア セリエA 第22節
アタランタ 対 インテル

2022年1月20日 スペイン ラ リーガ 第21節
バレンシア 対 セビージャ

2022年1月22日 ドイツ ブンデスリーガ 第20節
TSG1899 ホッフェンハイム 対 ボルシア ドルトムント

2022年1月23日 スペイン ラ リーガ 第22節
アトレティコ マドリード 対 バレンシア

2022年1月24日 イングラン ドプレミアリーグ 第23節
チェルシー 対 トッテナム ホットスパー

今回は ホッフェンハイム 対 ドルトムント 戦をレビューします。

※アトレティコ マドリード 対 バレンシア 戦のレビューはこちらになります。
よろしければご覧下さい。

TSG1899 ホッフェンハイム 対 ボルシア ドルトムント

2022年1月22日 ドイツブン デスリーガ 第22節
TSG1899 ホッフェンハイム 2-3 ボルシア ドルトムント

メンバー

ホッフェンハイム
監督 セバスティアン ヘーネス

【スタメン】

1 オリバー バウマン (GK)
8 デニス ガイガー
9 イフラス ベブ
10 ムナス ダブール
13 アンジェロ シュティーラー
14 クリストフ バウムガルトナー
17 ダビド ラウム
21 ベンヤミン ヒュブナー
22 ケビン フォクト
27 アンドレイ クラマリッチ
28 クリス リチャーズ

【交代】

33 ジュルジニオ リュテル (9分In)
➡ バウムガルトナー Out 怪我
6 ホーバル ノルトベイト (62分In)
➡ ヒュブナー Out
16 セバスティアン ルディ (62分In)
➡ ガイガー Out
7 ヤクブ ブルーンラーセン (83分In)
➡ ラウム Out

ドルトムント
監督 マルコ ローゼ

【スタメン】

1 グレゴル コーベル (GK)
8 マハムート ダフート
9 アーリング ホーラン
11 マルコ ロイス
13 ラファエウ ゲレイロ
15 マッツ フンメルス
16 マヌエル アカンジ
19 ユリアン ブラント
21 ドニエル マレン
22 ジュード ベリンガム
39 マリウス ボルフ

【交代】

5 ダンアクセル ザガドゥ (56分In)
➡ ボルフ Out
10 トルガン アザール (56分In)
➡ ユリアン ブラント Out
28 アクセル ビツェル (63分In)
➡ ホーラン Out 怪我
18 ユスファ ムココ (83分In)
➡ マレン Out
34 マリン ポングラチッチ (83分In)
➡ アカンジ Out 怪我

 

システム

左:ホッフェンハイム 右:ドルトムント

① 試合開始時

② 9分バウムガルトナー負傷交代

③ 56分ドルトムント 3バックにシステム変更

④ 63分ドルトムント 再システム変更

⑤ 終了間際

 

得点経過

【6分・ドルトムント】得点者:アーリング ホーラン
ホーランが中盤右サイドから中央へドリブル、ユリアン ブラントへパスを出し、自らは前線へ。ユリアン ブラントはベリンガムとのパス交換から左サイドへボールを送る。
左サイドでラファエウ ゲレイロとマレンがパスを回しながらペナルティーエリアの角まで前進すると、マレンはロイスとのワン・ツーパスでディフェンスラインの裏へ抜けライン裏へグラウンダーのクロス。そのクロスをホーランが合わせてゴール。

【45+1分・ホッフェンハイム】得点者:アンドレイ クラマリッチ
敵陣右サイドでベブのスローイン。シュティーラー、ベブ、リュテル、ダブールがサイドの狭いエリアでパスを回すと、ボールはタッチライン際のベブへ。ベブがクロスを上げるとファーサイドでクラマリッチがボレーシュート、ゴール。

【58分・ドルトムント】得点者:マルコ ロイス
ミドルサードの自陣側、フンメルスが一列飛ばしの縦パス。中央でパスを受けたマレンがホーランとのパス交換、リターンパスを受けたマレンがディフェンスラインの裏へスルーパス。裏に抜けたロイスがシュート、ゴール。

【66分・ドルトムント】オウンゴール(ダビド ラウム)
敵陣左サイドでのフリーキック、ラファエウ ゲレイロがダフートへパス。ダフートはラファエウ ゲレイロへボールをリターン。リターンパスを受けたラファエウ ゲレイロは左ハーフスペースのライン間にいるマレンへパスを回すと、マレンはドリブルでディフェンスラインを突破しライン裏へグラウンダーのクロス、アザールをマークしていたラウムに当たりオウンゴール。

【77分・ホッフェンハイム】得点者:ジュルジニオ リュテル
左サイドのハーフウェイ付近、クリス リチャーズからシュティーラーへパス。シュティーラーは前線で左ハーフスペースにあるディフェンスラインのギャップを突いたダブールへ浮き球のパス。慌てて対応するドルトムントディフェンス陣に対してダブールはゴール前へスルーパスを出すと、ディフェンスラインの裏へ抜けてきたリュテルがシュート、ゴール。

局面ごとの方針

ホッフェンハイム

【ポジティブトラジション】
ポゼッションの確立を優先するが、前にスペースがあれば行ける所まで縦方向に前進。ベブ、ラウムの両ウイングバック(WB)は前にポジショニング。

【攻撃】
ビルドアップはクリス リチャーズ、フォクト、ヒュブナーの3センターバック(CB)の前にシュティーラー、ガイガーが並ぶ3-2の陣形でパスを回す。フォクト、ガイガーを起点に縦パスを狙い、ドルトムントに縦方向の攻撃を意識させつつ両サイドのWBにボールを送る。
ドルトムントが4バックを敷いている時間帯(システム図①②参照)では両WBはフリーになりがちで、それを生かしてサイドから前進。ドルトムントがサイドに絞ってくれば左右のCBやリュテル、クラマリッチの両シャドーストライカーがWBのサポートに寄って来て、細かいパス回しでサイドを突破。
56分ドルトムントはシステムを変更し、WBに対してマッチアップを噛み合わせてくる(システム図③④⑤参照)。
リュテル、クラマリッチの両シャドーストライカーとセンターフォワード、ダブールの前線3人は流動的にポジションを変える事が度々みられた。

【ネガティブトラジション⇒守備】
ドルトムントが4バック時のビルドアップに対して両シャドーストライカーがドルトムントの2CBをみて、ダブールはやや下がり目にポジションを取る3-4-1-2的な陣形で前に出てプレスをかける。ドルトムントのシステム変更に対しては、その都度対応。
前線の3人が攻撃時にポジションチェンジしている時のネガティブトラジションではポジションチェンジしたままのポジションで守備に入る。
自陣に下がれば5-2-3のブロックを敷く。

ドルトムント

【ポジティブトラジション】
ポゼッションの確立を目指す事が多かったが、状況によっては前線のホーランに早い段階でボールを入れたり、ホーランが狙うスペースへボールを送る事もあった。

【攻撃】
ビルドアップはアカンジ、フンメルスの2CBとダフートがトライアングルを作り、ボルフ、ラファエウ ゲレイロの両SBはサイドでビルドアップをサポート。ボールが前に出ればラファエウ ゲレイロはサイドを上がる。状況によってはベリンガムが下がってビルドアップをサポート。
そこからライン間を広く動くユリアン ブラント、ベリンガム、ロイス、マレンへボールを入れてホッフェンハイムの守備ブロックを押し込んで行き、アタッキングサードに侵入すればマレンやホーランがディフェンスラインに対して仕掛けていく。

【ネガティブトラジション⇒守備】
敵陣ではホーランがアタッキングサードからチェイシングに行き少し下がった位置でロイスとマレンが外側からボールホルダーへアプローチ、ボールサイドのインテリオール(ユリアン ブラントかベリンガム)が前に出てボールを奪いに行く。
自陣では4-1-4-1のブロックを敷く。

56分、3バックへシステム変更。WB同士でマッチアップする形にすることでホッフェンハイムのWBをフリーにさせないようにする(システム図③参照)。
56分以降の守備ブロックの形はその時のシステムに応じて変化(システム図③④⑤参照)。

試合の感想・ポイント

前半

両チームともに攻撃面での良さが出ていた。
ホッフェンハイムはフォクト、ガイガーが縦にボールをつける事で、縦方向へ進む事をドルトムント守備陣に意識させながら、フリーになりがちな両WBへボールを振ってサイドから前進していた。
ドルトムントは前線のホーランを意識させつつもライン間に侵入するパス回しが良く、そこからホッフェンハイムの守備ブロックを押し込んでいた。
6分の先制ゴールは右サイドから敵陣に侵入し、ボール付近にトライアングルを作りながらパスを回し中央、左サイドと移動しながら前進。最後は左ハーフスペースでのワン・ツーパスでホッフェンハイムの守備ブロックを崩した。チーム全体のパス回しでホッフェンハイムを押し込んで行くドルトムントの攻撃の狙いが見事に嵌ったゴールだった。

後半

ドルトムントは後半の立ち上がりからプレスの開始位置を高め前に出る姿勢をみせるとホッフェンハイムも守備時にボールホルダーに対して強くアプローチすることで対抗。
ドルトムントは56分、63分と選手交代に伴いシステムも変更。このシステム変更は主に攻撃面で効果を発揮、ホッフェンハイム側がマークを掴み切るより先に58分と66分にゴールを奪う(58分のゴールについては後述)。
但し、守備面ではシステムを変更してもドルトムントにとってそれほど大きな効果はなかった。ドルトムントはサイドのマッチアップを噛み合わせることでホッフェンハイムのWBを封じる意図があったとは思われ、実際にホッフェンハイムの両WBがフリーになることは減った。しかしホッフェンハイムはドルトムントの3CB脇のスペースを突くなどして上手くサイドを攻めていた。
またホッフェンハイムは守備面でも、しっかりとマークを掴みさえすれば敵陣からのプレスでボールを奪い攻撃に転じるなど、攻守で良いプレーをしていた。

結局ホッフェンハイムは77分に1点を返すにとどまりドルトムントが勝利を収めた。
ホッフェンハイムは試合全般に於いて良質なサッカーをしていると感じた。対するドルトムントは選手交代とシステムやポジションを変更することで好機を作り、それを決め切ったことが勝因だと感じた。

【58分のゴール】
ドルトムントの2CBに対してホッフェンハイムは2シャドーがマーク。しかし56分ドルトムントがシステムを変更、3CBにしたことでマークにズレが生じる。マークがズレた事によりフンメルスへのプレッシャーは軽減、容易に一列飛ばしの縦パスを入れる事ができ、そこを起点にフィールド中央を一直線に進んでゴールを奪う。

選手寸評

ホッフェンハイム
ケビン フォクト 攻撃の起点としてライン間や両サイドにボールを供給。高いフィード能力をみせた。
ダビド ラウム マッチアップの嚙み合わ上、マークが浮くことを生かして左サイドからの攻撃を牽引。ドルトムントがマッチアップを噛み合わせた後も攻め続けた。
ジュルジニオ リュテル 前半途中急遽の出場だったが、シャドーストライカーとしてゾーンの間を突き、77分には一矢報いるゴールを挙げる。
デニス ガイガー ポゼッションオフェンスの中心として後ろと前を繋ぎ、攻撃を組み立てた。
クリス リチャーズ 守備ではマレンとのマッチアップで強さを見せ、攻撃でもサイドからの前進や崩しに積極的に絡んでいた。
ドルトムント
ドニエル マレン クリスリ チャーズとのマッチアップではやや苦戦したが、ライン間での効果的な働きで実質3アシスト(正式には2アシスト)を挙げた。
ジュード ベリンガム 中盤を広範囲に動き攻守のあらゆる局面でプレーに関与した。
マッツ フンメルス 58分のゴールにつながる一列飛ばしの縦パスは、正に彼の真骨頂のプレーだった。
アーリング ホーラン 先制ゴールを挙げる直前のパスアンドムーブは見事。それ以外でも彼の動きは前線で絶大な影響力を誇った。
ラファエウ ゲレイロ システムマッチアップの関係上、守備面ではベブのマークを掴むのに苦戦したが、攻撃では高い技術力を発揮した。

投稿主選出の man of the match

ドニエル マレン

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